有価証券報告書-第77期(令和2年7月1日-令和3年6月30日)

【提出】
2021/09/29 16:11
【資料】
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【項目】
138項目

対処すべき課題

当社グループにおける経営方針、経営環境および対処すべき課題等は、以下のとおりです。
なお、文中における将来に関する事項については、当連結会計年度末現在において判断したものです。
(1)中長期的な経営戦略
①経営の基本方針
当社グループは、「誠意をもってことにあたり、技術を軸に社会に貢献する。」を経営理念としています。
「世界をすみよくする」ことをMission (私たちの使命)、「誠意をもってことにあたれば、必ず途(みち)は拓(ひら)ける」をValues(共通の価値観)とし、結束したグローバル企業集団へと進化することで「唯一無二の価値を提供する会社」をVision(なりたい姿)として掲げています。
②目標とする経営指標
当社グループは中長期の視点で以下のとおり目標とする経営指標を定めています。2030年6月期(長期目標):売上収益2,500億円、営業利益250億円、営業利益率10%、ROE15%2024年6月期(中期目標):売上収益1,550億円、営業利益115億円、営業利益率7%、ROE9%
③ 経営戦略
当社グループは、コンセプトを「共創。限界なき未来に挑む」とする長期経営戦略「NKG (日本工営グループ)グローバル戦略2030」を2021年6月に発表しました。社内および社外の多様なパートナーとの共創を通じ、知の探究、技術の革新と統合により新たな価値を提供し、人々が豊かさを実感できる社会の実現に貢献する企業グループを目指します。
また「NKG グローバル戦略2030」のもと、2021年7月から2024年6月をグループ強靭化に取り組む変革期と位置づけ、中期経営計画「Building Resilience 2024」を策定し、推進しています。「3つのドメインによる事業推進、事業と地域のマトリクス経営、技術と人財の質の向上により、サステナブルな未来の共創に向けた基礎固めをする」を基本方針とし、100年企業の礎を築くべく取り組みます。
併せて、社会課題に対する取組みとして以下7つのマテリアリティを設定しました。このうち、事業活動に関わるマテリアリティは、世界が抱える課題に対し、当社グループが自らの強みを活かして優先的に取り組む重要課題であり、これによって持続可能な開発目標(SDGs)への貢献を目指します。 日本工営グループのマテリアリティ(優先的に取り組む課題)≪事業活動≫ 安心して暮らせるインフラの整備 すべての人が自由に交流し活躍できる社会基盤整備
多様な人・産業が集積する魅力ある都市づくり
脱炭素社会の実現による地球環境の保全≪経営基盤≫
ガバナンスの強化
人権が尊重され、働きがいのある職場環境
人財育成と技術開発
(2)今後の見通しおよび重点課題
当社グループを取り巻く経営環境は、気候変動問題や急速な都市化の進行等による格差問題などへの早急な対応が求められる状況にあると認識しています。コンサルティング事業では国内市場は引き続き国土強靭化を中心に高水準の政府予算が確保され、デジタル改革の加速化やマネジメント事業へのニーズの高まりが見込まれます。海外市場は新型コロナウイルス感染症拡大の影響による事業実施と渡航制限のリスクはあるものの、日本政府の「インフラシステム海外展開戦略2025」でも日本企業の高い受注目標が掲げられるなど、引き続き堅調な需要が見込まれます。都市空間事業では、国内および欧米等では都市構造の再構築、開発途上国では都市基盤整備を含む都市開発事業のニーズが旺盛です。エネルギー事業では、国内では2050年カーボンニュートラルの実現に向けて新たな事業機会と競争が生まれ、また世界全体で再生可能エネルギー開発やエネルギー利用の効率化へのニーズが高まっています。 こうした市場環境のもと、中期経営計画「Building Resilience 2024」(2021年7月~2024年6月)に基づく3つの強靭化策を実行します。 1つ目の強靭化策としては、これまでの5事業を3つのドメイン(コンサルティング、都市空間、エネルギー)に再編し、事業軸を強化します。2つ目の強靭化策では、純粋持株会社体制への移行と地域統括体制の整備によるマトリクス経営の実現を目指します。3つ目の強靭化策としては、「NKGブランド」と「NKGクオリティ」の確立に向け、技術開発および人財育成を強化します。また、そのための基盤として「Well-being経営」を推進してまいります。
各強靭化策における重点課題は以下のとおりです。
強靭化策
1
事業戦略コンサルティング事業
・国内・海外・中央研究所の一体化により世界で戦える組織に進化
・攻めと守りによる事業運営を行い、既存事業に加えて、さらに衛星データやAI技術活用による防災情報提供・インフラ監視事業、SDGsコンサルティング事業、再生可能エネルギーを軸とした脱炭素関連事業等の領域においても、卓越した技術と品質をグローバル市場に提供
都市空間事業
・土木・建築両分野の融合を図り、国内外における都市・地方再生事業の総合プロデュースを展開
・日本工営・玉野総合コンサルタント・BDP社・黒川紀章建築都市設計事務所の一体運営による市街地開発・再開発、官民連携やスマートシティ形成等の市場への展開
エネルギー事業
・社内外連携による蓄電池、アグリゲーション等の発電・エネルギーマネジメント事業の基盤構築
・主力製品強化と新製品開発(FIP(Feed-in-Premium)向け蓄電池システム、アグリゲーションビジネス向けシステム、デジタル変電所向け制御装置等)による製造事業の安定化
・新領域技術の獲得、マネジメント力の強化、優秀な人財の確保によるコンサルティング・エンジニアリング事業の体制強化
強靭化策
2
組織戦略・純粋持株会社をコアとした事業会社群と地域統括によるマトリクス経営体制への移行によって、グループ会社の自律と連携、意思決定の迅速化、多様性の共存を実現
営業戦略・“Think Globally, Act Locally” 世界水準の技術で、地域に暮らす人々のニーズに向き合うことを目指し、ワンストップサービスの実現と地域拠点の自律運営に向けた支援の実施
強靭化策
3
人財・技術
戦略
・デジタルテクノロジーの進化に向け、DX(デジタルトランスフォーメーション)を中心に技術開発投資を強化し、新たな顧客価値を創出(NKGブランド)
・NKG Global Academyの新設により、世界トップクラスの人財を育成(NKGクオリティ)
・健康経営、ワークスタイル・ワークプレース改革等のWell-being経営(従業員が身体的、精神的に健やかであり、仕事への意欲、取組みへのコミットメントを高める経営)の推進

中期経営計画「Building Resilience 2024」の初年度となる2022年6月期については、コンサルティング事業においては、国内・海外の一体運営により生産性を向上させるとともに、新たな品質・環境システムの導入や次世代基幹技術の開発に取り組むことでさらなる成長の基盤を構築します。都市空間事業においては、グループ会社との一体運営により、土木・建築融合分野をメインフィールドとする基盤形成を推進します。エネルギー事業においては、既存事業の価格競争力および生産体制の強化と再生可能エネルギー発電、蓄電池、アグリゲーションといった成長領域の基盤構築に取り組んでまいります。
これらの取組みを推進することで、2022年6月期の連結業績予想は、売上収益1,310億円(前期比111.1%)、営業利益77億円(前期比108.0%)、親会社の所有者に帰属する当期利益47億円(前期比103.7%)としております。