有価証券報告書-第86期(2023/01/01-2023/12/31)

【提出】
2024/03/29 10:43
【資料】
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【項目】
144項目

対処すべき課題

(1) 経営方針
当社は、「最良の作品を世に遺し、社会に貢献する」という経営理念のもと、「社是」を基本姿勢として、お客様満足や社会の信用を得て企業の社会的価値を高める「品質経営」に継続して取り組んでいる。また当社グループにおいては、ステークホルダーとの対話を深め、社会の課題を解決してサステナブル社会を実現することを示した「竹中グループCSRビジョン」と、当ビジョンを含む企業理念、品質経営基本方針の考え方を表現した「竹中グループメッセージ」を定め、ビジョンの実現に向けた取り組みを推進している。

(2) 経営環境
日本経済はコロナ禍からの経済活動正常化により景気は緩やかに回復傾向にあるものの、世界各地での紛争リスクによる経済・社会情勢を引き続き注視する必要がある。国内建設市場は、公共工事、民間工事ともに概ね堅調に推移しているものの、資材価格の高騰や需給逼迫による建設コストの増加により、厳しい経営環境が続いており、早期かつ適切な対策が必要な状況にある。国内開発事業においては、入国制限の緩和に伴う宿泊需要の高まりが期待される一方、オフィス空室率の上昇及び賃料の下落は継続しており、今後も長期的に影響を受ける可能性がある。
このような状況下において、当社はグループ全体で多岐にわたる専門性と技術力、マネジメント力を発揮できるよう、人材・技術・デジタル化推進、さらに脱炭素・資源循環・自然共生を統合させた環境戦略により持続的な社会の実現に向け、取り組みに必要な投資を加速的に進めることで経営資源を強化・拡充し、社会とお客様にとって最良のパートナーを目指す。激しい環境変化に対して柔軟に対応しながら、揺るぎない経営理念のもとにサステナブル社会の実現に向けて今後も事業の推進に取り組んでいく。
(3) 対処すべき課題
「竹中グループCSRビジョン」に掲げるサステナブル社会を実現するため、当社グループは2014年に「2025年のグループ成長戦略」を策定し、長期的な視野で経営計画を展開している。
計画策定に際しては、外部からの視点をより重要視するために、SDGsやESG評価機関の指標などの国際的なガイドライン等を参照しながら重要課題を特定してきたが、企業環境の変化に伴い昨年見直した「5つの重要課題グループ」、「13の重要課題(マテリアリティ)」及び「指標(KPI)」について、引き続き推進活動を行っている。また、経営計画とマテリアリティとの関連を明確にするとともに、グループ成長戦略の実現に向けて、各々の事業戦略への展開、及び方針管理にもマテリアリティとの関連性を反映させている。
「重要課題(マテリアリティ)」のうち、「環境と調和」においては、脱炭素社会の実現に向けて、2021年にはTCFDの提言に賛同し、SBT認定取得に向けて、グループ事業活動全般に関連するCO2排出削減目標を修正し、2030年までにスコープ1+2を46.2%、スコープ3を27.5%削減することを目指し、2050年までにどちらも100%削減を目指した活動を推進している。
また2024年より、「竹中グループ環境戦略2050」を策定し、当社グループの事業においても、脱炭素、資源循環、自然共生の取り組みを統合的に推進させ、グループを挙げて取り組みを加速させていく。
「働き方・生産性改革」においては、多様な人々の健やかで働きがいのある環境の実現や人材の確保と育成・定着に向けて、引き続き男性の育児休業取得率100%、2025年までに女性管理職比率8%の達成を目指す。また、労働時間等の適正な労働条件の担保のために、2024年の時間外労働上限規制の遵守を大前提に、同じく2024年までに4週8閉所の100%達成を目指す。
今後も社会と会社にとっての「重要課題(マテリアリティ)」を認識し、「人権の尊重」「働き方・生産性改革」「着実な生産プロセス」「環境との調和」を図りながら進めることで、「持続可能な建築・まちづくり」を目指し、当社においても長期にわたる企業価値の創造へとつなげていく。

①2025年のグループ成長戦略
イ.グループで、グローバルに、まちづくりにかかわる
私たち竹中グループは、創業以来続く「棟梁の精神」をもって、まちづくりの全てのステージに最良の品質とソリューションを提供し社会に貢献する。そこで暮らす人々の豊かさと幸せを願い、信用を大切にしたより良い仕事を通じ、棟梁として責任をもって、まちを未来へとつないでいく。
ロ.新たな価値を創る
私たちはステークホルダーとの対話を続けながら、技術の研鑽を重ね、建築技術とサービスが融合した新しいソリューションで、まちに新たな価値を提供する。そして社会やお客様にとって最良のパートナーとなることで、持続的な成長を目指していく。
ハ.成長へのステップ
2025年のグループの成長を目指すために、中期経営計画としてSTEP4となる「3か年事業計画(2023~2025)」を推進し、お客様満足を通して安定した収益基盤と将来の飛躍に向けた基盤を整備するとともに、グループが一体となり、社会とお客様に新たな価値を提供するためにそれぞれが専門技術やサービスの質を磨き、一歩ずつ成長に向けてのステップを進んでいく。
ニ.成長戦略の先に目指す姿
2030年を「SDGsゴールの目標年」及び「グループ成長戦略の最終STEPから近未来にかけて延伸した先のマイルストン」として設定し、2030年に目指す姿を設定している。2030年の当社グループは、コア事業である国内建設事業を中心に、技術革新を含む建築・土木事業の高度化により持続的安定経営を目指す。特に、増加が予想されるストックニーズに対応できるリニューアル体制を強化するとともに、海外建設事業におけるアジアをはじめとした地域での活動規模を拡大していく。併せて、ステークホルダーとの対話により社会課題解決に向けた新領域での事業展開を進め、新規事業、建物維持管理事業を含むサービス事業においても事業規模の拡大基調を保っていく。
②3か年事業計画
イ.建設事業の高度化
当社のコア事業である建設事業については、顧客深耕をさらに図るとともに安全・品質管理基盤の強化と技術革新を含めた生産性の向上により、国内外の建設事業の高度化を図る。
・重大な公衆災害・労働災害の絶無
・重大な品質問題の絶無
・2024年の時間外労働時間上限規制への対応を前提とした事業計画の遂行
・適正利益を確保するための規模別・建種別の事業ポートフォリオの再構築
・生産性・原価力の向上及び生産力の確保
・環境・社会に配慮した建築・サービスの展開
・脱炭素・資源循環・自然共生社会に向けた環境活動の推進
ロ.まちづくり事業の推進
グループ成長戦略で掲げた「まちづくりの全てのステージ」に貢献し、サステナブル社会を実現するため、お客様のファシリティマネジメント業務を支援する機能の強化、開発事業によるスマートコミュニティの実現、土木事業による環境と共生する社会基盤の構築に努め、地域の資源と課題に着目したまちづくりを進めることで新たな社会システムと新規事業を創出する。
・環境・社会課題に応えるビジネスモデルやソリューションの創造と新規事業の創出
・開発事業の収益基盤の拡大
・FM領域の対応力の強化
・土木事業のDX推進や技術革新
・国内外の地域社会の持続的発展への寄与
ハ.経営資源の強化、拡充
建設事業、まちづくり事業の基盤となるワークライフバランスの向上及び人材、技術、デジタルなどの経営資源の充実を図る。
・心身とも健やかに働ける職場環境確保と労働時間マネジメントの促進
・多様な領域の人材確保・育成とダイバーシティの推進による労働市場・環境の変化に適応した体制整備と組織風土の醸成
・建設事業の技術基盤強化及びお客様事業に必要となるサービス領域の拡充
・デジタル技術適用と事業に係るあらゆるデータのAI等での高度利活用による付加価値生産性の向上及び事業変革の継続推進
ニ.目標とする経営指標
当社グループの3か年事業計画における2024年12月期の目標については、足元の状況と大型工事の動向など事業環境の変化を踏まえ、売上高1兆4,800億円、営業利益430億円、経常利益520億円、親会社株主に帰属する当期純利益335億円としている。また2024年12月期の業績予想(2024年2月28日公表)は、売上高1兆5,625億円、営業利益295億円、経常利益385億円、親会社株主に帰属する当期純利益270億円としている。