有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2020/11/13 15:00
【資料】
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【項目】
122項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において、当社が判断したものであります。
(1) 経営方針
当社は、「未来のゲームチェンジャーの『まずやってみよう』をカタチに」という経営ビジョンを掲げ、当社の有するAI・統計学・数理最適化といったデータサイエンスの技術とノウハウをもとに、アルゴリズム及びソフトウエアを開発・提供することで、企業の課題解決やチャレンジを支援することを目指しております。
特に、EC分野における不正検知サービスを中核サービスとして位置づけ、決済コンサルティングサービス及びデータサイエンスサービスとのシナジー効果を発揮することで持続的な成長を図り、セキュリティ・ペイメント・データサイエンスの技術で新しい価値を作り上げる会社として、企業価値の最大化を図ってまいります。
(2) 経営上の目標の達成状況を判断するための指標
当社は、売上高の継続的かつ累積的な増加を実現するため、当社の主力製品である「O-PLUX」のストック収益の金額を重要指標としております。
(3) 経営環境及び中長期的な経営戦略
消費者向け電子商取引(BtoC-EC)市場は、経済産業省による2019年の調査「令和元年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(電子商取引に関する市場調査)報告書」によると、前年比7.65%増の19.3兆円となり、依然として高い成長率を維持しております。一方、クレジットカード番号等の情報を盗まれ不正に使われる「番号盗用被害」が急増しており、一般社団法人日本クレジット協会による「日本のクレジット統計 2019年版」によりますと、2019年の番号盗用被害額は前年比約19%増の約223億円となり、2014年の約3.3倍に達しております。
このような状況を受け、改正割賦販売法においては、クレジットカード番号等の不正な利用を防止するために必要な措置を講じることが義務化され、また、その実務上の指針となる、「クレジットカード・セキュリティガイドライン1.0版(クレジット取引セキュリティ協議会)」においては、非対面取引におけるクレジットカードの不正利用対策として、加盟店に対して「属性・行動分析(不正検知システム)」等の方策をリスク状況に応じて導入することが求められるなど、不正対策に対する社会的要請はますます高まっております。
こうした経営環境下において、当社は、以下の事項を中長期的な経営戦略として、事業推進してまいります。
① 主力製品である「O-PLUX」の更なる成長
EC市場の継続的成長及びオンライン決済における不正被害の急増、並びに法規制等の不正対策に対する社会的要請の高まりといった事業環境にあって、当社の主力製品である「O-PLUX」のニーズはますます高まるものと考えており、今後の更なる成長に向けて以下施策を実行してまいります。
(a) アライアンスの強化
決済代行会社(注1)、ECパッケージ・ショッピングカートベンダー(注2)等とのシステム連携をより一層加速することで、導入企業のシステム開発負荷を低減するとともに導入サイクルの短期化を図り、EC事業者を中心とした更なる新規利用企業の獲得を進めてまいります。さらに、システム連携のみならず、それらアライアンスを生かした新たな機能・サービスの開発を行い、「O-PLUX」がEC事業者にとって更に付加価値の高い製品となるよう取り組んでまいります。
(b) サービス領域の拡張
「O-PLUX」は、これまで主にECにおける物販分野においてサービス提供してまいりましたが、2020年6月に、旅行業界、チケット業界、デジタルコンテンツ等のWebサービス業界に特化した新たなサービスの提供を開始いたしました。「O-motion」によるデバイス特定等のセキュリティに関する技術やデータサイエンスの技術など、当社が有するあらゆる技術・ノウハウを「O-PLUX」に活用することで、更なるサービス領域の拡張を図ってまいります。
(c) 後払い決済事業者への導入促進及び長期利用継続の維持
当社は、後払い決済を提供する後払い決済事業者に対して、審査エンジンとして「O-PLUX」を提供しておりますが、後払い決済市場は、近年拡大を続けており、今後も成長が見込まれるため、当社は、決済コンサルティングサービスとのシナジー効果を発揮することで、引き続き、後払い決済事業者への「O-PLUX」導入を促進するともに、長期的な利用継続の維持を図ってまいります。
② データサイエンスサービスによる新たな収益機会の獲得
当社のデータサイエンスサービスは、当社のAI・統計学・数理最適化といったデータサイエンスの技術・ノウハウをもとに、マーケティングや生産効率向上等に資するアルゴリズムを企業に開発・提供しております。2019年12月期において、データサイエンスサービスの売上高全体に占める割合は6.3%と僅少ではありますが、本サービスは、当社の「SaaS型アルゴリズム提供事業」を、既に不正検知サービスとして展開しているEC分野のみならず、小売・流通業や製造業をはじめとした様々な分野において展開する足掛かりを作ることを企図しております。今後も、データサイエンスサービスの提供を促進する中で、新たなSaaS型サービスを企画・開発し、事業領域の拡大及び新たな収益機会の獲得に努めてまいります。
(4) 事業上及び財務上の対処すべき課題
①優秀な人材の確保及び教育研修等の強化による社員の能力の維持・向上
当社の業容拡大に伴い優秀な人員の確保と更なる社員の能力の維持・向上が必要であると考えております。当社では即戦力の人材確保を目的とした中途採用と将来を担う社員の育成と組織の活性化を目的とした新卒採用による採用活動を積極的に行ってまいります。また、人材育成・開発を重要課題と位置づけ、持続的な成長を支える人材の育成にも積極的に取り組んでまいります。
②製品開発投資の促進
当社は国内ECの不正検知市場において、市場の形成と拡大に貢献してまいりました。しかしながら、海外競合製品が日本市場へ参入し、近年、競争が一段と激化してきております。また、不正の多様化及び複雑化により不正検知に求められる精度や品質が今後より高度化していくものと予測しております。こうした状況の中で、当社は今後の成長性確保、競争優位性を高めるため、主力製品である「O-PLUX」の高機能化および新機能開発を進めるために、更なる製品開発投資を推進してまいります。
③当社及び当社サービスの認知度向上
当社及び当社サービスは、国内外の競合企業と比較して認知度においては不足していると認識しております。今後、更なる収益拡大を図るためには、なお一層の自社ブランドの確立、認知度の向上が必要であると考えております。費用対効果を見極めながらインターネットや展示会以外のマスメディア等も活用し更なる認知度の向上に努めてまいります。なお、株式上場による社会的認知度の向上も意図しております。
④内部管理体制の強化
当社は、更なる事業拡大、継続的な成長を遂げるためには、コンプライアンス体制の強化及び確固たる内部管理体制構築を通じた業務の標準化と効率化の徹底を図ることが重要であると考えております。当社といたしましては、内部統制の環境を適正に整備し、コーポレート・ガバナンスを充実させることによって、内部管理体制の強化を図り、企業価値の最大化に努めてまいります。
(注)1.EC事業者と各決済機関の間に立ち、多様な決済を一括の契約及び管理システムで利用できるサービスを提供する会社のこと。
2.ECサイトの運営に必要な商品管理、在庫管理、売上管理等の機能が統合的に実装されたシステムを提供する事業者のこと。