有価証券報告書-第13期(令和2年1月1日-令和2年12月31日)
有報資料
1.経営方針
当社は、「教育に変革を、子どもたちに生きる力を。」を企業理念とし、新しい学習体験を届ける事業活動を通じ、学習者に「大人になっても役に立つ真の学力」と「努力をすれば結果が出るという自信」を得られる機会を提供しています。貧困や障がいに苦しむ子どもたち、低学力の生徒、世界中の教育格差という社会課題を、最先端技術で解決する。教育格差を根絶することが当社の使命であると考えています。
当社教材は、従来の進学塾・予備校、人による個別指導塾や映像配信型の教材とは異なり、無学年式で、学習内容のさかのぼり、先取りを学年、学校種を超えて行える(高校生が小学校の復習に取り組むなど)特長を活かし、偏差値30~60と低学力層を含めた幅広いレンジの生徒が利用でき、一人ひとりの学力向上のみならず学習塾・学校全体の学力底上げを目指すコンテンツです。また、幅広い機能を有する学習管理機能により、教員の働き方改革への貢献も可能となります。当社は今後も、教材の開発・提供、教育現場でのEdTech活用のためのコンサルテーションならびに、学習者の学習履歴や解答情報をはじめとするビッグデータの活用や、AIのさらなる活用など、新しい教材やサービスの開発、提供を加速し、当社独自のポジションを確立していきます。
2.経営環境
わが国の教育業界においては、従来からの少子化の流れの中で、企業間競争が激しさを増しており、経営環境は依然厳しい状況で推移しているものの、当社が属するEdTech市場は、新型コロナウイルス感染症対策による全国の小中高校の臨時休校をきっかけとするオンライン学習への関心・注目の急速な高まり、政府のGIGAスクール構想の進捗に伴う教育現場におけるパソコンやタブレット端末の普及により、今後も引き続き市場と顧客層の拡大が見込まれます。EdTech市場の市場規模は、2020年度には1,574億円と見込まれていますが、2026年度には2,430億円に拡大することが予測されています。(出典:「ITナビゲーター2021年版」野村総合研究所 東洋経済新報社EdTech市場規模予測「コンテンツ(教科学習)」)
また、新学習指導要領が2020年度(小学校)、2021年度(中学校)、2022年度(高等学校)に実施され、新しい時代に必要となる資質・能力の育成と、学習評価の充実が図られます。新学習指導要領ではSociety 5.0 の実現を目指し、主体的・対話的で深い学び(「アクティブ・ラーニング」)の視点からの学習過程の改善が行われます。情報活用能力が、言語能力、問題発見・解決能力等と同様に「学習の基盤となる資質・能力」と位置付けられ、「各学校において、コンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段を活用するために必要な環境を整え、これらを適切に活用した学習活動の充実を図る」ことが明記されるなど、今後の学習活動において、積極的にICTを活用することが想定されています。同時に文部科学省からは、「学校における働き方改革に関する緊急対策」が発表され、ICTを活用することにより教員の働き方改革を実現することも期待されています。
文部科学省では、新学習指導要領の実施を見据え「2018年度以降の学校におけるICT環境の整備方針」を取りまとめるとともに、当該整備方針を踏まえ「教育のICT化に向けた環境整備5か年計画(2018~2022年度)」を策定しました。2020年に起こった新型コロナウイルス感染症拡大により、臨時休校が長期化し教育課程の実施に支障が生じる事態に備え、今回のような事態にも対応可能な遠隔教育など、Society 5.0の実現を加速していくこととなりました。そこで、1人1台端末や、家庭でも繋がる通信環境の整備等、GIGAスクール構想におけるハード・ソフト・指導体制を一体とした整備を加速させる方針が発表され、当初のスケジュールでは2023年度中となっていた1人1台端末配備を前倒し、2020年度中の完了を目指すとしています。
一方、経済産業省では2020年度にEdTech導入実証事業が進められました。EdTech導入実証事業は、EdTechを学校などに導入実証する事業者に費用の一部を補助する制度で、学校や教育委員会などの費用負担を軽減することによりEdTechを導入しやすくし、教育のイノベーションにつなげることを目的とした事業であり、当社も採択されています。このように、教育のICT化に向けた取り組みはいっそう加速しており、新型コロナウイルス感染症拡大による学校休校も契機の一つとなり、教育現場へのEdTech導入がさらに広がっていくことが予想されています。
3.対処すべき課題
当社は、EdTechスタートアップ企業として、AI×アダプティブラーニング機能を有した「すらら」等を通じて教育現場のICT化を進めてまいりました。コロナ禍による緊急事態宣言下で、全国の小中高校が一斉休校になったことに加え、GIGAスクール構想の加速及びEdTech導入補助金などの政府支援対策により教育現場でのICT化が進捗しています。そのような中で、大手企業による新サービスの開発や、新たなEdTech企業の台頭により競争環境は厳しくなることが考えられます。今後他社との差別化を図りつつ更に事業を拡大させ、新しい付加価値を創出していく上で、対処すべき課題として以下の項目に取り組んでおります。なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において、当社が判断したものであります。
① コンテンツの拡充
当社は、2020年3月に小・中学校の理科・社会コンテンツの提供を開始し、「国語・算数/数学・英語・理科・社会」の主要5科目を網羅するAI×アダプティブなeラーニングコンテンツを提供しております。2020年8月には、生徒画面を全面リニューアルし、AI学習リコメンデーション機能とゲーミフィケーション機能を拡充しました。さらに、2021年2月には英語4技能に対応する、AIによるスピーキング評価機能を搭載しました。今後も多様化する教育ニーズに対応すべく、新しいコンテンツを企画し拡充してまいります。自社開発以外にも教育関連企業等と協働して、新しい技術を活用し、新しい分野でのコンテンツの制作に邁進してまいります。
② 公立学校マーケットの開拓
新型コロナウイルス感染症拡大に伴う休校を経験し、教育現場において「学びを止めない」ためのオンライン学習の重要性が増しています。政府は、2019年度より1人1台の学習者用端末と高速大容量の通信ネットワークを整備する GIGAスクール構想を推進していますが、新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、その取り組みが加速しています。2020年8月には、経済産業省によるEdTech導入 補助金交付が決定し、当社は公立小中学校を中心とする616校、約21万人の学習 をサポートしました。2021年度以降も教育のICT化がさらに加速するものと思われます。さらなるマーケットニーズの拡大に対応するため、当社はこれまで以上に大手メーカーや販社などとの連携を深め、引き続き公立学校のマーケット開拓に積極的に取り組んでまいります。
③ BtoCマーケットの開拓
当社が今後さらに成長していくために、BtoCマーケットのさらなる開拓と深 耕の重要性を認識しております。当社のBtoCマーケットのメイン顧客は、発達障がい・学習障がいや不登校など深刻な悩みを抱える層です。当社では保護者の悩みを解決するため「すららコーチ」による保護者向けコーチングや、保護者向け勉強ペアレント・トレーニングならびに心理・教育アセスメントサービ スの提供を行っています。また、不登校生がICT教材を活用することにより出席認定を得られる制度の普及啓発活動に力を入れています。今後これらの商品・サービスのさらなる拡充や口コミを広げるための広報PR活動に引き続き注力してまいります。
④ 海外マーケットの開拓
当社の顧客は日本国内の塾や学校が大半をしめております。当社が今後も成長を続け、また当社が企業ミッションとして掲げる「人生を切り開く力をすべての子どもたちに」を実現するために、EdTechサービスの特徴を活かし、当社サービス「Surala Ninja!」を海外で積極的に展開してまいります。そのために、スリランカとインドネシア共和国での事業拡大を引き続き行うとともに「Surala Ninja!」のコンテンツの拡充に努めてまいります。また、フィリピンやその他の国などにおいて、積極的に日本の大手企業や現地企業などとの連携を強化し、開拓してまいります。
⑤ 開発体制の構築
EdTechコンテンツの技術革新のスピードは、非常に早く、新たなサービスや競合他社が続々と現れることが予想されます。当社が、競合企業とのサー ビスの差別化、競争優位性の確立を図るためには、迅速な開発体制の構築が不可欠となります。当社は、これらを実現するために、社内開発スタッフの技術向上、外部からの優秀な人材の採用、最先端の技術動向の調査、ビッグデータを活かした商品開発等に継続的に取り組んでまいります。
⑥ 営業力の強化
当社は、小規模組織であることから少数精鋭の人員体制で運営されており、営業部門は、学習塾や学校法人等に対する各種経営支援を通じて蓄積されたノウハウを活かした企画及び提案により、営業活動を推進してまいりました。今後も継続的に事業を拡大し、受注の獲得機会を増大させていくために、営業力を強化し、営業人員を早期育成するとともに、他社との連携により販路を拡大する方針であります。具体的には、既存営業人員の育成、営業人員の新規採用の継続、教育研修制度の拡充、営業ツールやマニュアル等の整備、社内ナレッジ・ノウハウの蓄積、また、文教マーケットに対する強力な販路を持つ教育機 器メーカーや卸売業等との連携等により、営業力の強化を図ってまいります。
⑦ 内部管理体制及びコーポレート・ガバナンスの強化
当社のさらなる事業の拡大、継続的な成長のためには、内部管理体制及びコーポレート・ガバナンスの一層の強化が重要な課題であると認識しております。 当社は、監査等委員会及び内部監査部門、任意の諮問機関である指名委員会・ 報酬委員会、ならびに会計監査人との連携、定期的な内部監査の実施、経営陣や従業員に対する研修の実施等を通じて、内部管理体制の強化に取り組んでいく方針です。
なお、2021年2月22日に情報管理体制の強化のためにISMSを取得しております(認証番号IS740730)。
⑧ 新型コロナウイルス感染症拡大への対応
2020年3月、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う政府からの臨時休校要請により、全国の小中高校が一斉に休校となりました。休校をきっかけとして、教育現場におけるICT化に対する期待が高まっています。このような中、当社は子どもたちの「学びを止めない」ため、2020年3月から2020年5月まで、休校した小中高校に約15万IDを無償で発行しました。 営業活動においては、対面でのセミナーや商談が制限されるなど一定の影響はあったものの、オンラインセミナーやオンライン商談の積極的な活用を実施しています。そのため、新型コロナウイルス感染症拡大が当社の財政状態及び経営成績に与えるネガティブな影響は現時点においては限定的なものであります。しかしながら、先行きについては不透明な部分もありますので継続的に注視してまいります。 当社では、従業員の健康と安全の確保を第一に考え、在宅勤務やオンラインツールを活用した打合せの推奨等、感染リスク低減のための措置を実施しております。