有価証券報告書-第146期(2025/04/01-2026/03/31)

【提出】
2026/06/18 13:38
【資料】
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【項目】
170項目
② 戦略
気候変動課題への対応については、TCFD提言に基づき、当社にとっての気候関連リスク及び機会を抽出のうえ、影響度算定の前提として1.5℃と4℃シナリオを設定し、中期経営計画で公開している情報等の合理的で裏付け可能な情報を活用し、分析しております。なお、当社は、気候関連のリスク及び機会の識別にあたり、ISSB「産業別ガイダンス」の適用可能性を精査中です。
(a)気候関連のリスク及び機会
以下に、当社グループにとっての主要な気候関連リスク及び機会を示します。
区分種類時間軸内容事業影響
(シナリオ)
対策概要
移行リスク政策・規制中期炭素税導入に伴う運用コストの増加
(1.5℃)
1.再エネ電力の活用
・全現場事務所への再エネ電力導入、テナントオーナーへの働きかけ
・T-Base®でのコーポレートPPA契約の導入
2.再エネ発電設備等の設置
・イノベーションセンターでの再エネ発電・蓄電池設備の設置
3.低炭素車両の活用
・HV(ハイブリッド)車両での採用とEV車両の計画的導入
・当社の調達基本方針に基づきサプライチェーンへ上記を働きかけ
炭素税導入に伴うサプライヤーのコスト転嫁による調達コストの増加
(1.5℃)
1.グリーン調達(低炭素資機材の調達)やトップランナー製品(高効率製品)の継続的な採用
2.継続的なサプライヤーエンゲージメントの実施
技術中期省エネ関連の技術開発の遅れによる受注減少
(1.5℃)
1.省エネ提案等を通じたステークホルダーニーズの的確な把握
2.研究開発部門、プロフィット部門を含む全社での開発の推進
脱炭素関連技術・サービスの開発遅延・投資コスト増加および脱炭素関連の市場ニーズへの対応が不十分であることに伴う収益機会の損失
(1.5℃)
1.顧客の動向、競合状態等を踏まえたビジネス・モデル構築
・地域内でエネルギー供給するマイクログリッドシステムの構築
2.上記を踏まえた研究開発の推進、ビジネスパートナーとの協働
・大型水電解水素製造機器、エネルギーマネジメントシステム等の開発および実装
評判短期/中期気候関連課題への対応および開示情報が不十分であることに伴う企業価値の低下
(1.5℃)
1.気候変動対応イニシアティブへの参画
2.統合報告書や当社WEBサイト等での積極的な発信

区分種類時間軸内容事業影響
(シナリオ)
対策概要
物理的リスク急性中期/長期異常気象の影響で顧客側の設備投資計画の凍結・見直しや施工物件の工程遅延等による受注・収益機会の損失
(4℃)
1.幅広い受注活動と案件アプローチによる受注分散
2.事業ドメイン拡大による事業ポートフォリオの多様化
・カーボンニュートラル、設備保守、環境機器への展開
⇒ 現中計期間中(2023-2026)に検討
浸水による事業活動の停止に伴う収益機会損失及び被災時のコスト発生
(4℃)
1.浸水リスクが比較的大きいT-Base®での対策強化
・T-Base®の全国複数拠点化
慢性中期/長期作業環境の苛烈化に伴う労働力、施工能力の不足による受注・収益機会の減少
(4℃)
1.健康経営、長時間労働抑制の推進
2.スマートウォッチ等のIoT機器活用による熱中症対策
労働環境悪化による作業効率低下に伴う収益機会の減少
(4℃)
1.T-Base®の活用拡大による現場作業スリム化と生産性向上
2.BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の活用推進による生産性向上
気温上昇による事業所空調設備使用料の増加
(4℃)
節電運用(クールビズ・ウォームビズ等)
機会資源の効率性短期/中期施工プロセスの変革による操業コストの減少と生産性向上
(1.5℃)
1.T-Base®の普及・促進
2.BIM等の普及
製品およびサービス短期/中期省エネ推進政策・規制の進展による、企業の設備更新ニーズの増加に伴う収益機会増加
(1.5℃)
1.顧客への情報提供を通じたニーズ把握と計画的な設備更新
2.当社グループ独自の設計・施工による省エネ提案
・旋回流誘引型成層空調システム(SWIT®)
・クローズドVOC、排熱利用(メガストック®)、バイオリアクター
・ピーマック製品 等
環境負荷低減に貢献する製品施工の収益増加(旋回流誘引型成層空調システム(SWIT®)、ピーマック製品等)
(1.5℃)
1.顧客への情報提供を通じたニーズ把握と計画的な設備更新
2.当社グループ独自の設計・施工による省エネ提案
・旋回流誘引型成層空調システム(SWIT®)
・クローズドVOC、排熱利用(メガストック®)、バイオリアクター
・ピーマック製品 等
市場中期/長期水電解水素製造装置(Hydro Creator®)をはじめグリーンエネルギー供給設備等の新技術開発・新サービス投入による新市場開拓
(1.5℃)
1.2026年までに5,000kW分のグリーンエネルギー供給設備の実装に向けた研究開発の推進
2.案件により適時適切なパートナーとの協働
グリーンボンドなどの有利な資金調達機会の創出
(1.5℃)
上記投資に必要となる場合に活用を検討
・グリーンボンド発行によるイノベーションセンター建設資金の調達

事業影響は、財務影響額試算(コスト「小:〜1億円、中:1億円超〜30億円、大:30億円超」 収益「 小:〜20億円、中:20億円超〜300億円、大:300億円超」)に定性的な評価を加え、「小」「中」「大」に区分 (コスト、収益の閾値「大」は東証の適時開示基準をベースに設定)
短期は1年(年度経営計画と同期間)、中期は3〜10年(中期経営計画と同期間)、長期は10年超(長期ビジョンと同期間)
(b)ビジネス・モデル及びバリュー・チェーンに与える影響
当社グループのビジネス・モデル及びバリュー・チェーンにおいて、気候関連のリスク及び機会は、主に調達側(上流)、施工現場(直接操業)、顧客側(下流)に集中しています。調達側(上流)では、主要資機材である鉄・鋼材に対する炭素税等の価格転嫁により調達コストが増加する移行リスクが存在する一方、グリーン鋼材等の低炭素素材の導入を通じて脱炭素ニーズを取り込む移行機会も存在します。施工現場(直接操業)では、気温上昇による作業環境の悪化や労働力不足といった慢性的な影響に加え、自然災害の激甚化による工程遅延等の急性的な影響といった物理的リスクが存在します。顧客側(下流)では、顧客設備の運用における省エネ推進に伴い設備更新ニーズが増加しており、当社の環境配慮型製品(SWIT®等)や省エネ提案による収益機会が存在します。
(c)財務的影響
当連結会計年度において、特定された気候関連のリスク及び機会が当社の財政状態、財務業績及びキャッシュ・フローに与えた重大な影響はありません。また、識別された気候関連のリスク及び機会のうち、翌年度において関連する財務諸表に計上する資産及び負債の帳簿価額に重要な影響を与えるものは認識しておりません。
財務基盤については、中期経営計画(2023–2026年度)において900億円以上の成長投資枠を設定し、健全な財務体質を維持しつつ資金確保を図り、短期・中期においてはT-Base®の拠点拡大や再エネ発電設備の導入等による労働環境改善と生産性向上を推進し、中期・長期においては水電解水素製造装置等のグリーンエネルギー供給設備の実装に向けた研究開発へ重点的に投資します。これらの戦略投資は、計画的な実行と既存の金融資源の活用により、財務健全性を維持しながら推進いたします。
また、気候関連リスク及び機会への対応を通じ、長期ビジョン2040で掲げる経常利益400億円超の達成に向け、持続的なキャッシュ・フローの創出を図ってまいります。短期・中期においては、省エネ政策の進展に伴う設備更新ニーズの拡大を機会として捉え、SWIT®等の環境負荷低減製品の受注拡大を推進するとともに、T-Base®やBIMの活用による施工プロセスの効率化を通じて収益性の向上を図ります。中期・長期においては、水電解水素製造装置(Hydro Creator®)をはじめとするグリーンエネルギー関連設備の開発及びカーボンニュートラル関連事業の拡大により新たな市場ニーズを取り込み、中長期的な売上成長とキャッシュ・フローの創出を見込んでいます。
なお、気候関連のリスク及び機会の財務的影響評価やシナリオ分析においては、当社が利用可能なスキル、能力及び資源に見合ったアプローチを採用し、合理的で裏付け可能な情報を用いています。シナリオ分析の具体的な手法及び前提条件については、後述の「(e)気候レジリエンス」をご参照ください。
(d)戦略及び意思決定に与える影響
当社グループは、「2050年ネットゼロ移行計画」に基づき、SBT(科学的根拠に基づく目標)における1.5℃水準の達成を目指しています。その実現に向けては、再エネ電力の導入や水素関連・脱炭素技術の開発・社会実装、カーボンニュートラル事業等の新事業ドメインの確立を不可欠な取り組みと位置づけています。
事業戦略の面では、空気調和を核とする省エネ技術の普及にとどまらず、グリーンエネルギー提供を中心とするカーボンニュートラル事業や環境機器製造・販売事業へと事業ドメインを拡大しています。
気候関連のリスク対応としては、炭素税導入等の移行リスクに対しては、再エネ電力の調達拡大や低炭素資機材のグリーン調達、サプライヤーエンゲージメントを強化いたします。また、物理的リスクによる労働力不足や工程遅延に対しては、T-Base®による施工プロセスの変革やDX活用による生産性向上などの職場環境の整備を進めてまいります。
対応策の決定に際しては、財務負担や業務への影響等のトレードオフをサステナビリティ推進委員会及び取締役会で検証し、全社最適の観点から判断しております。
これらの戦略を実行するための経営資源として、成長投資を計画しており、カーボンニュートラル事業の確立やDX戦略の推進、新技術開発に充当することで、現在及び将来にわたるリソースを確保しています。
移行計画の進捗については、中期経営計画KGIへのCO₂削減率の組み込みや役員報酬との連動により全社横断の実行力を強化するとともに、SBT1.5℃目標に基づく排出削減を実行フェーズへ移行しています。具体的には、社用車両のHV化・EV化、照明のLED化、再生可能エネルギー電力の活用拡大、夏場における空調の効率的利用などにより、2024年度のスコープ1・2排出量は2019年度対比で24.4%削減しました。また、高効率空調技術(SWIT®、TCR-SWIT®)の提供を通じ、顧客・社会の使用段階を含むスコープ3の排出削減にも貢献しており、自社排出削減と社会全体の脱炭素の両立を目指しています。
(e)気候レジリエンス
当社グループは、長期ビジョンや中期経営計画の策定・見直しの過程において、気候関連シナリオ分析の結果を活用し、事業戦略の気候レジリエンスの検証を行っております。また、連結会計年度ごとに最新の気候関連シナリオや外部知見を踏まえ、気候関連の重要なリスク及び機会が事業に与える影響を再評価することで、継続的な気候レジリエンスの評価に取り組んでおります。
(シナリオ分析)
当連結会計年度において、公的機関が公表する将来シナリオの最新パラメータに基づき、気候関連のシナリオ分析及び事業への影響評価を実施いたしました。
推進体制としては、サステナビリティ推進委員会の下に横断的な検討チームを組成するとともに、定期的な外部有識者との対話を通じて専門知見を補完しており、社内の事業経験と社外の専門知識を融合させることで、当社の保有するスキルと能力の範囲内で実行可能な分析を行っております。
分析の対象として特に重視したのが、当社の主力事業である空調設備事業です。同事業は建物のエネルギー消費の約半分を占めることから、気候変動の影響を直接的に受ける重要課題と認識しており、こうした高いエクスポージャーを考慮し、1.5℃及び4℃の複数シナリオを用いた詳細分析アプローチを採用しております。
分析にあたっては、IEA等が公表する一般に利用可能なシナリオデータや既存の事業計画等の社内情報を活用することで、過度なコストや労力を要することなく、当社の事業特性に見合った手法でシナリオ分析を実施しております。採用シナリオとしては、最新の国際協定と整合し移行リスクが高まる1.5℃シナリオと、物理的リスクが顕在化する4℃シナリオの2つを設定しており、これらを通じて気候変動の進展や不確実性に対する当社戦略のレジリエンスを包括的に評価しております。
主要な分析の前提として、炭素税導入等の気候関連政策や各種資源価格の変動といったマクロ経済トレンドに加え、労働人口の減少や猛暑日の増加といった国・地域レベルの人口動態及び気象パターンの変化を考慮しております。さらに、将来のエネルギー構成や価格推移、水素製造や省エネ関連の技術進展をも前提条件に組み込み、総合的な事業影響を評価しております。
加えて、当社の「長期ビジョン2040」や「中期経営計画2026」等の内部情報もインプットとして活用し、短期(1年)・中期(3~10年)・長期(10年超)の時間軸ごとに財務的影響の試算及び定性的評価を行っております。
(気候レジリエンスの評価)
シナリオ分析の結果、いずれのシナリオ下においても空調や脱炭素技術のニーズ拡大が見込まれることから、当社戦略は十分なレジリエンスを有していると評価しており、この結果を踏まえて「2050年ネットゼロに向けた移行計画」等の戦略を策定しております。
具体的な対応として、低炭素素材の研究により調達コスト増等の移行リスクを低減するとともに、T-Base®等を活用した作業のオフサイト化やDX推進により労働力不足等の物理的リスクに備え、積極的な省エネ設計提案を通じた新たな事業機会の獲得を推進してまいります。
気候レジリエンスの評価において考慮すべき重大な不確実性の領域としては、カーボンプライシング制度の導入等の政策動向に左右される移行リスクの進展度合いと、異常気象や環境苛烈化に伴う施工能力不足・健康被害等の物理的リスクの深刻度合いを特定しております。
こうした不確実性に対応し、気候変動に対応するため、中期経営計画における900億円超の成長投資の相当部分を気候関連の緩和・適応及び機会獲得に充当し、気候変動に対する戦略及びビジネス・モデルの柔軟な調整を図っております。計画的な投資と既存の金融資源の活用により、事業ポートフォリオの多様化やイノベーションセンター等への再エネ発電設備の導入といった既存資産の性能向上を推進し、将来の影響へ対応できる十分な能力を備えております。

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