有価証券報告書-第79期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)

【提出】
2019/06/19 13:07
【資料】
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【項目】
154項目

研究開発活動

当社グループでは、「環境・防災技術、リニューアル、新エネルギー、省力化・合理化、情報化施工」をテーマにし、「社会のニーズをふまえ、営業戦略に密着した技術の開発」に主眼をおき、技術研究所を中心に建築事業および土木事業に係る研究開発活動に取り組んでおります。その主なものは次のとおりであり、当連結会計年度における研究開発費の総額は479百万円です。
なお、研究開発費につきましては各セグメントに配分しておりません。
(1) 建築事業
① 制震ブレースを用いた耐震補強工法
日本大学と共同開発した摩擦ダンパーを用いた既存建物の制震補強工法は、高性能・居ながら(居住しながら)補強がおこなえ、短工期・低コストを特長としており、制震補強工法として、我が国で初めて日本建築防災協会技術評価を取得しております。今期はこれまでの施工物件で用いた摩擦ダンパー約3,600基のデータを確認するとともに、品質管理方法の改善をはかりました。また、補強工事後20年が経過したダンパーの検査をおこない、初期の性能を維持していることを確認しました。累計施工実績は90件であります。
② 折返しブレースを用いた耐震補強工法
折返しブレースは、断面の異なる3本の鋼材を一筆書きの要領で折り返して接合させた形状を有し、優れた変形性能を示すので、耐震性に優れた合理的な鉄骨造建物を建設できます。今期は円形鋼管タイプの性能確認実験データを分析し、信頼性の向上をはかりました。また、他社施工物件でも導入されており、製作および品質管理をおこないました。累計実績は6件であります。
③ 複合露出柱脚の開発
鉄骨造建物の柱脚部に対する新たな取付部の開発に取り組みました。柱脚を構成する鋼板の降伏を評価することにより、既製品よりも安価で耐震性に優れた柱脚が実現できます。今期はこれまでの実験結果をまとめた技術資料の整備および設計指針の作成をおこない、建築技術性能証明を取得しました。
④ 耐震天井工法(AA-TEC工法)の開発
大地震時の大空間建物の天井脱落による被害を軽減するため、耐震天井の開発に取り組んでいます。従来の耐震天井よりも約1.5倍の耐震性能に優れた工法を開発し、2016年10月には建築技術性能証明を取得しました。今期は鉄骨造を対象とした仕様書の作成および天井の吊り長さを4.5mとした場合の性能確認実験をおこない、適用範囲の拡大をはかりました。累積施工実績は1件であります。
(2) 土木事業
① 既設橋梁の耐震性向上技術に関する研究
2013年6月に首都高速道路株式会社が公募した共同研究テーマ「既設橋梁の耐震性向上技術に関する研究」に採択され、摩擦ダンパーを既設橋梁の耐震性向上に応用する研究を実施しています。今期はこれまでの成果と合わせて、橋軸方向の地震動の影響を低減し、橋軸直角方向の地震動に対してのみ可動するメカニズムの開発に取り組み、静的載荷試験を実施し適切に可動する条件について調査しています。同時に従来の摩擦ダンパーについても耐久性試験、実橋梁に適用した場合の効果を調べる動的解析を実施しました。これらの研究成果を踏まえ首都高速道路のロッキングピア部への実施が予定されています。
② トンネル覆工コンクリートの充填性向上技術の開発
当社開発による「排気排水・注入ホース」を使用した技術で、覆工コンクリートの充填性が良くなり品質が向上します。今期は製品化にあたりフィルターシートの仕様、巻付けの仕様、注入圧について検討し、機能性に関する確認試験を実施して有効なデータが得られました。
③ 無人化施工・水陸機械における操作ガイダンス技術の開発
重機の位置姿勢情報やドローン撮影による地形画像を用いてコンピュータ画面上に複数重機を統合表示する技術です。無人化施工や水陸両用機械の遠隔操作においてカメラ映像を見ずに遠隔操作することが可能になります。今期はバックホウの姿勢情報を検出することで、カメラ映像を見ずにダンプトラックへ土砂等の積込みができるように改良しました。
④ 拡幅トンネル技術の研究
国立研究開発法人土木研究所と「トンネルの更新技術に関する共同研究」の協定を締結し、2017年4月から2021年3月までの4年間、共同研究を実施しております。今期はトンネル拡幅時のトンネル周辺地山の挙動を調査研究するために、実際の拡幅トンネル工事で掘削時の応力、沈下等を計測しました。
⑤ インフラ調査・補修ロボットの研究開発
前期製作しました壁面走行ロボットに装着するコンクリートひび割れ補修アタッチメントの試作機を用いて、試験走行・操作をおこない、課題の抽出と改良をおこなうとともに、改良機の仕様の検討を実施しました。
⑥ オーリス(非破壊探査システム)
コンクリート構造物や鋼構造物・岩盤を対象とした非破壊探査システムで、基礎杭の損傷、形状・寸法の探査や岩盤・転石等の内部亀裂・根入れ長の探査等が可能であります。今期は探査技術を改良するとともに、変電所基礎杭クラック、橋脚空洞充填の調査等を実施しました。今期実施は124件で、累計実績は1,249件(オーリス技術協会実施分:17社加入)であります。
⑦ コンクリートの品質向上技術の開発
コンクリートひび割れ制御システムを改良し、コンクリート構造物の躯体内にパイプを設置しコンクリートの温度上昇を抑制するパイプクーリングを自動運転管理する機能に、タブレットで遠隔管理および遠隔操作を追加したことで更なる省人化をはかるとともに、品質の向上を実現しました(名古屋港飛島ふ頭改良工事で実施)。また、本技術は2016年11月17日にNETIS新技術情報提供システムに登録された他に、2019年2月1日に「特許第6473721号 コンクリートひび割れ制御方法」として登録されました。