有価証券報告書-第5期(2025/04/01-2026/03/31)
④人的資本(マテリアリティ⑥地域のクオリティ向上に貢献できる人材の育成への対応)
ア.経営戦略と人材戦略の連動:事業ポートフォリオに沿った人材ポートフォリオの構築
当社は、2021年にグループシナジーの最大化と持続的な成長の実現を目的として持株会社体制へ移行しました。さらに、2025年10月には社名をCCIグループへ変更し、従来の「北國銀行ブランド」に加え、地域金融の枠を超えた事業領域の拡大や北陸以外・海外への展開を担う「CCIブランド」を加えた2ブランド体制へ移行しました。
本体制のもと、コンサルティング、海外展開、キャッシュレス、投資事業に加え、地域活性化等を担う新たなグループ会社(CCIクロスボーダー、CCIエンタベース等)を設立するなど、地域の社会課題解決を起点とした事業ポートフォリオの拡大を進めています。こうした事業ポートフォリオの転換と拡大を着実に実現していくためには、再構築された事業構造に適合した動的な人材ポートフォリオの構築と、それに基づく適切な人材配置が不可欠です。当社はこれを経営の最重要事項の一つと位置付けています。特に、成長領域および強化領域への人材の重点配置は、社員一人ひとりの創造的価値創出力を最大限に引き出し、高い付加価値の発揮につながるものと認識しています。
このような人材ポートフォリオの構築を実現する基盤として、「キャリア自律」を、個人の成長施策にとどまらず事業戦略を実行するための経営基盤として位置付けています。変化の激しい事業環境の下で組織が持続的に成長するためには、社員一人ひとりが自らの意思でキャリアを構想し、学習と挑戦を重ねていくことが不可欠であると考えています。こうした考え方に基づき、当社では勤務年数に依存しないジョブや役割に応じた処遇を実現するとともに、社員がリカレント教育や将来設計に主体的に投資できる環境整備を進めてきました。これらの取組みにより、人事機能は管理中心の役割から、事業ポートフォリオの転換を支える戦略機能へと進化しています。その結果、個人の成長と事業成長が相互に影響し合う好循環を創出し、人的資本経営の高度化を実現しています。
イ.人材戦略を支える基盤:人材エコシステム
当社は、急速に変化する事業環境と多様化するマーケットに対応し、持続的な企業価値向上と地域社会への貢献を両立するため、「人的資本への投資」を経営の重要施策と位置付けています。その中核となるのが「人材エコシステム」であり、採用・育成・配置・活躍・輩出の一連のプロセスを循環的に結び付け、人材価値の最大化を図っています。
当社は、新卒採用に加えキャリア採用や外部パートナーとの協業を通じて多様な専門性を取り込みつつ、社内においては教育施策や配置転換、公募・ジョブチャレンジ制度等を通じて挑戦機会を提供し、社員一人ひとりの能力発揮と成長を促進しています。
さらに、育成したプロフェッショナル人材を地域企業へ輩出し、経営課題の解決や価値創出に貢献するとともに、社外で培った知見を当社へ還流させることで、持続的な価値創出につながる双方向の人材循環を構築しています。これにより、社内外を横断した知見の循環が生まれ、事業ポートフォリオの高度化と持続的な企業価値向上につながっています。これらの取組みは、DE&I、ウェルビーイング、組織文化、挑戦を尊重するマインドセットを共通基盤として支えられており、人的資本の持続的な高度化を実現するものです。当社はこうしたエコシステムの進化を通じて、1人当たり付加価値の向上と企業価値の最大化を目指してまいります。
ウ.人材育成方針
人材育成方針の全体像
当社の人材戦略は、社員一人ひとりの成長・育成を起点とし、事業戦略と連動させて推進することを基本方針としています。両利きの経営の本格化に伴い、地域金融から非金融領域へと事業ポートフォリオを転換する過程で、各事業領域で求められる経験やスキルは多様化・高度化しています。
このような環境変化を踏まえ、当社は目指すべき人材像を「事業戦略を実現・発展できるプロフェッショナル人材」と再定義し、事業戦略ごとに必要な人材ポートフォリオを明確化したうえで、現状とのギャップを特定し、戦略実現に必要な施策を体系的に展開しています。具体的には、①経営人材の育成、②デジタル・AI活用人材の育成、③人員構成のシフトに向けた育成の3本柱により取組みを推進しています。
変革を主導する経営人材の育成
当社では「経営人材」を「社内外を問わず、経営資源(ヒト・モノ・カネ)を活用し、事業を構想・創出し、機動的に推進できる人材」と定義しています。地域金融機関として信頼性の高い金融サービスを提供しつつ、新ビジネス領域では地域課題の解決に挑戦・創造することを目指しており、その実現には事業を構想し推進できる経営人材がこれまで以上に必要となります。外部企業のニーズに応えつつ、将来的に社内の経営にも関与できる人材の継続的な輩出に加え、海外フィールドで事業を推進できるグローバル人材の育成にも取り組んでいきます。
当社では自律して学び続ける「リカレント教育」の重要性を推奨しています。社員の主体的な「学び」に対する費用補助を実施し、リスキリングおよびリカレント教育への継続的な取組みを推進しています。
そのなかでも、経営人材育成の中核として、当社は2020年より大学院(MBA等)での学びを経営戦略上の重要な要素と位置付け、構想力・論理的思考力・問題解決力など、変革を牽引するために必要な高度なスキルの体系的な習得を支援してきました。修了生・在学生の合計は2020年3月の2名から現時点で102名へと着実に拡大し、ビジネスプランの事業化、グループ会社・地域企業での取締役就任、30代若手社員のグループ会社社長就任など、実践的な成果も生まれています。また、今後はこうした「学び」に加えて「実践機会」の提供をさらに強化していきます。
QRインベストメントでのハンズオン業務やCCイノベーションでのコンサルティング業務など、社外で経営に実際に関与する機会を計画的に提供し、経験を重視した育成へと進化させます。学びと実践を両輪で回すことによって、構想から推進までを担える経営人材を継続的に輩出する体制を構築していきます。
デジタル・AIを活用できる人材の育成
両利き経営の本格化と人員減少を見据え、グループ全体の生産性向上と付加価値創出を図るため、当社ではデジタル・AIを活用しイノベーションを創出できる人材の育成を本格化させています。生成AIの台頭により業務の不確実性が高まる中、IT技術やAIを活用して自社や顧客に価値を提供できる人材の確保は、戦略実現に不可欠と捉えています。育成にあたっては、全社員を対象に基礎から戦略的なビジネス創出までを段階的に担う3層構造を設定し、影響範囲と求められる役割に応じて、レベル1.0「自身の業務を効率化できる」、レベル2.0「所属する部署やチームを巻き込み業務変革や新サービスを生み出せる」、レベル3.0「地域や組織全体を巻き込み新たなビジネスモデルを構築できる」と定義しました。今後5年間で全社員がレベル1.0以上に到達することを目標とするとともに、新たなビジネスモデルを構築できる3.0人材についても両輪で計画的に育成していきます。それにより、生成AIの活用を含めたデジタル人材育成を推進し、全社員の生産性向上と新たな価値創出を図っていきます。
AI活用に向けた取組み~Copilotチャンピオン~
業務の抜本的な変革を現場発で推進するため、当社では各部門およびグループ会社に「Copilotチャンピオン」を配置し、生成AI・AIエージェントの実務適用を牽引する取組みを開始しました。2024年11月のCopilot導入以降、利用者は着実に拡大し、現在は約900名が日常業務でCopilotを活用するまでに至っています。チャンピオンは自部門の定型業務をAIに置き換える実証を主導するとともに、得られた知見を組織横断で水平展開する役割を担います。月次の成果共有会や社内コミュニティを通じて先進事例とユースケースを蓄積し、法人営業担当者向け勉強会、個人部門の「Copilot活用Labo」、AIエージェント勉強会など、業務特性や習熟度に応じた学びの場を継続的に運営することで、現場主導の業務改革を組織能力として定着させています。これらの取組みにより、定型業務から高付加価値業務への人材シフトを着実に進め、生産性の飛躍的向上と新たな顧客価値の創出につなげていきます。中長期的には「人:AI=9:1から5:5へ」と業務体制を抜本的に変革する方針のもと、AIを前提とした業務フローへの再設計や、業務を自律的に遂行するAIエージェントの本格活用につなげ、戦略実現を支える業務体制の構築を加速していきます。
エ.活躍
事業ポートフォリオに合わせた人材シフト
当社は、「両利きの経営」の実現に向け、事業ポートフォリオの転換と連動した人材ポートフォリオの変革を推進しています。コンサルティング、海外戦略、キャッシュレス、デジタル・システム、投資・運用、地域活性化といった新規ビジネス領域に従事する社員数は、2026年3月末時点で488名まで拡大しており、2030年3月期には699名へと引き上げることを目標としています。
今後は、AIやデータ活用による業務の生産性向上を図りながら、新規ビジネス領域に従事する社員割合を一層高めていく方針です。人的資本とデジタル資本の融合による相乗効果を通じて、組織全体の競争力の向上を目指しています。
また、投資・運用事業の強化に加え、2027年1月に予定している次期勘定系システム「BankWill」の稼働や、その後の金融システムの他行展開を見据え、関係部門への計画的な人員シフトと専門人材の採用を推進しています。これにより、事業戦略の実現に向けた実行力の強化を図っていきます。
さらに、業務の効率化と付加価値創出を両立する観点から、AI等のデジタル技術を活用しながら業務構造の見直しを進めることで、人材をより高付加価値領域へと再配置しています。このような人材ポートフォリオの構築にあたっては、事業ポートフォリオごとに求められる人材要件の明確化が不可欠です。当社では、スキルマップ等を活用し、職務に必要なスキルセットの体系的な定義・可視化を進め、採用・育成・配置の各プロセスにおける人材マッチングの精度向上に取り組んでいます。
一方で、事業領域の拡大や求められる専門性の高度化に対し、人材要件の定義およびスキルの可視化についてはさらなる精緻化の余地があると認識しています。今後は、事業戦略との連動性を一層高めながら、人材要件の高度化とデータに基づく人材配置の最適化を推進してまいります。
地域へのプロフェッショナル人材輩出
当社の出向は、社員が経営人材として実践の場で価値を発揮する機会と位置付けています。
出向者人数は着実に増加しており、また求められる役割にも変化が見られます。近年は変化の激しい環境のなかでも、地域を牽引できるプロ経営者として期待する声が高まっています。具体的には、経営委任を受け取締役として転籍し代表取締役へ就任するケース、業務執行責任者として出向後に取締役へ転籍するケースなど、社員のキャリアと地域企業のニーズに合わせた機会を整えています。このようなプロ経営者としての活躍は、社員に多様な活躍機会を提供するとともに、地域企業の価値向上や地域社会への貢献につながっています。
オ.多様性(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン):誰もが活躍できる組織へ
女性活躍推進
当社は、多様な価値観を認め合い、社員一人ひとりがその能力を最大限に発揮できる組織の実現を目指しています。職種の公募制や昇進の手挙げ制、ジョブチャレンジ制度などを通じて、年齢や性別に寄らない挑戦機会を提供し、特に若手や女性の主体的なキャリア形成を後押ししています。
女性活躍の推進においては、女性管理職の登用を積極的に進めるとともに、コミュニティの場づくりのため、異業種で活躍する女性役員・社員との合同研修や、女性管理職間での意見交換会を実施しています。また、女性の活躍フィールドの拡大に向けて、パートタイマーから正社員への転換を推進しており正社員比率は2025年度に92.4%(2021年度比6.3%上昇)まで向上しています。
さらに、出産・育児等のライフイベントとキャリアの両立を支援するため、産前・育児休業中の社員へのワークショップを継続的に実施し、円滑な職場復帰と長期的なキャリア形成を支援しています。多様なライフステージにおいてもキャリアを継続し、能力を発揮できる組織づくりを進めています。
一方で、女性の活躍推進に関しては、管理職比率の向上や意思決定に関わるポジションに占める女性の割合については、なお改善の余地があると認識しています。特に法人分野など一部の事業領域においては、女性のキャリアが途切れることなく継続される環境整備が重要な課題となっています。
今後は、これらの課題を踏まえ、女性管理職の計画的な育成・登用に加え、キャリア形成の早期段階からの支援や、専門性の高い分野における継続的な活躍機会の創出を通じて、意思決定に参画する女性割合の向上を図ってまいります。
多様なバックグラウンドを持つ人材の採用
多様なバックグラウンドを持つ人材の採用にも注力しています。キャリア型人事制度のもとで多様な人材が活躍できる環境整備が進んだことにより、キャリア採用比率は2025年度に65.6%まで上昇しています。加えて、専門職採用(エキスパートコース)の新設や外国人留学生の採用拡大により、多様な専門性や価値観をもつ人材を取り込むことで、組織の競争力強化とイノベーション創出につなげています。
多様な働き方を可能にする制度
多様な働き方を実現するために制度整備も進めています。休暇や短時間勤務制度の対象を育児・介護に限定せず拡大するとともに、2024年3月よりフレックスタイム制度の対象者を拡大し、コアタイムを廃止したスーパーフレックス制度を導入しました。これにより、短時間勤務制度との併用による週4日勤務など、柔軟な働き方が可能となっています。
男女の賃金の差異解消に向けて
従来の人事制度では、勤続年数や「総合職・一般職」といったコース区分により、同じ業務内容(ジョブサイズ)でも男女間に大きな賃金の差異が生じていました。キャリア型人事制度開始以降のキャリア給の見直しでは、性別に関係なくジョブサイズに応じた公正な評価制度を導入し、役割ごとの賃金の差異は大幅に縮小されました。しかしながら、全体としての男女賃金の差異は依然として56.3%と大きく重要な課題として残っています。
これは、「女性の管理職昇進率が低く、上位職に就く女性が少ないこと」と、「従来のコース別人事制度の影響により、女性社員が個人部門やオペレーション部門に偏っていること」の2点を主要因として生じているものです。今後は、これまで以上に意欲的に挑戦する女性を支援し、性別に寄らず職位や役割の選択が可能となる体制づくりを進めていきます。
カ.組織風土:エンゲージメントとウェルビーイング
社員エンゲージメントが映す組織風土の進化
社員のエンゲージメントの状況を可視化する指標として、当社は2022年から半期ごとにeNPSSM(社員ネット・プロモーター・スコア)を測定し、社員の働きがいの変化を継続的に把握してきました。直近の第6回調査(2025/11)の平均推奨度は6.1点と、導入以降中長期的に上昇基調を辿り、過去最高スコアを更新しています。
eNPSスコアも初回(2022年1月)の▲52.4から最新では▲46.8へと改善し、業界平均(▲62.9)を一貫して上回り続けています。背景には、職場での1on1ミーティングの徹底、対話を通じた役割ベース賃金制度への見直し、キャリアデザイン研修の継続実施、ウェルカムミーティングなど、社員の声に真摯に向き合いながら一つひとつ施策を積み上げてきた取組みなどが挙げられます。
一方で、社名変更直後のスコアにおいて、「CCIグループのブランド理念に共感できる」にポジティブな回答をした社員の割合は77.7%から63.1%へ低下しました。スローガン「さあ、協創社会へ。」への共感は60.8%、事業戦略の目的・狙いへの共感は55.2%とどまり、いずれも改善余地があります。
こうした背景には、社名変更および「両利きの経営」の本格化に伴い、事業ポートフォリオが大きく転換する中で、企業としての存在意義や戦略と日々の業務との接続について、社員一人ひとりが自分ごととして再構築する必要が生じていることがあると認識しています。
これらの課題への対応として、当社ではトップマネジメントと社員の対話の量・質の両面を見直し、理念共感の再構築に取り組んでいます。CEO自らが直接社員と対話する「CEO1on1」「CEOと社員持株会との対話の機会」、「入社時のCEOを交えたウェルカムミーティング」や、各事業責任者が専門領域ごとに戦略を発信するコミュニケーション機会を通じて、経営の意図や戦略の背景を直接共有するとともに、社員の声を吸い上げる双方向の対話を促進しています。また、社内ポータルTeamsを活用した情報発信により、理念・戦略と日常業務を結び付ける取組みを進めています。
昨年からの改善事例として、女性社員のエンゲージメントの向上が挙げられます。女性のeNPSは2022年1月の▲71.2から2025年11月には▲60.4まで改善しており、その背景には、現場部門が主体となった働きがい向上施策があります。社員同士の対話を通じて業務の意義や価値を再定義する取組みを展開した結果、現場主導の内発的な動機づけと人事施策が連動し、エンゲージメント改善につながりました。
当社では、エンゲージメントサーベイを単なる測定にとどめることなく、グループ戦略会議において結果を共有し、各組織に課題の特定と改善施策の実行を行う運用を定着させています。部署別分析を基に、役員・部長が主体となって改善を推進するとともに、好事例を全社で共有することで、経営主導と現場主導の施策を組み合わせた改善サイクルを構築しています。今後も、サーベイ・分析・対話・改善・再測定のサイクルを継続的に回すことで、人的資本経営を測定可能な経営アジェンダとして定着させるとともに、両利きの経営を支える組織基盤の強化を図ってまいります。
フラットでアジャイルな組織
当社は、フラットな組織で、働きやすく・働きがいのある会社を目指しています。
年齢、性別、立場・役割に関係なく、社員一人ひとりが自律して考えて発言し、対話できる環境を大切にしています。全社ペーパーレス化やMicrosoft Teamsの活用による議論の見える化、役員フロアの廃止などの物理的な壁の廃止に合わせ、対話を重視したコミュニケーションなどの取り組みにより、心理的安全性が高くフラットな組織風土を実現しています。これにより、戦略の背景・目的から理解を深め、社員自らがオーナーシップマインドをもち、主体的な行動につなげるための取り組みを実施しています。
社員の健康とウェルビーイング
企業価値の最大化を支える人材エコシステムの基盤となるのは、社員が心身ともに健康で活躍できる状態にあることです。当社では、社員の健康支援において、会社・健康保険組合・社員組合の三者が密に連携し、健康経営の高度化に取り組んでいます。その結果、2025年には5年連続で「健康経営優良法人(ホワイト500)」の認定を受けるとともに、厚生労働省が定める総合評価指標において2年連続全国1位を獲得するなど、多面的な取組みが高く評価されています。
また、産業医、メンタルヘルス嘱託医、産業カウンセラー、精神保健福祉士、保健師、管理栄養士等で構成される「ウェルネスサポートチーム」を設置し、専門職による支援体制を整備しています。2025年度には、社員との相談・面談件数が延べ3,293回にのぼり、休職期間の短縮や欠勤率の低下を通じて、社員のパフォーマンス向上に寄与しています。さらに、2025年度より生活習慣の改善を支援する行動変容ツールを導入し、社員一人ひとりの健康データに基づく個別支援を強化しています。健康診断結果と連動した具体的な改善行動の可視化や継続的なフォローを通じ、単発的な施策にとどまらない持続的な健康行動の定着を促進しています。
これらの取組みに加え、三者連携による役割分担と情報共有のもと、健康課題の把握から施策の実行、効果検証に至るまで一体的に推進する体制を構築しています。これにより、実効性の高い健康施策の展開と継続的な改善サイクルの確立を図っています。
今後は、ヘルスデータの可視化・分析をさらに高度化し、個人単位の支援にとどまらず、組織単位での健康課題の特定と改善につなげることで、生産性向上および人的資本価値の最大化を目指してまいります。
また、業務効率化により時間外労働時間は月平均6.5時間程度、有給休暇取得率も約84%と、働きやすい環境が醸成されています。働きやすさに加え、働きがいも兼ね備えた「プラチナ企業」として認められています
育児・介護とキャリアの両立支援によるサステナブルな働き方の実現
当社では、多様な働き方を実現し、働きやすい職場環境整備を進めてきました。男性育児休業取得率は105.6%とほとんどの社員が育児休業を取得していますが、一方で平均取得日数は約15日と短期間にとどまっており、実質的な育児参画や家庭内の役割分担の変革には十分に至っていない点を課題と捉えています。
制度の存在は認知されているものの、具体的な取得時期や期間、業務引継ぎに対する理解不足や、職場風土への不安が長期取得を阻害する要因として顕在化しています。この課題に対し、当社では「制度の理解」「風土」「業務運営」の三層構造で打ち手を講じています。具体的には、パートナーが出産予定の社員に対し、「プレパパセミナー」を実施し、制度理解を促進しています。また、人材開発部長による上司・職場を巻き込みながら取得をすることの意識醸成に加え、業務分担や引継ぎの仕組み化を進め、取り組み事例を共有するなど長期取得を前提とした組織運営への転換を図っています。
介護分野においては、今後の人材戦略上の重要課題として、「潜在的なビジネスケアラーの把握」と「早期の制度理解促進」に取り組んでいます。当社では全社員を対象とした介護に関するアンケートを実施した結果、「介護制度があることは知っているが内容まで把握していない」が約62%と制度理解が不十分である社員が多数存在することがわかり、約90%の社員が将来的な介護への不安を抱えていることが明らかとなりました。こうした実態を踏まえ、まずは制度を正しく理解し、早期に備えることを目的として介護セミナーを実施しました。当該セミナーでは、介護保険制度や社内の両立支援制度の解説に加え、実際の介護経験者の事例紹介や専門家による講話を行い、社員の理解促進と心理的ハードルの低減を図っています。また、セミナー後には相談窓口の活用促進や継続的な情報提供を行い、制度を「知っている」状態から「使える」状態への転換を目指しています
ファイナンシャルウェルネスの取組み
当社は、人的資本経営の一環として、社員の中長期的な生活基盤の安定と主体的なキャリア形成を支援する観点から、ファイナンシャルウェルネス向上に取り組んでいます。全社員向け説明会に加え、NISA、持株会、確定拠出年金制度をテーマとした資産形成説明会を実施し、金融リテラシー向上と自律的な資産形成を支援しています。
また、従来の退職金制度に加え、退職金の一部を「キャリア支援金」として前払いで受け取ることができる制度を導入し、キャリア採用者を含め入社時期による不利益が生じにくい公平な制度設計とすることで、自己投資や長期資産形成に活用可能としています。今後も社員が安心したライフプラン設計ができるよう、キャリアと資産経営両面でのサポートを行ってまいります。
キ.コンプライアンス・安全な職場環境
当社では、コンプライアンスの強化に加え、社員一人ひとりが自らの良心と判断に基づき行動する「インテグリティ」の向上を重要なテーマと位置付けています。
経営層からの継続的なメッセージ発信に加え、研修や教育、実践的なディスカッションを通じて、社員一人ひとりのコンプライアンス意識の醸成を行っています。また、各業務部門や営業店等では、コンプライアンス責任者が中心となり、違反行為の未然防止に向けた取組みを強化しています。これにより、ルールの自己解釈や形骸化を防ぎ、社員が自律的に行動できる環境づくりを目指しています。コンプライアンス統括部門は、これらの取組みを支える実効性のあるモニタリング体制を整備し、継続的な改善を図っています。
毎年実施している「コンプライアンス意識調査」では、社員の意識浸透や企業風土の変化を把握し、その結果や内外環境の変化を踏まえ、コンプライアンス・プログラムの内容を継続的に見直しています。
上記のように、当社は「人こそが経営の根幹である」という考えのもと、経営戦略、特に新しい2ブランド体制における事業ポートフォリオと強く連動した人材戦略を推進してまいります。事業領域の拡大と地域貢献という高次の目標達成のため、多様な人材の活躍を支援し、働きがいのある組織風土の醸成し、そして強固なガバナンスと安全な職場環境の構築に、全社を挙げて積極的に投資し、取り組んでまいります。
ア.経営戦略と人材戦略の連動:事業ポートフォリオに沿った人材ポートフォリオの構築
当社は、2021年にグループシナジーの最大化と持続的な成長の実現を目的として持株会社体制へ移行しました。さらに、2025年10月には社名をCCIグループへ変更し、従来の「北國銀行ブランド」に加え、地域金融の枠を超えた事業領域の拡大や北陸以外・海外への展開を担う「CCIブランド」を加えた2ブランド体制へ移行しました。
本体制のもと、コンサルティング、海外展開、キャッシュレス、投資事業に加え、地域活性化等を担う新たなグループ会社(CCIクロスボーダー、CCIエンタベース等)を設立するなど、地域の社会課題解決を起点とした事業ポートフォリオの拡大を進めています。こうした事業ポートフォリオの転換と拡大を着実に実現していくためには、再構築された事業構造に適合した動的な人材ポートフォリオの構築と、それに基づく適切な人材配置が不可欠です。当社はこれを経営の最重要事項の一つと位置付けています。特に、成長領域および強化領域への人材の重点配置は、社員一人ひとりの創造的価値創出力を最大限に引き出し、高い付加価値の発揮につながるものと認識しています。
このような人材ポートフォリオの構築を実現する基盤として、「キャリア自律」を、個人の成長施策にとどまらず事業戦略を実行するための経営基盤として位置付けています。変化の激しい事業環境の下で組織が持続的に成長するためには、社員一人ひとりが自らの意思でキャリアを構想し、学習と挑戦を重ねていくことが不可欠であると考えています。こうした考え方に基づき、当社では勤務年数に依存しないジョブや役割に応じた処遇を実現するとともに、社員がリカレント教育や将来設計に主体的に投資できる環境整備を進めてきました。これらの取組みにより、人事機能は管理中心の役割から、事業ポートフォリオの転換を支える戦略機能へと進化しています。その結果、個人の成長と事業成長が相互に影響し合う好循環を創出し、人的資本経営の高度化を実現しています。
イ.人材戦略を支える基盤:人材エコシステム
当社は、急速に変化する事業環境と多様化するマーケットに対応し、持続的な企業価値向上と地域社会への貢献を両立するため、「人的資本への投資」を経営の重要施策と位置付けています。その中核となるのが「人材エコシステム」であり、採用・育成・配置・活躍・輩出の一連のプロセスを循環的に結び付け、人材価値の最大化を図っています。
当社は、新卒採用に加えキャリア採用や外部パートナーとの協業を通じて多様な専門性を取り込みつつ、社内においては教育施策や配置転換、公募・ジョブチャレンジ制度等を通じて挑戦機会を提供し、社員一人ひとりの能力発揮と成長を促進しています。
さらに、育成したプロフェッショナル人材を地域企業へ輩出し、経営課題の解決や価値創出に貢献するとともに、社外で培った知見を当社へ還流させることで、持続的な価値創出につながる双方向の人材循環を構築しています。これにより、社内外を横断した知見の循環が生まれ、事業ポートフォリオの高度化と持続的な企業価値向上につながっています。これらの取組みは、DE&I、ウェルビーイング、組織文化、挑戦を尊重するマインドセットを共通基盤として支えられており、人的資本の持続的な高度化を実現するものです。当社はこうしたエコシステムの進化を通じて、1人当たり付加価値の向上と企業価値の最大化を目指してまいります。
ウ.人材育成方針
人材育成方針の全体像
当社の人材戦略は、社員一人ひとりの成長・育成を起点とし、事業戦略と連動させて推進することを基本方針としています。両利きの経営の本格化に伴い、地域金融から非金融領域へと事業ポートフォリオを転換する過程で、各事業領域で求められる経験やスキルは多様化・高度化しています。
このような環境変化を踏まえ、当社は目指すべき人材像を「事業戦略を実現・発展できるプロフェッショナル人材」と再定義し、事業戦略ごとに必要な人材ポートフォリオを明確化したうえで、現状とのギャップを特定し、戦略実現に必要な施策を体系的に展開しています。具体的には、①経営人材の育成、②デジタル・AI活用人材の育成、③人員構成のシフトに向けた育成の3本柱により取組みを推進しています。
変革を主導する経営人材の育成
当社では「経営人材」を「社内外を問わず、経営資源(ヒト・モノ・カネ)を活用し、事業を構想・創出し、機動的に推進できる人材」と定義しています。地域金融機関として信頼性の高い金融サービスを提供しつつ、新ビジネス領域では地域課題の解決に挑戦・創造することを目指しており、その実現には事業を構想し推進できる経営人材がこれまで以上に必要となります。外部企業のニーズに応えつつ、将来的に社内の経営にも関与できる人材の継続的な輩出に加え、海外フィールドで事業を推進できるグローバル人材の育成にも取り組んでいきます。
当社では自律して学び続ける「リカレント教育」の重要性を推奨しています。社員の主体的な「学び」に対する費用補助を実施し、リスキリングおよびリカレント教育への継続的な取組みを推進しています。
そのなかでも、経営人材育成の中核として、当社は2020年より大学院(MBA等)での学びを経営戦略上の重要な要素と位置付け、構想力・論理的思考力・問題解決力など、変革を牽引するために必要な高度なスキルの体系的な習得を支援してきました。修了生・在学生の合計は2020年3月の2名から現時点で102名へと着実に拡大し、ビジネスプランの事業化、グループ会社・地域企業での取締役就任、30代若手社員のグループ会社社長就任など、実践的な成果も生まれています。また、今後はこうした「学び」に加えて「実践機会」の提供をさらに強化していきます。
QRインベストメントでのハンズオン業務やCCイノベーションでのコンサルティング業務など、社外で経営に実際に関与する機会を計画的に提供し、経験を重視した育成へと進化させます。学びと実践を両輪で回すことによって、構想から推進までを担える経営人材を継続的に輩出する体制を構築していきます。
デジタル・AIを活用できる人材の育成
両利き経営の本格化と人員減少を見据え、グループ全体の生産性向上と付加価値創出を図るため、当社ではデジタル・AIを活用しイノベーションを創出できる人材の育成を本格化させています。生成AIの台頭により業務の不確実性が高まる中、IT技術やAIを活用して自社や顧客に価値を提供できる人材の確保は、戦略実現に不可欠と捉えています。育成にあたっては、全社員を対象に基礎から戦略的なビジネス創出までを段階的に担う3層構造を設定し、影響範囲と求められる役割に応じて、レベル1.0「自身の業務を効率化できる」、レベル2.0「所属する部署やチームを巻き込み業務変革や新サービスを生み出せる」、レベル3.0「地域や組織全体を巻き込み新たなビジネスモデルを構築できる」と定義しました。今後5年間で全社員がレベル1.0以上に到達することを目標とするとともに、新たなビジネスモデルを構築できる3.0人材についても両輪で計画的に育成していきます。それにより、生成AIの活用を含めたデジタル人材育成を推進し、全社員の生産性向上と新たな価値創出を図っていきます。
AI活用に向けた取組み~Copilotチャンピオン~
業務の抜本的な変革を現場発で推進するため、当社では各部門およびグループ会社に「Copilotチャンピオン」を配置し、生成AI・AIエージェントの実務適用を牽引する取組みを開始しました。2024年11月のCopilot導入以降、利用者は着実に拡大し、現在は約900名が日常業務でCopilotを活用するまでに至っています。チャンピオンは自部門の定型業務をAIに置き換える実証を主導するとともに、得られた知見を組織横断で水平展開する役割を担います。月次の成果共有会や社内コミュニティを通じて先進事例とユースケースを蓄積し、法人営業担当者向け勉強会、個人部門の「Copilot活用Labo」、AIエージェント勉強会など、業務特性や習熟度に応じた学びの場を継続的に運営することで、現場主導の業務改革を組織能力として定着させています。これらの取組みにより、定型業務から高付加価値業務への人材シフトを着実に進め、生産性の飛躍的向上と新たな顧客価値の創出につなげていきます。中長期的には「人:AI=9:1から5:5へ」と業務体制を抜本的に変革する方針のもと、AIを前提とした業務フローへの再設計や、業務を自律的に遂行するAIエージェントの本格活用につなげ、戦略実現を支える業務体制の構築を加速していきます。
エ.活躍
事業ポートフォリオに合わせた人材シフト
当社は、「両利きの経営」の実現に向け、事業ポートフォリオの転換と連動した人材ポートフォリオの変革を推進しています。コンサルティング、海外戦略、キャッシュレス、デジタル・システム、投資・運用、地域活性化といった新規ビジネス領域に従事する社員数は、2026年3月末時点で488名まで拡大しており、2030年3月期には699名へと引き上げることを目標としています。
今後は、AIやデータ活用による業務の生産性向上を図りながら、新規ビジネス領域に従事する社員割合を一層高めていく方針です。人的資本とデジタル資本の融合による相乗効果を通じて、組織全体の競争力の向上を目指しています。
また、投資・運用事業の強化に加え、2027年1月に予定している次期勘定系システム「BankWill」の稼働や、その後の金融システムの他行展開を見据え、関係部門への計画的な人員シフトと専門人材の採用を推進しています。これにより、事業戦略の実現に向けた実行力の強化を図っていきます。
さらに、業務の効率化と付加価値創出を両立する観点から、AI等のデジタル技術を活用しながら業務構造の見直しを進めることで、人材をより高付加価値領域へと再配置しています。このような人材ポートフォリオの構築にあたっては、事業ポートフォリオごとに求められる人材要件の明確化が不可欠です。当社では、スキルマップ等を活用し、職務に必要なスキルセットの体系的な定義・可視化を進め、採用・育成・配置の各プロセスにおける人材マッチングの精度向上に取り組んでいます。
一方で、事業領域の拡大や求められる専門性の高度化に対し、人材要件の定義およびスキルの可視化についてはさらなる精緻化の余地があると認識しています。今後は、事業戦略との連動性を一層高めながら、人材要件の高度化とデータに基づく人材配置の最適化を推進してまいります。
地域へのプロフェッショナル人材輩出
当社の出向は、社員が経営人材として実践の場で価値を発揮する機会と位置付けています。
出向者人数は着実に増加しており、また求められる役割にも変化が見られます。近年は変化の激しい環境のなかでも、地域を牽引できるプロ経営者として期待する声が高まっています。具体的には、経営委任を受け取締役として転籍し代表取締役へ就任するケース、業務執行責任者として出向後に取締役へ転籍するケースなど、社員のキャリアと地域企業のニーズに合わせた機会を整えています。このようなプロ経営者としての活躍は、社員に多様な活躍機会を提供するとともに、地域企業の価値向上や地域社会への貢献につながっています。
オ.多様性(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン):誰もが活躍できる組織へ
女性活躍推進
当社は、多様な価値観を認め合い、社員一人ひとりがその能力を最大限に発揮できる組織の実現を目指しています。職種の公募制や昇進の手挙げ制、ジョブチャレンジ制度などを通じて、年齢や性別に寄らない挑戦機会を提供し、特に若手や女性の主体的なキャリア形成を後押ししています。
女性活躍の推進においては、女性管理職の登用を積極的に進めるとともに、コミュニティの場づくりのため、異業種で活躍する女性役員・社員との合同研修や、女性管理職間での意見交換会を実施しています。また、女性の活躍フィールドの拡大に向けて、パートタイマーから正社員への転換を推進しており正社員比率は2025年度に92.4%(2021年度比6.3%上昇)まで向上しています。
さらに、出産・育児等のライフイベントとキャリアの両立を支援するため、産前・育児休業中の社員へのワークショップを継続的に実施し、円滑な職場復帰と長期的なキャリア形成を支援しています。多様なライフステージにおいてもキャリアを継続し、能力を発揮できる組織づくりを進めています。
一方で、女性の活躍推進に関しては、管理職比率の向上や意思決定に関わるポジションに占める女性の割合については、なお改善の余地があると認識しています。特に法人分野など一部の事業領域においては、女性のキャリアが途切れることなく継続される環境整備が重要な課題となっています。
今後は、これらの課題を踏まえ、女性管理職の計画的な育成・登用に加え、キャリア形成の早期段階からの支援や、専門性の高い分野における継続的な活躍機会の創出を通じて、意思決定に参画する女性割合の向上を図ってまいります。
多様なバックグラウンドを持つ人材の採用
多様なバックグラウンドを持つ人材の採用にも注力しています。キャリア型人事制度のもとで多様な人材が活躍できる環境整備が進んだことにより、キャリア採用比率は2025年度に65.6%まで上昇しています。加えて、専門職採用(エキスパートコース)の新設や外国人留学生の採用拡大により、多様な専門性や価値観をもつ人材を取り込むことで、組織の競争力強化とイノベーション創出につなげています。
多様な働き方を可能にする制度
多様な働き方を実現するために制度整備も進めています。休暇や短時間勤務制度の対象を育児・介護に限定せず拡大するとともに、2024年3月よりフレックスタイム制度の対象者を拡大し、コアタイムを廃止したスーパーフレックス制度を導入しました。これにより、短時間勤務制度との併用による週4日勤務など、柔軟な働き方が可能となっています。
男女の賃金の差異解消に向けて
従来の人事制度では、勤続年数や「総合職・一般職」といったコース区分により、同じ業務内容(ジョブサイズ)でも男女間に大きな賃金の差異が生じていました。キャリア型人事制度開始以降のキャリア給の見直しでは、性別に関係なくジョブサイズに応じた公正な評価制度を導入し、役割ごとの賃金の差異は大幅に縮小されました。しかしながら、全体としての男女賃金の差異は依然として56.3%と大きく重要な課題として残っています。
これは、「女性の管理職昇進率が低く、上位職に就く女性が少ないこと」と、「従来のコース別人事制度の影響により、女性社員が個人部門やオペレーション部門に偏っていること」の2点を主要因として生じているものです。今後は、これまで以上に意欲的に挑戦する女性を支援し、性別に寄らず職位や役割の選択が可能となる体制づくりを進めていきます。
カ.組織風土:エンゲージメントとウェルビーイング
社員エンゲージメントが映す組織風土の進化
社員のエンゲージメントの状況を可視化する指標として、当社は2022年から半期ごとにeNPSSM(社員ネット・プロモーター・スコア)を測定し、社員の働きがいの変化を継続的に把握してきました。直近の第6回調査(2025/11)の平均推奨度は6.1点と、導入以降中長期的に上昇基調を辿り、過去最高スコアを更新しています。
eNPSスコアも初回(2022年1月)の▲52.4から最新では▲46.8へと改善し、業界平均(▲62.9)を一貫して上回り続けています。背景には、職場での1on1ミーティングの徹底、対話を通じた役割ベース賃金制度への見直し、キャリアデザイン研修の継続実施、ウェルカムミーティングなど、社員の声に真摯に向き合いながら一つひとつ施策を積み上げてきた取組みなどが挙げられます。
一方で、社名変更直後のスコアにおいて、「CCIグループのブランド理念に共感できる」にポジティブな回答をした社員の割合は77.7%から63.1%へ低下しました。スローガン「さあ、協創社会へ。」への共感は60.8%、事業戦略の目的・狙いへの共感は55.2%とどまり、いずれも改善余地があります。
こうした背景には、社名変更および「両利きの経営」の本格化に伴い、事業ポートフォリオが大きく転換する中で、企業としての存在意義や戦略と日々の業務との接続について、社員一人ひとりが自分ごととして再構築する必要が生じていることがあると認識しています。
これらの課題への対応として、当社ではトップマネジメントと社員の対話の量・質の両面を見直し、理念共感の再構築に取り組んでいます。CEO自らが直接社員と対話する「CEO1on1」「CEOと社員持株会との対話の機会」、「入社時のCEOを交えたウェルカムミーティング」や、各事業責任者が専門領域ごとに戦略を発信するコミュニケーション機会を通じて、経営の意図や戦略の背景を直接共有するとともに、社員の声を吸い上げる双方向の対話を促進しています。また、社内ポータルTeamsを活用した情報発信により、理念・戦略と日常業務を結び付ける取組みを進めています。
昨年からの改善事例として、女性社員のエンゲージメントの向上が挙げられます。女性のeNPSは2022年1月の▲71.2から2025年11月には▲60.4まで改善しており、その背景には、現場部門が主体となった働きがい向上施策があります。社員同士の対話を通じて業務の意義や価値を再定義する取組みを展開した結果、現場主導の内発的な動機づけと人事施策が連動し、エンゲージメント改善につながりました。
当社では、エンゲージメントサーベイを単なる測定にとどめることなく、グループ戦略会議において結果を共有し、各組織に課題の特定と改善施策の実行を行う運用を定着させています。部署別分析を基に、役員・部長が主体となって改善を推進するとともに、好事例を全社で共有することで、経営主導と現場主導の施策を組み合わせた改善サイクルを構築しています。今後も、サーベイ・分析・対話・改善・再測定のサイクルを継続的に回すことで、人的資本経営を測定可能な経営アジェンダとして定着させるとともに、両利きの経営を支える組織基盤の強化を図ってまいります。
フラットでアジャイルな組織
当社は、フラットな組織で、働きやすく・働きがいのある会社を目指しています。
年齢、性別、立場・役割に関係なく、社員一人ひとりが自律して考えて発言し、対話できる環境を大切にしています。全社ペーパーレス化やMicrosoft Teamsの活用による議論の見える化、役員フロアの廃止などの物理的な壁の廃止に合わせ、対話を重視したコミュニケーションなどの取り組みにより、心理的安全性が高くフラットな組織風土を実現しています。これにより、戦略の背景・目的から理解を深め、社員自らがオーナーシップマインドをもち、主体的な行動につなげるための取り組みを実施しています。
社員の健康とウェルビーイング
企業価値の最大化を支える人材エコシステムの基盤となるのは、社員が心身ともに健康で活躍できる状態にあることです。当社では、社員の健康支援において、会社・健康保険組合・社員組合の三者が密に連携し、健康経営の高度化に取り組んでいます。その結果、2025年には5年連続で「健康経営優良法人(ホワイト500)」の認定を受けるとともに、厚生労働省が定める総合評価指標において2年連続全国1位を獲得するなど、多面的な取組みが高く評価されています。
また、産業医、メンタルヘルス嘱託医、産業カウンセラー、精神保健福祉士、保健師、管理栄養士等で構成される「ウェルネスサポートチーム」を設置し、専門職による支援体制を整備しています。2025年度には、社員との相談・面談件数が延べ3,293回にのぼり、休職期間の短縮や欠勤率の低下を通じて、社員のパフォーマンス向上に寄与しています。さらに、2025年度より生活習慣の改善を支援する行動変容ツールを導入し、社員一人ひとりの健康データに基づく個別支援を強化しています。健康診断結果と連動した具体的な改善行動の可視化や継続的なフォローを通じ、単発的な施策にとどまらない持続的な健康行動の定着を促進しています。
これらの取組みに加え、三者連携による役割分担と情報共有のもと、健康課題の把握から施策の実行、効果検証に至るまで一体的に推進する体制を構築しています。これにより、実効性の高い健康施策の展開と継続的な改善サイクルの確立を図っています。
今後は、ヘルスデータの可視化・分析をさらに高度化し、個人単位の支援にとどまらず、組織単位での健康課題の特定と改善につなげることで、生産性向上および人的資本価値の最大化を目指してまいります。
また、業務効率化により時間外労働時間は月平均6.5時間程度、有給休暇取得率も約84%と、働きやすい環境が醸成されています。働きやすさに加え、働きがいも兼ね備えた「プラチナ企業」として認められています
育児・介護とキャリアの両立支援によるサステナブルな働き方の実現
当社では、多様な働き方を実現し、働きやすい職場環境整備を進めてきました。男性育児休業取得率は105.6%とほとんどの社員が育児休業を取得していますが、一方で平均取得日数は約15日と短期間にとどまっており、実質的な育児参画や家庭内の役割分担の変革には十分に至っていない点を課題と捉えています。
制度の存在は認知されているものの、具体的な取得時期や期間、業務引継ぎに対する理解不足や、職場風土への不安が長期取得を阻害する要因として顕在化しています。この課題に対し、当社では「制度の理解」「風土」「業務運営」の三層構造で打ち手を講じています。具体的には、パートナーが出産予定の社員に対し、「プレパパセミナー」を実施し、制度理解を促進しています。また、人材開発部長による上司・職場を巻き込みながら取得をすることの意識醸成に加え、業務分担や引継ぎの仕組み化を進め、取り組み事例を共有するなど長期取得を前提とした組織運営への転換を図っています。
介護分野においては、今後の人材戦略上の重要課題として、「潜在的なビジネスケアラーの把握」と「早期の制度理解促進」に取り組んでいます。当社では全社員を対象とした介護に関するアンケートを実施した結果、「介護制度があることは知っているが内容まで把握していない」が約62%と制度理解が不十分である社員が多数存在することがわかり、約90%の社員が将来的な介護への不安を抱えていることが明らかとなりました。こうした実態を踏まえ、まずは制度を正しく理解し、早期に備えることを目的として介護セミナーを実施しました。当該セミナーでは、介護保険制度や社内の両立支援制度の解説に加え、実際の介護経験者の事例紹介や専門家による講話を行い、社員の理解促進と心理的ハードルの低減を図っています。また、セミナー後には相談窓口の活用促進や継続的な情報提供を行い、制度を「知っている」状態から「使える」状態への転換を目指しています
ファイナンシャルウェルネスの取組み
当社は、人的資本経営の一環として、社員の中長期的な生活基盤の安定と主体的なキャリア形成を支援する観点から、ファイナンシャルウェルネス向上に取り組んでいます。全社員向け説明会に加え、NISA、持株会、確定拠出年金制度をテーマとした資産形成説明会を実施し、金融リテラシー向上と自律的な資産形成を支援しています。
また、従来の退職金制度に加え、退職金の一部を「キャリア支援金」として前払いで受け取ることができる制度を導入し、キャリア採用者を含め入社時期による不利益が生じにくい公平な制度設計とすることで、自己投資や長期資産形成に活用可能としています。今後も社員が安心したライフプラン設計ができるよう、キャリアと資産経営両面でのサポートを行ってまいります。
キ.コンプライアンス・安全な職場環境
当社では、コンプライアンスの強化に加え、社員一人ひとりが自らの良心と判断に基づき行動する「インテグリティ」の向上を重要なテーマと位置付けています。
経営層からの継続的なメッセージ発信に加え、研修や教育、実践的なディスカッションを通じて、社員一人ひとりのコンプライアンス意識の醸成を行っています。また、各業務部門や営業店等では、コンプライアンス責任者が中心となり、違反行為の未然防止に向けた取組みを強化しています。これにより、ルールの自己解釈や形骸化を防ぎ、社員が自律的に行動できる環境づくりを目指しています。コンプライアンス統括部門は、これらの取組みを支える実効性のあるモニタリング体制を整備し、継続的な改善を図っています。
毎年実施している「コンプライアンス意識調査」では、社員の意識浸透や企業風土の変化を把握し、その結果や内外環境の変化を踏まえ、コンプライアンス・プログラムの内容を継続的に見直しています。
上記のように、当社は「人こそが経営の根幹である」という考えのもと、経営戦略、特に新しい2ブランド体制における事業ポートフォリオと強く連動した人材戦略を推進してまいります。事業領域の拡大と地域貢献という高次の目標達成のため、多様な人材の活躍を支援し、働きがいのある組織風土の醸成し、そして強固なガバナンスと安全な職場環境の構築に、全社を挙げて積極的に投資し、取り組んでまいります。