有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2021/06/24 15:00
【資料】
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【項目】
161項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループでは、以下のとおり経営理念を掲げ、全役職員が共有しております。
日本のITサービスを変えるテクノロジーコンサルティング
● 企業を変革するビジネスパートナー
我々はレガシーと最先端の双方を熟知したITプロフェッショナル集団。システム構築から内製化まで高付加価値サービスを提供し、クライアントのビジネスモデル変革や新規サービス開発を実現します。
● 時代が求める、時代に先駆けるIT人材を育成
デジタル技術が企業変革を加速する時代。1)世界レベルのテックナレッジによりシステムを最適構築するアーキテクト、2)デジタル変革を成功に導くプロジェクトマネジメント、3)システム内製化を具現するイネーブルメントの3つをコア・コンピタンスとしたITプロフェッショナルを育成します。
● 健全な企業文化と健全な経営
挑戦・互助・公正を尊重する企業文化を育み、楽しく豊かに働く環境を提供。日本を支えるITサービス産業の一員として正々堂々と経営を行い、社会の発展に貢献します。

当社グループは2003年4月の当社設立当初から、ITコンサルティング力とアウトソーシングを融合し、お客様にとってより付加価値の高いサービスの提供を目指して事業を行ってまいりました。
これまで培ってきたお客様へ確実にサービスをデリバリーしていく能力は、プロジェクトマネジメント力・技術力の向上により安定したものになってきております。
近年、クラウドコンピューティングが発達し、IoT、ビッグデータ、AI、RPAなど新たな技術が生まれ、これまで以上にテクノロジーを使ってどのようにお客様のビジネスを高度化していくかということが重要になってきております。
このような中で当社グループは、「テクノロジーコンサルティング」の強化と、当社グループ発の革新的な製品・サービスをお客様に提供していきたいと考えており、ITコンサルティングとITシステム開発の双方向からクライアント企業のDX推進を支援することを経営方針として事業を展開しております。
(2)目標とする経営指標
当社グループは持続的な成長を通じた企業価値の向上を目指しており、事業拡大の観点から売上高を重要な経営指標と位置づけ、収益力の強化に邁進してまいります。また、強固な経営基盤及び高利益体質を構築すべく、営業利益及び営業利益率を重要な経営指標と位置づけ、経営の効率化を図ってまいります。
(3)経営環境及び経営戦略
当社グループがターゲットとするDX市場は、調査会社IDC Japan株式会社が2021年4月に発表した「国内第3のプラットフォーム向けITサービス市場予測、2021年~2025年」によると、「エンタープライズモビリティ」、「ビジネスアナリティックス」、「クラウド」及び「ソーシャルビジネス」の4つの要素で構成される新しいテクノロジープラットフォームに関連したITサービス市場であると考えられています。同市場は高成長を継続しておりますが、なかでもインターネットを通じてITサービスを提供する「クラウド」やデータを基に経営施策を分析、考案していく「ビジネスアナリティックス」といった領域においては、2020年から2025年にかけてCAGR(年平均成長率)10.5%~32.1%の成長が見込まれております。この領域は、当社グループが設立以来ITコンサルティングを通じて、知見を培ってきた領域でもあります。
また、当社ではDXが進む方向性を以下のとおり考えており、AIやRPAなどを用いた生産性向上を主眼とした黎明期から本格的なDXへ移行するなかで、当社グループの持つ技術力や知見に対する需要は今後も堅調に推移することが期待されます。
How志向からWhat志向のDXへ
作業の生産性向上からデジタル技術による顧客への新たな価値提供という本来の目的に向けたデータ活用や、顧客接点のデジタル化といった当社グループの得意領域へ、DXのフォーカスが移行するものと考えております。
個別適用アプローチの限界から全体最適へ
DXの本来の目的に沿った新旧技術の融合・最適運用が求められるようになり、当社グループが創業以来培ってきた、事業の全体像を見通して最適なシステムやビジネスモデルを設計する「アーキテクチャ思考」アプローチが重要になると考えております。
システム内製化への動きが加速
ITベンダー依存では不可逆的な変化に対して即時に対応することが困難です。今後は、高い技術力や知見に基づくイネーブルメント(内製化支援)が強く求められるようになるものと考えております。
このような経営環境の下、当社グループはこれまで培ってきた最新ITソリューション及びクラウドサービスの活用力等を活かして、DXによる新たな価値創出を念頭に、各種テックを統合的な視点から最適運用し、プロジェクトの規模を問わず将来的な拡張性を維持し、活用する中で発生する新たな課題に対して素早く対応することのできるシステムやサービスを提供してまいります。
その実現に向けて、当社グループでは今後の経営戦略上の主要な施策として、(a)テックパートナーとの協業推進と(b)マーケティングへの投資を進め、成長著しいDX市場で顧客基盤を拡大するとともに、(c)既存サービスの高収益化と(d)新たな収益機会の創出により顧客あたり収益を最大化することを掲げて、その実行に努めてまいります。
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(a)テックパートナーとの協業推進
DX推進に必要なソフトウエアやクラウドサービスを提供するテックパートナーとは、その顧客に対してソフトウエアやクラウドサービスの活用支援を当社が行うことで協力関係を強固なものにし、継続的な新規顧客開拓を実現します。
ソリューションごとの主要テックパートナー(2021年3月時点)
・ビジュアルによる分析ソリューション:Tableau、 WingArc1st
・CRMプラットフォーム:Salesforce.com
・自然言語生成サービス:Wordsmith
・対話型人工知能(Conversational AI)ソリューション:Kore.ai
・データマネジメントツール:Syniti
・クラウドインフラ:AWS
(b)マーケティングへの投資
各種マーケティング施策を企画・実行し、当社のブランド認知を高め、新規顧客との接触機会を増加させることで顧客獲得能力の増強を図ります。
マーケティング施策期待される効果概 要
WEBサイト、SNSなどの自社メディア開発・ブランド認知向上
・リード獲得
DXを指向する企業担当者や新たな技術情報を求めているエンジニアに対して、当社で取り扱っている技術に関する情報や、プロジェクトから得られた知見等を継続的に発信し、検索認知度を向上させ、集客力を高めていく予定です。ブランド認知の向上に加えて、特定技術テーマにおけるリード獲得を狙います。具体的には以下の通りです。
・公式ブログ「テックブログ ENABLE」
2021年8月に当社のテクノロジー力を示し、新規顧客リード、採用補強を目的にスタートします。
・コーポレートサイト
2021年7月に経営理念「The PLEDGE」掲載、IRサイトをオープンする予定です。
2021年8月以降、マーケティングサイト(サービス・製品等)を順次改修予定です。
書籍出版・ブランド認知向上
・興味喚起
当社の最大の競争力であるであるテクノロジーコンサルタントの在り方や育成について書籍を出版。販促による認知向上やトップセールスツールとして活用していきます。2021年10月にIT出版社の大手クロスメディア・パブリッシング(発売インプレス)より書籍を刊行予定です。
ウェビナー・ブランド認知向上
・リード獲得
各種ITツールやその導入・活用に関するウェビナーを定期開催。ブランド認知向上とともに、新規顧客の獲得を目指します。
2020年8月から2021年5月までに、インテリジェントオートメーションで6回、デジタルマイグレーションで1回、データストラテジーで3回実施しており、今後も年間通じて継続的に10回程度実施予定です。

(c)既存サービスの高収益化
当社グループのサービス提供実績を積み上げていくことで提案価値を強化するとともに、獲得単価の交渉力を上げ、案件ごとの受注金額の向上を図ってまいります。また、サービス工程の標準化やナレッジの共有等により粗利率を改善し、案件ごとの収益向上を図ってまいります。
(d)新たな収益機会の創出
当社グループの対応可能な技術を拡大することで課題解決領域を広げ、新たな収益機会を創出してまいります。2021年7月期には、新たに3つのテクノロジー製品についてパートナー契約などを結び取り扱いの拡大をしております。
施策期待される効果
マーケットリーダー製品の取り扱い大きな需要の獲得により売上拡大に即効性
新興の技術や製品の取り扱い将来的な需要増を見込んだ先行投資によって差別化を図る
複数製品による機能の網羅性の拡大クロスセル機会の創出

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
①最先端IT技術への対応
これまでIT業界はIoT、ビッグデータ、AIといった新たな技術により発展を遂げてきました。IT技術の進化は現在も急速に進んでおり、IT技術をどのように使ってクライアント企業のビジネスを高度化していくかということがこれまで以上に重要になってきています。当社グループでは、最先端IT技術の発掘に取り組むとともに、それらに対する理解を深め、活用方法を日々研究しております。また、最先端技術と既存技術との融合も視野に入れることで、これまで不可能とされていた技術への挑戦を行い、より付加価値の高いサービスの提供を目指しております。
②市場変化への対応
IT業界は、今後も技術革新や新たなサービスモデル等により、既存サービス・製品の陳腐化、代替サービス、類似サービスの登場により競争の変化が起こると考えられます。これらの変化に対応するために、市場動向を把握し、クライアント企業にとって最適なソリューションを提供し続けられるよう努めております。今後も市場のニーズを先取りしたサービス・製品を開発し、市場の変化に対応していくため、組織体制及び経営体制の強化を継続的に行ってまいります。
③当社及び当社サービスの認知度向上
当社グループは、最新のIT技術を活用したサービス及び製品を提供しており、事業の拡大に向けて、より多くの方に安心してサービス・製品を利用していただけるよう、当社グループ及び当社グループのサービス・製品の知名度や信頼を向上させることが重要であると認識しております。当社グループは引き続き高品質のサービス・製品の提供を通じて、信頼の獲得に努めるほか、プロモーション活動の強化にも努め、認知度向上を図ってまいります。
④優秀な人材確保と組織体制の強化
当社グループは、継続的に事業拡大を行うために、優秀な人材を十分に確保することが課題と考えております。今後は、高い専門性を有した人材を育成することで、市場の変化に耐えうる組織基盤を構築する考えであります。
そのため、新卒採用の強化と経験者の中途採用を継続的に行うと同時に、社内外の研修など教育制度を整備し、同時に人事評価制度の改善や、イノベーションを奨励する労働環境を作ることで従業員のモチベーションを高め、優秀な人材の確保と定着を促進していく方針であります。
⑤内部管理体制の強化
当社グループでは、企業価値最大化のため、業務の拡大に合わせて内部管理体制を強化することが必要であると認識しております。今後も、財務分析の強化、リスク管理の徹底等、健全な企業経営に必要な体制を強化するよう取り組んでまいります。
⑥財務体質の健全化
当社グループでは、効率的な経営を推進するために、収益力の維持・向上を図ると共に、自己資本比率を高める財務体質の改善が重要であると認識しており、キャッシュ・フローの向上及び借入金の圧縮に取り組んでまいります。