有価証券報告書-第8期(2024/09/01-2025/08/31)

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2025/11/21 13:00
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有報資料

当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社は、「日本発」「世界初」のこれまでにない新しい抗がん薬を、一日でも早く患者様のもとに届けることで、『Tomorrow is Another Day~明日に希望を感じる社会の実現』を目指しています。2030年には日本発の研究開発型の製薬会社に成長していくことをビジョンとして掲げ、アンメットメディカルニーズの高いがん領域に特化して事業を進めています。特に、これまでにない新しい作用機序を有する低分子の画期的医薬品(ファーストインクラス)の研究開発に注力しておりますが、ファーストインクラスの医薬品は、既存治療薬と異なる有用性を示すことが期待され、これまでの治療法を大きく変えることができる医薬品に成長する可能性があります。既存治療薬では十分な効果が認められず、現在のがんの進行に不安を感じている多くの患者様に対して、がんの進行をコントロールできるという希望を届けることを目標に事業の推進を行っております。
0102010_001.png
(2)経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、新規抗がん薬の市販を目指して研究開発を行う創薬ベンチャー企業であり、現時点では製品売上により利益を安定的に計上するステージにはありません。
当面の経営管理上の目標は、抗がん薬の早期の市販に向けて、当社のパイプラインを計画通り研究開発を推進すること、及び新規創薬標的の探索及びパイプラインを安定的に創出する体制を構築することです。
従いまして、当社は、ROAやROEといった経営指標を目標とはせず、パイプラインの進捗等に目標をおいた事業活動を推進しております。
(3)中長期的な会社の経営戦略
当社の中長期における最重要課題は、新規抗がん薬の研究開発を着実に推進して承認の取得もしくはライセンス契約を締結し、自社もしくはパートナー企業による製品販売からの安定的な収益源を確保することです。
当社のリードパイプラインであるrogocekibは臨床試験段階にあり、自社もしくはパートナー企業により日本国内や欧米などの各地域での承認を取得していく予定です。また、パイプラインの充実に向けた探索研究も継続的に実施してまいります。創薬ベンチャーである当社にとっては、これらの臨床開発と探索研究を並行して行っていくために、研究開発体制の強化と研究開発資金の調達が不可欠であります。
従いまして、当社は、日本の提携先に留まらず、グローバルの製薬会社等の新規提携パートナー企業の確保に努めるとともに、必要に応じて、事業会社や株式発行による資本市場からの資金調達を行いながら、研究開発を推進していく方針です。
(4)経営環境
①医薬品市場の動向
厚生労働省が公表した「薬事工業生産動態統計」によると、2023年の医薬品最終製品(医療用医薬品や一般用医薬品などの合計)の国内での生産金額は10兆332億円、外国からの輸入金額は3兆7,727億円で、合計金額は13兆8,059億円でありました。これに対し、国内への出荷金額は12兆3,597億円、外国への輸出金額は7,131億円であり、合計金額は13兆728億円となりました。
このうち、医療用医薬品の2023年の生産金額は9兆1,529億円であり、前年比較で0.8%の増加となりました。国内医薬品市場規模は薬価改定や医療制度改革に強く影響を受けておりますが、2019年以降の医療用医薬品生産金額の推移は、2021年を直近の底値として、2022年、2023年と2年連続で増加している状況です。その内訳として、腫瘍用薬(がん治療薬)の2023年の生産金額は1兆3,447億円であり、医療用医薬品生産金額の14.7%を占めました。腫瘍用薬の占める割合は2019年以降毎年増加している状況です。
(単位:億円)
0102010_002.png出典:厚生労働省「薬事工業生産動態統計」(2019~2023年度)
②がん領域、及び当社が注力する低分子医薬品の背景
厚生労働省の調査によると日本における2022年のがんの死亡数は38.5万人となり、死因別にみても一番高い順位となりました。なお、がんは1981年から死因の第1位であり、人口10万人当たりの死亡率でみても1947年から増加傾向が進んでおり、最近では総死亡の約3割を占めております。
<死因順位別死亡数・構成割合(上位3位まで)>
2021年2022年前年比
死亡数
(人)
死亡総数に占める割合(%)死亡数
(人)
死亡総数に占める割合(%)死亡数
(人)
総数1,439,856100.01,569,050100.0129,194
死因別
1位 悪性新生物(がん)381,50526.5385,79724.64,292
2位 心疾患214,71014.9232,96414.818,254
3位 老衰152,02710.6179,52911.427,502

(引用元:厚生労働省令和4年(2022)人口動態統計)
<主要要因別死亡率>0102010_003.png出典:公益財団法人がん研究振興財団「がんの統計2025」
国立研究開発法人である国立がん研究センターの調査によると、日本においては人口比におけるがんの死亡割合が世界の中でも高いことが挙げられます。2021年には年間約99万人が新たにがんと診断され、2023年にがんで死亡した人は382,504人となりました。これは日本人が一生のうちにがんと診断される確率は男性が63.3%、女性が50.8%と約2人に1人が診断されているほか、がんによる死亡確率は男性が27.9%で約4人に1人、女性が21.1%で約5人に1人となっています。(診断される確率は2021年、死亡確率は2022年のデータを引用)
<がん統計データ>0102010_004.png出典:国立がん研究センター がん情報サービス 「最新がん統計」、「院内がん登録生存率集計」
厚生労働省 「令和5年患者調査の概況」
また2022年の全世界におけるがんの新規症例数は1,996万人、死亡数は973万人と報告されています(以下の表の脚注に記したBray F.らによる2024年の論文報告より引用)。
<世界における新規症例数および死亡数(2022年)>
がん種新規症例数比率(%)死亡数比率(%)
肺がん2,480,30112.41,817,17218.7
乳がん2,308,89711.6665,6846.8
大腸がん1,926,1189.6903,8599.3
前立腺がん1,466,6807.3396,7924.1
胃がん968,3504.9659,8536.8
その他のがん種10,814,46554.25,293,41954.4
合計19,964,8119,736,779

出典:Bray F, Laversanne M, Sung H, et al. Global cancer statistics 2022: GLOBOCAN estimates of incidence and mortality worldwide for 36 cancers in 185 countries. CA Cancer J Clin. 2024;74(3):229-263. doi:10.3322/caac.21834
上記のとおり、がんは日本を含む世界中で罹患者数が多く、多くのがんにおいて根治療法が確立されていないため、新たな治療法を待っている患者が多くいることからアンメットメディカルニーズが高く、これからも創薬領域での研究開発がさらに活発になることが予想されます。
当社が注力する抗がん薬、ファーストインクラス新薬の承認状況については、米国食品医薬品局(以下、「FDA」という。)が2024年に承認した50品目のうち、それぞれ24品目、13品目でありました。また、そのうちのおよそ半数のモダリティが低分子医薬品であり、ファーストインクラスの低分子抗がん薬の開発が引き続き活発に行われている状況と認識しており、当社パイプラインに対する大手製薬会社からのニーズも引き続き高いものと想定しております。
③今後の見通し
日本国内においては、高齢化や医療分野での技術革新等の要因により、国が負担する全体の医療費が増大しております。これに伴い、国は薬価の引き下げを強化して薬剤費を抑えようとしております。実際に、2020年に当時の菅首相の所信演説では薬価改定を毎年実施する予定であることが示されました。このような薬価改定による価格引き下げで、国内医薬品市場は縮小傾向にあります。しかしながら、高齢化によるがん患者が増加している背景を受けて、抗がん剤等の新薬は販売を拡大しています(日本貿易振興機構JETROのHPより)。
世界市場については、アジア新興国やBRICs諸国が世界市場のシェアを伸ばしてきており、この傾向は今後も続き、市場規模の拡大を牽引することが見込まれます。他の拡大要因としては、治療法が確立していない疾患への対応、長寿化及び医療サービスの高度化等が挙げられています。加えて創薬技術の高度化も市場規模の拡大に寄与するものと考えられます。
④参入障壁
医薬品開発では患者を対象にして安全性と有効性の検証を段階的に進める臨床試験を実施しなければなりません。そのため、医薬品の臨床試験の実施の基準に関するGCP(Good Clinical Practice)と呼ばれる基準や、GMP(Good Manufacturing Practice)と呼ばれる適正製造基準が制定されています。安全な医薬品を製造し、臨床試験を実施するには、これらの厳格な基準を遵守する必要があるため、製薬業界への参入障壁は高いと考えられます。
⑤国際競争力
医療用医薬品の世界売上上位100品目のうち、1割が日本の製薬企業から生み出されています。これまで医薬品開発に関連する様々なイノベーションにより、新しい価値を有する医薬品が誕生してきました。製薬産業は、研究、開発、生産、販売というバリューチェーンを通じて、さまざまなノウハウの蓄積が必要となるため、継続的に新薬を開発することができる製薬企業を持つ国は限られています。
医療用医薬品世界売上上位100品目の
国別起源比較(2018年)
0102010_005.png(出所:厚生労働省「医薬品産業ビジョンの策定に向けて」、2021年5月17日)
⑥技術革新
製薬業界では、AIやITを活用した創薬が注目されています。例えば、新薬の候補になる化合物の探索や設計、評価を行いますが、この探索や設計をコンピュータによるシミュレーション技術を活用するなどといったことが挙げられます。他にも、自律的に学習を深めていくディープラーニング(深層学習)を取り入れる試みや、分子の構造を計算する新しいアルゴリズムなど画期的な技術も次々と登場しています。
これらの技術革新により、薬の有効成分になりうる新規化合物の創出や研究開発の時間的、金銭的コストの削減などのメリットが期待され、難病に対する新たな治療薬の誕生に向け、AIやIT技術が重要な役割を果たすとみられています。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社は、新しい作用を有する抗がん薬を開発することにより、今まで効果的な治療薬がなかったがん患者に対して、新たな治療法を提供することを目指しています。一方で医薬品としての事業化は、製品化までに多額の資金と長い時間を要する等の特性があり、当社は営業損失の発生及び営業キャッシュ・フローのマイナスを計上している状況にあり、すべての研究開発に関する投資を補うに足る収益は生じておりません。なお、当社は、当面の研究開発活動は、リードパイプラインであるrogocekibの米国1/2相試験に注力し、CTX-177は早期に開発を再開させるために、積極的に導出の可能性を検討しています。他の自社パイプラインについては、AMED等からの助成金を活用した自社研究を進めており、CTX-439とGCN2阻害薬に関しては早期のパートナリングも含めた幅広い可能性の検討を前向きに行っております。
このような事業背景の下で、当社は、次の対処すべき課題に取り組んでまいります。
①rogocekibの開発の促進
当社は、国内の第1相臨床試験では、臨床試験実施医療機関の協力の下で患者登録が継続され、2023年8月には全ての患者登録を完了し、その結果を2024年4月の米国癌学会年次総会で発表しました。また2023年には米国での第1/2相臨床試験を開始し、臨床試験実施医療機関及び関連機関との連携を行い、早期で試験を完了する計画を進めています。世界の主要国において早期に承認を取得するためには、さらなる開発体制の強化と開発資金の確保が課題となります。このため、当社は国内及び米国での臨床試験の結果をもとに、提携パートナーの獲得を目指しながら開発の促進を図ってまいります。同時に国内の商業化を製薬会社との提携を行わず自社を中心に実施することも視野に入れ、株式会社メディパルホールディングスとの業務提携及びシオノギファーマ株式会社と協業に関する基本合意を行っております。ただし、株式会社メディパルホールディングス及びシオノギファーマ株式会社との提携については、基本合意段階であり、国内で自社販売する方針が固まったわけではありません。
また、rogocekibは、一定の要件を満たす画期的な医薬品等については、開発の比較的早期の段階から、薬事承認に関する相談・審査における優先的な取り扱いをされる「先駆的医薬品指定制度」や、重篤な疾患であって有効な治療薬が乏しく患者数が少ない疾患等を対象として、治験実施が困難、あるいは実施可能であっても治験の実施にかなりの長時間を要すると認められる場合に、承認申請時に検証的臨床試験以外の臨床試験等で一定程度の有効性及び安全性を確認した上で、製販後に有効性・安全性の再確認等のために必要な調査等を実施すること等を承認条件に付与される「条件付き早期承認制度」を活用できる可能性のある品目であると当社は考えていることから、今後これらの指定制度(海外における同様の制度を含みます。)を活用することにより、開発の促進を実施する可能性がございます。現状の臨床試験戦略で目指している2028年後期の承認申請については、上述の国内外での指定制度を活用できることを前提として、計画を立案しております。
②CTX-177の導出
CTX-177については、小野薬品とのライセンス契約の終了に伴い、当社がCTX-177の全世界での全権利を有することとなりましたので、開発の再開に向けて、新たなパートナーとのライセンス契約の締結を選択肢の一つとして考え、パートナー探しを鋭意進める予定でございます。
③前臨床パイプラインの開発の促進
当社は、RNA制御ストレスを標的としたCTX-439、GCN2阻害薬、新規の標的分子阻害薬の3つの前臨床パイプラインを保有しています。AMED等からの助成金を活用した自社研究を進める一方で、研究開発リソースをrogocekibに注力している状況ですので、CTX-439とGCN2阻害薬に関しては早期のパートナリングも含めた幅広い可能性の検討も前向きに行っております。市場環境や競合状況を的確に判断して、適切なタイミングで提携パートナーを確保することが課題です。
④パイプラインの充実
当社は、必要に応じてRNA制御ストレスを標的とした新しい抗がん薬パイプラインを立ち上げ、適宜パイプライン間の優先順位付けを見直すことによって研究開発の成功確率を上げることができると考えていますが、そのためにはアカデミアなどの最先端の科学へのアクセスを維持することと研究開発資金の確保が課題となります。なお、現状は研究開発リソースをrogocekibに注力している状況ですので、抑制的に新規パイプラインの検討を行っています。
⑤財務体質の強化
当社は創薬バイオベンチャーであるため、多額の研究開発費用が先行して必要となり、継続的な営業損失が発生するとともに営業キャッシュ・フローもマイナスとなる傾向があります。そのため、財務体質の強化が課題となります。今後も、当社がrogocekibを始めとした既存パイプラインの開発を促進しながら、安定的に新規パイプラインの創出を継続していくためには、新たな提携パートナーの確保に加え、事業会社や株式発行による資本市場からの資金調達を実施するなどして、財務基盤の充実と安定化を図っていくことが重要な課題と考えています。
⑥優秀な人材の獲得
当社は、創薬に関する経験豊富なメンバーが積極的に外部委託を活用することにより、効率的な組織運営をしております。しかしながら、今後も、国内外のバイオベンチャー企業や製薬企業との競争が続く中において、競合他社との差別化、研究開発の加速、事業領域の拡大などが必要になる可能性があると考えております。そのため、パイプラインの創出に際して最先端の科学へのアクセスを維持し、創造的かつ独創的な研究活動を推進する等の優秀な人材の獲得は、当社の重要な課題になっています。また、管理部門においても当面は少人数による運営体制を計画しておりますが、適切なタイミングで新たな人材を獲得して、財務・経理・内部統制を含む管理体制の一層の強化を進めていく方針です。
⑦提携パートナー確保
当社はパイプラインの開発を推進するために最適な提携パートナーを確保することを課題としております。そのために、提携パートナー候補先の研究開発に関する戦略の方針状況を常に把握し、医療情報などの市場環境の情報収集も行っております。また当社のパイプラインの開発状況、競合状況を勘案して、適切なタイミングでコミュニケーションを行っております。

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