有価証券報告書-第54期(平成28年4月1日-平成29年3月31日)
第一部【企業情報】
(はじめに)
当社は、エムシーピースリー投資事業有限責任組合(※)により設立されたウェーブロックインベストメント(株)(※※)による、当社普通株式等に対する公開買付け(TOB)が平成21年3月に成立した結果、平成21年7月に東京証券取引所市場第二部の上場を廃止いたしました。
その後、平成21年10月に当社を存続会社、ウェーブロックインベストメント(株)を消滅会社とする吸収合併を行い、現在に至っております。
※ みずほキャピタルパートナーズ(株)が関与する、経営陣によるマネジメント・バイアウトの支援を目的として設立
※※ 当社の株式を取得および保有することを主な事業の内容として平成20年12月に設立
<当社の変遷>1.非上場化に至った経緯とその目的
当社は、昭和39年6月、イタリアの糸強化プラスチック製法特許“ウェーブロック”技術を導入するために設立され、翌昭和40年に、ウェーブロック製品の生産・販売を開始した後、塩化ビニルフィルム、壁紙およびポリプロピレンシート等の製造へ順次事業領域を拡大してまいりました。また、平成2年10月には日本証券業協会に店頭売買銘柄として登録、株式を公開し、さらに平成8年12月に東京証券取引所市場第二部に上場するに至りました。
しかしながら、株式上場後、当社の社内外の状況は徐々にではありますが、大きな転換点を迎えようとしていました。
外部環境の変化としては、第一に、当社の収益性は、主力製品のほとんどに使用される樹脂材料の上流である原油価格の影響を受ける傾向にある一方、従来は主に需給バランスで変動していたと考えられる原油価格が、投機筋の動きや国際紛争等の政治動静にも左右される相場へと変化していきました。第二に、当社の仕入先にあたる主要原材料メーカーの再編・統合が続き、その結果、当社の仕入先に対する価格交渉力が相対的に低下するようになりました。第三に、当社は、従来は、既存設備の活用や中古機器の購入等で初期投資を抑えながら独自の生産技術を最大限に活用しコスト競争力を確保し、同時に、積極的な価格販売戦略により大口取引先への販売量を獲得して、生産効率を高め材料調達コストも抑えることで、国内競合メーカーとの差別化を図り、成長し利益を確保してきましたが、一部の製品分野において、コスト構造の全く異なる海外メーカーの輸入廉価品との競争が徐々に激化していきました。
一方、内部環境としては、創業時より会社を牽引してきた創業者を始めとする経営陣の高齢化が進んでいたため、世代交代とトップダウン的経営からの脱却が課題となっていました。
このような背景の下、平成15年には製品の補完性が高いダイオ化成(株)、平成18年には壁紙事業の競合先であるヤマト化学工業(株)をそれぞれ子会社化し、また平成17年には持株会社制を導入し、当社グループ内において、成熟度の高い事業のシナジー効果を追求する体制を整えました。また、同時期に、複数の新規事業を開始することと併せて、当社グループの事業の構造改革を進める方針としておりました。
ところが、平成16年から平成20年にかけて原油価格および樹脂材料価格が高騰したことにより、当社グループの収益は重大な影響を受け、平成20年3月期の決算においては営業赤字を計上するに至りました。更に、平成20年9月に発生したいわゆるリーマンショックにより金融市場や世界経済は混乱し、当社にとっても、これまで取り組んできた企業改革の行く末が極めて不透明なものとなっていました。更にこの時期には、当社の大株主から株式売却の意向があることが判明し、株主構成の再検討も新たな課題となりました。
このような状況の下、従来からの企業改革を継続し、かつ、主要株主の売却要請に応えるため、売却先候補として複数の企業や投資家と話し合いを持った結果、みずほキャピタルパートナーズ(株)からの株式の非上場化に関する提案を受けることを決定するに至り、平成21年3月、当社普通株式等に対する公開買付け(TOB)が成立し、平成21年7月、上場を廃止いたしました。
2.非上場化に至る手続きとその妥当性
当社は、当社普通株式等に対する公開買付けに賛同の意見を表明するにあたり、その公正性を担保するため、主として以下のような事項を考慮いたしました。
まず、ウェーブロックインベストメント(株)による当社普通株式等に対する公開買付けが、当時の当社の代表取締役兼執行役員社長および複数の取締役が公開買付け終了後公開買付者に出資することをその要素としていることから、本来、企業価値の向上を通じて株主の皆様の利益を代表すべき当社の取締役が、株式の買付者側の性格も併せ持つことになり、構造的な利益相反状態が生じることに鑑み、当該公開買付けに関する当社の意思決定において恣意的な判断がなされないようにすることを目的として、プロジェクトチームを設置、公開買付者および当社から客観的かつ実質的に独立し、監督能力・アドバイス能力などを備えている者として、当時の当社の社外取締役であった西澤民夫氏および渡邊龍男氏の2名ならびに社外監査役であった石崎優仁氏、松澤英雄氏および岡野真也氏の合計5名をプロジェクトチームの委員に選任いたしました。プロジェクトチームでは、当該公開買付けの是非等についての諮問事項につき慎重に検討した結果、当該公開買付けは当社の企業価値の向上が目的とされており、また、公正な手続きを経て株主利益への配慮が行われていると判断する旨の答申を、当社取締役会に行いました。
また、当社取締役会は、当該公開買付価格の公正性を検討するため、公開買付者および当社から独立した第三者算定機関より株式価値算定書を取得することとし、第三者算定機関として、PwCアドバイザリー(株)を選任し、株式価値算定書を取得いたしました。株式価値算定書では、当社が継続企業であるとの前提の下、多面的に評価することが適切であると考え、市場株価基準方式、類似会社比準方式およびディスカウンテッド・キャッシュ・フロー方式(以下、「DCF方式」といいます。)の各手法を用いて分析をしており、市場株価基準方式では評価基準日を平成21年1月29日として、過去1ヶ月間、3ヶ月間および6ヶ月間における株価終値平均および出来高加重平均を分析した上で、当社の1株当たりの株式価値を303円から371円とし、類似会社比準方式では上場類似企業の各種比準倍率を分析した上で、当社の1株当たりの株式価値を284円から353円とし、DCF方式では、当社の事業計画を基礎として企業価値を評価し、当社の1株当たりの株式価値を472円から570円と算定しておりました。これに対して、公開買付者は買付価格を設定するに際し、東京証券取引所市場第二部における過去6ヶ月間および直近の株価の推移、財務情報等の資料、買収監査(デュー・ディリジェンス)の結果などを基に、公開買付事例におけるプレミアム率を参考にしながら、プロジェクトチームとの協議・交渉の結果や公開買付けの見通し等を勘案し、買付価格を1株当たり520円と決定しました。この公開買付価格520円は、当社株式の、当該公開買付けに賛同した前営業日(平成21年1月26日)までの東京証券取引所終値の過去1ヶ月単純平均値306円、過去3ヶ月単純平均値311円および過去6ヶ月単純平均値360円に対し、それぞれ、70.0%、67.3%、44.3%のプレミアムを加えた価格となっておりました。
さらに、当社取締役会は、公開買付者および当社において特別利害関係を有する取締役らから独立した西村あさひ法律事務所から当該取引および公開買付けに関する法的助言を受けました。
こうして、当社取締役会は、第三者算定機関より取得した株式価値算定書およびプロジェクトチームによる答申の結果を参考に、当該公開買付けの是非および条件について慎重に検討し、当該取引が当社の中長期的かつ持続的な企業価値の向上に資するとともに、当該公開買付価格が妥当であり、当社の株主の皆様に対して合理的な価格による当社株式の売却の機会を提供するものであると判断し、平成21年1月30日開催の取締役会において、賛同の意見を表明いたしました。結果として、公開買付における応募株券等の総数は9,681,503株(自己株式数を控除した発行済株式総数に対する割合 91.7%)となり、当社としては、当該公開買付けは当時の株主の皆様から十分な賛同を得られていたものと判断しております。
3.非上場化後の経営施策と経営指標の推移
上述したとおり、当社は非上場化後においても、社内においては世代交代と新たな企業文化の醸成を、社外の環境変化に対しては抜本的な収益構造の改革、新たな仕組みの構築を進めました。
(1)新たな企業文化の醸成
非上場化により親会社となったウェーブロックインベストメント(株)の吸収合併の後、平成22年4月に子会社の日本ウェーブロック(株)から会社分割により(株)ウェーブロック・アドバンスト・テクノロジーを設立し、グループ内の主たる新規事業をアドバンストテクノロジー事業として集約しました。これは、成熟事業に比べてリスクを伴い、かつ、スピード経営が求められる新規事業に耐えうるリソースを集約し、仕組みを作り、企業文化を熟成することを念頭に置いた上での組織変更でした。また、アドバンストテクノロジー事業を分離独立させて持株会社である当社の傘下に同様な規模の4つの事業を横並びで配置する体制を作ることで、それぞれの事業会社の経営陣が、独自性、独立性を確保しながら事業を遂行すると共に、経営陣と現場が近くなることにより、より精緻な経営管理が可能となるような体制に整備いたしました。
更に、平成25年2月に(株)イノベックスを設立し、同年4月に産業資材・包材事業の日本ウェーブロック(株)の販売部門を同社に承継させ、編織事業を担うダイオ化成(株)の関連製品の部門も同社に統合しました。これにより、ダイオ化成(株)と日本ウェーブロック(株)の販売面での協業・連携を推進すると共に、両社の企業文化の融合の促進を図りました。また、販売部門を独立させたことで、自社製品だけでなく、顧客のニーズによっては、他社製品や輸入製品の販売も積極的に手掛けることが可能になりました。
上記の組織変更を含め、非上場化以降に実施した施策により、徐々にではありますが、グループの一体感は高まり、同時に新たな企業文化が生まれつつあると認識しています。
(2)新たな事業基盤、仕組みの構築
抜本的な収益構造の改革のため、それぞれの事業分野で取り組みを行いました。
インテリア事業においては、4か所に分散していた工場を、量産品向けの一関工場(岩手県)と、小ロットの機能性壁紙の生産を主体とする成田工場(千葉県)の2か所に統合することで、メーカーとしての根本的な生産体制の差別化を図り、よりコスト競争力を獲得するよう努めました。加えて、平成27年10月には業界最大手の壁紙ブランドメーカーである(株)サンゲツとの資本業務提携を締結し、中長期的な視野に立った、また、壁紙業界のバリューチェーン構造に変革を起こし得る連携の構築を進めました。同時に一関工場を増設し、生産能力を最大限に生かす生産体制の構築に努めました。
編織事業においては、中国大連に子会社を設立し生産工場を立ち上げ、海外進出の足がかりを築きました。また、上述のとおり、平成25年2月に設立した(株)イノベックスとの連携、協業を進めることで、新たなビジネスチャンスの創出に努めました。同時に、産業資材・包材事業においては、(株)イノベックスが他社製品を含む新規開発品の販売や拡販に取り組み、製造に特化した日本ウェーブロック(株)がコスト削減や品質の向上に集中して取り組みました。
アドバンストテクノロジー事業においては、金属調加飾フィルム分野の拡販に努め、海外市場の開拓、製造パートナーの探索、特許の整理等を進めました。また、従来から主力製品であった車両外装用フィルムに加え、新たに車両内装用に適した製品の開発を進め、国内自動車メーカーの採用を広げることができました。この結果生じた販売増加に対応すべく量産体制の構築に努めましたが、当初は製品品質が安定せず、クレーム費用等のコストが膨らむ状況が続いていましたが、下流の加工パートナーとの協力も含めたバリューチェーン全体の品質安定化に取り組みました。一方、PMMA/PC2層シート分野においては、フィーチャーフォンからスマートフォンへの市場環境が劇的に変化する中で、樹脂シートによるスマートフォン前面板の旺盛な需要を取り込むことを考え、平成23年8月に韓国で樹脂シートに対するハードコート事業を展開するTS Development Co., Ltd.を設立し、工場や製造設備、人材に対し経営資源を投下しました。また、平成24年3月には、韓国において、各種電子材料、プラスチック製品等の販売を行うWavelock Korea Co., Ltd.を設立し、韓国市場の開拓を進めました。しかしながら、相応の品質の製品の生産が可能な体制となったものの、受注には至らず、立上げに伴う先行的な損失の計上や製造設備の減損処理等が膨らむ結果となり、平成26年3月にTS Development Co., Ltd.の事業撤退を決定し、大きな損失を計上することとなりました。加えて、微細加工分野等の整理縮小、生産ラインや工場設備の改善を進めた結果、同事業のセグメント損益の黒字化および今後の成長が期待できる状況となってまいりました。
以上の取り組みの結果として、当期および当期以前5年間における当社グループの主要な連結経営指標は、以下のとおり推移いたしました。
(注)1.編織事業における第49期および第50期のセグメント利益は、東日本大震災後の省エネ気運と夏場の猛暑により遮光関連商材が特需的に伸張したことによるものです。
2.第49期から第51期のアドバンストテクノロジー事業におけるセグメント利益には、撤退したTS Development Co., Ltd.の立上げに伴う営業損失が含まれており、その金額は第49期が102百万円、第50期が519百万円、第51期が319百万円です。
3.第53期のアドバンストテクノロジー事業におけるセグメント利益には、クレーム補償費247百万円が含まれております。
4.第50期から第52期において、特別損失としてTS Development Co., Ltd.における減損損失の計上および事業撤退に伴う撤退損失等の計上が含まれており、その金額は第50期が613百万円、第51期が233百万円、第52期が483百万円です。
5.第53期において、持分法適用関連会社であったEntire Technology Co., Ltd.株式の譲渡に伴う投資有価証券売却損253百万円を計上しております。
6.第52期において、TS development Co., Ltd.の会社清算により、グループ内貸付金の貸倒損失が税務上の損金として処理されたことなどを主要因として、法人税等調整額△427百万円が計上されたため、親会社株主に帰属する当期純利益が大きく増加しております。
4.再上場について
当社は、安定的且つ継続的な成長を長期的目標とし、中長期的視野に立った事業ポートフォリオの構築を重視し、既存事業の強化と新規事業の確立を車の両輪と捉え、バランスの取れた資源配分・事業展開を目指しております。
非上場化後は上述のとおり事業構造の改革や新規事業の推進、さらには海外展開など中長期的な成長を通じた企業価値向上の実現に向けて、事業を展開してまいりました。
今後の当社グループの成長のシナリオのひとつが海外展開です。海外展開を進めて行く上では、現地企業との提携・協力等が必要不可欠であるため、株式上場企業として、情報公開を含めて市場の信認を得ることが重要な要素であると認識しております。
また、当社グループはこれまでM&Aを成長戦略のひとつに位置付けており、今後も国内、国外問わず、M&Aが有効な手段であると考えられる場合には積極的に実行していく所存です。そのためには、金銭による買収のみならず、株式も含めた様々な手法を組み合わせることが重要であると考えます。加えて、M&Aのみならず、既存事業、新規事業ともに様々な投資を行うことによって成長を加速していく必要があります。その投資の原資として、金融機関からの借入のみではなく、資本市場からの直接調達を可能にすることが重要であると認識しております。
今般、再上場を果たしたことにより、当社グループは更なる成長を目指していく所存です。
(はじめに)
当社は、エムシーピースリー投資事業有限責任組合(※)により設立されたウェーブロックインベストメント(株)(※※)による、当社普通株式等に対する公開買付け(TOB)が平成21年3月に成立した結果、平成21年7月に東京証券取引所市場第二部の上場を廃止いたしました。
その後、平成21年10月に当社を存続会社、ウェーブロックインベストメント(株)を消滅会社とする吸収合併を行い、現在に至っております。
※ みずほキャピタルパートナーズ(株)が関与する、経営陣によるマネジメント・バイアウトの支援を目的として設立
※※ 当社の株式を取得および保有することを主な事業の内容として平成20年12月に設立
<当社の変遷>1.非上場化に至った経緯とその目的
当社は、昭和39年6月、イタリアの糸強化プラスチック製法特許“ウェーブロック”技術を導入するために設立され、翌昭和40年に、ウェーブロック製品の生産・販売を開始した後、塩化ビニルフィルム、壁紙およびポリプロピレンシート等の製造へ順次事業領域を拡大してまいりました。また、平成2年10月には日本証券業協会に店頭売買銘柄として登録、株式を公開し、さらに平成8年12月に東京証券取引所市場第二部に上場するに至りました。
しかしながら、株式上場後、当社の社内外の状況は徐々にではありますが、大きな転換点を迎えようとしていました。
外部環境の変化としては、第一に、当社の収益性は、主力製品のほとんどに使用される樹脂材料の上流である原油価格の影響を受ける傾向にある一方、従来は主に需給バランスで変動していたと考えられる原油価格が、投機筋の動きや国際紛争等の政治動静にも左右される相場へと変化していきました。第二に、当社の仕入先にあたる主要原材料メーカーの再編・統合が続き、その結果、当社の仕入先に対する価格交渉力が相対的に低下するようになりました。第三に、当社は、従来は、既存設備の活用や中古機器の購入等で初期投資を抑えながら独自の生産技術を最大限に活用しコスト競争力を確保し、同時に、積極的な価格販売戦略により大口取引先への販売量を獲得して、生産効率を高め材料調達コストも抑えることで、国内競合メーカーとの差別化を図り、成長し利益を確保してきましたが、一部の製品分野において、コスト構造の全く異なる海外メーカーの輸入廉価品との競争が徐々に激化していきました。
一方、内部環境としては、創業時より会社を牽引してきた創業者を始めとする経営陣の高齢化が進んでいたため、世代交代とトップダウン的経営からの脱却が課題となっていました。
このような背景の下、平成15年には製品の補完性が高いダイオ化成(株)、平成18年には壁紙事業の競合先であるヤマト化学工業(株)をそれぞれ子会社化し、また平成17年には持株会社制を導入し、当社グループ内において、成熟度の高い事業のシナジー効果を追求する体制を整えました。また、同時期に、複数の新規事業を開始することと併せて、当社グループの事業の構造改革を進める方針としておりました。
ところが、平成16年から平成20年にかけて原油価格および樹脂材料価格が高騰したことにより、当社グループの収益は重大な影響を受け、平成20年3月期の決算においては営業赤字を計上するに至りました。更に、平成20年9月に発生したいわゆるリーマンショックにより金融市場や世界経済は混乱し、当社にとっても、これまで取り組んできた企業改革の行く末が極めて不透明なものとなっていました。更にこの時期には、当社の大株主から株式売却の意向があることが判明し、株主構成の再検討も新たな課題となりました。
このような状況の下、従来からの企業改革を継続し、かつ、主要株主の売却要請に応えるため、売却先候補として複数の企業や投資家と話し合いを持った結果、みずほキャピタルパートナーズ(株)からの株式の非上場化に関する提案を受けることを決定するに至り、平成21年3月、当社普通株式等に対する公開買付け(TOB)が成立し、平成21年7月、上場を廃止いたしました。
2.非上場化に至る手続きとその妥当性
当社は、当社普通株式等に対する公開買付けに賛同の意見を表明するにあたり、その公正性を担保するため、主として以下のような事項を考慮いたしました。
まず、ウェーブロックインベストメント(株)による当社普通株式等に対する公開買付けが、当時の当社の代表取締役兼執行役員社長および複数の取締役が公開買付け終了後公開買付者に出資することをその要素としていることから、本来、企業価値の向上を通じて株主の皆様の利益を代表すべき当社の取締役が、株式の買付者側の性格も併せ持つことになり、構造的な利益相反状態が生じることに鑑み、当該公開買付けに関する当社の意思決定において恣意的な判断がなされないようにすることを目的として、プロジェクトチームを設置、公開買付者および当社から客観的かつ実質的に独立し、監督能力・アドバイス能力などを備えている者として、当時の当社の社外取締役であった西澤民夫氏および渡邊龍男氏の2名ならびに社外監査役であった石崎優仁氏、松澤英雄氏および岡野真也氏の合計5名をプロジェクトチームの委員に選任いたしました。プロジェクトチームでは、当該公開買付けの是非等についての諮問事項につき慎重に検討した結果、当該公開買付けは当社の企業価値の向上が目的とされており、また、公正な手続きを経て株主利益への配慮が行われていると判断する旨の答申を、当社取締役会に行いました。
また、当社取締役会は、当該公開買付価格の公正性を検討するため、公開買付者および当社から独立した第三者算定機関より株式価値算定書を取得することとし、第三者算定機関として、PwCアドバイザリー(株)を選任し、株式価値算定書を取得いたしました。株式価値算定書では、当社が継続企業であるとの前提の下、多面的に評価することが適切であると考え、市場株価基準方式、類似会社比準方式およびディスカウンテッド・キャッシュ・フロー方式(以下、「DCF方式」といいます。)の各手法を用いて分析をしており、市場株価基準方式では評価基準日を平成21年1月29日として、過去1ヶ月間、3ヶ月間および6ヶ月間における株価終値平均および出来高加重平均を分析した上で、当社の1株当たりの株式価値を303円から371円とし、類似会社比準方式では上場類似企業の各種比準倍率を分析した上で、当社の1株当たりの株式価値を284円から353円とし、DCF方式では、当社の事業計画を基礎として企業価値を評価し、当社の1株当たりの株式価値を472円から570円と算定しておりました。これに対して、公開買付者は買付価格を設定するに際し、東京証券取引所市場第二部における過去6ヶ月間および直近の株価の推移、財務情報等の資料、買収監査(デュー・ディリジェンス)の結果などを基に、公開買付事例におけるプレミアム率を参考にしながら、プロジェクトチームとの協議・交渉の結果や公開買付けの見通し等を勘案し、買付価格を1株当たり520円と決定しました。この公開買付価格520円は、当社株式の、当該公開買付けに賛同した前営業日(平成21年1月26日)までの東京証券取引所終値の過去1ヶ月単純平均値306円、過去3ヶ月単純平均値311円および過去6ヶ月単純平均値360円に対し、それぞれ、70.0%、67.3%、44.3%のプレミアムを加えた価格となっておりました。
さらに、当社取締役会は、公開買付者および当社において特別利害関係を有する取締役らから独立した西村あさひ法律事務所から当該取引および公開買付けに関する法的助言を受けました。
こうして、当社取締役会は、第三者算定機関より取得した株式価値算定書およびプロジェクトチームによる答申の結果を参考に、当該公開買付けの是非および条件について慎重に検討し、当該取引が当社の中長期的かつ持続的な企業価値の向上に資するとともに、当該公開買付価格が妥当であり、当社の株主の皆様に対して合理的な価格による当社株式の売却の機会を提供するものであると判断し、平成21年1月30日開催の取締役会において、賛同の意見を表明いたしました。結果として、公開買付における応募株券等の総数は9,681,503株(自己株式数を控除した発行済株式総数に対する割合 91.7%)となり、当社としては、当該公開買付けは当時の株主の皆様から十分な賛同を得られていたものと判断しております。
3.非上場化後の経営施策と経営指標の推移
上述したとおり、当社は非上場化後においても、社内においては世代交代と新たな企業文化の醸成を、社外の環境変化に対しては抜本的な収益構造の改革、新たな仕組みの構築を進めました。
(1)新たな企業文化の醸成
非上場化により親会社となったウェーブロックインベストメント(株)の吸収合併の後、平成22年4月に子会社の日本ウェーブロック(株)から会社分割により(株)ウェーブロック・アドバンスト・テクノロジーを設立し、グループ内の主たる新規事業をアドバンストテクノロジー事業として集約しました。これは、成熟事業に比べてリスクを伴い、かつ、スピード経営が求められる新規事業に耐えうるリソースを集約し、仕組みを作り、企業文化を熟成することを念頭に置いた上での組織変更でした。また、アドバンストテクノロジー事業を分離独立させて持株会社である当社の傘下に同様な規模の4つの事業を横並びで配置する体制を作ることで、それぞれの事業会社の経営陣が、独自性、独立性を確保しながら事業を遂行すると共に、経営陣と現場が近くなることにより、より精緻な経営管理が可能となるような体制に整備いたしました。
更に、平成25年2月に(株)イノベックスを設立し、同年4月に産業資材・包材事業の日本ウェーブロック(株)の販売部門を同社に承継させ、編織事業を担うダイオ化成(株)の関連製品の部門も同社に統合しました。これにより、ダイオ化成(株)と日本ウェーブロック(株)の販売面での協業・連携を推進すると共に、両社の企業文化の融合の促進を図りました。また、販売部門を独立させたことで、自社製品だけでなく、顧客のニーズによっては、他社製品や輸入製品の販売も積極的に手掛けることが可能になりました。
上記の組織変更を含め、非上場化以降に実施した施策により、徐々にではありますが、グループの一体感は高まり、同時に新たな企業文化が生まれつつあると認識しています。
(2)新たな事業基盤、仕組みの構築
抜本的な収益構造の改革のため、それぞれの事業分野で取り組みを行いました。
インテリア事業においては、4か所に分散していた工場を、量産品向けの一関工場(岩手県)と、小ロットの機能性壁紙の生産を主体とする成田工場(千葉県)の2か所に統合することで、メーカーとしての根本的な生産体制の差別化を図り、よりコスト競争力を獲得するよう努めました。加えて、平成27年10月には業界最大手の壁紙ブランドメーカーである(株)サンゲツとの資本業務提携を締結し、中長期的な視野に立った、また、壁紙業界のバリューチェーン構造に変革を起こし得る連携の構築を進めました。同時に一関工場を増設し、生産能力を最大限に生かす生産体制の構築に努めました。
編織事業においては、中国大連に子会社を設立し生産工場を立ち上げ、海外進出の足がかりを築きました。また、上述のとおり、平成25年2月に設立した(株)イノベックスとの連携、協業を進めることで、新たなビジネスチャンスの創出に努めました。同時に、産業資材・包材事業においては、(株)イノベックスが他社製品を含む新規開発品の販売や拡販に取り組み、製造に特化した日本ウェーブロック(株)がコスト削減や品質の向上に集中して取り組みました。
アドバンストテクノロジー事業においては、金属調加飾フィルム分野の拡販に努め、海外市場の開拓、製造パートナーの探索、特許の整理等を進めました。また、従来から主力製品であった車両外装用フィルムに加え、新たに車両内装用に適した製品の開発を進め、国内自動車メーカーの採用を広げることができました。この結果生じた販売増加に対応すべく量産体制の構築に努めましたが、当初は製品品質が安定せず、クレーム費用等のコストが膨らむ状況が続いていましたが、下流の加工パートナーとの協力も含めたバリューチェーン全体の品質安定化に取り組みました。一方、PMMA/PC2層シート分野においては、フィーチャーフォンからスマートフォンへの市場環境が劇的に変化する中で、樹脂シートによるスマートフォン前面板の旺盛な需要を取り込むことを考え、平成23年8月に韓国で樹脂シートに対するハードコート事業を展開するTS Development Co., Ltd.を設立し、工場や製造設備、人材に対し経営資源を投下しました。また、平成24年3月には、韓国において、各種電子材料、プラスチック製品等の販売を行うWavelock Korea Co., Ltd.を設立し、韓国市場の開拓を進めました。しかしながら、相応の品質の製品の生産が可能な体制となったものの、受注には至らず、立上げに伴う先行的な損失の計上や製造設備の減損処理等が膨らむ結果となり、平成26年3月にTS Development Co., Ltd.の事業撤退を決定し、大きな損失を計上することとなりました。加えて、微細加工分野等の整理縮小、生産ラインや工場設備の改善を進めた結果、同事業のセグメント損益の黒字化および今後の成長が期待できる状況となってまいりました。
以上の取り組みの結果として、当期および当期以前5年間における当社グループの主要な連結経営指標は、以下のとおり推移いたしました。
| (単位:百万円) |
| 回次 | 第49期 | 第50期 | 第51期 | 第52期 | 第53期 | 第54期 |
| 決算期 | 平成24年 3月期 | 平成25年 3月期 | 平成26年 3月期 | 平成27年 3月期 | 平成28年 3月期 | 平成29年 3月期 |
| 売上高 | 24,217 | 25,238 | 25,787 | 24,656 | 25,055 | 26,886 |
| インテリア | 7,382 | 8,085 | 8,301 | 7,258 | 6,945 | 8,290 |
| 編織 | 7,866 | 7,880 | 7,409 | 7,516 | 8,175 | 8,374 |
| 産業資材・包材 | 7,416 | 7,183 | 8,686 | 9,173 | 8,698 | 9,103 |
| アドバンストテクノロジー | 1,819 | 2,487 | 2,799 | 2,307 | 2,921 | 3,341 |
| その他(調整額等) | △266 | △399 | △1,409 | △1,600 | △1,684 | △2,224 |
| 営業利益(セグメント利益) | 987 | 273 | 205 | 913 | 740 | 1,359 |
| インテリア | 140 | 325 | 373 | 323 | 407 | 533 |
| 編織 | (注)1 1,261 | (注)1 1,057 | 588 | 718 | 577 | 664 |
| 産業資材・包材 | 198 | 75 | 207 | 284 | 237 | 315 |
| アドバンストテクノロジー | (注)2 △315 | (注)2 △817 | (注)2 △650 | △87 | (注)3 △174 | 213 |
| その他(全社・調整額等) | △297 | △367 | △314 | △324 | △307 | △367 |
| 経常利益 | 1,400 | 789 | 721 | 1,339 | 904 | 1,696 |
| 特別損益 | △85 | (注)4 △527 | (注)4 △301 | (注)4 △497 | (注)5 △309 | △129 |
| 税金等調整前当期純利益 | 1,314 | 262 | 420 | 841 | 595 | 1,566 |
| 親会社株主に帰属する 当期純利益 | 759 | 69 | 118 | (注)6 1,031 | 365 | 1,107 |
(注)1.編織事業における第49期および第50期のセグメント利益は、東日本大震災後の省エネ気運と夏場の猛暑により遮光関連商材が特需的に伸張したことによるものです。
2.第49期から第51期のアドバンストテクノロジー事業におけるセグメント利益には、撤退したTS Development Co., Ltd.の立上げに伴う営業損失が含まれており、その金額は第49期が102百万円、第50期が519百万円、第51期が319百万円です。
3.第53期のアドバンストテクノロジー事業におけるセグメント利益には、クレーム補償費247百万円が含まれております。
4.第50期から第52期において、特別損失としてTS Development Co., Ltd.における減損損失の計上および事業撤退に伴う撤退損失等の計上が含まれており、その金額は第50期が613百万円、第51期が233百万円、第52期が483百万円です。
5.第53期において、持分法適用関連会社であったEntire Technology Co., Ltd.株式の譲渡に伴う投資有価証券売却損253百万円を計上しております。
6.第52期において、TS development Co., Ltd.の会社清算により、グループ内貸付金の貸倒損失が税務上の損金として処理されたことなどを主要因として、法人税等調整額△427百万円が計上されたため、親会社株主に帰属する当期純利益が大きく増加しております。
4.再上場について
当社は、安定的且つ継続的な成長を長期的目標とし、中長期的視野に立った事業ポートフォリオの構築を重視し、既存事業の強化と新規事業の確立を車の両輪と捉え、バランスの取れた資源配分・事業展開を目指しております。
非上場化後は上述のとおり事業構造の改革や新規事業の推進、さらには海外展開など中長期的な成長を通じた企業価値向上の実現に向けて、事業を展開してまいりました。
今後の当社グループの成長のシナリオのひとつが海外展開です。海外展開を進めて行く上では、現地企業との提携・協力等が必要不可欠であるため、株式上場企業として、情報公開を含めて市場の信認を得ることが重要な要素であると認識しております。
また、当社グループはこれまでM&Aを成長戦略のひとつに位置付けており、今後も国内、国外問わず、M&Aが有効な手段であると考えられる場合には積極的に実行していく所存です。そのためには、金銭による買収のみならず、株式も含めた様々な手法を組み合わせることが重要であると考えます。加えて、M&Aのみならず、既存事業、新規事業ともに様々な投資を行うことによって成長を加速していく必要があります。その投資の原資として、金融機関からの借入のみではなく、資本市場からの直接調達を可能にすることが重要であると認識しております。
今般、再上場を果たしたことにより、当社グループは更なる成長を目指していく所存です。