訂正有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2024/03/11 15:00
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178項目

事業内容

当社グループ(当社及び当社の関係会社)は持株会社制を導入し、純粋持株会社である当社並びに各事業を担う連結子会社23社及び関連会社3社(2023年12月31日現在)から構成されており、「流通小売事業」、「リテールAI事業」等の事業を営んでおります。当社は、中期経営計画及び年度事業計画に基づき、グループ各社の自主性を尊重するとともに、事業の発展及び経営改善に積極的に協力し、関係会社の育成を促進して企業グループとしての経営効率の向上を目指すことを目的として指導及び助言を行うことを基本方針としております。
当社の事業区分である「流通小売事業」及び「リテールAI事業」は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項」に掲げるセグメントの区分と同一であり、報告セグメントに含まれていない事業及びこれらに附帯する事業を「その他」に区分しております。
当社グループの事業内容は、次の通りです。なお、主な関係会社の詳細については「4 関係会社の状況」に記載の通りです。
(1)流通小売事業
①多様な店舗フォーマットとワンストップショッピングを可能にする豊富な商品ラインナップ
中核事業会社である㈱トライアルカンパニーを中心に、『あなたの「生活必需店」。』をストアコンセプトとした『TRIAL』ブランドのディスカウントストアを全国に展開しております。店舗フォーマットはメガセンター、スーパーセンター(SuC)、smart及び小型店の4種のフォーマットで、主力フォーマットであるスーパーセンターを中心に、商圏人口や立地、店舗面積等を考慮して様々なエリアに出店し、エリアのドミナント展開と収益の最大化を進めております。
業態名売場面積
(㎡)
主な出店
エリア
業態の概要主要販売品
及びアイテム数
店舗数
(2023年12月末現在)
メガ
センター
約8,000㎡地方都市食品から趣味嗜好品までフルラインで商品を取り揃える大型店生鮮食料品、一般食料品、日用雑貨、家電品、衣料品、園芸・DIY用品、ペット用品、スポーツ用品、インテリアなど約10万点24店舗
スーパー
センター
(SuC)
約4,000㎡郊外生鮮食品や加工食品をはじめとする食品及び日用消耗品などの生活必需品を商品構成の中心としながら、家電製品や衣料品などの非食品を取り揃える中型店生鮮食料品、一般食料品、日用雑貨、家電品、衣料品、園芸・DIY用品、ペット用品、スポーツ用品、インテリアなど約6~7万点183店舗
smart約1,400㎡都市部・
小商圏
加工食品や弁当、惣菜を含む生鮮食品など、食品を中心とする商品構成で、メガセンター、SuCが出店困難な都市部・小商圏エリアへの出店が可能なフォーマット一般食料品、日用雑貨、家電品、衣料品など約3万点68店舗
小型店~約1,000㎡都市部・
小商圏
食品を中心とする商品構成で、SuCからの高頻度配送により新鮮な生鮮食品、惣菜を提供。自動値下げソリューションや顔認証決済などのテクノロジーを活用した高い生産性を実現する次世代型スマートストア「TRIAL GO」等の小型店一般食料品を中心として、日用雑貨など約7千~2万点36店舗

なお、2023年12月末日時点の地域別の店舗数は以下のとおりです。
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また、商品ラインナップは、生鮮食品などの「食」を強みとして、日用消耗品などの生活必需品から家電製品、アパレル用品からホビー用品などの非食品まで、豊富な品揃えを有しており、24時間営業(一部店舗を除く。)で、何でも・いつでも・欲しいものがお得に買えるワンストップショッピングストアとして、利便性や価格優位性を特徴としております。
また、当社グループ内に弁当・惣菜製造や生鮮食品の加工を行うプロセスセンターやセントラルキッチン、飲料製造工場を有しており、商品製造のノウハウを増強しております。ナショナルブランド商品を調達して販売するスタイルが主流である一方、プライベートブランド(PB)商品も展開しております。PB商品においては、ナチュラルミネラルウォーターやお茶などの飲料や菓子類及びフリースなどのアパレルが人気商品であり、いずれも高品質で低価格であることが、人気の理由であると考えております。
②ローコストオペレーションを確立したユニークな店舗運営
1992年にトライアル1号店となる南ヶ丘店(福岡県大野城市)を開店して以来、当社は約30年におよぶディスカウントストアの運営ノウハウを蓄積しており、当社グループにてアライアンス先との物流網の共有化を通じた自社物流による最適化等、効率的な仕入れの確立と徹底したコスト管理、後述するリテールテックを活用した省力化によって、ローコストオペレーションを実現しております。
また、当社はグループ内に店舗の設計や建築を担う子会社を有しており、新規出店時における新築コストを抑えることができるほか、居抜きによる出店も活用しており、新規出店時による一時的なコスト増加についても低位に抑える戦略が確立されております。
当社グループはEDLP(Every Day Low Price)(注1)を価格戦略における基本方針としております。EDLPが実現できる背景はEDLC(Every Day Low Cost)、すなわちローコストオペレーションであります。生鮮食品などの生活必需品を中心に、競争力のある価格提案を行い、欲しいものがいつでも安い、地域一番の生活必需店として、お客様に寄り添った店舗運営を確立しております。
③リテールテックを活用した独自のビジネスモデル
当社グループが属する流通小売業をはじめ、あらゆる産業・分野においてデジタルトランスフォーメーション(DX)が浸透しており、様々な企業がIoT(注2)/AI(注3)などのデジタル技術を活用することで新しい製品やサービス、新しいビジネスモデルを通じた価値の創出に取組んでおりますが、当社は、「テクノロジーと、人の経験知で、世界のリアルコマースを変える。」をビジョンとして、常に革新的な技術開発に取組んできた企業であり、現在も流通小売業(リテール)のデジタルトランスフォーメーション(DX)を実現する『リテールDX』を牽引する先駆者として、業界の改革に取組んでおります。
当社グループは1996年のスーパーセンター1号店であるスーパーセンタートライアル 北九州空港バイパス店(北九州市小倉南区)の開店以降、自社開発のPC-POSシステム(注4)によって顧客データの蓄積と活用をはじめており、現在は各メーカー企業とお客様の購買情報がスムーズに連携できるデータベースエンジンの運用や商品の自動発注等を可能にする独自のPACER(注5)を活用した効率的な店舗オペレーションを実現しております。
また、当社のシステム開発等を所管する㈱Retail AIを中心に、お客様の更なる買い物体験の向上と店舗運営の省力化を企図とした取組みを加速しております。
2015年には精算手続きを省力化するスマートショッピングカート(現:Skip Cart)の導入を開始したほか、お客様の動線や商品の在庫を記録するAIカメラや商品の販促等に活用するインストアサイネージを導入するなど、リテールテックを活用した独自性のあるビジネスモデルを構築できているものと考えております。特に、Skip Cartの利用によってお客様のレジ待ち時間が大幅に改善され、お客様の利便性向上につながっております。
(注)1.「EDLP」とは、Every Day Low Priceの略で、特売や限定販売ではなく、毎日数量を限定せず、お値打ち価格で販売することを指します。
2.「IoT」とは、Internet of Thingsの略で、あらゆるモノがインターネットに接続する技術を指します。
3.「AI」とは、Artificial Intelligenceの略で、人工知能のことを指します。
4.「PC-POSシステム」とは、販売時の商品情報を読み取り売上管理や商品管理を担う機器であり、PCを内蔵したものを指します。
5.「PACER」とは、Plan・Action・Check・Education・Recoveryの略で、当社グループで開発した店舗運営業務における商品管理の各アプリケーションがインストールされたモバイル端末になります。
当社の特徴である①ワンストップショッピング、②ユニークな店舗運営、そして③リテールテックを活用したビジネスモデルは既存店の安定的な客数及び客単価の成長に貢献しており、順調な事業規模の拡大を実現できております。
トライアル1号店開店以降の売上高と店舗数の推移は以下のとおりです。
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<既存店売上高(前期比)>
既存店売上高(注)2023年6月期
前期比(%)106.2

(注)「既存店売上高」とは、開店から満12ヵ月経過した店舗(対象月又はその前年同月に月間5日以上改装等により閉店した店舗は除く。)のPOS売上の合計であります。「POS」とは、Point of Salesの略称であり、小売店において商品が購入された店舗や日時、数量等の把握が可能となる仕組み・システムを指しています。「POS売上」とは同仕組み・システムにおいて計上された売上高であります。以下同じです。
<既存店売上高(前年同月比)>
既存店売上高2023年7月2023年8月2023年9月2023年10月2023年11月2023年12月
前年同月比(%)106.1106.8102.6103.9105.2104.3

当社グループの小売店舗における月次の既存店売上高は、日本チェーンストア協会が公表している既存店ベースのチェーンストア総販売額(全国の食品スーパーやGMSなど)と比べて、前年同月比で高い成長を継続しております。
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(注)1.「既存店売上高」とは、開店から満12ヵ月経過した店舗(対象月又はその前年同月に月間5日以上改装等により閉店した店舗は除く。)のPOS売上合計であります。
2.「チェーンストア販売統計既存店売上高」とは、日本チェーンストア協会が公表している、同協会に加盟する会員企業(全国の食品スーパーマーケットやGMSなど)の総販売額における既存店ベース(当該月の販売額とその前年同月の販売額のうち、新規開店して売上増となったり閉店して売上減となったりする店舗の異動による影響を除いて比較)での前年同月比であります。
さらに当社グループでは、当社グループのみならず流通業界全体が活性化するような仕組みを『リテールDX』を通じて実現させることに注力しており、自社のみならず業界全体を巻き込んだ改革に取組んでおります。
当該改革の一環として、2021年7月には、当社と福岡県宮若市、九州大学が連携し、産官学協働で『リテールDX』を軸にしたまちづくり「リモートワークタウン ムスブ宮若」プロジェクトを開始しました。同プロジェクトは、『リテールDX』を推進する当社グループと、宮若市及び九州大学が協働して推進する地方創生・まちづくり構想の一つであり、産官学による「リテールDXの拠点づくり」を目指し、リテール企業とメーカー企業が共同で実証実験を行っております。業界全体を巻き込んだ改革意識の醸成として、食品・消費財メーカーの担当者が全国から集まり、『リテールDX』を学び、実践する「宮若ウィーク」というイベントを開催しており、当社グループでは、既成概念にとらわれない、自由な発想を取り入れたイノベーションを誘発する仕組みを設けることで、よりスピード感のある開発を実現し、リテールDXの最先端拠点を目指しています。具体的には取引先である食品・消費財メーカーとともに、共同学習としてリテールAI専門家による講義の提供やリテールDX人材の育成プログラムを開発するほか、DX実践としてSkip Cartやインストアサイネージを活用したマーケティング改革、MD-Linkを活用したデータの共有・可視化によるサプライチェーン全体の最適化について協働しております。
(2)リテールAI事業
小売事業者や食品・消費財メーカーに対して、お客様の買い物体験の向上やリアル店舗のオペレーション改善、広告・販売促進活動の効率化等に資するプロダクトやソリューションを提供しております。当社では実店舗の運営で発生する現場のニーズを速やかに開発に活かすことができ、また、開発した技術を速やかに現場で実証実験できる体制が最大の特徴であり、実際の小売店舗という現場や流通サプライチェーンのステークホルダーの営業活動などの場面で実活用できるプロダクトやソリューションを開発する「オペレーション・ドリブン」のコンセプトのもと、流通小売事業と連携を図りながら、実店舗で実利用され、効果を生み出すことのできるプロダクトを開発しております。
主力プロダクトであるSkip Cartは、セルフスキャンによるレジ待ちの解消及びレジ人時(注1)の削減やクーポン・レコメンドを活用した実店舗におけるワン・トゥ・ワンマーケティング(注2)など、新しい価値をお客様、小売事業者、食品・消費財メーカーに提供しております。なお、Skip Cartやその他のプロダクトの月額利用料・ライセンス利用料等の収入を得ております。
<当社グループが開発したセルフレジ機能付きのショッピングカート>0201010_005.png
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<リテールAIが提供するプロダクト>0201010_008.png0201010_009.png
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2023年12月末現在で、Skip Cartの当社グループ外での導入も含む導入店舗数は208店舗、導入台数は19,401台となっております。マンスリーユーザー数(注3)は407万人となっております。また、Skip Cartの利用者に占める50歳以上のお客様の割合は57%(注4)となっております。
他にもPOS(注5)やID-POS(注6)等のデータ分析プラットフォームの「MD-Link」(2023年12月末時点で276社が利用)及びそのインフラ基盤である「e3-SMART」、棚状況の監視等を行う「AIカメラソリューション」、店頭における広告・販売促進ツールである「インストアサイネージ」などのプロダクトやソリューションの開発を行うとともに、グループ内の基幹システムや各種業務システムの開発・運用・保守を行っております。
(注)1.「レジ人時」とは、会計時の精算業務1時間当たりに必要な従業員数のことを指しています。
2.「ワン・トゥ・ワンマーケティング」とは、お客様個人の嗜好や属性、購買履歴等に応じて、個別に行うマーケティング活動です。マスマーケティングと比較した際、より深い顧客理解と広告等の出し分けを行う仕組みの構築が必要となります。
3.「マンスリーユーザー数」とは、2023年12月におけるSkip Cartの延べ利用者数(グループ外を除く)を指しています。
4.年代別の利用比率は、2023年12月末日時点においてSkip Cartを導入していた当社グループの204店舗における2023年12月1日から同年12月31日における利用比率であります。
5.「POS」とは、Point of Salesの略称であり、小売店において商品が購入された店舗や日時、数量等の把握が可能となる仕組み・システムを指しています。
6.「ID-POS」とは、(注)5の「POS」にIDデータが組み合わされたものであり、商品が購入された店舗や日時、数量だけでなく、ID単位でどのお客様が何の商品を購入したのかを把握することができる仕組み・システムを指しています。
7.「来店頻度」は、2023年1月1日から同年12月31日の期間において、改装を伴わずにSkip Cartの導入を行った当社グループにおける九州内のスーパーセンターのうち、データを十分に取得可能な14店舗を対象として、Skip Cart導入前後120日間の来店頻度をID-POSベースで比較することで算出しています。なお、当該店舗を対象とした理由は、当社グループの店舗が最も集約された地域である九州を対象とし、当社グループの主軸フォーマットであるスーパーセンターを対象とすることがより実態に即したデータになると考えられるためです。
8.「平均利用率」は、2023年9月25日時点においてSkip Cartを導入している当社グループのスーパーセンター131店舗における、2023年9月25日から同年10月1日のカート利用可能な9時から21時の時間帯における延べ客数のうち、Skip Cartの延べ利用者数の割合であります。なお、当該期間を対象とした背景は、季節性や一時的要因(セールやキャンペーンなど)の影響を受けていない平常時であるため、より実態に即したデータになると考えられるためです。
9.「1時間当たりの通過客数」及び「1時間当たりの買上点数」は、スーパーセンターであるアイランドシティ店の2023年4月29日から同年5月7日におけるPOSデータから算出しております。なお、当該店舗を対象とした理由は、一般的にSkip Cartの導入直後は不自然に利用者が増加する傾向があるため、Skip Cartの導入後期間が最も長い同店を対象としたものであり、また当該期間を対象とした背景は、顧客数が多い方がより実態に即したデータになるという考えから、繁忙期であるゴールデンウイークを選んだためです。
(3)その他
当社グループは、「食」のブランディングを通じて本業である流通小売業における「ロイヤルカスタマー」を確立するため旅館施設である「久織亭(くおりてい)」、「虎の湯」、「古民家煉り(ねり)」や2024年2月1日付で東急不動産株式会社より取得した大分及び阿蘇のゴルフ場を含むゴルフ場運営などのリゾート関連事業及び建築・不動産管理等を行っております。各事業の連携を通じて、会員サービスの拡充及び周遊性を高めることを目指しています。
当社グループ全体のビジネスを俯瞰した図は以下の通りになります。
0201010_012.jpg(注)1.㈱トライアルストアーズは、主に店舗運営を通じて一般消費者への販売を行っております。
2.㈱明治屋は各店舗にテナントとして入っており、主に惣菜製造を通じて一般消費者への販売を行っております。
3.上海翔迹企業管理有限公司では㈱トライアルカンパニーへ主に生活雑貨等の販売用の商品を、㈱Retail AIへ主にIoTデバイス等の電子製品を、それぞれ輸出・販売しております。
4. 煙台創迹軟件有限公司ではシステム開発等の役務提供を行っております。
5.上海翔迹企業管理有限公司及び煙台創迹軟件有限公司は、㈱Retail AIの子会社であります。
6.㈱トライアルリアルエステートはリゾート・建築・不動産管理事業の統括を、㈱トライアル開発は店舗の開発代行及び建築請負を、㈱neri resortは旅館施設の運営を行っております。
なお、当社は、有価証券の取引等の規制に関する内閣府令第49条第2項に規定する特定上場会社等に該当しており、これにより、インサイダー取引規制の重要事実の軽微基準については連結ベースの数値に基づいて判断することとなります。