有価証券報告書-第21期(2025/03/01-2026/02/28)
有報資料
文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、「人の可能性を引き出し、豊かな未来をともにつくる。」(Unlock human potential and co-shape a fulfilling future.)というミッションを掲げております。これは、私たちが世代を跨いで問い続ける根源的な約束であり、「人の持つ可能性を引き出せれば、未来はどれほど良くなるだろうか」という問いこそが、すべての活動の原点です。一人ひとりの可能性と豊かさがめぐる未来を皆様と共にかたちづくるため、当社グループは、個人の内発的動機が社会の経済合理性と統合される世界の構築に挑戦し続けております。
① 経営方針の策定の背景と経緯
当社グループは、2023年3月の経営体制移行(サクセッション)からの3年間を「大改革期」と位置付け、持続的成長に向けた組織基盤の整備と収益力の強化に全力を注いでまいりました。この期間、単なる組織変革に留まらず、経営者自らが市場の最前線で「高付加価値事業の探索と作り込み」を自己実践・自己体現し、身体感覚を伴う確かな手応えを得ることに注力してまいりました。
こうした実践のプロセスを通じて、既存モデルの延長線上や過去の思考様式(慣れ)に安住し、自己変容を止めてしまうことは、急速に変化し続ける社会・市場の本質を捉え損ね、提供価値を陳腐化させる本質的な課題であると強く認識するに至りました。不確実かつ複雑な環境下で目に見えない「人の可能性」を引き出し、100年単位で続く価値を育むためには、既存の成功体験に依存しない動的なアプローチが不可欠だと捉えております。
この実践から紡ぎ出された確信を糧として、独自の経営パラダイム(世界をどう捉えるかという前提意思・思考のレンズ)である「内発的動機と営業利益の循環経営(以下、「循環経営」と言います。)」を本格的に実装するため、当連結会計年度終了後の2026年4月7日付で本方針を公表いたしました。
② 経営環境の認識と「循環経営」の意義
日本社会は、人口構造及び働き方の両面において大きな転換点を迎えております。国立社会保障・人口問題研究所が2023年12月に公表した「日本の将来推計人口(令和5年推計)」によれば、生産年齢人口(15~64歳)は2020年の約7,400万人から2040年には約6,000万人へと、1,400万人以上減少する見通しです。一方、経済産業省が2022年9月に公表した「人材版伊藤レポート2.0」では、日本企業の人材育成費の売上高比率は0.1%未満にとどまり、米国の0.6%と比較して6分の1以下であることが指摘されるなど、人的資本投資の格差が顕著となっています。さらに、リクルートワークス研究所発行の「就職白書2023」によれば、大学生の6割以上が大企業よりも裁量や成長機会を重視する「自己成長志向」へと価値観を転換させております。
生成AI等のテクノロジー進化が機能的スキルを代替するなか、今後は「なぜやるのか」「誰としてやるのか」という問いに応える内発的動機こそが、他社が模倣できない持続的な競争優位の源泉となると確信しております。この自己変容を伴う「器の拡張」を組織の核心に据え、構造化することで、新たな価値を創造し続ける体制を確立いたします。
当社グループの「循環」は、内発的動機が生み出す「提供価値の純度の証」である営業利益をさらなる「人の可能性」へと再投資し、次なる高付加価値事業を連鎖的に創出する「スノーボール(複利成長)」の利益成長を志向するものです。利益成長の加速によって人への還元と投資の規模を最大化させ、ミッション実現に向けたダイナミズムを増幅させてまいります。
③ ミッションの再定義について
これまでのミッション(人の可能性を引き出し 才能を最適に配置することで 新産業を創出し続ける。)は、当社の主力事業である「Goodfind」の成長と深く結びつき、新産業領域への人的資本の移動において重要な役割を果たしてきたことで、当社グループの価値源泉及び組織・カルチャーの土台を創ってきました。しかし、社会構造が激変する中で、当社は「才能の最適配置」や「新産業の創出」の先にある「豊かな未来」こそが真の目的であるという確信に至りました。
これまでの社会や組織のあり方においては、人が役割や機能に最適化される一方で、個人の人間性の本質が組織から切り離され、個人の内発的動機と企業の経済合理性が分離しがちであったと捉えております。こうした状況下では、組織の熱量が中長期的な企業価値向上に直結しきれず、さらなる成長への構造的な課題となっておりました。また、AI等のテクノロジーの進化によって「何ができるか」の価値が相対化されるなか、今後は「なぜやるのか」「誰としてやるのか」という問いこそが真の価値を持つ時代へと変化しています。これまでのミッションでは、こうした時代の要請への応答が限定的となってしまうと認識し、当連結会計年度終了後の2026年4月7日付で「人の可能性を引き出し、豊かな未来をともにつくる。」というミッションへと再定義いたしました。
(2)経営戦略等
① 基本戦略:人の可能性を起点とした持続的な産業創造
当社グループは、現時点では目に見えにくいものの、将来的に社会を大きく変える力を秘めた「人の可能性」を事業の対象としております。
現在の労働市場には、伝統的な雇用慣行や情報の非対称性から生じる構造的な「歪み」が存在する一方で、テクノロジーの進化や価値観の変化に伴い、これまでにない新たな「機会」も生まれています。当社グループは、才能の最適配置や新産業創造を含めた、これら人の可能性にまつわる領域を成長の源泉と捉えております。
これらの領域は、複雑性や歪みの深さゆえに、現在はまだ市場として小さいものの、長期的には不可逆な拡大エネルギーが蓄積された有望な領域であると認識しております。当社グループのプラットフォームやサービスが介在することで構造的な課題を解消し、機会を最大化させることで、社会に必要とされる巨大な「産業」へと共に育て上げていくことを目指します。参入初期から高い付加価値を提供し続けることを前提とすることで、将来的に拡大する市場において確固たる存在感を築くことが、当社グループの成長戦略の核心であります。
② 中期戦略:現在の重点領域と市場の歪みへのアプローチ
当社グループは、中期的な成長を牽引する柱として、創業以来の原点である「若手人材と新産業領域」への価値提供をさらに深化させてまいります。
現在の日本の労働市場は、伝統的な雇用慣行や情報の非対称性といった構造的な特性を有する一方で、産業構造の転換や価値観の多様化に伴い、これまでにない新たな挑戦の機会が次々と生まれる過渡期にあります。当社グループは、これらの市場環境を、個人の可能性を最大限に解放するための重要な「機会」であると捉えております。具体的には、新卒学生向け厳選就活プラットフォーム「Goodfind」や社会人向けキャリア支援サービス「G3」を通じ、意欲の高い人材がその才能を最も発揮できる新産業領域へと挑戦できる環境を整備してまいります。
③ 実行規律:価値創造の純度を測る「財務規律」の実装
長期的な産業創造を確実なものとし、お客様に本質的な価値を届け続けるため、当社グループは各事業において以下の「財務規律」を課しております。これらの指標は、単なる利益の追求を目的とするものではなく、当社の介在による付加価値創造が科学的かつ適正に実行されているかを評価するための「計器」として機能させております。
ⅰ.独自の提供価値による高い市場シェアの確保
お客様の深層にあるニーズ(インサイト)を深く理解し、他にはない唯一無二の価値を提供することで、市場における確固たる支持を獲得し、持続的に価値提供を継続できるポジションの確立を目指します。
ⅱ.高い付加価値の証としての収益性の追求
オペレーションの磨き込みにより、高い水準の営業利益率を規律として課しております。当該基準に基づき、翌連結会計年度において、社会人向けキャリアサービスにおける「GoodfindCareer」の閉鎖や、メディア・SaaS分野における「メタノビ」のサービス終了、および「TeamUp」の一部サービスの停止といった、提供価値または収益性が規律に達しない領域からのリソース回収を機動的に実行いたしました。これにより生み出された利益を、より有望な領域へ集中投下する体制を構築しております。
ⅲ.一人当たり営業利益の最大化
過度な労働量や人海戦術に依存せず、知恵とシステムによって一人ひとりの生産性を高めます。働くメンバーが高い介在価値を発揮できる組織構造を実証することで、持続的な成長モデルを確立してまいります。
③ 成長メカニズム:経営パラダイム「循環経営」と自社による実践
これら全ての戦略を支える土台が、独自の経営パラダイムである「循環経営」であります。一人ひとりの「らしさ」や「願い」に基づく内発的な動機をミッションやビジョンと重ね合わせ、不確実な環境下でも自律的に自己変容(学習変容)を続け、市場の本質的価値を創り出していく実行力を育んでまいります。
当社グループ自身がこの新ミッションの最初の「実践者」であり「体現者」であり続けることを大切にいたします。自社内での「循環経営」の徹底的な実践を通じて、人の可能性を最大限に引き出す組織のあり方を自ら証明し、そのプロセスで得られた知見や仕組みを新たな価値として社会へ還元・展開していくことで、ステークホルダーの皆様と共に豊かな未来を共創してまいります。
(3)経営環境
① 企業構造
本書提出日現在、当社グループは当社及び連結子会社1社(チームアップ株式会社)並びに持分法適用関連会社2社によって構成されております。また、「Goodfind」、「FactLogic」、「InternStreet」、「G3」及び「FastGrow」は当社が、「TeamUp」はチームアップ株式会社が運営しております。なお、報告セグメントは新産業領域における人材創出事業の単一の報告セグメントであります。
② 対象市場の状況
当社グループは、新産業領域に関連する市場及び人材トランスフォーメーション(注)1に関連する市場において事業を行っております。
日本の労働市場においては、伝統的な雇用慣行や人事・組織制度により、経営人材としての可能性の早期発掘・開発が遅れる傾向にありました。当社グループは、20代・30代から経営人材を目指せるキャリア機会を創出することで、組織における人的価値を最大化させる「人材トランスフォーメーション」を推進しております。主要な対象市場は、人材紹介業、求人広告業及び人材コンサルティング業を中心とした採用関連市場、教育産業全体市場並びにHRTech市場であります。
新産業領域における採用関連市場においては、少子高齢化・人口減少が進む中、持続的な経済成長のために新産業領域の企業におけるイノベーションが不可欠であり、その担い手となる「挑戦意欲・成長志向を持つ人的資本」の価値は飛躍的に高まっております。特に、従来の資本集約型産業から知的集約型産業への構造転換に伴い、個人の就業観は「組織の属性やブランドによる長期安定」から、自らの「内発的動機に基づく自己実現と成長環境の享受」へと本質的な変化を遂げつつあると認識しております。このような価値観の変容は、まずは新産業領域への新卒・中途の人材流入という形で顕在化しており、この移動は一過性のものではなく、中長期的な拡大トレンドになると予測しております。
こうした企業の属性や規模、ブランド等に依存しない就業選択の広がりは、特定の産業内での流動化に留まるものではなく、社会全体で「人の可能性」が解放されていく構造的変化の端緒であると考えられます。長期的には、新旧の産業や企業の枠組みを超えて、あらゆる領域において個人と組織の可能性が最大化され、社会全体の生産性向上に寄与する市場環境へと発展していくものと認識しております。
(注)1.「人材トランスフォーメーション」とは、組織における人材の持つ価値を最大限引き出すために行う採用、配置、育成、文化浸透等の組織施策における変革と当社で定義しております。
ⅰ.人材関連ビジネス市場及び新卒採用関連市場の状況
人材関連ビジネス市場全体は、社会のデジタル化やオンライン化の定着により、地理的制約を越えた新たな就業機会の創出が進んでおります。特に地方居住の学生や求職者にとって、オンラインでの採用活動が一般的となったことは、就業機会の格差解消に寄与しており、変化への適応力が高い新産業領域の企業にとっては人材獲得機会の増加という好循環を生んでいます。
また、生成AIをはじめとするテクノロジーの急速な社会実装は、デジタル領域でサービスを提供するDX・SaaS関連企業(注)2にとって大きな事業機会となり、これら企業の求人ニーズを一段と押し上げております。一方で、機能的スキルの代替が進むなかで、企業側は単なるスキルマッチングではなく、自社のパーパスに共鳴する「高い内発的動機」を持つ人材を確保・育成することへ投資の重点を移しており、当社の提供する高付加価値なプラットフォームへのニーズは一層高まっております。
(注)2.「DX・SaaS関連企業」とは、テクノロジーや情報システム、AIやロボティクスの活用、メディア運営等のITを活用した課題解決を事業とする会社及びこれらの会社に対するサービス提供を行う会社と当社で定義しております。
ⅱ.スタートアップ・ベンチャー企業を取り巻く環境
日本政府が掲げる「新しい資本主義」や、2022年11月に策定された「スタートアップ育成5か年計画」、さらには日本経済団体連合会の「スタートアップ躍進ビジョン」など、国を挙げたスタートアップエコシステムの強化が継続しております。
新規IPO件数(東証マザーズ、グロース、JASDAQ、スタンダードの合計)は、2021年の109社をピークに、2022年81社、2023年86社、2024年76社、2025年65社と推移しております 。昨今の国際情勢やインフレに伴う金利引き上げ等の影響からIPO件数は減少傾向にあるものの、株式会社ユーザーベース運営のスタートアップ情報プラットフォーム「スピーダ」が公表した「2025 Japan Startup Finance」によれば、2025年の国内スタートアップ資金調達額は7,613億円と高い水準を維持しております。
市場全体としては、投資対象が「成長期待の高い優良企業」へ厳選される「選別期」に移行しており、収益性と提供価値の純度が厳しく問われる局面となっています 。このような環境下では、真に成長可能性の高い企業を見極め、意欲ある人材と繋ぐ当社独自の「目利き力」と「マッチング力」の優位性が、より鮮明になると考えております。
③ 競合他社に対する競争優位性
当社グループの主要サービスである新卒学生向け厳選就活プラットフォーム「Goodfind」のビジネスモデルが競争優位性の源泉となります。当社は、以下の3つのケイパビリティへ注力することにより、競合他社に対する優位性を維持しております。
ⅰ.顧客の目利き力
ベンチャー企業を中心とした過去の取引実績から、新産業領域において構築された情報取得のネットワークにより、成長性の高い新産業領域の企業を厳選して開拓しております。
ⅱ.行動変容を生み出す力
社会人経験がなく就職活動により得られる様々な情報により志向性が日々変化する学生に対して、ブランドイメージ等により企業を選好する等のバイアスを取り除くコンテクスト及びコンテンツを、メディアによる情報提供に加えて、インキュベーションパートナーによる個別面談やセミナー・イベント等を通じて伝えることで、行動変容を生み出しております。
ⅲ.マッチング力
顧客の目利き力によって厳選された新産業領域の企業と、行動変容を生み出す力により形成された挑戦意欲・成長志向の高い学生とを、「プロダクト(Goodfind)」と「人材」による複合的な価値提供を行うことで適切なマッチングを生み出すことが可能となります。
④ 顧客基盤
当社グループの顧客基盤は、スタートアップ・ベンチャー企業を中心に、ビジネスモデルの転換や新規事業創出に挑む大企業、中堅・中小企業等の新産業領域の企業群によって構成されております。
特定の業種に依存することなく、人的資本投資を経営の最重要課題と位置づけ、個人の可能性の解放を通じて社会に新たな価値をもたらそうとする、成長意欲の高い多様な企業との間に信頼関係を築いてまいります。
(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、「人の可能性を引き出し、豊かな未来をともにつくる。」というミッションの実現に向け、独自の経営パラダイムである「循環経営」を推進しております。この「循環経営」の実効性を客観的に評価するため、当社グループでは、以下の指標を重要な経営指標としております。
① 売上高
社会への価値提供の広がりを示す指標として、持続的な成長を重視しております。なお、当社グループでは戦略的に参入領域を定義しており、客観的な外部統計による測定は困難であるものの、独自の調査に基づき算出した当該領域内における市場シェアを、提供価値の支持層の広がりを測る内部指標としてモニタリングしております。
② 営業利益及び営業利益率
当社の介在による付加価値創造が科学的かつ適正に実行されているかを評価する指標であり、高い水準を維持・向上させることを規律としております。
③ 一人当たり営業利益
過度な労働量や人海戦術に依存せず、知恵とシステムによって生産性を高め、働く一人ひとりが高い介在価値を発揮できているかを測る指標として重要視しております。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループは、これまで3年間にわたる「大改革」を通じて、持続的成長に向けた組織基盤の整備と収益力の強化を推進してまいりました。この「大改革」は、単なる組織変革に留まらず、経営者自らが「高付加価値事業の探索と作り込み」を自己実践・体現することで、将来の成長に向けた身体感覚を伴う確かな手応えを得る期間でもありました。その一方で、そうした実践のプロセスを通じて、既存モデルの延長線上では、急速に変化する社会において本質的な価値を提供し続けることが構造的に困難であるという課題を、強い確信を持って認識するに至りました。
この実践から導き出された「内発的動機と営業利益の循環経営」(以下「循環経営」といいます。)という新たな経営のあり方(経営パラダイム)を、概念に留めず「組織の意志ある構造」として本格的に実装し、以下の課題に優先的に取り組んでまいります。
① 「循環経営」の推進と新ミッションへの刷新
(現状の認識)
これまでの社会や組織のあり方においては、人が役割や機能に最適化される一方で、個人の「らしさ」や「願い」といった人間性の本質が仕事や組織から切り離され、個人の内発的動機と企業の経済合理性が分離しがちであったと捉えております。こうした状況下では、組織の熱量が中長期的な企業価値向上に直結しきれず、さらなる成長への構造的な課題となっておりました。
また、AI等のテクノロジーの進化によって「何ができるか」の価値が相対化される中で、今後は「なぜやるのか」「誰としてやるのか」という問いこそが真の価値を持つ時代へと変化していくと考えています。これまでのミッション(人の可能性を引き出し 才能を最適に配置することで 新産業を創出し続ける。)では、こうした時代の要請への応答が限定的となってしまうと認識しております。
(取組の方向性)
この課題に対し、「循環経営」というパラダイム(世界をどう捉えるかという前提意思・思考のレンズ)を経営の軸に据えております。これは、一人ひとりの内発的動機と、付加価値創造の純度の証であり、未来へのさらなる投資原資となる「営業利益」を、相反させることなく、相互に高まり合い循環するものとして統合する考え方です。一人ひとりの人生のテーマ(ライフミッション)を言語化し、それが組織の目指す未来と重なり合うことで生まれる熱量を、顧客への高い提供価値、ひいては持続的な利益成長へと結実させてまいります。
こうした「循環経営」の深化を前提とし、改めて社会における当社の存在意義を再定義した結果、今般、ミッションを以下の通り刷新いたしました。
人の可能性を引き出し、豊かな未来をともにつくる。
Unlock human potential and co-shape a fulfilling future.
「循環経営」は個人の主体性を最大化することで組織的な競争優位を確立する合理的な経営の実践であり、当社グループはこの新ミッションのもとでさらなる深化を推進してまいります。
② 「人の可能性」を軸とした長期的な産業創造の実践
(現状の認識)
目に見えない「人の可能性」を開拓し、世代を跨ぎ100年単位で続く「産業」を創出するためには、既存の成功体験に依存しない動的なアプローチが不可欠であると確信しております。不確実かつ複雑な環境下において、過去の思考・行動様式(慣れ)に安住し、自己変容を止めてしまうことは、変化し続ける市場の本質を捉え損ね、提供価値を陳腐化させる本質的な課題であると捉えております。
(取組の方向性)
この課題に対し、一人ひとりが慣れ親しんだ思考・行動様式をさらに高次元化させるとともに、「不慣れ」な領域への挑戦をも含めた自分自身の「らしさ」に向き合い、自らの器を拡張し続ける学習プロセスを組織の核心に据えてまいります。人生のテーマ(ライフミッション)に基づくこの「自己変容」を構造化することで、固定化した視点に縛られることなく、市場の本質を捉え、新たな価値を創造し続ける体制を確立いたします。経営者自らの実践を通じて確信したこの「組織的な学習能力の向上」こそが、他社による模倣が困難な持続的優位性の源泉になると確信しております。
③ 循環経営の実効性を担保する財務規律の徹底
(現状の認識)
当社グループは、「人の可能性」を起点とした事業領域には極めて大きな市場機会がある一方で、現状の成長率は市場の期待水準に達しておらず、その潜在的な可能性を十分に収益へと変換しきれていないことが本質的な課題であると捉えております。これは、これまで目指すべき圧倒的な期待水準が明確化されておらず、経営資源が分散していたことに起因していると認識しております。
(取組の方向性)
この課題に対し、「循環経営」における学習と成長の実効性を客観的に評価するため、高い水準の財務規律を徹底してまいります。当社グループにとって営業利益等の財務指標は、提供価値の純度や自己変容の進捗を測るための「計器」であると同時に、株主価値を最大化するための最重要指標です。この規律に基づき、当連結会計年度における「メタノビ」のサービス終了、並びに翌連結会計年度における「Goodfind Career」の閉鎖決定など、事業の提供価値と収益性を評価したポートフォリオの最適化を実行いたしました。今後は、有望な領域へ経営資源を集中させ、高収益の実現によって生み出される利潤をさらなる「人の可能性」へと再投資し続けることで、長期の時間軸における圧倒的な競争力を構築してまいります。
(1)経営方針
当社グループは、「人の可能性を引き出し、豊かな未来をともにつくる。」(Unlock human potential and co-shape a fulfilling future.)というミッションを掲げております。これは、私たちが世代を跨いで問い続ける根源的な約束であり、「人の持つ可能性を引き出せれば、未来はどれほど良くなるだろうか」という問いこそが、すべての活動の原点です。一人ひとりの可能性と豊かさがめぐる未来を皆様と共にかたちづくるため、当社グループは、個人の内発的動機が社会の経済合理性と統合される世界の構築に挑戦し続けております。
① 経営方針の策定の背景と経緯
当社グループは、2023年3月の経営体制移行(サクセッション)からの3年間を「大改革期」と位置付け、持続的成長に向けた組織基盤の整備と収益力の強化に全力を注いでまいりました。この期間、単なる組織変革に留まらず、経営者自らが市場の最前線で「高付加価値事業の探索と作り込み」を自己実践・自己体現し、身体感覚を伴う確かな手応えを得ることに注力してまいりました。
こうした実践のプロセスを通じて、既存モデルの延長線上や過去の思考様式(慣れ)に安住し、自己変容を止めてしまうことは、急速に変化し続ける社会・市場の本質を捉え損ね、提供価値を陳腐化させる本質的な課題であると強く認識するに至りました。不確実かつ複雑な環境下で目に見えない「人の可能性」を引き出し、100年単位で続く価値を育むためには、既存の成功体験に依存しない動的なアプローチが不可欠だと捉えております。
この実践から紡ぎ出された確信を糧として、独自の経営パラダイム(世界をどう捉えるかという前提意思・思考のレンズ)である「内発的動機と営業利益の循環経営(以下、「循環経営」と言います。)」を本格的に実装するため、当連結会計年度終了後の2026年4月7日付で本方針を公表いたしました。
② 経営環境の認識と「循環経営」の意義
日本社会は、人口構造及び働き方の両面において大きな転換点を迎えております。国立社会保障・人口問題研究所が2023年12月に公表した「日本の将来推計人口(令和5年推計)」によれば、生産年齢人口(15~64歳)は2020年の約7,400万人から2040年には約6,000万人へと、1,400万人以上減少する見通しです。一方、経済産業省が2022年9月に公表した「人材版伊藤レポート2.0」では、日本企業の人材育成費の売上高比率は0.1%未満にとどまり、米国の0.6%と比較して6分の1以下であることが指摘されるなど、人的資本投資の格差が顕著となっています。さらに、リクルートワークス研究所発行の「就職白書2023」によれば、大学生の6割以上が大企業よりも裁量や成長機会を重視する「自己成長志向」へと価値観を転換させております。
生成AI等のテクノロジー進化が機能的スキルを代替するなか、今後は「なぜやるのか」「誰としてやるのか」という問いに応える内発的動機こそが、他社が模倣できない持続的な競争優位の源泉となると確信しております。この自己変容を伴う「器の拡張」を組織の核心に据え、構造化することで、新たな価値を創造し続ける体制を確立いたします。
当社グループの「循環」は、内発的動機が生み出す「提供価値の純度の証」である営業利益をさらなる「人の可能性」へと再投資し、次なる高付加価値事業を連鎖的に創出する「スノーボール(複利成長)」の利益成長を志向するものです。利益成長の加速によって人への還元と投資の規模を最大化させ、ミッション実現に向けたダイナミズムを増幅させてまいります。
③ ミッションの再定義について
これまでのミッション(人の可能性を引き出し 才能を最適に配置することで 新産業を創出し続ける。)は、当社の主力事業である「Goodfind」の成長と深く結びつき、新産業領域への人的資本の移動において重要な役割を果たしてきたことで、当社グループの価値源泉及び組織・カルチャーの土台を創ってきました。しかし、社会構造が激変する中で、当社は「才能の最適配置」や「新産業の創出」の先にある「豊かな未来」こそが真の目的であるという確信に至りました。
これまでの社会や組織のあり方においては、人が役割や機能に最適化される一方で、個人の人間性の本質が組織から切り離され、個人の内発的動機と企業の経済合理性が分離しがちであったと捉えております。こうした状況下では、組織の熱量が中長期的な企業価値向上に直結しきれず、さらなる成長への構造的な課題となっておりました。また、AI等のテクノロジーの進化によって「何ができるか」の価値が相対化されるなか、今後は「なぜやるのか」「誰としてやるのか」という問いこそが真の価値を持つ時代へと変化しています。これまでのミッションでは、こうした時代の要請への応答が限定的となってしまうと認識し、当連結会計年度終了後の2026年4月7日付で「人の可能性を引き出し、豊かな未来をともにつくる。」というミッションへと再定義いたしました。
(2)経営戦略等
① 基本戦略:人の可能性を起点とした持続的な産業創造
当社グループは、現時点では目に見えにくいものの、将来的に社会を大きく変える力を秘めた「人の可能性」を事業の対象としております。
現在の労働市場には、伝統的な雇用慣行や情報の非対称性から生じる構造的な「歪み」が存在する一方で、テクノロジーの進化や価値観の変化に伴い、これまでにない新たな「機会」も生まれています。当社グループは、才能の最適配置や新産業創造を含めた、これら人の可能性にまつわる領域を成長の源泉と捉えております。
これらの領域は、複雑性や歪みの深さゆえに、現在はまだ市場として小さいものの、長期的には不可逆な拡大エネルギーが蓄積された有望な領域であると認識しております。当社グループのプラットフォームやサービスが介在することで構造的な課題を解消し、機会を最大化させることで、社会に必要とされる巨大な「産業」へと共に育て上げていくことを目指します。参入初期から高い付加価値を提供し続けることを前提とすることで、将来的に拡大する市場において確固たる存在感を築くことが、当社グループの成長戦略の核心であります。
② 中期戦略:現在の重点領域と市場の歪みへのアプローチ
当社グループは、中期的な成長を牽引する柱として、創業以来の原点である「若手人材と新産業領域」への価値提供をさらに深化させてまいります。
現在の日本の労働市場は、伝統的な雇用慣行や情報の非対称性といった構造的な特性を有する一方で、産業構造の転換や価値観の多様化に伴い、これまでにない新たな挑戦の機会が次々と生まれる過渡期にあります。当社グループは、これらの市場環境を、個人の可能性を最大限に解放するための重要な「機会」であると捉えております。具体的には、新卒学生向け厳選就活プラットフォーム「Goodfind」や社会人向けキャリア支援サービス「G3」を通じ、意欲の高い人材がその才能を最も発揮できる新産業領域へと挑戦できる環境を整備してまいります。
③ 実行規律:価値創造の純度を測る「財務規律」の実装
長期的な産業創造を確実なものとし、お客様に本質的な価値を届け続けるため、当社グループは各事業において以下の「財務規律」を課しております。これらの指標は、単なる利益の追求を目的とするものではなく、当社の介在による付加価値創造が科学的かつ適正に実行されているかを評価するための「計器」として機能させております。
ⅰ.独自の提供価値による高い市場シェアの確保
お客様の深層にあるニーズ(インサイト)を深く理解し、他にはない唯一無二の価値を提供することで、市場における確固たる支持を獲得し、持続的に価値提供を継続できるポジションの確立を目指します。
ⅱ.高い付加価値の証としての収益性の追求
オペレーションの磨き込みにより、高い水準の営業利益率を規律として課しております。当該基準に基づき、翌連結会計年度において、社会人向けキャリアサービスにおける「GoodfindCareer」の閉鎖や、メディア・SaaS分野における「メタノビ」のサービス終了、および「TeamUp」の一部サービスの停止といった、提供価値または収益性が規律に達しない領域からのリソース回収を機動的に実行いたしました。これにより生み出された利益を、より有望な領域へ集中投下する体制を構築しております。
ⅲ.一人当たり営業利益の最大化
過度な労働量や人海戦術に依存せず、知恵とシステムによって一人ひとりの生産性を高めます。働くメンバーが高い介在価値を発揮できる組織構造を実証することで、持続的な成長モデルを確立してまいります。
③ 成長メカニズム:経営パラダイム「循環経営」と自社による実践
これら全ての戦略を支える土台が、独自の経営パラダイムである「循環経営」であります。一人ひとりの「らしさ」や「願い」に基づく内発的な動機をミッションやビジョンと重ね合わせ、不確実な環境下でも自律的に自己変容(学習変容)を続け、市場の本質的価値を創り出していく実行力を育んでまいります。
当社グループ自身がこの新ミッションの最初の「実践者」であり「体現者」であり続けることを大切にいたします。自社内での「循環経営」の徹底的な実践を通じて、人の可能性を最大限に引き出す組織のあり方を自ら証明し、そのプロセスで得られた知見や仕組みを新たな価値として社会へ還元・展開していくことで、ステークホルダーの皆様と共に豊かな未来を共創してまいります。
(3)経営環境
① 企業構造
本書提出日現在、当社グループは当社及び連結子会社1社(チームアップ株式会社)並びに持分法適用関連会社2社によって構成されております。また、「Goodfind」、「FactLogic」、「InternStreet」、「G3」及び「FastGrow」は当社が、「TeamUp」はチームアップ株式会社が運営しております。なお、報告セグメントは新産業領域における人材創出事業の単一の報告セグメントであります。
② 対象市場の状況
当社グループは、新産業領域に関連する市場及び人材トランスフォーメーション(注)1に関連する市場において事業を行っております。
日本の労働市場においては、伝統的な雇用慣行や人事・組織制度により、経営人材としての可能性の早期発掘・開発が遅れる傾向にありました。当社グループは、20代・30代から経営人材を目指せるキャリア機会を創出することで、組織における人的価値を最大化させる「人材トランスフォーメーション」を推進しております。主要な対象市場は、人材紹介業、求人広告業及び人材コンサルティング業を中心とした採用関連市場、教育産業全体市場並びにHRTech市場であります。
新産業領域における採用関連市場においては、少子高齢化・人口減少が進む中、持続的な経済成長のために新産業領域の企業におけるイノベーションが不可欠であり、その担い手となる「挑戦意欲・成長志向を持つ人的資本」の価値は飛躍的に高まっております。特に、従来の資本集約型産業から知的集約型産業への構造転換に伴い、個人の就業観は「組織の属性やブランドによる長期安定」から、自らの「内発的動機に基づく自己実現と成長環境の享受」へと本質的な変化を遂げつつあると認識しております。このような価値観の変容は、まずは新産業領域への新卒・中途の人材流入という形で顕在化しており、この移動は一過性のものではなく、中長期的な拡大トレンドになると予測しております。
こうした企業の属性や規模、ブランド等に依存しない就業選択の広がりは、特定の産業内での流動化に留まるものではなく、社会全体で「人の可能性」が解放されていく構造的変化の端緒であると考えられます。長期的には、新旧の産業や企業の枠組みを超えて、あらゆる領域において個人と組織の可能性が最大化され、社会全体の生産性向上に寄与する市場環境へと発展していくものと認識しております。
(注)1.「人材トランスフォーメーション」とは、組織における人材の持つ価値を最大限引き出すために行う採用、配置、育成、文化浸透等の組織施策における変革と当社で定義しております。
ⅰ.人材関連ビジネス市場及び新卒採用関連市場の状況
人材関連ビジネス市場全体は、社会のデジタル化やオンライン化の定着により、地理的制約を越えた新たな就業機会の創出が進んでおります。特に地方居住の学生や求職者にとって、オンラインでの採用活動が一般的となったことは、就業機会の格差解消に寄与しており、変化への適応力が高い新産業領域の企業にとっては人材獲得機会の増加という好循環を生んでいます。
また、生成AIをはじめとするテクノロジーの急速な社会実装は、デジタル領域でサービスを提供するDX・SaaS関連企業(注)2にとって大きな事業機会となり、これら企業の求人ニーズを一段と押し上げております。一方で、機能的スキルの代替が進むなかで、企業側は単なるスキルマッチングではなく、自社のパーパスに共鳴する「高い内発的動機」を持つ人材を確保・育成することへ投資の重点を移しており、当社の提供する高付加価値なプラットフォームへのニーズは一層高まっております。
(注)2.「DX・SaaS関連企業」とは、テクノロジーや情報システム、AIやロボティクスの活用、メディア運営等のITを活用した課題解決を事業とする会社及びこれらの会社に対するサービス提供を行う会社と当社で定義しております。
ⅱ.スタートアップ・ベンチャー企業を取り巻く環境
日本政府が掲げる「新しい資本主義」や、2022年11月に策定された「スタートアップ育成5か年計画」、さらには日本経済団体連合会の「スタートアップ躍進ビジョン」など、国を挙げたスタートアップエコシステムの強化が継続しております。
新規IPO件数(東証マザーズ、グロース、JASDAQ、スタンダードの合計)は、2021年の109社をピークに、2022年81社、2023年86社、2024年76社、2025年65社と推移しております 。昨今の国際情勢やインフレに伴う金利引き上げ等の影響からIPO件数は減少傾向にあるものの、株式会社ユーザーベース運営のスタートアップ情報プラットフォーム「スピーダ」が公表した「2025 Japan Startup Finance」によれば、2025年の国内スタートアップ資金調達額は7,613億円と高い水準を維持しております。
市場全体としては、投資対象が「成長期待の高い優良企業」へ厳選される「選別期」に移行しており、収益性と提供価値の純度が厳しく問われる局面となっています 。このような環境下では、真に成長可能性の高い企業を見極め、意欲ある人材と繋ぐ当社独自の「目利き力」と「マッチング力」の優位性が、より鮮明になると考えております。
③ 競合他社に対する競争優位性
当社グループの主要サービスである新卒学生向け厳選就活プラットフォーム「Goodfind」のビジネスモデルが競争優位性の源泉となります。当社は、以下の3つのケイパビリティへ注力することにより、競合他社に対する優位性を維持しております。
ⅰ.顧客の目利き力
ベンチャー企業を中心とした過去の取引実績から、新産業領域において構築された情報取得のネットワークにより、成長性の高い新産業領域の企業を厳選して開拓しております。
ⅱ.行動変容を生み出す力
社会人経験がなく就職活動により得られる様々な情報により志向性が日々変化する学生に対して、ブランドイメージ等により企業を選好する等のバイアスを取り除くコンテクスト及びコンテンツを、メディアによる情報提供に加えて、インキュベーションパートナーによる個別面談やセミナー・イベント等を通じて伝えることで、行動変容を生み出しております。
ⅲ.マッチング力
顧客の目利き力によって厳選された新産業領域の企業と、行動変容を生み出す力により形成された挑戦意欲・成長志向の高い学生とを、「プロダクト(Goodfind)」と「人材」による複合的な価値提供を行うことで適切なマッチングを生み出すことが可能となります。
④ 顧客基盤
当社グループの顧客基盤は、スタートアップ・ベンチャー企業を中心に、ビジネスモデルの転換や新規事業創出に挑む大企業、中堅・中小企業等の新産業領域の企業群によって構成されております。
特定の業種に依存することなく、人的資本投資を経営の最重要課題と位置づけ、個人の可能性の解放を通じて社会に新たな価値をもたらそうとする、成長意欲の高い多様な企業との間に信頼関係を築いてまいります。
(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、「人の可能性を引き出し、豊かな未来をともにつくる。」というミッションの実現に向け、独自の経営パラダイムである「循環経営」を推進しております。この「循環経営」の実効性を客観的に評価するため、当社グループでは、以下の指標を重要な経営指標としております。
① 売上高
社会への価値提供の広がりを示す指標として、持続的な成長を重視しております。なお、当社グループでは戦略的に参入領域を定義しており、客観的な外部統計による測定は困難であるものの、独自の調査に基づき算出した当該領域内における市場シェアを、提供価値の支持層の広がりを測る内部指標としてモニタリングしております。
② 営業利益及び営業利益率
当社の介在による付加価値創造が科学的かつ適正に実行されているかを評価する指標であり、高い水準を維持・向上させることを規律としております。
③ 一人当たり営業利益
過度な労働量や人海戦術に依存せず、知恵とシステムによって生産性を高め、働く一人ひとりが高い介在価値を発揮できているかを測る指標として重要視しております。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループは、これまで3年間にわたる「大改革」を通じて、持続的成長に向けた組織基盤の整備と収益力の強化を推進してまいりました。この「大改革」は、単なる組織変革に留まらず、経営者自らが「高付加価値事業の探索と作り込み」を自己実践・体現することで、将来の成長に向けた身体感覚を伴う確かな手応えを得る期間でもありました。その一方で、そうした実践のプロセスを通じて、既存モデルの延長線上では、急速に変化する社会において本質的な価値を提供し続けることが構造的に困難であるという課題を、強い確信を持って認識するに至りました。
この実践から導き出された「内発的動機と営業利益の循環経営」(以下「循環経営」といいます。)という新たな経営のあり方(経営パラダイム)を、概念に留めず「組織の意志ある構造」として本格的に実装し、以下の課題に優先的に取り組んでまいります。
① 「循環経営」の推進と新ミッションへの刷新
(現状の認識)
これまでの社会や組織のあり方においては、人が役割や機能に最適化される一方で、個人の「らしさ」や「願い」といった人間性の本質が仕事や組織から切り離され、個人の内発的動機と企業の経済合理性が分離しがちであったと捉えております。こうした状況下では、組織の熱量が中長期的な企業価値向上に直結しきれず、さらなる成長への構造的な課題となっておりました。
また、AI等のテクノロジーの進化によって「何ができるか」の価値が相対化される中で、今後は「なぜやるのか」「誰としてやるのか」という問いこそが真の価値を持つ時代へと変化していくと考えています。これまでのミッション(人の可能性を引き出し 才能を最適に配置することで 新産業を創出し続ける。)では、こうした時代の要請への応答が限定的となってしまうと認識しております。
(取組の方向性)
この課題に対し、「循環経営」というパラダイム(世界をどう捉えるかという前提意思・思考のレンズ)を経営の軸に据えております。これは、一人ひとりの内発的動機と、付加価値創造の純度の証であり、未来へのさらなる投資原資となる「営業利益」を、相反させることなく、相互に高まり合い循環するものとして統合する考え方です。一人ひとりの人生のテーマ(ライフミッション)を言語化し、それが組織の目指す未来と重なり合うことで生まれる熱量を、顧客への高い提供価値、ひいては持続的な利益成長へと結実させてまいります。
こうした「循環経営」の深化を前提とし、改めて社会における当社の存在意義を再定義した結果、今般、ミッションを以下の通り刷新いたしました。
人の可能性を引き出し、豊かな未来をともにつくる。
Unlock human potential and co-shape a fulfilling future.
「循環経営」は個人の主体性を最大化することで組織的な競争優位を確立する合理的な経営の実践であり、当社グループはこの新ミッションのもとでさらなる深化を推進してまいります。
② 「人の可能性」を軸とした長期的な産業創造の実践
(現状の認識)
目に見えない「人の可能性」を開拓し、世代を跨ぎ100年単位で続く「産業」を創出するためには、既存の成功体験に依存しない動的なアプローチが不可欠であると確信しております。不確実かつ複雑な環境下において、過去の思考・行動様式(慣れ)に安住し、自己変容を止めてしまうことは、変化し続ける市場の本質を捉え損ね、提供価値を陳腐化させる本質的な課題であると捉えております。
(取組の方向性)
この課題に対し、一人ひとりが慣れ親しんだ思考・行動様式をさらに高次元化させるとともに、「不慣れ」な領域への挑戦をも含めた自分自身の「らしさ」に向き合い、自らの器を拡張し続ける学習プロセスを組織の核心に据えてまいります。人生のテーマ(ライフミッション)に基づくこの「自己変容」を構造化することで、固定化した視点に縛られることなく、市場の本質を捉え、新たな価値を創造し続ける体制を確立いたします。経営者自らの実践を通じて確信したこの「組織的な学習能力の向上」こそが、他社による模倣が困難な持続的優位性の源泉になると確信しております。
③ 循環経営の実効性を担保する財務規律の徹底
(現状の認識)
当社グループは、「人の可能性」を起点とした事業領域には極めて大きな市場機会がある一方で、現状の成長率は市場の期待水準に達しておらず、その潜在的な可能性を十分に収益へと変換しきれていないことが本質的な課題であると捉えております。これは、これまで目指すべき圧倒的な期待水準が明確化されておらず、経営資源が分散していたことに起因していると認識しております。
(取組の方向性)
この課題に対し、「循環経営」における学習と成長の実効性を客観的に評価するため、高い水準の財務規律を徹底してまいります。当社グループにとって営業利益等の財務指標は、提供価値の純度や自己変容の進捗を測るための「計器」であると同時に、株主価値を最大化するための最重要指標です。この規律に基づき、当連結会計年度における「メタノビ」のサービス終了、並びに翌連結会計年度における「Goodfind Career」の閉鎖決定など、事業の提供価値と収益性を評価したポートフォリオの最適化を実行いたしました。今後は、有望な領域へ経営資源を集中させ、高収益の実現によって生み出される利潤をさらなる「人の可能性」へと再投資し続けることで、長期の時間軸における圧倒的な競争力を構築してまいります。