有価証券報告書-第3期(2022/01/01-2022/12/31)
有報資料
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当社グループの企業理念の根幹にある価値観は、「しなやかに変化し、独創の価値を生み出し提供する」ことにあります。
「しなやかに変化する」とは、
・既存の価値観に固執せず積極果敢に新しい価値観を取り込むこと、
・変化をいとわず変化の中にこそ勝機を見出せること、
・柔軟な軌道修正や大胆な創造的破壊ができ、それらに応じて自らを再定義できること
「独創の価値を生み出し提供する」とは、
・既成概念にとらわれることなく、顧客ニーズの本質を見極め、そこに一歩でも近づける商品サービスの創造と提供を追求し続けること、
・顧客の要望に応えるだけでなく、確信をもってその本質に顧客を導くこと
であります。
当社グループが企業理念に謳うこの「しなやかに変化しながら、独創の価値を生み出し提供する」という価値観は、当社グループの黎明期でこそ“生き残る術”でありましたが、それは“成長を支える人と組織のあり方”へ、そして“未来に受け継ぐべき企業文化”へと着実に進化してまいりました。
そして、この価値観を実践することによって当社グループが果たすべき使命は、事業を通じて人と社会の活力ある発展に貢献することと考えております。
創業以来、130年超の期間において、当初は染物業とその技術の海外輸出をもって、また近年においては収益不動産とそれを取り巻く付加価値の組み合わせの提供によって、当社グループはこの使命を果たし続けてきたと自負しております。そして今、すべての企業が向き合う新型コロナウイルス感染拡大による経営環境危機は、当社グループにとりましてまさに「しなやかに変化する」ことができるかどうかの試金石になるであろうと認識いたしております。
(2) 経営環境
① 当期の経営環境
当連結会計年度における国内経済は、依然として先行き不透明な状況に終始しました。期中においては、世界的な金融引締めや国際紛争に起因する金融資本市場の変動、物価上昇、サプライチェーンにおける制約、急激な為替変動など、経済環境の目まぐるしい変化が相次いで発生し、今後も予断を許さない状況が継続するものとみられます。新型コロナウイルス感染症に関しては、拡大防止に配慮した「新しい生活様式」への適応が進んだものの、引き続き感染再拡大には注視する必要があります。
当社グループの主要な事業領域である都心部の収益不動産売買市場は、低金利などの資金調達環境を背景として好調に推移しております。当社グループが注力する10億~20億円規模のオフィス用・居住用収益不動産に対しては、安定的なキャッシュ・フローを求める投資家を中心として底堅い需要が存在し、取引価格が上昇傾向にあります。
東京都心5区のオフィスビルの賃貸市場は、ハイクラスオフィスを中心に平均賃料の下落が続き、空室率も横ばいで推移していることから、軟調な状況となっております。一方で、「ウィズコロナ」においてオフィスに求める価値・ニーズが変化したことにより、トレンドを捉えた仕様の中小型オフィスには底堅い需要が存在しています。
また、東京都内の居住用マンションの賃貸市場は安定的な需要に下支えされ、平均家賃が上昇しており堅調に推移しております。
当社グループの拠点がある米国のロサンゼルスにおいては、政策金利の大幅な引上げにより資金調達環境の様相が変化したものの、収益不動産売買市場はインフレに伴う平均家賃の上昇を背景として好調に推移しております。
このような事業環境のもと、当社グループの主要な事業である収益不動産販売事業は、投資家・入居者のニーズを的確に捉える「商品企画力」を軸として、仕入・販売を一体的かつ戦略的に推進してまいりました。仕入れに関しては、ニーズに沿った適切な商品企画を立案し、収益性の向上を見据えることで、過熱する競争環境においても、積極的な推進が可能となりました。その結果、当期末の収益不動産残高は過去最高水準を更新し、大幅に拡大しております。また、販売に関しては、物件の仕入れ時から“有望な買い手ニーズ”を想定して活動することで、効率性・利益率ともに向上し、当社グループの業績を牽引いたしました。
海外不動産事業は、ロサンゼルスの収益不動産における仕入・商品化・販売サイクルの回復に注力いたしました。また、現地パートナーとの共同事業である分譲タウンハウス開発や物件オーナーの売却仲介にも積極的に取り組み、事業拡充が進んでおります。
② 今後の見通し
今後の見通しにつきましては、金融資本市場の変動や国際情勢、新型コロナウイルス感染症の影響により、先行き不透明な経済環境が続くと考えられます。特に、不動産売買市場は金融資本市場の影響を強く受ける性質を持つため、国内においても金融引締め局面が到来する可能性を考慮して事業戦略を遂行していく、難しい局面が想定されます。
当社グループの主力事業である収益不動産販売事業は、足元の過熱化した競争環境に対応すべく、商品企画力の強化を進め、利用者ニーズへの適合や環境認証の取得を積極的に進めてまいりました。こうした商品企画力は、今後の不確実性の高い状況でも有効かつ再現性があり、当社の競争優位性の源泉になると考えております。「第1次中期経営計画」に掲げる目標達成に向けては、収益不動産販売事業における商品企画力を軸にした仕入・販売の一体的推進を継続して進めてまいります。
「第1次中期経営計画」最終年度である2023年12月期の連結業績計画は、下表の通り、売上高40,000百万円、EBITDA2,730百万円、経常利益1,870百万円、税引前当期純利益2,000百万円という目標を掲げています。2023年12月期はその達成に向けて、上記の収益不動産販売事業の積極的推進に加えて、様々な観点において蓄積を進めることが肝要であると考えております。すなわち、マーケティング力、販売ネットワーク、DX、そして何より人的資本投資など、来るべき飛躍のための蓄積を積極的に進めてまいります。
この他、当社グループは事業活動を通じてサステナブルな社会の実現に貢献することを目指しております。当社グループの主力事業は、不動産のもつポテンシャルを最大限に活かし、人々の生活や社会活動の活性化を促すという点において、社会的意義を有する「不動産再生事業」です。さらに、マテリアリティ(重要な経営課題)への取組みを推進することで、当社グループが社会に提供する価値を極大化し、企業価値の向上に努めてまいります。
(注) 当社グループでは、当連結会計年度の経営目標を「業績計画」として開示しております。「業績計画」は経営として目指すターゲットであり、いわゆる「業績の予想」または「業績の見通し」とは異なるものであります。なお、業績の予想については、その時点におけるグループ全体の確度の高い情報および合理的であると判断される情報を基に、各四半期における進捗の見通しを「フォーキャスト」として適時更新し開示しております。
(3) 対処すべき課題
① 第1次中期経営計画で目指す姿
当社グループは、2021年5月13日付公表の「第1次中期経営計画」(2021年12月期~2023年12月期)において目指す将来像として下図の4点を掲げております。

《「第1次中期経営計画」(2021年12月期~2023年12月期)より抜粋》
a.SDGs経営の推進
当社グループは、サステナブルな社会の実現への貢献と持続的な企業価値の向上に向けた取組みを重要な経営課題と認識し、取締役会での議論を経て、4つのマテリアリティを特定しました。

《マテリアリティ概念図(当社コーポレートサイトより)》
各マテリアリティの考え方及び目指す姿は以下のとおりです。
イ. 活かしてつなぐ不動産再生
世界的な社会環境の変化や危機に対し、当社グループが主力とする収益不動産販売事業を通じた社会課題の解決を目指します。
<目指す姿>・不動産と地域社会の活性化に寄与し、ステークホルダーの期待に応える。
・不動産の再生事業を通じて、より環境と社会にやさしい不動産へ昇華させ、循環型社会に寄与する。
ロ. 働きがいとイノベーションの創出
人的資本の強化や革新的技術の追求によって競争優位の源泉を確立し、当社グループの持続的かつ加速度的な成長の促進と、社会への提供価値の最大化を目指します。
<目指す姿>・多様な人材が個性を発揮し、自ら進化し続けられる組織文化を醸成することで、企業成長を加速する。
・社内外の多様な知見やテクノロジーを柔軟に組み合わせることで、社会に価値を提供し続ける。
ハ. 安心と安全の提供
時代とともに変化するステークホルダーのニーズへ適合し、信頼を獲得し続けることを目指します。
<目指す姿>・ステークホルダーとの適切なコミュニケーションを継続し、社会的信頼を構築し続ける。
・高い防災性を備えた不動産の提供によって、安心・安全な地域社会の実現に寄与する。
ニ. 企業価値を高めるガバナンス強化
激しい変化に柔軟に適応し、持続的に企業価値を向上させるべく、ガバナンス体制の継続強化とステークホルダーとのパートナーシップの発揮を目指します。
<目指す姿>・意思決定の迅速化と透明性向上を図り、社会・環境変化に柔軟に対応していくことをもって企業の持続性を高め、あらゆるステークホルダーの期待に応える。
・人権尊重を含めたコンプライアンス意識の高い組織風土を醸成し、ステークホルダーから信頼を獲得し続ける。
なお、当社グループのサステナビリティに関する詳細情報はコーポレートサイトをご確認ください。
(https://www.adwg.co.jp/sustainability/)
b.「複利の経営」への転換
当社グループは、超過利潤を持続的に実現し続ける「複利の経営」に転換するべく、ROIC(投下資本利益率)がWACC(加重平均資本コスト)を上回る状態を目指しております。そのため、Debt性の資金調達手段の拡充を企図し、クラウド・ファンディングや銀行保証付き私募債の発行を積極的に推進しております。

《「第1次中期経営計画」(2021年12月期~2023年12月期)における超過利潤の推移》
c.「プライム市場」への上場
当社は、2022年4月に東京証券取引所による市場再編に伴って「プライム市場」へ移行いたしました。一方で、移行基準日時点(2021年6月30日)において、当該市場の上場維持基準の内、流通株式時価総額について基準を充たしていないことから、上場維持基準の適合に向けた計画書を開示しております。計画期間は「第1次中期経営計画」(2021年12月期~2023年12月期)の結果が公表される2024年12月期としており、同計画の達成を通じて超過利潤を実現し「複利の経営」に転換することで、企業価値の増大を企図しております。
d.「5年後3割」への通過点
当社グループは、イノベーションを可能にし、既存の延長線上にない成長を実現するべく、既存事業の「深化」と新規事業の「探索」を両立させた「両利き」の経営を目指し、2025年12月期における“脱”不動産事業(将来的に第2の柱とする不動産領域以外の事業)収益の割合を3割に到達させる長期目標を掲げてまいりました。そのための手段の一つであるコーポレート・ベンチャー・キャピタル事業(CVC事業)の推進を通じて、今般新たに「ファイナンス・アレンジメント事業」を開始しております(2022年8月26日公表)。今後もDXやM&A等を活用し、新たな価値創造に取り組んでまいります。

《チャールズ・A. オライリー、マイケル・L. タッシュマン(著)『両利きの経営』、東洋経済新報社、2019》
② 資本コストについての考え方
WACC(加重平均資本コスト)を引き下げる観点からは、社債に代表される負債性資金の調達が有効と判断しておりますが、一方で投資適格となりうる格付けの取得には、一定以上の純資産額、時価総額が前提となるところであり、ガイダンスで示した規模感はその最低目安であると考えております。
2021年5月13日公表の「第1次中期経営計画(2021年12月期~2023年12月期)」では、「超過利潤を創出する経営」「時価総額の向上」の実現を基本方針の1つとしており、WACC(加重平均資本コスト)の算定には、一定の前提として、株主資本コスト8%、有利子負債コスト1.5%、税率35%を用いております。資本資産価格モデルから導き出される株主資本コスト、いわゆるCAPMについては、自社で算定し把握につとめてまいりますが、WACC(加重平均資本コスト)の算定には用いません。なお、長期的な企業経営の観点からは、ガイダンスで示した規模感へ至る成長過程において資金需要に応じて、柔軟にエクイティ・ファイナンスの検討、実施を必要とすることがあり、WACC(加重平均資本コスト)は一定ではありません。当社グループが投資家や株主の皆様の期待に応えるためには、中長期的な成長の実現が最も重要であると認識し、進捗を明瞭に開示し、当社への投資に際して期待できる収益の検討材料を提供してまいります。
<当社グループの目指す規模感(ガイダンス)>
※ガイダンスの実現スケジュールに時間軸は置かないものとしております。
③ 継続して対処すべき課題
a. 好循環事業サイクルへの転換
当社グループの主力事業である収益不動産販売事業は、一定量の優良な収益不動産残高を保有することにより、不動産の相場と顧客ニーズとの双方を睨みながらコントローラブルに販売を展開し必要な収益を確保すると同時に、保有する収益不動産から得る賃料収入によって収益の安定化を生み出すビジネスモデルです。これに対し現状は、「第1次中期経営計画」の達成に向けてアグレッシブな拡大基調にあるため、残高拡充のための仕入れが収益確保のための販売を追従する状態にあります。通常期にも増して積極的な仕入れを展開することにより、好循環の事業サイクルに転換する必要があります。
b. 資金調達手段の多様化
当社グループは、収益不動産販売事業のバリエーションとして、不動産小口化商品事業や開発事業などを国内外において積極的にラインナップし、事業全体の拡大を図っております。いずれも旺盛な資金需要があるため、金融機関からの借入を中心としつつクラウド・ファンディングやSTO※を活用するなど、資金調達手段をさらに多様化する必要があります。また継続的な超過利潤の創出のためには、EquityとDebtの最適なバランスを検討しつつ資本効率を高める必要があることから、資金調達手段の多様化はますます重要となってまいります。
※ STO…Security Token Offering:ブロックチェーンを活用したデジタル証券による資金調達
c. 人的資本投資の強化
複雑化する事業環境や加速する変化の中にあり、当社グループが更なる成長を果たしていくためには、経営戦略に合致した人的資本への投資が必要不可欠です。当社は予てより新卒採用に注力してまいりましたが、こうしたファーストキャリア人材の早期戦力化をはじめ、中堅社員のマネジメント力強化、また幹部候補社員の選抜と育成など、すべての階層において適切な教育プログラムを導入し、成長を促進する必要があります。また多様な人材が最大限の能力を発揮するための組織文化の醸成や職場環境の整備も、継続して実施する必要があります。
d. DX推進の加速
当社グループが「第1次中期経営計画」を達成し、さらにそこから先も持続的に成長を果たしていくためには、事業や経営のスピードと効率を格段に高めること、すなわち生産性の向上が喫緊の課題です。DX(デジタル・トランスフォーメーション)の活用はそのキーとなるものであり、優先度を高めかつ全社横断的に取り組む必要があります。またDXはスピードや効率化といったオペレーション改革に留まらず、それを活用した新たな事業機会の創出や獲得まで視野に入れるべきであり、「収益に寄与するDX」を掲げ積極的に取り組んでまいります。
e. 新たな事業の柱の構築
当社グループは国内における収益不動産販売事業を主力として成長をしてまいりましたが、今後それに匹敵する第二・第三の事業の柱を構築する必要があります。既存事業の延長においては、海外事業や不動産小口化商品事業の成長に期待し経営資源を相応に充当してまいります。加えて既存の不動産事業領域を超えた事業を構築するために、CVC事業やM&A等の手法を果敢に活用し、新たな事業機会の創出を企図します。そうした手法を活用しやすくするという狙いで、すでに持株会社体制への移行を実施しており、今後はその具現化を進めてまいります。
(1) 経営方針
当社グループの企業理念の根幹にある価値観は、「しなやかに変化し、独創の価値を生み出し提供する」ことにあります。
「しなやかに変化する」とは、
・既存の価値観に固執せず積極果敢に新しい価値観を取り込むこと、
・変化をいとわず変化の中にこそ勝機を見出せること、
・柔軟な軌道修正や大胆な創造的破壊ができ、それらに応じて自らを再定義できること
「独創の価値を生み出し提供する」とは、
・既成概念にとらわれることなく、顧客ニーズの本質を見極め、そこに一歩でも近づける商品サービスの創造と提供を追求し続けること、
・顧客の要望に応えるだけでなく、確信をもってその本質に顧客を導くこと
であります。
当社グループが企業理念に謳うこの「しなやかに変化しながら、独創の価値を生み出し提供する」という価値観は、当社グループの黎明期でこそ“生き残る術”でありましたが、それは“成長を支える人と組織のあり方”へ、そして“未来に受け継ぐべき企業文化”へと着実に進化してまいりました。
そして、この価値観を実践することによって当社グループが果たすべき使命は、事業を通じて人と社会の活力ある発展に貢献することと考えております。
創業以来、130年超の期間において、当初は染物業とその技術の海外輸出をもって、また近年においては収益不動産とそれを取り巻く付加価値の組み合わせの提供によって、当社グループはこの使命を果たし続けてきたと自負しております。そして今、すべての企業が向き合う新型コロナウイルス感染拡大による経営環境危機は、当社グループにとりましてまさに「しなやかに変化する」ことができるかどうかの試金石になるであろうと認識いたしております。
(2) 経営環境
① 当期の経営環境
当連結会計年度における国内経済は、依然として先行き不透明な状況に終始しました。期中においては、世界的な金融引締めや国際紛争に起因する金融資本市場の変動、物価上昇、サプライチェーンにおける制約、急激な為替変動など、経済環境の目まぐるしい変化が相次いで発生し、今後も予断を許さない状況が継続するものとみられます。新型コロナウイルス感染症に関しては、拡大防止に配慮した「新しい生活様式」への適応が進んだものの、引き続き感染再拡大には注視する必要があります。
当社グループの主要な事業領域である都心部の収益不動産売買市場は、低金利などの資金調達環境を背景として好調に推移しております。当社グループが注力する10億~20億円規模のオフィス用・居住用収益不動産に対しては、安定的なキャッシュ・フローを求める投資家を中心として底堅い需要が存在し、取引価格が上昇傾向にあります。
東京都心5区のオフィスビルの賃貸市場は、ハイクラスオフィスを中心に平均賃料の下落が続き、空室率も横ばいで推移していることから、軟調な状況となっております。一方で、「ウィズコロナ」においてオフィスに求める価値・ニーズが変化したことにより、トレンドを捉えた仕様の中小型オフィスには底堅い需要が存在しています。
また、東京都内の居住用マンションの賃貸市場は安定的な需要に下支えされ、平均家賃が上昇しており堅調に推移しております。
当社グループの拠点がある米国のロサンゼルスにおいては、政策金利の大幅な引上げにより資金調達環境の様相が変化したものの、収益不動産売買市場はインフレに伴う平均家賃の上昇を背景として好調に推移しております。
このような事業環境のもと、当社グループの主要な事業である収益不動産販売事業は、投資家・入居者のニーズを的確に捉える「商品企画力」を軸として、仕入・販売を一体的かつ戦略的に推進してまいりました。仕入れに関しては、ニーズに沿った適切な商品企画を立案し、収益性の向上を見据えることで、過熱する競争環境においても、積極的な推進が可能となりました。その結果、当期末の収益不動産残高は過去最高水準を更新し、大幅に拡大しております。また、販売に関しては、物件の仕入れ時から“有望な買い手ニーズ”を想定して活動することで、効率性・利益率ともに向上し、当社グループの業績を牽引いたしました。
海外不動産事業は、ロサンゼルスの収益不動産における仕入・商品化・販売サイクルの回復に注力いたしました。また、現地パートナーとの共同事業である分譲タウンハウス開発や物件オーナーの売却仲介にも積極的に取り組み、事業拡充が進んでおります。
② 今後の見通し
今後の見通しにつきましては、金融資本市場の変動や国際情勢、新型コロナウイルス感染症の影響により、先行き不透明な経済環境が続くと考えられます。特に、不動産売買市場は金融資本市場の影響を強く受ける性質を持つため、国内においても金融引締め局面が到来する可能性を考慮して事業戦略を遂行していく、難しい局面が想定されます。
当社グループの主力事業である収益不動産販売事業は、足元の過熱化した競争環境に対応すべく、商品企画力の強化を進め、利用者ニーズへの適合や環境認証の取得を積極的に進めてまいりました。こうした商品企画力は、今後の不確実性の高い状況でも有効かつ再現性があり、当社の競争優位性の源泉になると考えております。「第1次中期経営計画」に掲げる目標達成に向けては、収益不動産販売事業における商品企画力を軸にした仕入・販売の一体的推進を継続して進めてまいります。
「第1次中期経営計画」最終年度である2023年12月期の連結業績計画は、下表の通り、売上高40,000百万円、EBITDA2,730百万円、経常利益1,870百万円、税引前当期純利益2,000百万円という目標を掲げています。2023年12月期はその達成に向けて、上記の収益不動産販売事業の積極的推進に加えて、様々な観点において蓄積を進めることが肝要であると考えております。すなわち、マーケティング力、販売ネットワーク、DX、そして何より人的資本投資など、来るべき飛躍のための蓄積を積極的に進めてまいります。
この他、当社グループは事業活動を通じてサステナブルな社会の実現に貢献することを目指しております。当社グループの主力事業は、不動産のもつポテンシャルを最大限に活かし、人々の生活や社会活動の活性化を促すという点において、社会的意義を有する「不動産再生事業」です。さらに、マテリアリティ(重要な経営課題)への取組みを推進することで、当社グループが社会に提供する価値を極大化し、企業価値の向上に努めてまいります。
| 2022年12月期(実績) | 2023年12月期(計画) | |||
| 売上高 | 27,856 | 百万円 | 40,000 | 百万円 |
| EBITDA | 1,515 | 百万円 | 2,730 | 百万円 |
| 経常利益 | 953 | 百万円 | 1,870 | 百万円 |
| 税引前利益 | 910 | 百万円 | 2,000 | 百万円 |
(注) 当社グループでは、当連結会計年度の経営目標を「業績計画」として開示しております。「業績計画」は経営として目指すターゲットであり、いわゆる「業績の予想」または「業績の見通し」とは異なるものであります。なお、業績の予想については、その時点におけるグループ全体の確度の高い情報および合理的であると判断される情報を基に、各四半期における進捗の見通しを「フォーキャスト」として適時更新し開示しております。
(3) 対処すべき課題
① 第1次中期経営計画で目指す姿
当社グループは、2021年5月13日付公表の「第1次中期経営計画」(2021年12月期~2023年12月期)において目指す将来像として下図の4点を掲げております。

《「第1次中期経営計画」(2021年12月期~2023年12月期)より抜粋》
a.SDGs経営の推進
当社グループは、サステナブルな社会の実現への貢献と持続的な企業価値の向上に向けた取組みを重要な経営課題と認識し、取締役会での議論を経て、4つのマテリアリティを特定しました。

《マテリアリティ概念図(当社コーポレートサイトより)》
各マテリアリティの考え方及び目指す姿は以下のとおりです。
イ. 活かしてつなぐ不動産再生
世界的な社会環境の変化や危機に対し、当社グループが主力とする収益不動産販売事業を通じた社会課題の解決を目指します。
<目指す姿>・不動産と地域社会の活性化に寄与し、ステークホルダーの期待に応える。
・不動産の再生事業を通じて、より環境と社会にやさしい不動産へ昇華させ、循環型社会に寄与する。
ロ. 働きがいとイノベーションの創出
人的資本の強化や革新的技術の追求によって競争優位の源泉を確立し、当社グループの持続的かつ加速度的な成長の促進と、社会への提供価値の最大化を目指します。
<目指す姿>・多様な人材が個性を発揮し、自ら進化し続けられる組織文化を醸成することで、企業成長を加速する。
・社内外の多様な知見やテクノロジーを柔軟に組み合わせることで、社会に価値を提供し続ける。
ハ. 安心と安全の提供
時代とともに変化するステークホルダーのニーズへ適合し、信頼を獲得し続けることを目指します。
<目指す姿>・ステークホルダーとの適切なコミュニケーションを継続し、社会的信頼を構築し続ける。
・高い防災性を備えた不動産の提供によって、安心・安全な地域社会の実現に寄与する。
ニ. 企業価値を高めるガバナンス強化
激しい変化に柔軟に適応し、持続的に企業価値を向上させるべく、ガバナンス体制の継続強化とステークホルダーとのパートナーシップの発揮を目指します。
<目指す姿>・意思決定の迅速化と透明性向上を図り、社会・環境変化に柔軟に対応していくことをもって企業の持続性を高め、あらゆるステークホルダーの期待に応える。
・人権尊重を含めたコンプライアンス意識の高い組織風土を醸成し、ステークホルダーから信頼を獲得し続ける。
なお、当社グループのサステナビリティに関する詳細情報はコーポレートサイトをご確認ください。
(https://www.adwg.co.jp/sustainability/)
b.「複利の経営」への転換
当社グループは、超過利潤を持続的に実現し続ける「複利の経営」に転換するべく、ROIC(投下資本利益率)がWACC(加重平均資本コスト)を上回る状態を目指しております。そのため、Debt性の資金調達手段の拡充を企図し、クラウド・ファンディングや銀行保証付き私募債の発行を積極的に推進しております。

《「第1次中期経営計画」(2021年12月期~2023年12月期)における超過利潤の推移》
c.「プライム市場」への上場
当社は、2022年4月に東京証券取引所による市場再編に伴って「プライム市場」へ移行いたしました。一方で、移行基準日時点(2021年6月30日)において、当該市場の上場維持基準の内、流通株式時価総額について基準を充たしていないことから、上場維持基準の適合に向けた計画書を開示しております。計画期間は「第1次中期経営計画」(2021年12月期~2023年12月期)の結果が公表される2024年12月期としており、同計画の達成を通じて超過利潤を実現し「複利の経営」に転換することで、企業価値の増大を企図しております。
d.「5年後3割」への通過点
当社グループは、イノベーションを可能にし、既存の延長線上にない成長を実現するべく、既存事業の「深化」と新規事業の「探索」を両立させた「両利き」の経営を目指し、2025年12月期における“脱”不動産事業(将来的に第2の柱とする不動産領域以外の事業)収益の割合を3割に到達させる長期目標を掲げてまいりました。そのための手段の一つであるコーポレート・ベンチャー・キャピタル事業(CVC事業)の推進を通じて、今般新たに「ファイナンス・アレンジメント事業」を開始しております(2022年8月26日公表)。今後もDXやM&A等を活用し、新たな価値創造に取り組んでまいります。

《チャールズ・A. オライリー、マイケル・L. タッシュマン(著)『両利きの経営』、東洋経済新報社、2019》
② 資本コストについての考え方
WACC(加重平均資本コスト)を引き下げる観点からは、社債に代表される負債性資金の調達が有効と判断しておりますが、一方で投資適格となりうる格付けの取得には、一定以上の純資産額、時価総額が前提となるところであり、ガイダンスで示した規模感はその最低目安であると考えております。
2021年5月13日公表の「第1次中期経営計画(2021年12月期~2023年12月期)」では、「超過利潤を創出する経営」「時価総額の向上」の実現を基本方針の1つとしており、WACC(加重平均資本コスト)の算定には、一定の前提として、株主資本コスト8%、有利子負債コスト1.5%、税率35%を用いております。資本資産価格モデルから導き出される株主資本コスト、いわゆるCAPMについては、自社で算定し把握につとめてまいりますが、WACC(加重平均資本コスト)の算定には用いません。なお、長期的な企業経営の観点からは、ガイダンスで示した規模感へ至る成長過程において資金需要に応じて、柔軟にエクイティ・ファイナンスの検討、実施を必要とすることがあり、WACC(加重平均資本コスト)は一定ではありません。当社グループが投資家や株主の皆様の期待に応えるためには、中長期的な成長の実現が最も重要であると認識し、進捗を明瞭に開示し、当社への投資に際して期待できる収益の検討材料を提供してまいります。
<当社グループの目指す規模感(ガイダンス)>
| 目安値 | |
| 連結純資産 | 250億円 |
| 連結社員数 | 200名 |
| 時価総額 | 350~400億円 |
※ガイダンスの実現スケジュールに時間軸は置かないものとしております。
③ 継続して対処すべき課題
a. 好循環事業サイクルへの転換
当社グループの主力事業である収益不動産販売事業は、一定量の優良な収益不動産残高を保有することにより、不動産の相場と顧客ニーズとの双方を睨みながらコントローラブルに販売を展開し必要な収益を確保すると同時に、保有する収益不動産から得る賃料収入によって収益の安定化を生み出すビジネスモデルです。これに対し現状は、「第1次中期経営計画」の達成に向けてアグレッシブな拡大基調にあるため、残高拡充のための仕入れが収益確保のための販売を追従する状態にあります。通常期にも増して積極的な仕入れを展開することにより、好循環の事業サイクルに転換する必要があります。
b. 資金調達手段の多様化
当社グループは、収益不動産販売事業のバリエーションとして、不動産小口化商品事業や開発事業などを国内外において積極的にラインナップし、事業全体の拡大を図っております。いずれも旺盛な資金需要があるため、金融機関からの借入を中心としつつクラウド・ファンディングやSTO※を活用するなど、資金調達手段をさらに多様化する必要があります。また継続的な超過利潤の創出のためには、EquityとDebtの最適なバランスを検討しつつ資本効率を高める必要があることから、資金調達手段の多様化はますます重要となってまいります。
※ STO…Security Token Offering:ブロックチェーンを活用したデジタル証券による資金調達
c. 人的資本投資の強化
複雑化する事業環境や加速する変化の中にあり、当社グループが更なる成長を果たしていくためには、経営戦略に合致した人的資本への投資が必要不可欠です。当社は予てより新卒採用に注力してまいりましたが、こうしたファーストキャリア人材の早期戦力化をはじめ、中堅社員のマネジメント力強化、また幹部候補社員の選抜と育成など、すべての階層において適切な教育プログラムを導入し、成長を促進する必要があります。また多様な人材が最大限の能力を発揮するための組織文化の醸成や職場環境の整備も、継続して実施する必要があります。
d. DX推進の加速
当社グループが「第1次中期経営計画」を達成し、さらにそこから先も持続的に成長を果たしていくためには、事業や経営のスピードと効率を格段に高めること、すなわち生産性の向上が喫緊の課題です。DX(デジタル・トランスフォーメーション)の活用はそのキーとなるものであり、優先度を高めかつ全社横断的に取り組む必要があります。またDXはスピードや効率化といったオペレーション改革に留まらず、それを活用した新たな事業機会の創出や獲得まで視野に入れるべきであり、「収益に寄与するDX」を掲げ積極的に取り組んでまいります。
e. 新たな事業の柱の構築
当社グループは国内における収益不動産販売事業を主力として成長をしてまいりましたが、今後それに匹敵する第二・第三の事業の柱を構築する必要があります。既存事業の延長においては、海外事業や不動産小口化商品事業の成長に期待し経営資源を相応に充当してまいります。加えて既存の不動産事業領域を超えた事業を構築するために、CVC事業やM&A等の手法を果敢に活用し、新たな事業機会の創出を企図します。そうした手法を活用しやすくするという狙いで、すでに持株会社体制への移行を実施しており、今後はその具現化を進めてまいります。