有価証券報告書-第12期(2024/05/01-2025/04/30)
有報資料
文中の将来に関する事項は本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1)経営方針
当社は、「宿泊業界をUP DATEする」という理念を掲げ、宿泊業界の既存の“常識”をアップデートし、新たな“常識”を創り出すことを目指しております。時代の変化や多様化する旅行者ニーズに柔軟に対応し、従来の枠組みにとらわれない新たな宿泊スタイルを提案することで、立地条件や観光資源に過度に依存しない施設そのものの魅力を最大限に引き出してまいります。
また、当社は、単なる集客支援会社にとどまることなく、宿泊施設の企画・開発から運営、プロモーション、ブランディング支援に至るまで、宿泊施設が直面する多様な課題に対しワンストップでの支援を可能とする体制を構築することで、宿泊業界に対して新たな価値と常識を提案する「宿泊施設の総合支援会社」として持続的な成長及び企業価値の向上を目指してまいります。
(2) 経営環境
2020年以降、新型コロナウイルス感染症の影響により、非接触型の旅行形態としてアウトドアが再評価される中、「グランピング」というキーワードを冠した宿泊施設が急速に拡大いたしました。メディアの後押しもあり、「グランピング」は一般名詞として広く浸透し、同市場は急成長を遂げております。
また、日本人による国内宿泊旅行の消費動向は、新型コロナウイルス感染症の影響を受ける前の2019年と比較して増加傾向にあり、既にコロナ禍前の水準を上回るまでに回復しております(*1)。さらに、2023年度末時点における旅館業法に基づく営業許可取得施設数は92,947施設(*2)に達しており、コロナ禍において増加したグランピング施設や一棟貸しのリゾートヴィラ等、簡易宿所営業の許可を取得する施設の増加が寄与するかたちで、施設数は年々増加傾向にあります。
なお、グランピング市場は国内旅行市場の中で拡大傾向にあるものの、依然として市場のごく一部を構成するにとどまり、現時点におけるシェアは限定的であります。そのため、既存のコテージやバンガロー、キャンプ場等からのグランピング施設への業態転換に加え、ホテル・旅館等が有する遊休地を活用した新規開発は、今後も継続的に進展していくものと見込まれます。
一方で、「グランピング」が一般名詞化するに伴い、競争の激化及び市場内における淘汰の進行も見込まれます。今後、宿泊形態やその呼称には一定の変化が生じる可能性があるものの、当社が集客支援事業において対象としている一棟貸しのリゾートヴィラ等、客室内でゆったりとした時間を過ごすことを目的とした滞在型の宿泊施設に対するニーズは、引き続き堅調に推移するものと想定されます。
当社が2023年より運営している「いぬやど」は、国内のペットツーリズム市場を対象とした事業であります。2023年度末時点において、国内で登録されている犬の頭数は600万頭を超えており(*3)、家計におけるペット関連支出も上昇傾向を示しております(*4)。これらの背景をふまえ、今後ペットツーリズムに対するニーズも一層高まっていくものと推察されます。
また、2023年における「年間を通じて旅行に行かなかった方」を対象とするアンケート調査においては、旅行の阻害要因として「ペットを飼っていること」を挙げた回答者が18.2%を占めております(*5)。このことからも、ペットを飼っているが旅行にも行きたいと考えている方や、旅行を優先するためにペットの飼育を控えていると考えている方など、いずれのニーズにも応える選択肢として、ペットツーリズムに対する関心とニーズの高まりが伺えます。
こうした背景のもと、ペットを家族の一員として、特別なお客様として迎え入れることができる、いわゆる“ペットファースト”な宿泊施設の形態には、今後さらなる拡大の余地があるものと考えられます。
当社が今後注力していく訪日旅行(インバウンド)市場は、2023年の新型コロナウイルス感染症の収束を契機として回復の兆しを見せております。観光庁の統計によれば、2024年5月から2025年4月までの外国人延べ宿泊者数は1億7,348万人泊に達しており(*6)、引き続きインバウンド需要の拡大がみられます。また、2025年4月の訪日外客数は、過去最高であった2025年1月の378万人を上回り、単月として初めて390万人を記録致しました。(*7)
現時点においては、訪日旅行者のニーズは依然として東京・大阪・京都といった主要都市圏に集中しておりますが、観光庁が策定した「第4次観光立国推進基本計画」では、持続可能な観光地域の形成が基本方針の1つとして掲げられており、都市部への過度な集中を緩和しつつ、地域経済や伝統文化を支える分散型観光の推進に注力していくことが方針の1つとして挙げられております。また、複数回目の訪日旅行者や、国内での長期滞在を目的とする旅行者においては、地方のリゾート施設を滞在先として選好する傾向も見受けられることから、地方におけるリゾート施設には、今後の成長が見込まれる大きな潜在市場が存在しているものと考えております。
*1 「観光庁 旅行・観光消費動向調査(2024年・年間値(確定値))」
*2 「厚生労働省 令和5年度衛生行政報告例」
*3 「厚生労働省 都道府県別の犬の登録頭数と予防注射頭数等(平成26年度~令和5年度)」
*4 「総務省統計局 家計調査(2020年~2024年)」
*5 「公益財団法人日本交通公社 旅行年報2024」
*6 「観光庁 宿泊旅行統計調査(速報値)」
*7 「日本政府観光局 訪日外客数(2025年4月推計値)」
(3)中期的な経営戦略
当社の中期的な経営戦略は以下のとおりです。
①集客支援事業における顧客施設の拡大
当社の主力事業であり着実な成長を続ける集客支援事業においては、引き続き顧客施設数の拡大に取り組んでまいります。従来は宿泊施設からのサービスに関する問い合わせを契機とした受動的な取引が中心でありましたが、今後は営業体制を強化し、能動的なアプローチによる新規施設の開拓を積極的に推進してまいります。これまでに蓄積してきた豊富な実績や運営ノウハウに裏打ちされた当社サービスの有用性を訴求することで、より多くの宿泊施設との連携機会を創出してまいります。
②他の施設形態への横展開
集客支援事業においては、サービス開始以来、グランピング施設やリゾート施設を中心にサービスを提供してまいりましたが、今後は、各施設特有の運営形態やニーズを分析し、柔軟な支援を可能とする体制を構築することで、リゾートホテルや高級旅館をはじめとする多様な宿泊施設形態への対応を進めてまいります。取扱い施設の多様化を通じて、事業機会の拡大を図るとともに市場における当社ブランドの価値向上を目指してまいります。
③予約プラットフォーム利用者の拡大
当社が運営する予約プラットフォーム「リゾートグランピングドットコム」及び「いぬやど」においては、UI(ユーザーインターフェース)の改善並びに各種プロモーション施策の強化を通じて、ユーザー数の拡大を図ってまいります。ユーザーの利便性向上とサービスの訴求力強化により新規顧客の獲得を促進し、予約プラットフォームとしての競争優位性を一層高めてまいります。
④会員機能の拡充
当社が運営する予約プラットフォームにおいて、会員限定の特典やコンテンツの一層の充実に加え、会員ニーズを捉えたサービス改善を継続的に行うことで、会員制度の強化に取り組んでまいります。これにより、既存ユーザーのロイヤリティ向上及びリピーターの増加を促し、LTV(顧客生涯価値)の最大化を目指すとともに、継続的な利用を促す仕組みの構築を進めてまいります。
⑤宿泊施設の再生事業
コロナ禍による需要の低迷や後継者不在といった構造的な課題により、経営の維持が困難となっている宿泊施設に対し、今後、再生支援に取り組んでまいります。経営面のみならず、施設運営や人材確保等の多角的な支援を行うことで、地域の観光資源の持続的な活用を促進するとともに、宿泊業界全体の健全な発展に貢献してまいります。
⑥訪日旅行者をターゲットとしたホテル型宿泊施設の開業
インバウンド需要の本格的な回復を見据え、訪日外国人旅行者を主なターゲットとしたホテル型宿泊施設の開業を進めてまいります。日本文化や地域特性を活かしたコンセプト設計に加え、外国語対応を含むサービス体制を整備することで、快適で魅力的な滞在環境を提供し、継続的な集客と収益の最大化を図ってまいります。
また、当該施設の運営を通じて蓄積したノウハウを集客支援事業における顧客施設に横展開することで、顧客施設全体のサービスレベルの底上げと、高付加価値な施設運営の実現に貢献してまいります。
⑦訪日旅行者向けの予約プラットフォームの開発
拡大を続けるインバウンド需要に対応すべく、訪日旅行者を主なユーザーとする新たな予約プラットフォームの開発を進めてまいります。多言語対応や多様な決済手段の導入に加え、各国の文化や嗜好に配慮したUX(ユーザーエクスペリエンス)設計を取り入れることで、利便性と満足度の向上を図ります。これにより、訪日旅行の出発点として選ばれるプラットフォームの確立を目指してまいります。
(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
当社の集客支援事業における大きな特徴の1つとして、施設個別の予約サイト制作費用、プロモーション費用、運営コンサルティング費用等を当社が負担し、獲得した予約売上高に応じて報酬を受け取る成功報酬型の料金体系を採用していることが挙げられます。そのため、掲載施設の予約獲得高の合計である流通総額の拡大が、当社の売上高の持続的な成長に直結いたします。加えて、当該事業モデルは当社による初期費用の先行負担を伴う構造であることから、適正かつ効率的な経費管理のもとで収益性を確保することが、経営上極めて重要な要素となっております。
そのため当社では、財務面における重要な経営指標として「売上高成長率」、「経常利益率」、「自己資本利益率(ROE)」、「自己資本比率」を、事業運営上の重要な経営指標として「サイトユーザー数」、「掲載客室数」、「予約獲得件数」、「平均客室単価(ADR)」を重視しております。
①サイトユーザー数
サイトユーザー数は、当社が運営する予約プラットフォーム及び施設個別の予約サイトにおける、1日あたりの訪問ユーザー数を示す指標であります。本指標は、予約獲得件数の基礎となるものであり、当社サービスの普及状況や旅行者の利用動向を把握するうえで重要な役割を果たしております。
②掲載客室数
掲載客室数は、当社が運営する予約プラットフォーム上に掲載されている施設の総客室数を示す指標であります。当社が集客支援サービスを提供しているすべての顧客施設は、当社予約プラットフォームに掲載されていることから、本指標は予約獲得件数の基礎となる重要な指標であり、当社の市場占有率を測るうえでも有用な指標であります。さらに、掲載客室数の増加は、当社の認知度向上や新規契約の獲得につながる重要な要因の1つとなっております。
③予約獲得件数
予約獲得件数は、当社の予約プラットフォーム上で取り扱っている客室のうち、実際に予約が成立した客室数を示す指標であります。本指標は、当社のプロモーション活動、予約サイトの設計、SEO施策等の影響を受けるものであり、当該施策が効果的に機能しているかを測るうえで重要な役割を果たしております。
④平均客室単価(ADR)
平均客室単価(ADR)は、1室あたりの平均販売単価を示す指標であります。本指標は、顧客施設の立地(商圏)、設備水準、提供サービスの内容、キャンペーン施策等の要因により影響を受けます。また、季節要因や地域ごとの需要動向も単価に反映される傾向があります。
事業上の重要な経営指標について、各指標の足元における推移は以下のとおりであります。
サイトユーザー数については、当社サービスの認知度や掲載施設数の増加が主な変動理由であります。ただし、当社サービスはリゾート施設が中心であることから、季節的要因による変動は避けられず、夏季には急増する傾向がある一方、秋季から冬季にかけては減少が顕著となる傾向があります。掲載客室数及び予約獲得件数については、顧客施設数の増減や当社サービスを利用するユーザー数の増減が主な変動理由であります。平均客室単価については、掲載施設の形態に加え、主に季節要因に応じた宿泊単価の変動が影響しております。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当事業年度における我が国経済は、エネルギー価格や原材料価格の高止まりによる物価上昇の影響が継続したものの、雇用情勢の改善や訪日旅行者の増加等を背景に緩やかな回復基調で推移いたしました。特に、インバウンド需要の拡大に伴い、観光・宿泊業界においては需要の回復が顕著に見られました。一方で、深刻化する人手不足や運営コストの上昇、地域間における需要格差など、業界全体としては依然として先行き不透明な状況が続いております。
このような経営環境において当社が対処すべき課題は次のとおりであります。
①サービスの認知度向上、新たな利用者の獲得
当社が今後も高い成長率を持続していくためには、サービスの認知度を一層向上させ、新たな利用者の獲得を継続的に推進することが重要であると認識しております。これまでも、SNSを活用した情報発信、各種広告展開、インフルエンサーとの連携、展示会への出店、並びにインターネットを活用したデジタルマーケティング等を通じて、認知度向上に向けた取り組みを行ってまいりましたが、今後はこれらの活動をさらに強化・拡充し、より効果的かつ戦略的なマーケティングを推進してまいります。
②新たなプラットフォームの創出
当社は、集客支援事業において、国内市場における事業基盤の強化及び継続的な拡大を進めておりますが、さらなる成長を実現するためには、インバウンド需要を取り込むべく、海外市場を対象とした予約プラットフォームの展開が不可欠であると認識しております。
昨今、新型コロナウイルス感染症の影響が緩和されるとともに、大幅な為替変動の影響もあり、訪日旅行者数が急増しております。一方で、旅行先が特定地域に偏在する傾向が見られるほか、多くの国内宿泊施設においては、海外市場に向けた情報発信が困難であること、また訪日旅行者のニーズ把握が十分に行えないことなど、集客面において複数の課題が顕在化しております。
当社サービスを通じて宿泊予約を行っている訪日旅行者は、現時点では香港・台湾等のアジア地域からの来訪が中心となっておりますが、こうした状況を踏まえ、より多様な訪日旅行者のニーズに的確に対応し、宿泊施設の集客課題を解決するためにも、海外向けの新たな予約プラットフォームの早期整備が急務であると考えております。
当該プラットフォームを通じてインバウンドユーザーの会員化を促進し、訪日旅行者と宿泊施設の双方にとって価値ある接点を創出することにより、インバウンド領域における集客支援事業の本格展開を図ってまいります。
③提供サービスの拡充
小規模な宿泊施設が多数存在する中で、後継者や運営人材の不足に起因する経営課題が顕在化しており、当社が展開する集客支援サービスのさらなる拡充が必要であると認識しております。
具体的には、施設運営により深く関与する「運営管理サービス」として、人員の手配、旅行者からの問い合わせ対応、予約管理業務等を当社が担うことにより、これまでの成功報酬型手数料(予約獲得高×集客手数料率)に加え、新たに運営管理手数料を収受するスキームを構築することを想定しております。
このような取り組みにより、宿泊施設が直面する運営上の課題解決を図るとともに、当社における集客支援事業のマネタイズポイントの多様化及び収益力の強化を推進してまいります。
④エキスパート人材の採用及び育成
当社が展開する集客支援事業及び直営宿泊事業において、既存領域のさらなる成長を図るとともに、新規領域への取り組みを推進していくためには、高度な専門性を有する人材の確保及び育成が不可欠であると認識しております。
集客支援事業においては、宿泊施設が抱える課題の的確な理解と解決に資する知見の習得、旅行者に対する効果的なマーケティング手法の活用、並びにWebサイトや予約プラットフォームの操作性向上による予約獲得力の強化等が求められます。また、直営宿泊施設においては、顧客満足度を高め、独自性あるサービスを提供することが重要となります。さらに、旅行者の属性や利用実績等に応じたデータ分析に基づき、潜在的なニーズを把握し、旅の目的や動機を当社側から提案・喚起することで、新たな旅行需要の創出を図ることができるシステムの開発も必要と考えております。
これらを実現するうえで、専門性の高い人材の確保は極めて重要であり、今後も社内研修の充実及び優秀な人材の採用活動の強化に継続的に取り組んでまいります。
(1)経営方針
当社は、「宿泊業界をUP DATEする」という理念を掲げ、宿泊業界の既存の“常識”をアップデートし、新たな“常識”を創り出すことを目指しております。時代の変化や多様化する旅行者ニーズに柔軟に対応し、従来の枠組みにとらわれない新たな宿泊スタイルを提案することで、立地条件や観光資源に過度に依存しない施設そのものの魅力を最大限に引き出してまいります。
また、当社は、単なる集客支援会社にとどまることなく、宿泊施設の企画・開発から運営、プロモーション、ブランディング支援に至るまで、宿泊施設が直面する多様な課題に対しワンストップでの支援を可能とする体制を構築することで、宿泊業界に対して新たな価値と常識を提案する「宿泊施設の総合支援会社」として持続的な成長及び企業価値の向上を目指してまいります。
(2) 経営環境
2020年以降、新型コロナウイルス感染症の影響により、非接触型の旅行形態としてアウトドアが再評価される中、「グランピング」というキーワードを冠した宿泊施設が急速に拡大いたしました。メディアの後押しもあり、「グランピング」は一般名詞として広く浸透し、同市場は急成長を遂げております。
また、日本人による国内宿泊旅行の消費動向は、新型コロナウイルス感染症の影響を受ける前の2019年と比較して増加傾向にあり、既にコロナ禍前の水準を上回るまでに回復しております(*1)。さらに、2023年度末時点における旅館業法に基づく営業許可取得施設数は92,947施設(*2)に達しており、コロナ禍において増加したグランピング施設や一棟貸しのリゾートヴィラ等、簡易宿所営業の許可を取得する施設の増加が寄与するかたちで、施設数は年々増加傾向にあります。
なお、グランピング市場は国内旅行市場の中で拡大傾向にあるものの、依然として市場のごく一部を構成するにとどまり、現時点におけるシェアは限定的であります。そのため、既存のコテージやバンガロー、キャンプ場等からのグランピング施設への業態転換に加え、ホテル・旅館等が有する遊休地を活用した新規開発は、今後も継続的に進展していくものと見込まれます。
一方で、「グランピング」が一般名詞化するに伴い、競争の激化及び市場内における淘汰の進行も見込まれます。今後、宿泊形態やその呼称には一定の変化が生じる可能性があるものの、当社が集客支援事業において対象としている一棟貸しのリゾートヴィラ等、客室内でゆったりとした時間を過ごすことを目的とした滞在型の宿泊施設に対するニーズは、引き続き堅調に推移するものと想定されます。
当社が2023年より運営している「いぬやど」は、国内のペットツーリズム市場を対象とした事業であります。2023年度末時点において、国内で登録されている犬の頭数は600万頭を超えており(*3)、家計におけるペット関連支出も上昇傾向を示しております(*4)。これらの背景をふまえ、今後ペットツーリズムに対するニーズも一層高まっていくものと推察されます。
また、2023年における「年間を通じて旅行に行かなかった方」を対象とするアンケート調査においては、旅行の阻害要因として「ペットを飼っていること」を挙げた回答者が18.2%を占めております(*5)。このことからも、ペットを飼っているが旅行にも行きたいと考えている方や、旅行を優先するためにペットの飼育を控えていると考えている方など、いずれのニーズにも応える選択肢として、ペットツーリズムに対する関心とニーズの高まりが伺えます。
こうした背景のもと、ペットを家族の一員として、特別なお客様として迎え入れることができる、いわゆる“ペットファースト”な宿泊施設の形態には、今後さらなる拡大の余地があるものと考えられます。
当社が今後注力していく訪日旅行(インバウンド)市場は、2023年の新型コロナウイルス感染症の収束を契機として回復の兆しを見せております。観光庁の統計によれば、2024年5月から2025年4月までの外国人延べ宿泊者数は1億7,348万人泊に達しており(*6)、引き続きインバウンド需要の拡大がみられます。また、2025年4月の訪日外客数は、過去最高であった2025年1月の378万人を上回り、単月として初めて390万人を記録致しました。(*7)
現時点においては、訪日旅行者のニーズは依然として東京・大阪・京都といった主要都市圏に集中しておりますが、観光庁が策定した「第4次観光立国推進基本計画」では、持続可能な観光地域の形成が基本方針の1つとして掲げられており、都市部への過度な集中を緩和しつつ、地域経済や伝統文化を支える分散型観光の推進に注力していくことが方針の1つとして挙げられております。また、複数回目の訪日旅行者や、国内での長期滞在を目的とする旅行者においては、地方のリゾート施設を滞在先として選好する傾向も見受けられることから、地方におけるリゾート施設には、今後の成長が見込まれる大きな潜在市場が存在しているものと考えております。
*1 「観光庁 旅行・観光消費動向調査(2024年・年間値(確定値))」
*2 「厚生労働省 令和5年度衛生行政報告例」
*3 「厚生労働省 都道府県別の犬の登録頭数と予防注射頭数等(平成26年度~令和5年度)」
*4 「総務省統計局 家計調査(2020年~2024年)」
*5 「公益財団法人日本交通公社 旅行年報2024」
*6 「観光庁 宿泊旅行統計調査(速報値)」
*7 「日本政府観光局 訪日外客数(2025年4月推計値)」
(3)中期的な経営戦略
当社の中期的な経営戦略は以下のとおりです。
①集客支援事業における顧客施設の拡大
当社の主力事業であり着実な成長を続ける集客支援事業においては、引き続き顧客施設数の拡大に取り組んでまいります。従来は宿泊施設からのサービスに関する問い合わせを契機とした受動的な取引が中心でありましたが、今後は営業体制を強化し、能動的なアプローチによる新規施設の開拓を積極的に推進してまいります。これまでに蓄積してきた豊富な実績や運営ノウハウに裏打ちされた当社サービスの有用性を訴求することで、より多くの宿泊施設との連携機会を創出してまいります。
②他の施設形態への横展開
集客支援事業においては、サービス開始以来、グランピング施設やリゾート施設を中心にサービスを提供してまいりましたが、今後は、各施設特有の運営形態やニーズを分析し、柔軟な支援を可能とする体制を構築することで、リゾートホテルや高級旅館をはじめとする多様な宿泊施設形態への対応を進めてまいります。取扱い施設の多様化を通じて、事業機会の拡大を図るとともに市場における当社ブランドの価値向上を目指してまいります。
③予約プラットフォーム利用者の拡大
当社が運営する予約プラットフォーム「リゾートグランピングドットコム」及び「いぬやど」においては、UI(ユーザーインターフェース)の改善並びに各種プロモーション施策の強化を通じて、ユーザー数の拡大を図ってまいります。ユーザーの利便性向上とサービスの訴求力強化により新規顧客の獲得を促進し、予約プラットフォームとしての競争優位性を一層高めてまいります。
④会員機能の拡充
当社が運営する予約プラットフォームにおいて、会員限定の特典やコンテンツの一層の充実に加え、会員ニーズを捉えたサービス改善を継続的に行うことで、会員制度の強化に取り組んでまいります。これにより、既存ユーザーのロイヤリティ向上及びリピーターの増加を促し、LTV(顧客生涯価値)の最大化を目指すとともに、継続的な利用を促す仕組みの構築を進めてまいります。
⑤宿泊施設の再生事業
コロナ禍による需要の低迷や後継者不在といった構造的な課題により、経営の維持が困難となっている宿泊施設に対し、今後、再生支援に取り組んでまいります。経営面のみならず、施設運営や人材確保等の多角的な支援を行うことで、地域の観光資源の持続的な活用を促進するとともに、宿泊業界全体の健全な発展に貢献してまいります。
⑥訪日旅行者をターゲットとしたホテル型宿泊施設の開業
インバウンド需要の本格的な回復を見据え、訪日外国人旅行者を主なターゲットとしたホテル型宿泊施設の開業を進めてまいります。日本文化や地域特性を活かしたコンセプト設計に加え、外国語対応を含むサービス体制を整備することで、快適で魅力的な滞在環境を提供し、継続的な集客と収益の最大化を図ってまいります。
また、当該施設の運営を通じて蓄積したノウハウを集客支援事業における顧客施設に横展開することで、顧客施設全体のサービスレベルの底上げと、高付加価値な施設運営の実現に貢献してまいります。
⑦訪日旅行者向けの予約プラットフォームの開発
拡大を続けるインバウンド需要に対応すべく、訪日旅行者を主なユーザーとする新たな予約プラットフォームの開発を進めてまいります。多言語対応や多様な決済手段の導入に加え、各国の文化や嗜好に配慮したUX(ユーザーエクスペリエンス)設計を取り入れることで、利便性と満足度の向上を図ります。これにより、訪日旅行の出発点として選ばれるプラットフォームの確立を目指してまいります。
(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
当社の集客支援事業における大きな特徴の1つとして、施設個別の予約サイト制作費用、プロモーション費用、運営コンサルティング費用等を当社が負担し、獲得した予約売上高に応じて報酬を受け取る成功報酬型の料金体系を採用していることが挙げられます。そのため、掲載施設の予約獲得高の合計である流通総額の拡大が、当社の売上高の持続的な成長に直結いたします。加えて、当該事業モデルは当社による初期費用の先行負担を伴う構造であることから、適正かつ効率的な経費管理のもとで収益性を確保することが、経営上極めて重要な要素となっております。
そのため当社では、財務面における重要な経営指標として「売上高成長率」、「経常利益率」、「自己資本利益率(ROE)」、「自己資本比率」を、事業運営上の重要な経営指標として「サイトユーザー数」、「掲載客室数」、「予約獲得件数」、「平均客室単価(ADR)」を重視しております。
①サイトユーザー数
サイトユーザー数は、当社が運営する予約プラットフォーム及び施設個別の予約サイトにおける、1日あたりの訪問ユーザー数を示す指標であります。本指標は、予約獲得件数の基礎となるものであり、当社サービスの普及状況や旅行者の利用動向を把握するうえで重要な役割を果たしております。
②掲載客室数
掲載客室数は、当社が運営する予約プラットフォーム上に掲載されている施設の総客室数を示す指標であります。当社が集客支援サービスを提供しているすべての顧客施設は、当社予約プラットフォームに掲載されていることから、本指標は予約獲得件数の基礎となる重要な指標であり、当社の市場占有率を測るうえでも有用な指標であります。さらに、掲載客室数の増加は、当社の認知度向上や新規契約の獲得につながる重要な要因の1つとなっております。
③予約獲得件数
予約獲得件数は、当社の予約プラットフォーム上で取り扱っている客室のうち、実際に予約が成立した客室数を示す指標であります。本指標は、当社のプロモーション活動、予約サイトの設計、SEO施策等の影響を受けるものであり、当該施策が効果的に機能しているかを測るうえで重要な役割を果たしております。
④平均客室単価(ADR)
平均客室単価(ADR)は、1室あたりの平均販売単価を示す指標であります。本指標は、顧客施設の立地(商圏)、設備水準、提供サービスの内容、キャンペーン施策等の要因により影響を受けます。また、季節要因や地域ごとの需要動向も単価に反映される傾向があります。
事業上の重要な経営指標について、各指標の足元における推移は以下のとおりであります。
サイトユーザー数については、当社サービスの認知度や掲載施設数の増加が主な変動理由であります。ただし、当社サービスはリゾート施設が中心であることから、季節的要因による変動は避けられず、夏季には急増する傾向がある一方、秋季から冬季にかけては減少が顕著となる傾向があります。掲載客室数及び予約獲得件数については、顧客施設数の増減や当社サービスを利用するユーザー数の増減が主な変動理由であります。平均客室単価については、掲載施設の形態に加え、主に季節要因に応じた宿泊単価の変動が影響しております。
| 期 | 期間 | サイトユーザー数(期間累計) (千人) | 掲載客室数 (期末時点) (室) | 予約獲得件数 (期間累計) (件) | 平均客室単価 (期間平均) (千円) |
| 2024年4月期 | 第1四半期 | 7,575 | 1,697 | 29,969 | 78 |
| 第2四半期 | 8,732 | 1,872 | 44,247 | 83 | |
| 第3四半期 | 7,212 | 1,929 | 27,963 | 73 | |
| 第4四半期 | 9,596 | 2,086 | 32,692 | 72 | |
| 通期 | 33,117 | 2,086 | 134,871 | 77 | |
| 2025年4月期 | 第1四半期 | 12,626 | 2,092 | 39,689 | 76 |
| 第2四半期 | 11,046 | 2,270 | 56,699 | 84 | |
| 第3四半期 | 9,453 | 2,346 | 36,709 | 73 | |
| 第4四半期 | 10,821 | 2,478 | 42,084 | 68 | |
| 通期 | 43,949 | 2,478 | 175,181 | 76 |
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当事業年度における我が国経済は、エネルギー価格や原材料価格の高止まりによる物価上昇の影響が継続したものの、雇用情勢の改善や訪日旅行者の増加等を背景に緩やかな回復基調で推移いたしました。特に、インバウンド需要の拡大に伴い、観光・宿泊業界においては需要の回復が顕著に見られました。一方で、深刻化する人手不足や運営コストの上昇、地域間における需要格差など、業界全体としては依然として先行き不透明な状況が続いております。
このような経営環境において当社が対処すべき課題は次のとおりであります。
①サービスの認知度向上、新たな利用者の獲得
当社が今後も高い成長率を持続していくためには、サービスの認知度を一層向上させ、新たな利用者の獲得を継続的に推進することが重要であると認識しております。これまでも、SNSを活用した情報発信、各種広告展開、インフルエンサーとの連携、展示会への出店、並びにインターネットを活用したデジタルマーケティング等を通じて、認知度向上に向けた取り組みを行ってまいりましたが、今後はこれらの活動をさらに強化・拡充し、より効果的かつ戦略的なマーケティングを推進してまいります。
②新たなプラットフォームの創出
当社は、集客支援事業において、国内市場における事業基盤の強化及び継続的な拡大を進めておりますが、さらなる成長を実現するためには、インバウンド需要を取り込むべく、海外市場を対象とした予約プラットフォームの展開が不可欠であると認識しております。
昨今、新型コロナウイルス感染症の影響が緩和されるとともに、大幅な為替変動の影響もあり、訪日旅行者数が急増しております。一方で、旅行先が特定地域に偏在する傾向が見られるほか、多くの国内宿泊施設においては、海外市場に向けた情報発信が困難であること、また訪日旅行者のニーズ把握が十分に行えないことなど、集客面において複数の課題が顕在化しております。
当社サービスを通じて宿泊予約を行っている訪日旅行者は、現時点では香港・台湾等のアジア地域からの来訪が中心となっておりますが、こうした状況を踏まえ、より多様な訪日旅行者のニーズに的確に対応し、宿泊施設の集客課題を解決するためにも、海外向けの新たな予約プラットフォームの早期整備が急務であると考えております。
当該プラットフォームを通じてインバウンドユーザーの会員化を促進し、訪日旅行者と宿泊施設の双方にとって価値ある接点を創出することにより、インバウンド領域における集客支援事業の本格展開を図ってまいります。
③提供サービスの拡充
小規模な宿泊施設が多数存在する中で、後継者や運営人材の不足に起因する経営課題が顕在化しており、当社が展開する集客支援サービスのさらなる拡充が必要であると認識しております。
具体的には、施設運営により深く関与する「運営管理サービス」として、人員の手配、旅行者からの問い合わせ対応、予約管理業務等を当社が担うことにより、これまでの成功報酬型手数料(予約獲得高×集客手数料率)に加え、新たに運営管理手数料を収受するスキームを構築することを想定しております。
このような取り組みにより、宿泊施設が直面する運営上の課題解決を図るとともに、当社における集客支援事業のマネタイズポイントの多様化及び収益力の強化を推進してまいります。
④エキスパート人材の採用及び育成
当社が展開する集客支援事業及び直営宿泊事業において、既存領域のさらなる成長を図るとともに、新規領域への取り組みを推進していくためには、高度な専門性を有する人材の確保及び育成が不可欠であると認識しております。
集客支援事業においては、宿泊施設が抱える課題の的確な理解と解決に資する知見の習得、旅行者に対する効果的なマーケティング手法の活用、並びにWebサイトや予約プラットフォームの操作性向上による予約獲得力の強化等が求められます。また、直営宿泊施設においては、顧客満足度を高め、独自性あるサービスを提供することが重要となります。さらに、旅行者の属性や利用実績等に応じたデータ分析に基づき、潜在的なニーズを把握し、旅の目的や動機を当社側から提案・喚起することで、新たな旅行需要の創出を図ることができるシステムの開発も必要と考えております。
これらを実現するうえで、専門性の高い人材の確保は極めて重要であり、今後も社内研修の充実及び優秀な人材の採用活動の強化に継続的に取り組んでまいります。