有価証券報告書(内国投資証券)-第9期(令和2年6月1日-令和2年11月30日)
(1)【主要な経営指標等の推移】
① 主要な経営指標等の推移
(注1)本投資法人の営業期間(以下「事業年度」ということがあります。)は、毎年6月1日から11月末日まで及び12月1日から翌年5月末日までの各6か月間ですが、第1期営業期間は本投資法人設立の日(2016年3月29日)から2016年11月末日までです。
(注2)営業収益等には消費税等は含まれていません。
(注3)別途記載する場合を除き、単位未満の金額については切り捨てて記載し、比率については小数第2位を四捨五入した数値を記載しています。したがって、各項目別の金額又は比率の合計が一致しない場合があります。以下、同じです。
(注4)一時差異等調整引当額に係る利益超過分配の実施に伴う出資総額の変動は考慮していません。以下、同じです。
(注5)第1期の1口当たり当期純利益は、当期純利益を日数による加重平均投資口数(67,589口)で除することにより算定しています。なお、実質的な資産運用期間の開始日である2016年9月1日時点を期首とみなして、日数による加重平均投資口数(176,200口)により算出した1口当たり当期純利益は373円です。
また、第4期の1口当たり当期純利益は、当期純利益を日数による加重平均投資口数(234,960口)で除することにより算定しています。
(注6)第1期の1口当たり利益超過分配金3円のうち、一時差異等調整引当額は3円、第2期の1口当たり利益超過分配金7円のうち、一時差異等調整引当額は7円、第3期の1口当たり利益超過分配金7円のうち、一時差異等調整引当額は7円、第4期の1口当たり利益超過分配金12円のうち、一時差異等調整引当額は12円、第5期の1口当たり利益超過分配金12円のうち、一時差異等調整引当額は12円、第6期の1口当たり利益超過分配金12円のうち、一時差異等調整引当額は12円、第7期の1口当たり利益超過分配金12円のうち、一時差異等調整引当額は12円、第8期の1口当たり利益超過分配金12円のうち、一時差異等調整引当額は12円、第9期の1口当たり利益超過分配金13円のうち、一時差異等調整引当額は13円です。いずれの決算期においても税法上の出資等減少分配はありません。
(注7)総資産経常利益率=経常利益÷{(期首総資産額+期末総資産額)÷2}×100
なお、第1期の期首総資産額には、本投資法人の実質的な資産運用期間の開始日(2016年9月1日)時点の総資産額を使用しています。
(注8)1年を365日とし、第1期については実質的な運用日数91日(2016年9月1日から2016年11月30日まで)に基づいて年換算値を算出しています。
(注9)自己資本利益率=当期純利益÷{(期首純資産額+期末純資産額)÷2}×100
なお、第1期の期首純資産額には、本投資法人の実質的な資産運用期間の開始日(2016年9月1日)時点の純資産額を使用しています。
(注10)期末自己資本比率=期末純資産額÷期末総資産額×100
(注11)配当性向=1口当たり分配金(利益超過分配金を含みません。)÷1口当たり当期純利益×100
なお、第1期及び第4期の配当性向については、期中に公募増資を行ったことにより、期中の投資口数に変動が生じているため、次の算式により算出しています(小数第1位未満を切り捨てています。)。
配当性向=分配金総額(利益超過分配金を含みません。)÷当期純利益×100
(注12)第1期の運用日数は、実質的な運用日数91日(2016年9月1日から2016年11月30日まで)を記載しています。
(注13)賃貸NOI=不動産賃貸事業収益-不動産賃貸事業費用+減価償却費
なお、減価償却費は、賃貸事業費用に含まれる金額のみ使用しています。
(注14)FFO=当期純利益+減価償却費-不動産等売却損益
なお、減価償却費は、賃貸事業費用に含まれる金額のみ使用しています。
(注15)1口当たりFFO=FFO÷発行済投資口の総口数
(注16)期末総資産有利子負債比率(LTV)=(借入金残高+投資法人債発行残高)÷総資産額×100
② 事業の概況
(イ)当期の概況
a.投資法人の主な推移
大江戸温泉リート投資法人(以下「本投資法人」といいます。)は、投資信託及び投資法人に関する法律(昭和26年法律第198号。その後の改正を含みます。)(以下「投信法」といいます。)に基づき、2016年3月29日に設立され(出資額200百万円、発行口数2,000口)、2016年5月13日に関東財務局への登録が完了しました(登録番号関東財務局長第119号)。
その後、「安定収益と継続的成長を見込むことができる大江戸モデル(注1)が導入された温泉・温浴関連施設への重点投資」とスポンサーである「大江戸温泉物語グループ(注2)からのサポートを最大限活用した成長戦略」を基本方針に、2016年8月30日を払込期日として公募による新投資口の発行(174,200口)を行い、2016年8月31日に株式会社東京証券取引所(以下「東京証券取引所」といいます。)不動産投資信託証券市場に上場(銘柄コード:3472)、2016年9月1日に温泉・温浴関連施設(注3)9物件(取得価格(注4)の合計26,844百万円)を取得しました。第4期期初には、公募による新投資口の発行(56,330口)等により、2017年12月4日に温泉・温浴関連施設5物件(取得価格の合計9,861百万円)を追加取得しました。当期においては、2020年11月2日に「大江戸温泉物語 レオマリゾート」の土地の一部を譲渡すると同時に譲渡先から譲渡部分を賃借し、その結果、当期末現在の本投資法人が保有する施設の合計は14物件(取得価格の合計36,082百万円)となりました。また当期末現在における本投資法人の発行済投資口の総口数は235,347口となっています。
(注1)「大江戸モデル」とは、大江戸温泉物語グループが運営する施設に導入されている、高収益・安定稼働を維持することを可能にする、大江戸温泉物語グループが保有する競争力が高いと考えられる事業ノウハウをいいます。以下同じです。なお、大江戸モデルの詳細については、後記「2 投資方針 (1) 投資方針 ③ 成長戦略 (ロ) 内部成長 b. 本投資法人の安定的な賃貸事業収益実現の基礎となる大江戸温泉物語グループの温泉・温浴関連施設運営 ii. 大江戸温泉物語グループ独自のビジネスモデル(大江戸モデル)」をご参照下さい。
(注2)「大江戸温泉物語グループ」は、本投資法人のスポンサーである大江戸温泉物語ホテルズ&リゾーツ株式会社及び大江戸温泉物語株式会社(以下「スポンサー」ということがあります。)並びにその連結子会社(財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則(昭和38年大蔵省令第59号。その後の改正を含みます。)第8条第3項に規定する子会社をいい、本資産運用会社を含みます。)で構成されます。以下同じです。
(注3)「温泉・温浴関連施設」とは、温浴施設(温泉(地中から湧出する温水、鉱水及び水蒸気その他のガス(炭化水素を主成分とする天然ガスを除きます。)をいいます。以下同じです。)その他を使用して公衆を入浴させる施設をいいます。以下同じです。)及び温浴施設をその中心的な用途の1つとして含む旅館(和式の構造及び設備を主とする宿泊施設をいいます。以下同じです。)、ホテル(洋式の構造及び設備を主とする宿泊施設をいいます。以下同じです。)その他の宿泊の用に供され、又は供されることが可能な施設、並びに、リゾート施設(余暇等を利用して行うスポーツ、レクリエーション等の活動の機会を提供する施設をいいます。以下同じです。)及びアミューズメントパークその他の余暇活用型施設(これらの複合用途を含みます。)等、温泉又は温浴の提供をその施設の主要な機能の1つとする施設をいいます。なお、温泉又は温浴を提供している建物等のみでなく、それらに隣接又は一体として運営されている建物及び敷地等も含めて、物件全体として温泉・温浴関連施設とします。
(注4)「取得価格」は、売買契約書に記載された各物件の売買代金(消費税及び地方消費税並びに売買手数料等の諸費用を含みません。)の百万円未満を切り捨てて記載しています。ただし、「大江戸温泉物語 レオマリゾート」については、2020年11月2日付で土地の一部を譲渡すると同時に譲渡先から譲渡部分を賃借しているため、「取得価格」については、取得時点における同物件に係る売買契約に記載された各不動産の売買代金(消費税及び地方消費税並びに売買手数料等の諸費用を含みません。)から譲渡時点における当該譲渡部分に係る帳簿価格相当額を控除し、譲渡部分の賃借権の設定に係る賃貸借契約に記載された、賃借権の設定の対価としての権利金の額を加えた額を記載しています。
b.投資環境と運用実績
当期の我が国の経済状況は、新型コロナウイルス感染症拡大に伴い2020年4月上旬に発令された緊急事態宣言等による経済活動の停滞により大きく悪化し、物価変動の影響を除いた実質(季節調整値)GDPは、4~6月期で前期比マイナス8.3%、年率換算ではマイナス29.2%と、過去最大の落ち込みとなりました。その後、緊急事態宣言は段階的解除を経て5月下旬に全面解除され、抑制されていた需要の一時的発出と、特に観光分野におけるGoToトラベル事業などの追加経済対策による経済活動下支えの効果も加わり、7~9月期の実質GDP(季節調整値)は、前期よりプラス5.3%、年率換算ではプラス22.9%となりました。
このような環境の中、本投資法人が保有する温泉・温浴関連施設14物件は、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う自粛要請対応で、4月中下旬にはすべての施設が臨時休館しました。5月以降一部の施設が再稼働しましたが、全館再稼働は7月からとなりました。その後は、国内の近隣地域からの集客をメインとする顧客属性に加えて、GoToトラベル事業の開始と外部の感染症専門医からのアドバイスに基づいたテナントによる十分な感染症対策の徹底により、個別施設の客室稼働率(注1)は徐々に回復を見せ、当期末の11月では84.9%となりました。なお、当期における全体の客室稼働率は51.9%と前年同期間の実績を大きく下回り、ADR(注2)、RevPAR(注3)及び売上高の当期実績は前年同期間の実績に対しそれぞれプラス1.5%、マイナス41.0%、マイナス45.5%となりました。
本投資法人の当期の賃貸事業収入については、構成比の高い固定賃料に支えられ安定して推移した一方で、テナントである大江戸温泉物語グループの2020年8月までの年間業績に基づき算定される変動賃料については、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う稼働率の低下を受け全施設について未発生となりました。
当期末に取得した鑑定評価額は、合計で40,239百万円となりました。前期末(2020年5月期)に取得した鑑定評価額との比較では、キャップレートについては変動がありませんでしたが、「大江戸温泉物語 レオマリゾート」の一部土地の譲渡(下記参照)が反映され10百万円の低下となり、他の物件については変化がなかったため、保有施設14物件全体としても10百万円の低下となりました。当期末におけるポートフォリオ全体の含み損益(注4)については、当該14物件の減価償却や「大江戸温泉物語 レオマリゾート」の一部土地の譲渡による帳簿価額の低下もあり含み益が増加し5,283百万円となりました。
物件の異動としては、2020年11月に「大江戸温泉物語 レオマリゾート」の遊休地である動物園跡地、及び駐車場土地について、再生可能エネルギー事業への貢献及び純資産価値の改善を目的として、第三者による太陽光発電事業のための用地として805百万円で譲渡(譲渡先については承諾を得られていないため非開示)すると同時に、譲渡先より駐車場部分の運営継続を目的とする賃借権を145百万円で取得いたしました(注5)。差額手取り金については、借入金の一部返済資金に充当することで、財務体質の改善を図りました。
その他に、保有物件の状況及び特性等を考慮した資本的支出に関する計画を策定し、テナントによる必要な修繕の実施を管理するとともに機能維持に必要な資本的支出を実施しました(賃貸借契約に基づき修繕費は原則テナント負担となっています。)。
さらに、大江戸温泉物語グループの運営物件にとどまらず、新型コロナウイルス感染症の収束後を想定して、広くマーケットからの新規物件の取得活動を継続的に行っています。
(注1)「稼働率」とは、賃貸可能面積に対して賃貸面積が占める割合をいい、「客室稼働率」は、以下の計算式により求められる数値をいいます。
客室稼働率=対象期間中の販売客室数÷対象期間中の販売可能客室数×100(%)
(注2)「ADR」とは、平均客室販売単価(Average Daily Rate)をいい、一定期間の宿泊売上高合計を同期間の販売客室数(稼働した延べ客室数)合計で除した値をいいます。
(注3)「RevPAR」とは、1日当たり販売可能客室数当たり宿泊売上高合計(Revenue Per Available Room)をいい、一定期間の宿泊売上高合計を同期間の販売可能客室数合計で除した値です。
(注4)「含み損益」は、以下の計算式により求められる数値をいいます。
含み損益=保有資産の当期末時点での鑑定評価額の合計-貸借対照表計上額の合計(建物附属設備、構築物、機械及び装置、工具、器具及び備品並びに借地権を含みます。)
(注5)詳細は2020年10月9日付公表の「国内不動産の譲渡等に関するお知らせ(大江戸温泉物語 レオマリゾート:一部土地)」及び2020年11月2日付公表の「国内不動産の譲渡等完了に関するお知らせ(大江戸温泉物語 レオマリゾート:一部土地)」をご参照ください。
c.資金調達の概要
当期においては、2020年11月30日を返済期日とする長期借入金2,340百万円の返済原資の一部に充当するため、株式会社三井住友銀行をアレンジャーとする協調融資団から短期借入により1,487百万円(注)の資金調達を行いました。また、手元資金により2020年7月末日及び10月末日に各々93百万円、2020年11月末日に40百万円の約定返済を実施しました。その結果、当期末時点での有利子負債総額は14,457百万円、総資産に占める有利子負債の割合(以下「LTV」といいます。)は38.6%となっています。
(注)詳細は2020年11月24日付公表の「資金の借入れに関するお知らせ」をご参照下さい。
d.業績及び分配の概要
上記の運用の結果、当期の業績は、営業収益1,358百万円、営業利益594百万円、経常利益467百万円、当期純利益466百万円となりました。
当期の分配金につきましては、本投資法人の規約に定める分配の方針に基づき、租税特別措置法(昭和32年法律第26号。その後の改正を含みます。)(以下「租税特別措置法」といいます。)第67条の15第1項に規定される本投資法人の配当可能利益の額の100分の90に相当する金額を超えて分配することとし、投資口1口当たりの利益分配金(利益超過分配金は含みません。)を1,983円としました。
これに加えて、本投資法人の規約に定める利益を超えた金銭の分配の方針に基づき、資産除去債務に係る利息費用の計上及び資産除去債務に対応する建物帳簿価額に係る減価償却費の計上並びに借地権償却費に係る所得超過税会不一致(投資法人の計算に関する規則(平成18年内閣府令第47号。その後の改正を含みます。)(以下「投資法人計算規則」といいます。)第2条第2項第30号(イ)に定めるものをいいます。)が分配金に与える影響を考慮して、一時差異等調整引当額(投資法人計算規則第2条第2項第30号に定めるものをいいます。)の分配を3,059,511円行うこととし、投資口1口当たりの利益超過分配金を13円としました。
この結果、当期の投資口1口当たり分配金は、1,996円(うち、投資口1口当たりの利益超過分配金13円)としました。
(ロ)次期の見通し
a.次期の運用環境
次期以降の我が国の経済状況については、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて、感染リスクを伴うサービス消費については、世界的な感染流行が収束するか、効果的なワクチンや有効なウイルス治療薬が一般へ普及されるまでは、インバウンド需要の本格的回復も期待できず、2020年12月には感染の再拡大の兆候を受けてGoToトラベル事業も一時的に停止となり、2021年1月には東京都等を対象に2回目の緊急事態宣言が行われるなど、当面は一進一退の動きを続けていくと見込まれます。一方で、2020年12月に閣議決定された2020年度第3次補正予算において、19.2兆円の経済対策資金が確保され、GoToトラベル事業の延長を含む当面の経済活動支援への手当てが見込まれています。
このような環境の中、本投資法人の投資対象である余暇活用型施設(注1)が立脚している「コト消費」(注2)、特により限定的に「体験型消費」(注3)の動向は、新型コロナウイルス感染症の動向が大きく影響するとともに、本年6月まで延長が見込まれるGoToトラベル事業等の政策的支援の運用状況(感染の波の到来による一時中止等の動き)やその効果、また各事業者における衛生・安全面の対策も含め注視が必要です。
本投資法人の保有施設におけるテナント業績は、足元の新型コロナウイルス感染症再拡大に伴う消費マインド低下や自粛の動きにより楽観視はできない状況となっていますが、一方で、感染防止対策の徹底による安心感の高まりと、「大江戸モデル」が近隣固定客をメインターゲットとしていることから、顧客回帰の動きも見られています。
これらのことから、本投資法人の投資対象である余暇活用型施設は、インバウンド需要や遠距離からの観光需要等への依存度が高い施設と比較して、相対的により早く集客を回復できる可能性があり、効果的なワクチンやウイルス治療薬の普及に目途がつくなど、感染状況が収束の兆しを見せれば、大きく業績回復する可能性もあるものと本投資法人は考えています。
(注1)「余暇活用型施設」とは、消費者に対し「愉しみ」、「コミュニケーション」、「癒しとリラクゼーション」、「健康と知的な充実」など、現代人が求める余暇活用と充実した時間の過ごし方を提供する施設をいいます。以下同じです。
(注2)「コト消費」とは、個別の事象が連なった総体である「一連の体験」を目的とした消費活動をいいます。以下同じです。
(注3)「体験型消費」とは、経験・体験そのものを目的とした消費活動をいいます。以下同じです。
b.今後の運用方針及び対処すべき課題
本投資法人は、余暇活用型施設に特化したポートフォリオの構築を目指していますが、当面は新型コロナウイルス感染症の影響による収益面、財務面のリスクへの万全な対応を最優先し、今後の外部環境の改善時には機動的な成長戦略を打ち出せるよう努めていきます。
ⅰ.外部成長戦略
1)スポンサー・パイプラインの活用
温泉・温浴関連施設の供給面を俯瞰すると、引き続き後継者不足や施設老朽化による競争力低下等の理由から、廃業に踏み切る旅館やホテルも多数見込まれます。さらに、今後は新型コロナウイルス感染症拡大に伴う業績の急激な悪化による売却や、生き残りのための設備投資資金の調達を目的とする売却などが多く見込まれ、本投資法人や大江戸温泉物語グループへの持込み案件数も増加傾向で推移するものと考えられます。
大江戸温泉物語グループが2020年1月から2020年12月までの1年間に開業またはリニューアルオープンした温泉・温浴関連施設は、2020年7月の「西海橋コラソンホテル」(長崎県佐世保市)、「大江戸温泉物語 汐美荘」(新潟県村上市)及び2020年11月の「仙台 秋保温泉 岩沼屋」(宮城県仙台市)の3施設となり、今後も継続的な取得が見込まれます(注)。これらの施設を含め、本投資法人には、2017年11月1日付でスポンサーとの間で締結したスポンサーサポート契約に基づき、大江戸温泉物語グループが保有又は開発する温泉・温浴関連施設の取得に係る優先交渉権が付与されており、また同グループが入手した第三者による物件売却情報の優先的提供が行われます。これらを最大限活用することにより、主として大江戸温泉物語グループが保有し運営する大江戸モデルが導入された温泉・温浴関連施設を継続的に取得する方針です。
(注)本投資法人が、今後、これらの物件を取得できる保証はありません。
2)資産運用会社独自のネットワークの活用によるスポンサー拠出物件以外の物件の取得
本投資法人が投資法人規約に定める余暇活用型施設(注1)については、新たな感染症対策や、ライフスタイルの多様化に対応した施設の供給は未だ不足していると考えており、一方で中長期的には構造的な余暇活用拡大の流れや、グローバルな人の動きが変化することはなく、益々拡大する傾向にあると考えています。
その中で、本資産運用会社独自のネットワークの活用により、余暇活用型施設に関する多くの売却情報が入手されており、新型コロナウイルス感染症の経験を踏まえた市場変化への対応も見据えた宿泊業やレジャー業界の新しい動きや変化を見極めつつ、有名温泉地の温泉・温浴関連施設等に加えて、現状ポートフォリオのバランスの改善とリスク分散に寄与する、政令指定都市や中核都市等の都市型立地物件、新規開発物件や築浅物件、新型コロナウイルス感染症収束後のインバウンド需要をとらえうる多様な施設の取得に向けて活動していきます。また、ブリッジストラクチャーの活用等による優先交渉権の確保も引き続き進めていきます(注2)。
(注1)本投資法人の規約に定める投資対象は、旅館、ホテルその他の宿泊の用に供され、又は供されることが可能な施設、並びに、温浴施設、リゾート施設及びアミューズメントパークその他の余暇活用型施設、並びにこれらの複合施設です。
(注2)本投資法人が、今後、これらの物件を取得できる保証はありません。
ⅱ.内部成長戦略
1)安定性を重視した賃料ストラクチャー
本投資法人は、保有資産のテナントである大江戸温泉物語グループ各社との間で締結している長期賃貸借契約において、固定部分を主としつつ、GOP(注1)に連動した変動部分を組み合わせた第一賃料に、各施設の不動産関連費用相当額となる第二賃料を加えた賃料体系を採用し(注2)、かつ修繕費は原則テナント負担とすることで、キャッシュ・フローの安定性を長期的に確保しつつ、各施設の運営実績が良好な時期にはGOPに連動した賃料収入のアップサイドを享受追求することを可能としています。今後もテナント業績のモニタリングを通じて、賃料収入の安定性確保に万全を期してまいります。
(注1)「GOP」とは、売上高営業粗利益をいい、各施設の売上高から、人件費、一般管理費等の、各施設の運営に関して直接発生した費用を控除した残額をいいます。以下同じです。
(注2)各保有資産に係る賃貸借契約においては、かかる賃料体系が採用されていますが、本投資法人が今後取得する施設に係る賃貸借契約において、同様の賃料体系が採用されることを保証するものではありません。
2)収入増や競争力強化に資する戦略的CAPEX(注1)
本投資法人は、高稼働を背景にバリューアップ・ポテンシャル(注2)を有する保有物件に対しては、客室数増加を目的とした増改築等の戦略的CAPEXを実施し、保有資産のオペレーターの潜在的な収入確保を図ることや、敷地内の未稼働建物や未使用土地の有効活用による賃料収入の増加を中長期的に目指しています。また、温泉・温浴関連施設における付加価値向上のノウハウを有する大江戸温泉物語グループとの協働により、各種の施設競争力の向上策に協力し、各種イベント等の集客向上策に対して所有者の立場で積極的に関わっていくことで、テナント収益の拡大を通じた変動賃料の増加を図ります。
(注1)「CAPEX」は、Capital Expenditure(資本的支出)をいい、不動産を維持するための修繕費用ではなく、不動産及び設備の使用可能期間の延長又は資産価値の増加を目的とした支出をいいます。
(注2)「バリューアップ・ポテンシャル」とは、投資等によって資産価値の向上が見込まれる潜在的余地をいいます。
ⅲ.財務戦略
本投資法人は、当面は新型コロナウイルス感染症の影響によるリスクへの対応を最優先しつつ、保守的な財務基盤維持を重視していきます。
デット・ファイナンスについては、既存借入先との良好な関係を維持しつつ、新規物件取得時や既存借入の返済期限到来時の安定的な資金調達の実現を図り、エクイティ・ファイナンスについては、投資口の中長期的な価値向上、並びに1口当たり分配金の希薄化に配慮し、機動的に実施を検討していきます。
LTV水準は、原則として60%を上限としながら、当面は資金余力の確保に留意して40%程度を目安とし、保守的な水準を維持していく方針です。また、ポートフォリオの規模拡大とテナントや立地等のリスク分散の推進によりリスクプレミアムの低下を図り、金融コストの低減とともに、高格付けの取得や調達手段の多様化、負債の平均年限の長期化や固定金利の導入などを目指します。
(ハ)決算後に生じた重要な事実
該当事項はありません。
① 主要な経営指標等の推移
回次 | 第1期 | 第2期 | 第3期 | 第4期 | 第5期 | |
決算年月 | 2016年11月 | 2017年5月 | 2017年11月 | 2018年5月 | 2018年11月 | |
営業収益 | (百万円) | 507 | 1,021 | 1,032 | 1,442 | 1,450 |
(うち不動産賃貸事業収益) | (百万円) | 507 | 1,021 | 1,032 | 1,442 | 1,450 |
営業費用 | (百万円) | 241 | 473 | 513 | 708 | 735 |
(うち不動産賃貸事業費用) | (百万円) | 140 | 318 | 355 | 522 | 541 |
営業利益 | (百万円) | 266 | 547 | 519 | 734 | 714 |
経常利益 | (百万円) | 67 | 446 | 421 | 571 | 578 |
当期純利益 | (百万円) | 65 | 445 | 420 | 570 | 577 |
総資産額 | (百万円) | 30,732 | 29,440 | 29,208 | 39,875 | 39,106 |
(対前期比) | (%) | - | △4.2 | △0.8 | 36.5 | △1.9 |
純資産額 | (百万円) | 15,818 | 16,197 | 16,171 | 21,220 | 21,224 |
(対前期比) | (%) | - | 2.4 | △0.2 | 31.2 | 0.0 |
有利子負債額 | (百万円) | 13,524 | 11,735 | 11,624 | 16,807 | 15,991 |
出資総額(注4) | (百万円) | 15,752 | 15,752 | 15,752 | 20,653 | 20,653 |
発行済投資口の総口数 | (口) | 176,200 | 176,200 | 176,200 | 235,347 | 235,347 |
1口当たり純資産額 | (円) | 89,775 | 91,925 | 91,777 | 90,166 | 90,185 |
1口当たり当期純利益(注5) | (円) | 974 | 2,526 | 2,384 | 2,427 | 2,454 |
分配総額 | (百万円) | 66 | 446 | 421 | 573 | 580 |
1口当たり分配金 | (円) | 376 | 2,533 | 2,392 | 2,435 | 2,466 |
(うち1口当たり利益分配金) | (円) | 373 | 2,526 | 2,385 | 2,423 | 2,454 |
(うち1口当たり利益超過分配金)(注6) | (円) | 3 | 7 | 7 | 12 | 12 |
総資産経常利益率(注7) | (%) | 0.2 | 1.5 | 1.4 | 1.7 | 1.5 |
(年換算値)(注8) | (%) | 0.9 | 3.0 | 2.9 | 3.3 | 2.9 |
自己資本利益率(注9) | (%) | 0.4 | 2.8 | 2.6 | 3.1 | 2.7 |
(年換算値)(注8) | (%) | 1.7 | 5.6 | 5.2 | 6.1 | 5.4 |
期末自己資本比率(注10) | (%) | 51.5 | 55.0 | 55.4 | 53.2 | 54.3 |
(対前期増減) | (%) | - | 3.5 | 0.3 | △2.1 | 1.1 |
配当性向(注11) | (%) | 99.8 | 100.0 | 100.0 | 99.9 | 100.0 |
[その他参考情報] | ||||||
当期運用日数(注12) | (日) | 91 | 182 | 183 | 182 | 183 |
期末投資物件数 | (件) | 9 | 9 | 9 | 14 | 14 |
減価償却費 | (百万円) | 131 | 263 | 267 | 414 | 421 |
資本的支出額 | (百万円) | 12 | 90 | 95 | 141 | 206 |
賃貸NOI(Net Operating Income)(注13) | (百万円) | 498 | 967 | 944 | 1,334 | 1,330 |
FFO(Funds from Operation)(注14) | (百万円) | 197 | 708 | 687 | 984 | 999 |
1口当たりFFO(注15) | (円) | 1,119 | 4,022 | 3,903 | 4,185 | 4,247 |
期末総資産有利子負債比率(LTV)(注16) | (%) | 44.0 | 39.9 | 39.8 | 42.2 | 40.9 |
回次 | 第6期 | 第7期 | 第8期 | 第9期 | |
決算年月 | 2019年5月 | 2019年11月 | 2020年5月 | 2020年11月 | |
営業収益 | (百万円) | 1,434 | 1,440 | 1,433 | 1,358 |
(うち不動産賃貸事業収益) | (百万円) | 1,434 | 1,440 | 1,433 | 1,342 |
営業費用 | (百万円) | 735 | 743 | 755 | 764 |
(うち不動産賃貸事業費用) | (百万円) | 548 | 555 | 566 | 574 |
営業利益 | (百万円) | 699 | 696 | 678 | 594 |
経常利益 | (百万円) | 560 | 566 | 546 | 467 |
当期純利益 | (百万円) | 559 | 565 | 545 | 466 |
総資産額 | (百万円) | 38,782 | 38,640 | 38,327 | 37,428 |
(対前期比) | (%) | △0.8 | △0.4 | △0.8 | △2.3 |
純資産額 | (百万円) | 21,204 | 21,207 | 21,183 | 21,102 |
(対前期比) | (%) | △0.1 | 0.0 | △0.1 | △0.4 |
有利子負債額 | (百万円) | 15,754 | 15,558 | 15,319 | 14,457 |
出資総額(注4) | (百万円) | 20,653 | 20,653 | 20,653 | 20,653 |
発行済投資口の総口数 | (口) | 235,347 | 235,347 | 235,347 | 235,347 |
1口当たり純資産額 | (円) | 90,097 | 90,110 | 90,011 | 89,666 |
1口当たり当期純利益(注5) | (円) | 2,377 | 2,403 | 2,316 | 1,983 |
分配総額 | (百万円) | 562 | 568 | 547 | 469 |
1口当たり分配金 | (円) | 2,390 | 2,415 | 2,328 | 1,996 |
(うち1口当たり利益分配金) | (円) | 2,378 | 2,403 | 2,316 | 1,983 |
(うち1口当たり利益超過分配金)(注6) | (円) | 12 | 12 | 12 | 13 |
総資産経常利益率(注7) | (%) | 1.4 | 1.5 | 1.4 | 1.2 |
(年換算値)(注8) | (%) | 2.9 | 2.9 | 2.8 | 2.5 |
自己資本利益率(注9) | (%) | 2.6 | 2.7 | 2.6 | 2.2 |
(年換算値)(注8) | (%) | 5.3 | 5.3 | 5.1 | 4.4 |
期末自己資本比率(注10) | (%) | 54.7 | 54.9 | 55.3 | 56.4 |
(対前期増減) | (%) | 0.4 | 0.2 | 0.4 | 1.1 |
配当性向(注11) | (%) | 100.0 | 100.0 | 100.0 | 100.0 |
[その他参考情報] | |||||
当期運用日数(注12) | (日) | 182 | 183 | 183 | 183 |
期末投資物件数 | (件) | 14 | 14 | 14 | 14 |
減価償却費 | (百万円) | 427 | 433 | 438 | 444 |
資本的支出額 | (百万円) | 184 | 178 | 169 | 175 |
賃貸NOI(Net Operating Income)(注13) | (百万円) | 1,314 | 1,317 | 1,305 | 1,212 |
FFO(Funds from Operation)(注14) | (百万円) | 987 | 998 | 983 | 895 |
1口当たりFFO(注15) | (円) | 4,195 | 4,244 | 4,178 | 3,803 |
期末総資産有利子負債比率(LTV)(注16) | (%) | 40.6 | 40.3 | 40.0 | 38.6 |
(注1)本投資法人の営業期間(以下「事業年度」ということがあります。)は、毎年6月1日から11月末日まで及び12月1日から翌年5月末日までの各6か月間ですが、第1期営業期間は本投資法人設立の日(2016年3月29日)から2016年11月末日までです。
(注2)営業収益等には消費税等は含まれていません。
(注3)別途記載する場合を除き、単位未満の金額については切り捨てて記載し、比率については小数第2位を四捨五入した数値を記載しています。したがって、各項目別の金額又は比率の合計が一致しない場合があります。以下、同じです。
(注4)一時差異等調整引当額に係る利益超過分配の実施に伴う出資総額の変動は考慮していません。以下、同じです。
(注5)第1期の1口当たり当期純利益は、当期純利益を日数による加重平均投資口数(67,589口)で除することにより算定しています。なお、実質的な資産運用期間の開始日である2016年9月1日時点を期首とみなして、日数による加重平均投資口数(176,200口)により算出した1口当たり当期純利益は373円です。
また、第4期の1口当たり当期純利益は、当期純利益を日数による加重平均投資口数(234,960口)で除することにより算定しています。
(注6)第1期の1口当たり利益超過分配金3円のうち、一時差異等調整引当額は3円、第2期の1口当たり利益超過分配金7円のうち、一時差異等調整引当額は7円、第3期の1口当たり利益超過分配金7円のうち、一時差異等調整引当額は7円、第4期の1口当たり利益超過分配金12円のうち、一時差異等調整引当額は12円、第5期の1口当たり利益超過分配金12円のうち、一時差異等調整引当額は12円、第6期の1口当たり利益超過分配金12円のうち、一時差異等調整引当額は12円、第7期の1口当たり利益超過分配金12円のうち、一時差異等調整引当額は12円、第8期の1口当たり利益超過分配金12円のうち、一時差異等調整引当額は12円、第9期の1口当たり利益超過分配金13円のうち、一時差異等調整引当額は13円です。いずれの決算期においても税法上の出資等減少分配はありません。
(注7)総資産経常利益率=経常利益÷{(期首総資産額+期末総資産額)÷2}×100
なお、第1期の期首総資産額には、本投資法人の実質的な資産運用期間の開始日(2016年9月1日)時点の総資産額を使用しています。
(注8)1年を365日とし、第1期については実質的な運用日数91日(2016年9月1日から2016年11月30日まで)に基づいて年換算値を算出しています。
(注9)自己資本利益率=当期純利益÷{(期首純資産額+期末純資産額)÷2}×100
なお、第1期の期首純資産額には、本投資法人の実質的な資産運用期間の開始日(2016年9月1日)時点の純資産額を使用しています。
(注10)期末自己資本比率=期末純資産額÷期末総資産額×100
(注11)配当性向=1口当たり分配金(利益超過分配金を含みません。)÷1口当たり当期純利益×100
なお、第1期及び第4期の配当性向については、期中に公募増資を行ったことにより、期中の投資口数に変動が生じているため、次の算式により算出しています(小数第1位未満を切り捨てています。)。
配当性向=分配金総額(利益超過分配金を含みません。)÷当期純利益×100
(注12)第1期の運用日数は、実質的な運用日数91日(2016年9月1日から2016年11月30日まで)を記載しています。
(注13)賃貸NOI=不動産賃貸事業収益-不動産賃貸事業費用+減価償却費
なお、減価償却費は、賃貸事業費用に含まれる金額のみ使用しています。
(注14)FFO=当期純利益+減価償却費-不動産等売却損益
なお、減価償却費は、賃貸事業費用に含まれる金額のみ使用しています。
(注15)1口当たりFFO=FFO÷発行済投資口の総口数
(注16)期末総資産有利子負債比率(LTV)=(借入金残高+投資法人債発行残高)÷総資産額×100
② 事業の概況
(イ)当期の概況
a.投資法人の主な推移
大江戸温泉リート投資法人(以下「本投資法人」といいます。)は、投資信託及び投資法人に関する法律(昭和26年法律第198号。その後の改正を含みます。)(以下「投信法」といいます。)に基づき、2016年3月29日に設立され(出資額200百万円、発行口数2,000口)、2016年5月13日に関東財務局への登録が完了しました(登録番号関東財務局長第119号)。
その後、「安定収益と継続的成長を見込むことができる大江戸モデル(注1)が導入された温泉・温浴関連施設への重点投資」とスポンサーである「大江戸温泉物語グループ(注2)からのサポートを最大限活用した成長戦略」を基本方針に、2016年8月30日を払込期日として公募による新投資口の発行(174,200口)を行い、2016年8月31日に株式会社東京証券取引所(以下「東京証券取引所」といいます。)不動産投資信託証券市場に上場(銘柄コード:3472)、2016年9月1日に温泉・温浴関連施設(注3)9物件(取得価格(注4)の合計26,844百万円)を取得しました。第4期期初には、公募による新投資口の発行(56,330口)等により、2017年12月4日に温泉・温浴関連施設5物件(取得価格の合計9,861百万円)を追加取得しました。当期においては、2020年11月2日に「大江戸温泉物語 レオマリゾート」の土地の一部を譲渡すると同時に譲渡先から譲渡部分を賃借し、その結果、当期末現在の本投資法人が保有する施設の合計は14物件(取得価格の合計36,082百万円)となりました。また当期末現在における本投資法人の発行済投資口の総口数は235,347口となっています。
(注1)「大江戸モデル」とは、大江戸温泉物語グループが運営する施設に導入されている、高収益・安定稼働を維持することを可能にする、大江戸温泉物語グループが保有する競争力が高いと考えられる事業ノウハウをいいます。以下同じです。なお、大江戸モデルの詳細については、後記「2 投資方針 (1) 投資方針 ③ 成長戦略 (ロ) 内部成長 b. 本投資法人の安定的な賃貸事業収益実現の基礎となる大江戸温泉物語グループの温泉・温浴関連施設運営 ii. 大江戸温泉物語グループ独自のビジネスモデル(大江戸モデル)」をご参照下さい。
(注2)「大江戸温泉物語グループ」は、本投資法人のスポンサーである大江戸温泉物語ホテルズ&リゾーツ株式会社及び大江戸温泉物語株式会社(以下「スポンサー」ということがあります。)並びにその連結子会社(財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則(昭和38年大蔵省令第59号。その後の改正を含みます。)第8条第3項に規定する子会社をいい、本資産運用会社を含みます。)で構成されます。以下同じです。
(注3)「温泉・温浴関連施設」とは、温浴施設(温泉(地中から湧出する温水、鉱水及び水蒸気その他のガス(炭化水素を主成分とする天然ガスを除きます。)をいいます。以下同じです。)その他を使用して公衆を入浴させる施設をいいます。以下同じです。)及び温浴施設をその中心的な用途の1つとして含む旅館(和式の構造及び設備を主とする宿泊施設をいいます。以下同じです。)、ホテル(洋式の構造及び設備を主とする宿泊施設をいいます。以下同じです。)その他の宿泊の用に供され、又は供されることが可能な施設、並びに、リゾート施設(余暇等を利用して行うスポーツ、レクリエーション等の活動の機会を提供する施設をいいます。以下同じです。)及びアミューズメントパークその他の余暇活用型施設(これらの複合用途を含みます。)等、温泉又は温浴の提供をその施設の主要な機能の1つとする施設をいいます。なお、温泉又は温浴を提供している建物等のみでなく、それらに隣接又は一体として運営されている建物及び敷地等も含めて、物件全体として温泉・温浴関連施設とします。
(注4)「取得価格」は、売買契約書に記載された各物件の売買代金(消費税及び地方消費税並びに売買手数料等の諸費用を含みません。)の百万円未満を切り捨てて記載しています。ただし、「大江戸温泉物語 レオマリゾート」については、2020年11月2日付で土地の一部を譲渡すると同時に譲渡先から譲渡部分を賃借しているため、「取得価格」については、取得時点における同物件に係る売買契約に記載された各不動産の売買代金(消費税及び地方消費税並びに売買手数料等の諸費用を含みません。)から譲渡時点における当該譲渡部分に係る帳簿価格相当額を控除し、譲渡部分の賃借権の設定に係る賃貸借契約に記載された、賃借権の設定の対価としての権利金の額を加えた額を記載しています。
b.投資環境と運用実績
当期の我が国の経済状況は、新型コロナウイルス感染症拡大に伴い2020年4月上旬に発令された緊急事態宣言等による経済活動の停滞により大きく悪化し、物価変動の影響を除いた実質(季節調整値)GDPは、4~6月期で前期比マイナス8.3%、年率換算ではマイナス29.2%と、過去最大の落ち込みとなりました。その後、緊急事態宣言は段階的解除を経て5月下旬に全面解除され、抑制されていた需要の一時的発出と、特に観光分野におけるGoToトラベル事業などの追加経済対策による経済活動下支えの効果も加わり、7~9月期の実質GDP(季節調整値)は、前期よりプラス5.3%、年率換算ではプラス22.9%となりました。
このような環境の中、本投資法人が保有する温泉・温浴関連施設14物件は、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う自粛要請対応で、4月中下旬にはすべての施設が臨時休館しました。5月以降一部の施設が再稼働しましたが、全館再稼働は7月からとなりました。その後は、国内の近隣地域からの集客をメインとする顧客属性に加えて、GoToトラベル事業の開始と外部の感染症専門医からのアドバイスに基づいたテナントによる十分な感染症対策の徹底により、個別施設の客室稼働率(注1)は徐々に回復を見せ、当期末の11月では84.9%となりました。なお、当期における全体の客室稼働率は51.9%と前年同期間の実績を大きく下回り、ADR(注2)、RevPAR(注3)及び売上高の当期実績は前年同期間の実績に対しそれぞれプラス1.5%、マイナス41.0%、マイナス45.5%となりました。
本投資法人の当期の賃貸事業収入については、構成比の高い固定賃料に支えられ安定して推移した一方で、テナントである大江戸温泉物語グループの2020年8月までの年間業績に基づき算定される変動賃料については、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う稼働率の低下を受け全施設について未発生となりました。
当期末に取得した鑑定評価額は、合計で40,239百万円となりました。前期末(2020年5月期)に取得した鑑定評価額との比較では、キャップレートについては変動がありませんでしたが、「大江戸温泉物語 レオマリゾート」の一部土地の譲渡(下記参照)が反映され10百万円の低下となり、他の物件については変化がなかったため、保有施設14物件全体としても10百万円の低下となりました。当期末におけるポートフォリオ全体の含み損益(注4)については、当該14物件の減価償却や「大江戸温泉物語 レオマリゾート」の一部土地の譲渡による帳簿価額の低下もあり含み益が増加し5,283百万円となりました。
物件の異動としては、2020年11月に「大江戸温泉物語 レオマリゾート」の遊休地である動物園跡地、及び駐車場土地について、再生可能エネルギー事業への貢献及び純資産価値の改善を目的として、第三者による太陽光発電事業のための用地として805百万円で譲渡(譲渡先については承諾を得られていないため非開示)すると同時に、譲渡先より駐車場部分の運営継続を目的とする賃借権を145百万円で取得いたしました(注5)。差額手取り金については、借入金の一部返済資金に充当することで、財務体質の改善を図りました。
その他に、保有物件の状況及び特性等を考慮した資本的支出に関する計画を策定し、テナントによる必要な修繕の実施を管理するとともに機能維持に必要な資本的支出を実施しました(賃貸借契約に基づき修繕費は原則テナント負担となっています。)。
さらに、大江戸温泉物語グループの運営物件にとどまらず、新型コロナウイルス感染症の収束後を想定して、広くマーケットからの新規物件の取得活動を継続的に行っています。
(注1)「稼働率」とは、賃貸可能面積に対して賃貸面積が占める割合をいい、「客室稼働率」は、以下の計算式により求められる数値をいいます。
客室稼働率=対象期間中の販売客室数÷対象期間中の販売可能客室数×100(%)
(注2)「ADR」とは、平均客室販売単価(Average Daily Rate)をいい、一定期間の宿泊売上高合計を同期間の販売客室数(稼働した延べ客室数)合計で除した値をいいます。
(注3)「RevPAR」とは、1日当たり販売可能客室数当たり宿泊売上高合計(Revenue Per Available Room)をいい、一定期間の宿泊売上高合計を同期間の販売可能客室数合計で除した値です。
(注4)「含み損益」は、以下の計算式により求められる数値をいいます。
含み損益=保有資産の当期末時点での鑑定評価額の合計-貸借対照表計上額の合計(建物附属設備、構築物、機械及び装置、工具、器具及び備品並びに借地権を含みます。)
(注5)詳細は2020年10月9日付公表の「国内不動産の譲渡等に関するお知らせ(大江戸温泉物語 レオマリゾート:一部土地)」及び2020年11月2日付公表の「国内不動産の譲渡等完了に関するお知らせ(大江戸温泉物語 レオマリゾート:一部土地)」をご参照ください。
c.資金調達の概要
当期においては、2020年11月30日を返済期日とする長期借入金2,340百万円の返済原資の一部に充当するため、株式会社三井住友銀行をアレンジャーとする協調融資団から短期借入により1,487百万円(注)の資金調達を行いました。また、手元資金により2020年7月末日及び10月末日に各々93百万円、2020年11月末日に40百万円の約定返済を実施しました。その結果、当期末時点での有利子負債総額は14,457百万円、総資産に占める有利子負債の割合(以下「LTV」といいます。)は38.6%となっています。
(注)詳細は2020年11月24日付公表の「資金の借入れに関するお知らせ」をご参照下さい。
d.業績及び分配の概要
上記の運用の結果、当期の業績は、営業収益1,358百万円、営業利益594百万円、経常利益467百万円、当期純利益466百万円となりました。
当期の分配金につきましては、本投資法人の規約に定める分配の方針に基づき、租税特別措置法(昭和32年法律第26号。その後の改正を含みます。)(以下「租税特別措置法」といいます。)第67条の15第1項に規定される本投資法人の配当可能利益の額の100分の90に相当する金額を超えて分配することとし、投資口1口当たりの利益分配金(利益超過分配金は含みません。)を1,983円としました。
これに加えて、本投資法人の規約に定める利益を超えた金銭の分配の方針に基づき、資産除去債務に係る利息費用の計上及び資産除去債務に対応する建物帳簿価額に係る減価償却費の計上並びに借地権償却費に係る所得超過税会不一致(投資法人の計算に関する規則(平成18年内閣府令第47号。その後の改正を含みます。)(以下「投資法人計算規則」といいます。)第2条第2項第30号(イ)に定めるものをいいます。)が分配金に与える影響を考慮して、一時差異等調整引当額(投資法人計算規則第2条第2項第30号に定めるものをいいます。)の分配を3,059,511円行うこととし、投資口1口当たりの利益超過分配金を13円としました。
この結果、当期の投資口1口当たり分配金は、1,996円(うち、投資口1口当たりの利益超過分配金13円)としました。
(ロ)次期の見通し
a.次期の運用環境
次期以降の我が国の経済状況については、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて、感染リスクを伴うサービス消費については、世界的な感染流行が収束するか、効果的なワクチンや有効なウイルス治療薬が一般へ普及されるまでは、インバウンド需要の本格的回復も期待できず、2020年12月には感染の再拡大の兆候を受けてGoToトラベル事業も一時的に停止となり、2021年1月には東京都等を対象に2回目の緊急事態宣言が行われるなど、当面は一進一退の動きを続けていくと見込まれます。一方で、2020年12月に閣議決定された2020年度第3次補正予算において、19.2兆円の経済対策資金が確保され、GoToトラベル事業の延長を含む当面の経済活動支援への手当てが見込まれています。
このような環境の中、本投資法人の投資対象である余暇活用型施設(注1)が立脚している「コト消費」(注2)、特により限定的に「体験型消費」(注3)の動向は、新型コロナウイルス感染症の動向が大きく影響するとともに、本年6月まで延長が見込まれるGoToトラベル事業等の政策的支援の運用状況(感染の波の到来による一時中止等の動き)やその効果、また各事業者における衛生・安全面の対策も含め注視が必要です。
本投資法人の保有施設におけるテナント業績は、足元の新型コロナウイルス感染症再拡大に伴う消費マインド低下や自粛の動きにより楽観視はできない状況となっていますが、一方で、感染防止対策の徹底による安心感の高まりと、「大江戸モデル」が近隣固定客をメインターゲットとしていることから、顧客回帰の動きも見られています。
これらのことから、本投資法人の投資対象である余暇活用型施設は、インバウンド需要や遠距離からの観光需要等への依存度が高い施設と比較して、相対的により早く集客を回復できる可能性があり、効果的なワクチンやウイルス治療薬の普及に目途がつくなど、感染状況が収束の兆しを見せれば、大きく業績回復する可能性もあるものと本投資法人は考えています。
(注1)「余暇活用型施設」とは、消費者に対し「愉しみ」、「コミュニケーション」、「癒しとリラクゼーション」、「健康と知的な充実」など、現代人が求める余暇活用と充実した時間の過ごし方を提供する施設をいいます。以下同じです。
(注2)「コト消費」とは、個別の事象が連なった総体である「一連の体験」を目的とした消費活動をいいます。以下同じです。
(注3)「体験型消費」とは、経験・体験そのものを目的とした消費活動をいいます。以下同じです。
b.今後の運用方針及び対処すべき課題
本投資法人は、余暇活用型施設に特化したポートフォリオの構築を目指していますが、当面は新型コロナウイルス感染症の影響による収益面、財務面のリスクへの万全な対応を最優先し、今後の外部環境の改善時には機動的な成長戦略を打ち出せるよう努めていきます。
ⅰ.外部成長戦略
1)スポンサー・パイプラインの活用
温泉・温浴関連施設の供給面を俯瞰すると、引き続き後継者不足や施設老朽化による競争力低下等の理由から、廃業に踏み切る旅館やホテルも多数見込まれます。さらに、今後は新型コロナウイルス感染症拡大に伴う業績の急激な悪化による売却や、生き残りのための設備投資資金の調達を目的とする売却などが多く見込まれ、本投資法人や大江戸温泉物語グループへの持込み案件数も増加傾向で推移するものと考えられます。
大江戸温泉物語グループが2020年1月から2020年12月までの1年間に開業またはリニューアルオープンした温泉・温浴関連施設は、2020年7月の「西海橋コラソンホテル」(長崎県佐世保市)、「大江戸温泉物語 汐美荘」(新潟県村上市)及び2020年11月の「仙台 秋保温泉 岩沼屋」(宮城県仙台市)の3施設となり、今後も継続的な取得が見込まれます(注)。これらの施設を含め、本投資法人には、2017年11月1日付でスポンサーとの間で締結したスポンサーサポート契約に基づき、大江戸温泉物語グループが保有又は開発する温泉・温浴関連施設の取得に係る優先交渉権が付与されており、また同グループが入手した第三者による物件売却情報の優先的提供が行われます。これらを最大限活用することにより、主として大江戸温泉物語グループが保有し運営する大江戸モデルが導入された温泉・温浴関連施設を継続的に取得する方針です。
(注)本投資法人が、今後、これらの物件を取得できる保証はありません。
2)資産運用会社独自のネットワークの活用によるスポンサー拠出物件以外の物件の取得
本投資法人が投資法人規約に定める余暇活用型施設(注1)については、新たな感染症対策や、ライフスタイルの多様化に対応した施設の供給は未だ不足していると考えており、一方で中長期的には構造的な余暇活用拡大の流れや、グローバルな人の動きが変化することはなく、益々拡大する傾向にあると考えています。
その中で、本資産運用会社独自のネットワークの活用により、余暇活用型施設に関する多くの売却情報が入手されており、新型コロナウイルス感染症の経験を踏まえた市場変化への対応も見据えた宿泊業やレジャー業界の新しい動きや変化を見極めつつ、有名温泉地の温泉・温浴関連施設等に加えて、現状ポートフォリオのバランスの改善とリスク分散に寄与する、政令指定都市や中核都市等の都市型立地物件、新規開発物件や築浅物件、新型コロナウイルス感染症収束後のインバウンド需要をとらえうる多様な施設の取得に向けて活動していきます。また、ブリッジストラクチャーの活用等による優先交渉権の確保も引き続き進めていきます(注2)。
(注1)本投資法人の規約に定める投資対象は、旅館、ホテルその他の宿泊の用に供され、又は供されることが可能な施設、並びに、温浴施設、リゾート施設及びアミューズメントパークその他の余暇活用型施設、並びにこれらの複合施設です。
(注2)本投資法人が、今後、これらの物件を取得できる保証はありません。
ⅱ.内部成長戦略
1)安定性を重視した賃料ストラクチャー
本投資法人は、保有資産のテナントである大江戸温泉物語グループ各社との間で締結している長期賃貸借契約において、固定部分を主としつつ、GOP(注1)に連動した変動部分を組み合わせた第一賃料に、各施設の不動産関連費用相当額となる第二賃料を加えた賃料体系を採用し(注2)、かつ修繕費は原則テナント負担とすることで、キャッシュ・フローの安定性を長期的に確保しつつ、各施設の運営実績が良好な時期にはGOPに連動した賃料収入のアップサイドを享受追求することを可能としています。今後もテナント業績のモニタリングを通じて、賃料収入の安定性確保に万全を期してまいります。
(注1)「GOP」とは、売上高営業粗利益をいい、各施設の売上高から、人件費、一般管理費等の、各施設の運営に関して直接発生した費用を控除した残額をいいます。以下同じです。
(注2)各保有資産に係る賃貸借契約においては、かかる賃料体系が採用されていますが、本投資法人が今後取得する施設に係る賃貸借契約において、同様の賃料体系が採用されることを保証するものではありません。
2)収入増や競争力強化に資する戦略的CAPEX(注1)
本投資法人は、高稼働を背景にバリューアップ・ポテンシャル(注2)を有する保有物件に対しては、客室数増加を目的とした増改築等の戦略的CAPEXを実施し、保有資産のオペレーターの潜在的な収入確保を図ることや、敷地内の未稼働建物や未使用土地の有効活用による賃料収入の増加を中長期的に目指しています。また、温泉・温浴関連施設における付加価値向上のノウハウを有する大江戸温泉物語グループとの協働により、各種の施設競争力の向上策に協力し、各種イベント等の集客向上策に対して所有者の立場で積極的に関わっていくことで、テナント収益の拡大を通じた変動賃料の増加を図ります。
(注1)「CAPEX」は、Capital Expenditure(資本的支出)をいい、不動産を維持するための修繕費用ではなく、不動産及び設備の使用可能期間の延長又は資産価値の増加を目的とした支出をいいます。
(注2)「バリューアップ・ポテンシャル」とは、投資等によって資産価値の向上が見込まれる潜在的余地をいいます。
ⅲ.財務戦略
本投資法人は、当面は新型コロナウイルス感染症の影響によるリスクへの対応を最優先しつつ、保守的な財務基盤維持を重視していきます。
デット・ファイナンスについては、既存借入先との良好な関係を維持しつつ、新規物件取得時や既存借入の返済期限到来時の安定的な資金調達の実現を図り、エクイティ・ファイナンスについては、投資口の中長期的な価値向上、並びに1口当たり分配金の希薄化に配慮し、機動的に実施を検討していきます。
LTV水準は、原則として60%を上限としながら、当面は資金余力の確保に留意して40%程度を目安とし、保守的な水準を維持していく方針です。また、ポートフォリオの規模拡大とテナントや立地等のリスク分散の推進によりリスクプレミアムの低下を図り、金融コストの低減とともに、高格付けの取得や調達手段の多様化、負債の平均年限の長期化や固定金利の導入などを目指します。
(ハ)決算後に生じた重要な事実
該当事項はありません。