有価証券報告書-第26期(2025/07/01-2026/06/30)
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであり、その達成を保証するものではありません。
(1) 経営方針
当社グループは、企業理念に掲げるMISSION「社会の基盤を創り、人と社会の未来と幸福を支える」のもと、VISION「Update The World~変化し、変化させ、必要不可欠なOnly Oneへ」を掲げており、インフラテック事業を推進することで、インフラ業界の抱えるデジタル化が遅れた非効率な現場作業や業界特有の多重下請けによる高コスト構造といった課題を解決し、より快適な社会の実現に貢献してまいります。
また、当社グループは、2035年に向けたビジョンとして「規模じゃない、価値で勝つ。2035年、業界を代表する企業へ」を掲げております。事業規模の拡大のみを追うのではなく、現場実行力とテクノロジーの掛け合わせによって顧客に提供する価値を高め、その対価として持続的な収益成長を実現することを基本的な考え方としております。
同時に、顧客へのサービス提供を通じて当社の社員が成長し続けることを支援し、結婚・出産といったライフステージの変化に合わせたテレワークやフレックス勤務の推進、多国籍な人材の登用などを促進するとともに、自律的でフラットな組織を構築し、顧客へ高い付加価値を提供できるプロフェッショナルの育成に努めてまいります。
(2) 経営環境
当連結会計年度におけるわが国の経済は、雇用や所得環境の改善などにより緩やかな回復基調が続いているものの、米国の通商政策の動向および中東情勢の緊迫化に起因する景気の下振れリスクに加え、継続的な物価上昇による個人消費の減速懸念などもあり、依然として先行き不透明な状況が続いております。
このような経済環境のもと、当社グループを取り巻く事業環境は以下のとおりであります。
① モバイル(通信キャリア)領域
当社グループが主要な顧客とする通信事業者の設備投資は、5Gエリア展開の一巡に伴い抑制傾向が続いてまいりましたが、足元では回復の動きがみられます。株式会社MCAの調査によれば、国内のセルラーキャリア設備投資額は、2024年度は1兆3,260億円(前年度比2.6%減)と減少した一方、2025年度は1兆3,830億円(同4.3%増)と増加する見込みとされております。キャリア別には、NTTドコモおよびソフトバンクが投資を拡大する一方、KDDI(au)および楽天モバイルは投資を縮小する見通しであります(※1)。
同社の別の調査によれば、国内の通信事業者の設備投資額は、2025年度に前年度比13.2%増の2兆6,211億円が計画されているものの、2026年度以降は2024年度並みの水準に戻り、2028年度は2兆2,759億円になると予測されており、楽観できるものではありません(※2)。
加えて、通信事業者の投資の重点は変化しております。5Gのエリア展開が一巡する一方、各社はAI・データセンター、光ネットワークおよび衛星通信といった新たな領域への投資を拡大しており、基地局関連の投資は、新規エリアの展開から既存設備の維持・更新および運用の効率化へと性格が変わりつつあるものと認識しております。この結果、通信事業者の設備投資額の増減は、当社グループが受託する基地局工事の量に直ちに連動するものではなくなっております。
当連結会計年度における当社グループのモバイルエンジニアリングサービスの売上高は、前連結会計年度比3.4%減となりました。これは、当社グループが強みとする5Gエリア展開工事が縮小したことに加え、主要顧客において外注費の削減方針が継続していることによるものであります。以上を踏まえ、当社グループは、モバイル領域の売上高について当面横ばいまたは減少が続くことを前提としております。
② IoT・社会インフラ領域
一方、わが国では労働力人口の減少が続いており、生産年齢人口(15〜64歳)は2000年の8,622万人から2025年には7,354万人へ減少しております(※3)。有効求人倍率は2025年度平均で1.20倍と、2000年の0.59倍から大きく上昇した水準で推移しております(※4)。また、株式会社帝国データバンクの調査によれば、正社員が不足していると回答した企業の割合は51.3%、非正社員では28.8%となっており、なかでも建設業における正社員の不足割合は66.0%と全業種で2番目に高い水準にあります(※5)。
こうした環境のもと、現場の省人化・デジタル化が不可欠となり、AI・ドローン・ロボット・IoTの社会実装が加速しております。IoT機器の設置台数は今後大きく増加することが見込まれており、クラウドカメラの累計稼働台数は2024年度の54.75万台(見込み)から2029年度には131万台へ拡大すると予測されているほか(※6)、EV用充電器は公共用で2030年までに30万口の整備が目標とされ(※7)、水道スマートメーターについては、東京都において先行導入されている約13万件から、2030年代までに約780万件の全戸導入が予定されております(※8)。
また、危機管理型水位計は2025年時点で9,300台が設置されており、今後、更新および高性能化が本格化するものと見込まれます(※9)。
IoT機器の種類および設置台数の増加は、全国・多拠点での設置・運用・保守需要の拡大につながるものであり、当社グループにとって事業機会の拡大を意味するものと認識しております。
当連結会計年度における当社グループのIoTエンジニアリングサービスの売上高は、前連結会計年度比13.1%増となりました。当社グループは、当該領域を中期経営計画2030における成長の中心と位置付けております。
(注)本項に記載した外部データの出所は以下のとおりであります。将来に関する数値は、当社が入手可能な公表資料に基づくものであり、将来の実現を保証するものではありません。
(3) 中長期的な経営戦略
当社グループは、2026年8月に「中期経営計画2030」(2027年6月期から2030年6月期までの4か年)を策定・公表いたしました。
① 前中期経営計画(中期経営計画2026)の総括
前中期経営計画では、上場時から掲げてきた「インフラテック企業」への進化に向け、モバイルサービスで培った通信キャリア品質の現場実行力をIoT領域へ転用し、IoTサービスの成長とBPaaSモデルの形成を進めました。その結果、IoT領域を成長事業へ転換し、BPaaSモデルの形成と、それを通じた競争資産(下記②に記載)の蓄積といった成長基盤を構築いたしました。
一方、売上高については、モバイル領域が計画以上に大きく縮小したことに加え、IoT領域も成長は継続したものの当初想定した水準には届かず、最終年度(2026年6月期)の売上高は8,427百万円と当初計画9,612百万円を下回りました。利益面では、利益率の高いモバイルストック案件の減少をIoT領域の成長でカバーしきれず売上総利益率が低下したことに加え、IoTサービスは施工・設置を中心としたフロー案件の比率が高く、売上成長を継続的な利益成長へ転換する収益構造の構築が十分に進まなかったことから、EBITDAは294百万円と当初計画753百万円を下回りました。
この結果、当社グループは、①対応領域・顧客基盤が限定的であること、②高収益・継続収益モデルが未確立であること、③利益成長の仕組みが未完成であること、④市場認知が不十分であること、⑤事業機能の拡充に時間を要していること、を残された課題と認識しております。
② 中期経営計画2030の基本方針
中期経営計画2030では、基本方針を「『インフラテックプラットフォーム』の構築・拡張」と定めております。インフラの構築・運用に必要な機能を一気通貫で提供するとともに、新たな領域・市場・サービスへ継続的に拡張していく事業エコシステムの構築を目指すものであります。
▼図1 中期経営計画2030の全体像
その成長エンジンと位置付けているのが「BPaaS」であります。現場実行力とテクノロジーを掛け合わせ、ICT・IoTインフラの構築・運用に係る現場オペレーションを一気通貫で提供する形態であり、BPaaS案件の拡大を通じて、現場実行力、全国パートナー網、顧客接点・案件実績および現場データという4つの競争資産を蓄積・強化してまいります。これらを核として新たな領域・顧客へ展開することで、ストック収益と顧客生涯価値(LTV)の拡大を図ってまいります。
▼図2 成長エンジン「BPaaS」と4つの競争資産
③ 5つの重点戦略
基本方針を実現するため、以下の5つの重点戦略を相互に連携させて推進いたします。
④ サービス別の戦略
当社グループは、2027年6月期より、提供サービスの実態に基づく「IoTサービス」「ネットワークサービス」「SaaSサービス」の3区分により事業を管理する方針であり、それぞれの戦略は以下のとおりであります。
(4) 目標とする経営指標
当社グループは、企業価値を向上させ株主価値を高めることが重要であると考えており、そのためには、より専門性を高め、事業拡大を進めていくことで収益性を向上させ、継続的な成長を目指すことが重要であると認識しております。
中期経営計画2030においては、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、調整後EBITDAを最重要指標と位置付けております。これは、M&Aを重要な成長戦略の一つとして位置付けていることから、M&Aに伴うのれん償却費等の影響を受ける営業利益を主要指標とした場合、成長投資を実行するほど指標が悪化するためであります。
当社グループにおける調整後EBITDAの定義は以下のとおりであり、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づく指標ではありません。
• EBITDA=営業利益+減価償却費+のれん償却額
• 調整後EBITDA=EBITDA+一時的または非経常的な費用(M&A関連費用、株式報酬費用、株主優待費用など)
当該指標の実績および目標は以下のとおりであります。2030年6月期の目標は、新規のM&Aを含まない前提の数値であり、M&Aによる成長を含めた場合は1,500百万円以上を目指しております。
(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループは、これまで事業ポートフォリオの転換を進めてまいりましたが、収益性の改善は当初の想定に至っておりません。こうした状況を踏まえ、「中期経営計画2030」を策定し、『インフラテックプラットフォーム』の構築・拡張を基本方針に掲げております。同計画の実現に向け、当社グループが優先的に対処すべき事業上および財務上の課題は次のとおりであります。
[事業上の課題]
① 対応領域・顧客基盤の拡大
当社グループが対応する領域および顧客は、通信・エネルギーの周辺が中心であり、他の分野への広がりは途上にあります。人手不足を背景にIoTの社会実装が加速し、全国・多拠点における機器の設置から運用・保守までの需要が高まるなか、この機会を確実に取り込むことが重要であると認識しております。通信インフラの構築を通じて培った現場実行力と全国のパートナー網、ならびに蓄積した案件実績と現場データを活かし、建物・設備の管理、AIカメラ・認証、社会インフラ、防災・減災といった新たな分野へ展開してまいります。あわせて、既存顧客に対する提案の範囲を広げるとともに、成功事例を標準化し、同様の課題を有する他の業界へと展開してまいります。
また、当社グループの売上高に占める特定顧客への依存度は低下傾向にあるものの、通信事業者との取引比率は依然として高い水準にあります。新規顧客の獲得に加え、既存顧客へのアップセル・クロスセルを推進するため、営業機能の一層の拡充・強化に取り組んでまいります。
② 継続収益モデルの確立
当社グループの利益を支えてきたストック型の案件は、通信キャリアによる設備投資の抑制に伴い減少しております。一方、成長領域であるIoT分野は、機器の設置・施工をもって完了するフロー型の案件が中心であり、設置後の運用・保守まで受託する取り組みは広がりつつあるものの、売上の成長が継続的な利益に結びつく収益モデルの確立には、なお至っておりません。
機器の設置にとどまらず、稼働監視、定期点検、障害対応から改善提案までを一貫して担うことで、フロー型からストック型への転換を進めてまいります。これらの業務につきましては、自社開発の現場作業DXクラウド「BLAS」を活用して標準化を進め、現場のデータを蓄積してまいります。あわせて、2023年9月より開始した「BLAS」の外部の顧客への販売を拡大してまいります。
③ 生産性の向上と収益性の改善
案件が増えるにつれて業務の流れが複雑になり、システムの分散と管理工数の増大を招いた結果、生産性の向上を十分に実現できておりません。当社グループは、AIの活用を前提として業務・組織・データ・システムを一体で見直す全社的な変革(AX)に取り組んでまいります。受注から請求に至る販売・購買・原価の処理を部門横断で再設計し、案件ごとの原価と利益を適時に把握できる仕組みを整えることで、見積および単価の精度を高め、低採算案件を早期に把握し、収益性の改善につなげてまいります。なお、AIの出力については人が評価・承認する統制(Human in the Loop)を組み込み、品質と説明責任を担保する方針であります。
また、自社開発の現場作業DXクラウドサービス「BLAS」については開発を強化し、一日あたり数千件に及ぶ現場案件の管理に加え、前工程(機器準備・現地情報確認等)および後工程(レポート作成等)の効率化を実現しております。さらに、運用で得られた知見や顧客・現場作業者からのフィードバックを踏まえ、監視や保守高度化等の「保守DX」の実現に向けた機能開発を進めております。引き続き「BLAS」の継続的な機能拡充と将来を見据えたシステム開発を推進すべく、内製体制の強化および他社との連携等を通じてテクノロジーの強化を図ってまいります。
④ 市場認知の向上
新たな顧客の開拓、パートナー企業の獲得および人材の採用のいずれにおいても、当社グループの認知度は十分ではありません。認知度の向上は、これらすべての土台となるものと認識しております。ブランドの再定義と情報発信の強化に取り組み、コーポレートサイトおよび「BLAS」のサービスサイトを軸として、顧客、採用候補者ならびにパートナー企業との継続的な接点を生み出す体制を整えてまいります。
⑤ 事業機能の拡充
機器の設置・施工以外の専門性の高い保守・点検や、AI・データの活用といった機能を自社のみで備えるには時間を要します。当社グループは、対象となる領域の特性に応じてM&Aと事業提携を使い分け、これらの機能と新たな顧客を獲得することで、提供できるサービスの幅を広げてまいります。具体的には、当社グループのオペレーションとの類似性が高く、かつ顧客・設置物件の重複度が高い領域についてはM&Aを優先し、類似性は低いものの重複度が高い領域については事業提携を優先する方針であります。M&Aの実行にあたりましては、投資判断の基準と財務規律を定めるとともに、買収後の統合(PMI)を着実に進められる体制を築いてまいります。
⑥ 人材の育成と安全・品質の確保
事業の拡大を支えるためには、プロジェクトマネージャーやフィールドエンジニアをはじめとする人材の確保と育成を一段と進める必要があります。階層別・職能別の教育体制の充実、リスキリングの機会提供およびキャリアパスの整備を通じて人材力を高めるとともに、全国の施工を支えるパートナー企業に対しても、技術研修や情報共有の場を設けてまいります。特に、全社AXの推進に対応するためのデジタル人材の確保・育成を重点課題としております。
また、労働災害の防止と施工品質の維持は事業の継続と社会からの信頼の基礎であることから、安全衛生教育の徹底と作業手順の標準化に引き続き取り組んでまいります。
[財務上の課題]
⑦ 資本政策およびキャピタルアロケーション
当社グループは、創出したキャッシュについて、①自社の成長投資、②M&Aによる成長投資、③株主還元、の順で配分する方針であります。資本コストを上回るリターンが見込める投資機会が存在する限り成長投資を優先することとし、株主還元については、配当は当面行わず、株価が本源的価値を下回ると判断される場合に自己株式の取得を実施する方針であります。配当は余資が生じた場合に検討いたします。
⑧ 投資規律および財務健全性の維持
当社グループは、上記⑤に記載のM&Aの実行にあたり、以下の投資規律に基づき判断する方針であります。
• 取得価額はEV/EBITDA倍率で評価し、当社の評価倍率に照らして妥当な水準にとどめること
• のれんの計上額を抑制し、将来の減損リスクと1株当たり利益の希薄化を限定すること
• 営業キャッシュ・フローと借入により実行し、レバレッジ上限(ネット有利子負債/調整後EBITDA 2.5倍、M&A直後は3.0倍まで)の範囲内で判断すること(現時点でエクイティ・ファイナンスは想定しておりません)
⑨ 資本コストや株価を意識した経営および上場維持基準への対応
当社株式は株式会社東京証券取引所グロース市場に上場しております。同取引所は、グロース市場の時価総額に関する上場維持基準について、従来の「上場から10年経過後に40億円以上」から「上場から5年経過後に100億円以上」へ引き上げることとし、2030年3月1日より適用することを公表しております。当社は6月決算であるため、当該基準による判定は2030年6月30日を基準日として行われることとなり、中期経営計画2030の最終年度末と一致いたします。
当社グループは、中期経営計画2030において2030年6月期までに時価総額100億円以上を目指すこととしており、収益性の改善と成長性の実現、資本コストを意識した資本政策の遂行、およびIR活動を通じた情報開示の充実により、企業価値の向上に取り組んでまいります。
⑩ 内部管理体制、コーポレート・ガバナンスの強化
当社グループは、事業環境の変化に対応しつつ事業拡大を進めるため、内部管理体制およびコーポレート・ガバナンスの強化が重要であると認識しております。特に、M&Aおよびグループ会社の増加を見据え、グループガバナンス体制の整備、投資判断・モニタリングプロセスの高度化、および子会社を含む内部統制の実効性向上を図ってまいります。
(1) 経営方針
当社グループは、企業理念に掲げるMISSION「社会の基盤を創り、人と社会の未来と幸福を支える」のもと、VISION「Update The World~変化し、変化させ、必要不可欠なOnly Oneへ」を掲げており、インフラテック事業を推進することで、インフラ業界の抱えるデジタル化が遅れた非効率な現場作業や業界特有の多重下請けによる高コスト構造といった課題を解決し、より快適な社会の実現に貢献してまいります。
また、当社グループは、2035年に向けたビジョンとして「規模じゃない、価値で勝つ。2035年、業界を代表する企業へ」を掲げております。事業規模の拡大のみを追うのではなく、現場実行力とテクノロジーの掛け合わせによって顧客に提供する価値を高め、その対価として持続的な収益成長を実現することを基本的な考え方としております。
同時に、顧客へのサービス提供を通じて当社の社員が成長し続けることを支援し、結婚・出産といったライフステージの変化に合わせたテレワークやフレックス勤務の推進、多国籍な人材の登用などを促進するとともに、自律的でフラットな組織を構築し、顧客へ高い付加価値を提供できるプロフェッショナルの育成に努めてまいります。
(2) 経営環境
当連結会計年度におけるわが国の経済は、雇用や所得環境の改善などにより緩やかな回復基調が続いているものの、米国の通商政策の動向および中東情勢の緊迫化に起因する景気の下振れリスクに加え、継続的な物価上昇による個人消費の減速懸念などもあり、依然として先行き不透明な状況が続いております。
このような経済環境のもと、当社グループを取り巻く事業環境は以下のとおりであります。
① モバイル(通信キャリア)領域
当社グループが主要な顧客とする通信事業者の設備投資は、5Gエリア展開の一巡に伴い抑制傾向が続いてまいりましたが、足元では回復の動きがみられます。株式会社MCAの調査によれば、国内のセルラーキャリア設備投資額は、2024年度は1兆3,260億円(前年度比2.6%減)と減少した一方、2025年度は1兆3,830億円(同4.3%増)と増加する見込みとされております。キャリア別には、NTTドコモおよびソフトバンクが投資を拡大する一方、KDDI(au)および楽天モバイルは投資を縮小する見通しであります(※1)。
同社の別の調査によれば、国内の通信事業者の設備投資額は、2025年度に前年度比13.2%増の2兆6,211億円が計画されているものの、2026年度以降は2024年度並みの水準に戻り、2028年度は2兆2,759億円になると予測されており、楽観できるものではありません(※2)。
加えて、通信事業者の投資の重点は変化しております。5Gのエリア展開が一巡する一方、各社はAI・データセンター、光ネットワークおよび衛星通信といった新たな領域への投資を拡大しており、基地局関連の投資は、新規エリアの展開から既存設備の維持・更新および運用の効率化へと性格が変わりつつあるものと認識しております。この結果、通信事業者の設備投資額の増減は、当社グループが受託する基地局工事の量に直ちに連動するものではなくなっております。
当連結会計年度における当社グループのモバイルエンジニアリングサービスの売上高は、前連結会計年度比3.4%減となりました。これは、当社グループが強みとする5Gエリア展開工事が縮小したことに加え、主要顧客において外注費の削減方針が継続していることによるものであります。以上を踏まえ、当社グループは、モバイル領域の売上高について当面横ばいまたは減少が続くことを前提としております。
② IoT・社会インフラ領域
一方、わが国では労働力人口の減少が続いており、生産年齢人口(15〜64歳)は2000年の8,622万人から2025年には7,354万人へ減少しております(※3)。有効求人倍率は2025年度平均で1.20倍と、2000年の0.59倍から大きく上昇した水準で推移しております(※4)。また、株式会社帝国データバンクの調査によれば、正社員が不足していると回答した企業の割合は51.3%、非正社員では28.8%となっており、なかでも建設業における正社員の不足割合は66.0%と全業種で2番目に高い水準にあります(※5)。
こうした環境のもと、現場の省人化・デジタル化が不可欠となり、AI・ドローン・ロボット・IoTの社会実装が加速しております。IoT機器の設置台数は今後大きく増加することが見込まれており、クラウドカメラの累計稼働台数は2024年度の54.75万台(見込み)から2029年度には131万台へ拡大すると予測されているほか(※6)、EV用充電器は公共用で2030年までに30万口の整備が目標とされ(※7)、水道スマートメーターについては、東京都において先行導入されている約13万件から、2030年代までに約780万件の全戸導入が予定されております(※8)。
また、危機管理型水位計は2025年時点で9,300台が設置されており、今後、更新および高性能化が本格化するものと見込まれます(※9)。
IoT機器の種類および設置台数の増加は、全国・多拠点での設置・運用・保守需要の拡大につながるものであり、当社グループにとって事業機会の拡大を意味するものと認識しております。
当連結会計年度における当社グループのIoTエンジニアリングサービスの売上高は、前連結会計年度比13.1%増となりました。当社グループは、当該領域を中期経営計画2030における成長の中心と位置付けております。
(注)本項に記載した外部データの出所は以下のとおりであります。将来に関する数値は、当社が入手可能な公表資料に基づくものであり、将来の実現を保証するものではありません。
| 番号 | 出所 |
| ※1 | 株式会社MCA「携帯電話基地局及び周辺部材市場の現状と将来予測2025年版」(2026年6月)。同設備投資額は、基地局向け投資に加えコアネットワーク向け投資を含む金額であります。 |
| ※2 | 株式会社MCA「主要キャリアのネットワーク投資戦略と通信インフラ市場2025年版」。※1とは調査の対象範囲が異なります。 |
| ※3 | 総務省統計局「人口推計」 |
| ※4 | 厚生労働省「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」。2025年度の年度平均であります。 |
| ※5 | 株式会社帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2026年7月)」(2026年8月公表。調査期間2026年7月17日~31日、有効回答企業数10,518社) |
| ※6 | 株式会社矢野経済研究所「監視カメラ/システム国内市場に関する調査(2024年)」(2025年3月31日公表)。台数は累計稼働台数であり、2024年度は見込値であります。 |
| ※7 | 経済産業省「充電インフラ整備促進に向けた指針」(2023年10月) |
| ※8 | 国土交通省水管理・国土保全局水道事業課「水道分野におけるスマートメーターの導入促進について」(2025年3月10日) |
| ※9 | 国土交通省水管理・国土保全局「危機管理型水位計設置の手引き(案)」(2026年3月)。台数は令和7年現在の全国の導入台数であります。 |
(3) 中長期的な経営戦略
当社グループは、2026年8月に「中期経営計画2030」(2027年6月期から2030年6月期までの4か年)を策定・公表いたしました。
① 前中期経営計画(中期経営計画2026)の総括
前中期経営計画では、上場時から掲げてきた「インフラテック企業」への進化に向け、モバイルサービスで培った通信キャリア品質の現場実行力をIoT領域へ転用し、IoTサービスの成長とBPaaSモデルの形成を進めました。その結果、IoT領域を成長事業へ転換し、BPaaSモデルの形成と、それを通じた競争資産(下記②に記載)の蓄積といった成長基盤を構築いたしました。
一方、売上高については、モバイル領域が計画以上に大きく縮小したことに加え、IoT領域も成長は継続したものの当初想定した水準には届かず、最終年度(2026年6月期)の売上高は8,427百万円と当初計画9,612百万円を下回りました。利益面では、利益率の高いモバイルストック案件の減少をIoT領域の成長でカバーしきれず売上総利益率が低下したことに加え、IoTサービスは施工・設置を中心としたフロー案件の比率が高く、売上成長を継続的な利益成長へ転換する収益構造の構築が十分に進まなかったことから、EBITDAは294百万円と当初計画753百万円を下回りました。
この結果、当社グループは、①対応領域・顧客基盤が限定的であること、②高収益・継続収益モデルが未確立であること、③利益成長の仕組みが未完成であること、④市場認知が不十分であること、⑤事業機能の拡充に時間を要していること、を残された課題と認識しております。
② 中期経営計画2030の基本方針
中期経営計画2030では、基本方針を「『インフラテックプラットフォーム』の構築・拡張」と定めております。インフラの構築・運用に必要な機能を一気通貫で提供するとともに、新たな領域・市場・サービスへ継続的に拡張していく事業エコシステムの構築を目指すものであります。
▼図1 中期経営計画2030の全体像
その成長エンジンと位置付けているのが「BPaaS」であります。現場実行力とテクノロジーを掛け合わせ、ICT・IoTインフラの構築・運用に係る現場オペレーションを一気通貫で提供する形態であり、BPaaS案件の拡大を通じて、現場実行力、全国パートナー網、顧客接点・案件実績および現場データという4つの競争資産を蓄積・強化してまいります。これらを核として新たな領域・顧客へ展開することで、ストック収益と顧客生涯価値(LTV)の拡大を図ってまいります。▼図2 成長エンジン「BPaaS」と4つの競争資産
③ 5つの重点戦略基本方針を実現するため、以下の5つの重点戦略を相互に連携させて推進いたします。
| 重点戦略 | 内 容 | 目 的 |
| ① 対応領域拡大 | 培った4つの競争資産を活用し、建物・設備マネジメント、エネルギー・スマートメーター、AIカメラ・認証、社会インフラ、防災・レジリエンス等の新たな領域・顧客へ展開する | 対応領域/顧客接点の拡大・売上成長 |
| ② BLAS拡販・BPaaS化推進 | 構築後の運用・保守・改善まで継続提供し、フロー型案件のストック化を進める | ストック収益・顧客LTVの拡大 |
| ③ 全社AXによる経営基盤の変革 | AIを前提に業務・組織・データ・システムを一体で再設計し、案件別の原価・利益をタイムリーに可視化する全社共通の業務基盤へ転換する | 生産性・収益性の向上 |
| ④ ブランディング・マーケティング | ブランドの再定義と情報発信を強化し、顧客・採用候補者・パートナー・M&A対象企業との接点を継続的に創出する | 市場認知・顧客/人材獲得力の強化 |
| ⑤ M&Aの推進 | 垂直統合(協力会社の取込)・水平展開(サービスラインの拡充)・ストック化(保守運用への拡張)により、自社に不足する事業機能・対象領域・顧客基盤を獲得する | 事業基盤・収益基盤・全国対応力の強化 |
④ サービス別の戦略
当社グループは、2027年6月期より、提供サービスの実態に基づく「IoTサービス」「ネットワークサービス」「SaaSサービス」の3区分により事業を管理する方針であり、それぞれの戦略は以下のとおりであります。
| サービス | 2030年6月期に目指す姿 | 成長戦略 |
| IoTサービス | 現場データとAIを活用し、導入・保守・運用・改善までを最適化する現場オペレーション基盤の確立 | 単発受託から、導入・運用・改善まで担う現場オペレーション事業へ進化し、BPaaS化により継続収益を拡大 |
| ネットワークサービス | ネットワークインフラの設計・構築・現地対応・運用保守まで一貫して支援できるエンジニアリング体制の確立 | 収益改善が見込める上流工程への対応拡大、エンジニア育成、ナレッジ標準化 |
| SaaSサービス | BLASを基盤に、保守高度化・予兆保全・パートナー連携まで展開するBPaaS基盤の確立 | BLASの機能高度化により、ストック収益と顧客LTVを拡大 |
(4) 目標とする経営指標
当社グループは、企業価値を向上させ株主価値を高めることが重要であると考えており、そのためには、より専門性を高め、事業拡大を進めていくことで収益性を向上させ、継続的な成長を目指すことが重要であると認識しております。
中期経営計画2030においては、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、調整後EBITDAを最重要指標と位置付けております。これは、M&Aを重要な成長戦略の一つとして位置付けていることから、M&Aに伴うのれん償却費等の影響を受ける営業利益を主要指標とした場合、成長投資を実行するほど指標が悪化するためであります。
当社グループにおける調整後EBITDAの定義は以下のとおりであり、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づく指標ではありません。
• EBITDA=営業利益+減価償却費+のれん償却額
• 調整後EBITDA=EBITDA+一時的または非経常的な費用(M&A関連費用、株式報酬費用、株主優待費用など)
当該指標の実績および目標は以下のとおりであります。2030年6月期の目標は、新規のM&Aを含まない前提の数値であり、M&Aによる成長を含めた場合は1,500百万円以上を目指しております。
| 2026年6月期 (実績) | 2030年6月期 (中期経営計画2030目標) | |
| 調整後EBITDA(百万円) | 334 | 1,348 |
(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループは、これまで事業ポートフォリオの転換を進めてまいりましたが、収益性の改善は当初の想定に至っておりません。こうした状況を踏まえ、「中期経営計画2030」を策定し、『インフラテックプラットフォーム』の構築・拡張を基本方針に掲げております。同計画の実現に向け、当社グループが優先的に対処すべき事業上および財務上の課題は次のとおりであります。
[事業上の課題]
① 対応領域・顧客基盤の拡大
当社グループが対応する領域および顧客は、通信・エネルギーの周辺が中心であり、他の分野への広がりは途上にあります。人手不足を背景にIoTの社会実装が加速し、全国・多拠点における機器の設置から運用・保守までの需要が高まるなか、この機会を確実に取り込むことが重要であると認識しております。通信インフラの構築を通じて培った現場実行力と全国のパートナー網、ならびに蓄積した案件実績と現場データを活かし、建物・設備の管理、AIカメラ・認証、社会インフラ、防災・減災といった新たな分野へ展開してまいります。あわせて、既存顧客に対する提案の範囲を広げるとともに、成功事例を標準化し、同様の課題を有する他の業界へと展開してまいります。
また、当社グループの売上高に占める特定顧客への依存度は低下傾向にあるものの、通信事業者との取引比率は依然として高い水準にあります。新規顧客の獲得に加え、既存顧客へのアップセル・クロスセルを推進するため、営業機能の一層の拡充・強化に取り組んでまいります。
② 継続収益モデルの確立
当社グループの利益を支えてきたストック型の案件は、通信キャリアによる設備投資の抑制に伴い減少しております。一方、成長領域であるIoT分野は、機器の設置・施工をもって完了するフロー型の案件が中心であり、設置後の運用・保守まで受託する取り組みは広がりつつあるものの、売上の成長が継続的な利益に結びつく収益モデルの確立には、なお至っておりません。
機器の設置にとどまらず、稼働監視、定期点検、障害対応から改善提案までを一貫して担うことで、フロー型からストック型への転換を進めてまいります。これらの業務につきましては、自社開発の現場作業DXクラウド「BLAS」を活用して標準化を進め、現場のデータを蓄積してまいります。あわせて、2023年9月より開始した「BLAS」の外部の顧客への販売を拡大してまいります。
③ 生産性の向上と収益性の改善
案件が増えるにつれて業務の流れが複雑になり、システムの分散と管理工数の増大を招いた結果、生産性の向上を十分に実現できておりません。当社グループは、AIの活用を前提として業務・組織・データ・システムを一体で見直す全社的な変革(AX)に取り組んでまいります。受注から請求に至る販売・購買・原価の処理を部門横断で再設計し、案件ごとの原価と利益を適時に把握できる仕組みを整えることで、見積および単価の精度を高め、低採算案件を早期に把握し、収益性の改善につなげてまいります。なお、AIの出力については人が評価・承認する統制(Human in the Loop)を組み込み、品質と説明責任を担保する方針であります。
また、自社開発の現場作業DXクラウドサービス「BLAS」については開発を強化し、一日あたり数千件に及ぶ現場案件の管理に加え、前工程(機器準備・現地情報確認等)および後工程(レポート作成等)の効率化を実現しております。さらに、運用で得られた知見や顧客・現場作業者からのフィードバックを踏まえ、監視や保守高度化等の「保守DX」の実現に向けた機能開発を進めております。引き続き「BLAS」の継続的な機能拡充と将来を見据えたシステム開発を推進すべく、内製体制の強化および他社との連携等を通じてテクノロジーの強化を図ってまいります。
④ 市場認知の向上
新たな顧客の開拓、パートナー企業の獲得および人材の採用のいずれにおいても、当社グループの認知度は十分ではありません。認知度の向上は、これらすべての土台となるものと認識しております。ブランドの再定義と情報発信の強化に取り組み、コーポレートサイトおよび「BLAS」のサービスサイトを軸として、顧客、採用候補者ならびにパートナー企業との継続的な接点を生み出す体制を整えてまいります。
⑤ 事業機能の拡充
機器の設置・施工以外の専門性の高い保守・点検や、AI・データの活用といった機能を自社のみで備えるには時間を要します。当社グループは、対象となる領域の特性に応じてM&Aと事業提携を使い分け、これらの機能と新たな顧客を獲得することで、提供できるサービスの幅を広げてまいります。具体的には、当社グループのオペレーションとの類似性が高く、かつ顧客・設置物件の重複度が高い領域についてはM&Aを優先し、類似性は低いものの重複度が高い領域については事業提携を優先する方針であります。M&Aの実行にあたりましては、投資判断の基準と財務規律を定めるとともに、買収後の統合(PMI)を着実に進められる体制を築いてまいります。
⑥ 人材の育成と安全・品質の確保
事業の拡大を支えるためには、プロジェクトマネージャーやフィールドエンジニアをはじめとする人材の確保と育成を一段と進める必要があります。階層別・職能別の教育体制の充実、リスキリングの機会提供およびキャリアパスの整備を通じて人材力を高めるとともに、全国の施工を支えるパートナー企業に対しても、技術研修や情報共有の場を設けてまいります。特に、全社AXの推進に対応するためのデジタル人材の確保・育成を重点課題としております。
また、労働災害の防止と施工品質の維持は事業の継続と社会からの信頼の基礎であることから、安全衛生教育の徹底と作業手順の標準化に引き続き取り組んでまいります。
[財務上の課題]
⑦ 資本政策およびキャピタルアロケーション
当社グループは、創出したキャッシュについて、①自社の成長投資、②M&Aによる成長投資、③株主還元、の順で配分する方針であります。資本コストを上回るリターンが見込める投資機会が存在する限り成長投資を優先することとし、株主還元については、配当は当面行わず、株価が本源的価値を下回ると判断される場合に自己株式の取得を実施する方針であります。配当は余資が生じた場合に検討いたします。
⑧ 投資規律および財務健全性の維持
当社グループは、上記⑤に記載のM&Aの実行にあたり、以下の投資規律に基づき判断する方針であります。
• 取得価額はEV/EBITDA倍率で評価し、当社の評価倍率に照らして妥当な水準にとどめること
• のれんの計上額を抑制し、将来の減損リスクと1株当たり利益の希薄化を限定すること
• 営業キャッシュ・フローと借入により実行し、レバレッジ上限(ネット有利子負債/調整後EBITDA 2.5倍、M&A直後は3.0倍まで)の範囲内で判断すること(現時点でエクイティ・ファイナンスは想定しておりません)
⑨ 資本コストや株価を意識した経営および上場維持基準への対応
当社株式は株式会社東京証券取引所グロース市場に上場しております。同取引所は、グロース市場の時価総額に関する上場維持基準について、従来の「上場から10年経過後に40億円以上」から「上場から5年経過後に100億円以上」へ引き上げることとし、2030年3月1日より適用することを公表しております。当社は6月決算であるため、当該基準による判定は2030年6月30日を基準日として行われることとなり、中期経営計画2030の最終年度末と一致いたします。
当社グループは、中期経営計画2030において2030年6月期までに時価総額100億円以上を目指すこととしており、収益性の改善と成長性の実現、資本コストを意識した資本政策の遂行、およびIR活動を通じた情報開示の充実により、企業価値の向上に取り組んでまいります。
⑩ 内部管理体制、コーポレート・ガバナンスの強化
当社グループは、事業環境の変化に対応しつつ事業拡大を進めるため、内部管理体制およびコーポレート・ガバナンスの強化が重要であると認識しております。特に、M&Aおよびグループ会社の増加を見据え、グループガバナンス体制の整備、投資判断・モニタリングプロセスの高度化、および子会社を含む内部統制の実効性向上を図ってまいります。