有価証券報告書-第7期(2022/03/01-2023/02/28)

【提出】
2023/05/26 15:00
【資料】
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【項目】
105項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において、当社が判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社は、日本の未来を創るために、今までの価値観や常識、風習から脱却し、新たな価値を創造し続け、日本経済を成長させる必要があると考えております。私たちは経営理念(ミッション、ビジョン、バリュー)を定め、新しい技術で世の中にポジティブなエネルギーを与え、実りをもたらす存在であり続けるプロフェッショナル集団として、日本経済の成長、社会の発展に貢献したいと考えております。
①ミッション
「先進テクノロジーを利用し、お客様の成長と変革に貢献するビジネスパートナーになる」
②ビジョン
「企業の経済活動を活性化し、世の中にポジティブなエネルギーを与え、実りをもたらす存在であり続けることで社会に貢献する」
③バリュー
「わくわく」何事にもポジティブに好奇心をもつ
「With Customer」顧客にとっての課題解決へ
「プロフェッショナル」価値観や常識を疑い、誠実に行動する
「チャレンジ」経験をリセットし、学習し続け、与え、共有する
(2)経営環境及び中長期的な経営戦略
当社のクラウドソリューション事業は、クラウド市場に属しております。
当市場においては、Gartnerの調査(世界のIaaSパブリッククラウドサービスの市場シェア2018年-2019年)によると、パブリッククラウドの市場シェアは2019年に37.3%成長し、当社が取扱いをしている「Amazon Web Services」(AWS)、「Microsoft Azure」(Azure)及び「Google Cloud」も成長しております。
IDC Japanの調査(国内クラウド需要調査2021年10月実施)によると、複数のクラウドを統合管理したいというニーズは、現状は21.8%でありますが、2年後に目指す姿としては47.5%となっており、企業におけるマルチクラウド(複数のパブリッククラウド)の利用は進んでいくものと見ております。また、ERP市場においては、ITRの調査(ITR Market View:ERP市場2021)によると、ERPパッケージのIaaSでの稼働は、2018年度から2020年度にかけて20%程度成長しており、今後もこの傾向が続くと予測され、ERPのクラウド化が進んでいくものと見ております。
クラウド市場は、複数のクラウドサービスを適材適所に使い分けるハイブリッド/マルチクラウドを利用してビジネスの強化を図るエンタープライズ分野の大規模ユーザーを中心に拡大し、本格的な普及期に入ったと認識しております。
新技術の開発・提供、製品・サービスの機能・性能に対する価値を提供することで成長を実現した初期市場とは異なり、成長市場で持続的な成長を続けるためには環境の変化を見越した事業戦略の立案・実行力と持続的成長を支える経営基盤の強化が必要であると認識しております。
また、新しい業種や導入先企業の規模などに応じて多くのクラウドサービスが存在するため、規模の大小を問わず競合企業が複数存在しており、クラウドの普及に伴い、今後も競合企業の新規参入が予測されます。
経済産業省が発表したレポート(ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開2018年9月7日)によると、複雑化したシステムの運用コスト高騰など「技術的負債」(レガシーシステムのブラックボックス化)、IT人材不足(2025年に43万人不足)、分断されたシステムによるデータ活用やデジタルトランスフォーメーションの遅れといった諸問題が提起されています。当社は、顧客企業のデジタルトランスフォーメーションを実現する為のプラットフォームを構築すると共に、顧客企業のデジタルトランスフォーメーションに向けた取り組みを支援してまいります。
また、新型コロナウイルスの感染拡大により、場所にこだわらない働き方(リモートワーク)が世間に浸透し、結果として各企業におけるクラウド化への考えが高まる契機となりました。
このような経営環境を踏まえ、当社が属しているクラウド業界は今後も引き続き伸長していくものと考えており、特にデジタルトランスフォーメーションに関する取組みは、新型コロナウイルスの感染拡大により、企業においてより活発になるものと考えております。当社の「データ分析基盤構築」及び「クラウドアプリケーション開発」をベースとしたクラウド技術及びその提供実績は、データを積極的に活用することにより事業拡大を推進していく企業にとって必要とされるものと認識しております。
当社は、それら環境も踏まえ、MSP(クラウド上のサーバーの監視・バックアップ等の運用代行及び保守等に関するサービス)並びにクラウドライセンスリセール(顧客企業にパブリッククラウドやセキュリティソフトウエア等のライセンスを販売し月額課金を代行するサービス)を中心としたストック型収益モデルを構築することで継続的な成長及び安定的な収益モデルの構築を推進してまいります。また、当社の売上高の構成は、ストック型収益のみならず、フロー型収益も伴います。フロー型収益には、クラウドインテグレーション(主に、顧客企業へのコンサルティング、基盤設計、基盤構築、移行を行うサービス)があります。
当社が推進する成長戦略の概要は以下の様になります。
①基幹システムクラウド移行
企業の基幹システムのクラウド化(従来型オンプレミスからクラウド/標準化への移行)は、未だ進んでいない顧客が多く存在していると見ており、当社としては、大規模な基幹システム(SAPシステム含む)のクラウド移行の案件獲得を主なターゲットとしております。
②顧客企業のデジタルトランスフォーメーションを実現するプラットフォーム構築
デジタルトランスフォーメーション推進を実現するにあたり、当社で提供実績のある「データ分析基盤構築」及び「クラウドアプリケーション開発」をベースに、顧客企業の新たなビジネスモデルの実現に向けて、クラウドの持つ技術の活用、開発により、レガシーシステムの複雑化・ブラックボックス化した状態を解消し、既存システムを廃棄・刷新することで、既存データを活用したデジタルトランスフォーメーションが可能になり、新たなデジタル技術を導入し、迅速なビジネスモデル変革を実現することを支援してまいります。
③セキュリティソリューションの提供
パブリッククラウドを安心して利用し、セキュアなデジタルトランスフォーメーションを推進するために、セキュリティソリューションの取り組みを開始しております。具体的には、コンプライアンス&ガバナンス対策をはじめ、WAF(Webアプリケーションファイアウォール)、脆弱性診断等、サードパーティソリューションを、当社のMSPとクラウドライセンスリセールを組み合わせたサービスパッケージ「BeeX Plus」へ組み込み、運用サービスとして提供しております。デジタルトランスフォーメーションに求められるデバイスからクラウドまでのトータルセキュリティを順次拡大してまいります。
④中小企業のクラウド化支援パートナー施策
各地域で事業活動しているパートナー(ローカルパートナー)と連携して、中小企業のクラウド化を支援していく取り組みを開始しております。当社からパブリッククラドに関するサービス(クラウドソリューション事業のサービス)をローカルパートナーに提供することで、ローカルパートナーはクラウド移行・クラウド運用の不安や技術力不足を解消すると共にパブリッククラウドを自社ソリューションと連携して提案・提供が可能になります。
今後のこの取り組みを推進し、中小企業の分野に参入することで顧客層の裾野を広げ、MSPとクラウドライセンスリセールの売上拡大に繋げてまいります。
常に変化する経営環境、市場動向に的確に対処しながら、企業価値のさらなる向上に向けて事業展開を進めてまいります。加えて、社内開発のほか他社との協業・業務提携等により、次なる収益の柱となる新規事業を積極的に開発・育成してまいります。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、まだ成長途上の段階にあり、事業規模の速やかな拡大と利益創出基盤の拡大が急務であると考えており、当面の指標としては売上高及び経常利益を重視しております。また、持続的な成長のためには財務基盤の強化を図る必要があると考えており、財務的安定性の指標として、自己資本比率についても着目しております。
非財務指標としては、クラウドインテグレーションのプロジェクト数、MSPの顧客数、クラウドライセンスリセールのアカウント数を活用しております。当社の収益源は、クラウドソリューション事業におけるこれらの3サービスに係る売上であり、プロジェクト数、顧客数及びアカウント数を増加させることで将来の収益拡大が見込まれます。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
今後当社が成長を遂げていくために優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題は以下の通りであります。
①クラウドビジネスの強化・拡大
当社は親会社である株式会社テラスカイの一事業であった「AWS事業部」を吸収分割にて事業を統合する等して、AWSを中心としたクラウドビジネスの強化・拡大を図ってまいりました。また、AWSに限らずAzureの取扱いも行っており、加えて、Google Cloudについても2019年3月より取扱いを開始しており、マルチクラウドへの対応も強化してまいりました。
今後より一層クラウドの普及が進むことで、オンプレミスベースの既存顧客企業を保有する大手システムインテグレーター企業等が相次いで市場に参入し、技術力競争及び価格競争等が激化することが予測されます。
競争が激化していく中で、当社が成長を持続するためには、当社の主力サービスであるSAPシステムの「移行」を中心としたフロー売上であるクラウドインテグレーション売上とストック売上であるクラウドライセンスリセール売上及びMSP売上を両輪で拡大していくことが課題であると認識しております。
クラウドインテグレーション売上については、大規模移行プロジェクトの獲得やクラウドアプリケーション開発に注力するとともにAWS、Azure及びGoogle Cloudのプロジェクト実績を積み上げることでマルチクラウド化を推進し、その結果としてクラウドライセンスリセール売上の拡大に繋げてまいります。
また、データ分析基盤構築及びクラウドアプリケーション開発等の実績をベースに、デジタルトランスフォーメーションを推進する取り組みを拡大していくと共に顧客企業のデジタルトランスフォーメーションを実現する為のプラットフォーム構築に注力してまいります。
②優秀な人材の確保・育成
当社が属するクラウド業界は、特に技術者(エンジニア)の人材不足が深刻化しております。当社の提供するサービスは、特に技術者の技術力に依るところが大きく、今後も市場拡大が見込まれる中で当社が成長を持続して行くためには、優秀な技術者を安定的に確保し続けることが重要な課題であると認識しております。
そのため、当社では、リモートワーク・フレックスタイム制度の導入など、ダイバーシティ(働き方の多様性)に対応した施策を積極的に推進し、ワークライフバランスの実現を率先的に図ることにより、次世代を担う優秀な人材の獲得に努めてまいります。また同時に、社員の能力開発・向上のための研修、パブリッククラウド及びSAPに関係する認定資格の取得補助の実施や人事評価制度の継続的改善運用など、従業員の能力を最大限に発揮させる仕組みを確立してまいります。
③自社クラウドサービスの機能向上による次世代MSPの強化
当社のクラウド運用サービスツール「BeeX Service Console」は、SaaS型の運用管理者向けポータルサービスとなっており、顧客企業の運用管理者側でクラウドの利用状況や費用の分析が可能な機能等が搭載されております。
当ツールは、顧客企業がクラウド導入パートナーを選定するにあたり当社を選択する、他社ベンダーとの差別化要因となっており、クラウドインテグレーション案件受注率向上に貢献していると認識しています。
また、MSPとクラウドライセンスリセールを組み合わせたサービスパッケージ「BeeX Plus」も販売を開始しており、今後、他社ベンダーとの差別化要因として期待できるセキュリティソリューション等のサービスや機能の開発にも注力しております。
当社が今後も成長を持続していくためには他社との差別化が急務であり、サービスの優位性を高めるための機能強化・追加が必要不可欠であると認識しております。また、クラウド化の進展によって、企業は複雑化していくシステム開発への迅速な対応と、多岐にわたるシステム運用業務の運用品質・効率改善とコスト削減を同時並行的に高めていく必要に迫られています。これを解決する手段のひとつとして次世代MSPに注目が集まっています。
当社ではクラウド運用サービスツール「BeeX Service Console」並びにサービスパッケージ「BeeX Plus」の提供によって徹底した運用の効率化並びにサービスの質的向上を実現しておりますが、継続的なサービス品質の強化が必要不可欠であると認識しております。
そのため、市場環境や技術動向の変化に俊敏に対応し、顧客ニーズに迅速に対応するための機能強化、またそれを実現可能な開発体制の強化を図ってまいります。
④事業展開のグローバル化
当社では日本国内においてのみ継続的な事業拡大を図っており、海外進出には至っておりませんが、中長期的な視点から展開を見据えた更なる業容の拡大を図るにあたり、日本国内のみならず主にアジア市場をにらんだグローバル市場への進出が重要になると考えております。
本書提出日現在、具体的な進展はありませんが、エンジニア不足を補う海外のパートナー企業との協業、当社が提供しているMSP(クラウド上のサーバーの監視・バックアップ等の運用代行及び保守等に関するサービス)のグローバル対応、並びに当社クラウドソリューション事業のアジア諸国へのビジネス展開等を検討しております。
⑤パートナー企業との協業推進
当社は、2018年2月にTIS株式会社、2018年8月に株式会社エヌ・ティ・ティ・データと資本業務提携を開始しております。TIS株式会社及び株式会社エヌ・ティ・ティ・データとは、当社単独では獲得が困難な大型案件の獲得を目的としております。
今後も、必要に応じて経営資源とノウハウを補完し合えるパートナーとの協業を図り、常に変化する市場環境と多様化する顧客ニーズにスピード感をもって的確に対処しながら企業価値のさらなる向上に向けて事業展開を進めてまいります。
⑥経営管理体制の強化
当社は、今後持続的な成長を図っていくためには、事業の成長や業容の拡大に伴い、経営管理体制の更なる充実・強化が課題であると認識しており、ステークホルダーに信頼される企業となるために、コーポレート・ガバナンスへの積極的な取組みが不可欠であると考えております。そのため、優秀な人材の採用・育成により業務執行体制の充実を図り、コーポレート・ガバナンスが有効に機能するような仕組みを強化・維持していくとともに、業務の適正性及び財務報告の信頼性を確保するための内部統制システムの適切な運用、法令遵守を徹底してまいります。
⑦財務基盤の強化
当社は、収益基盤の維持・拡大を図るためには、手許資金の流動性確保や金融機関との良好な取引関係が重要であると考えております。一定の内部留保の確保や費用対効果の検討による各種コストの見直しを継続的に行うことで、さらなる財務基盤の強化を図ってまいります。