有価証券報告書-第35期(平成31年1月1日-令和1年12月31日)

【提出】
2020/03/19 16:47
【資料】
PDFをみる
【項目】
94項目

対処すべき課題

本項においては、将来に関する事項が含まれておりますが、別段の表示が無い限り、当該事項は提出日現在において判断したものです。
(1)経営理念
当社グループの経営理念は、「4Sモデル」の追求です。これは「お客様を中心として、株主、従業員、社会の4者に対する責任を高い次元でバランスよく果たし、4者の満足度を高めていく」という考え方です。
当社グループは、「4Sモデル」をベースに、「JTならではの多様な価値を提供するグローバル成長企業であり続けること」を目指す企業像(ビジョン)として定めており、また、「自然・社会・人間の多様性に価値を認め、お客様に信頼される『JTならではのブランド』を生み出し、育て、高め続けていくこと」が、当社グループの使命であると考えております。
加えて、当社グループ社員の一人ひとりが徹底すべき行動規範・価値観として「JTグループWAY」を掲げており、「お客様を第一に考え、誠実に行動すること」「あらゆる品質にこだわり、進化し続けること」「JTグループの多様な力を結集すること」という3つのステートメントによって、表現しております。
当社グループは、「4Sモデル」を追求することを通じ、これまで持続的な利益成長を実現してきましたし、今後もその実現を目指してまいります。持続的な利益成長のためには、お客様に新たな価値・満足を提供し続けることが前提となることから、中長期的な視点に基づき、将来の利益成長に向けた事業投資を着実に実施していくことが肝要と考えております。
この「4Sモデル」を追求していくことが、中長期に亘る企業価値の継続的な向上につながると考えており、株主を含む4者のステークホルダーにとって共通利益となる、ベストなアプローチであると確信しております。
(2)経営資源の配分
当社グループの中長期の経営資源配分は、かかる経営理念に基づき、中長期に亘る持続的な利益成長につながる事業投資を最優先とする方針です。
当社グループは、たばこ事業を利益成長の中核かつ牽引役と位置付け、たばこ事業の持続的な利益成長に向けた事業投資を最重要視します。一方、医薬事業及び加工食品事業は全社利益成長を補完すべく、事業基盤の再構築に注力することとし、そのために必要な投資を実行していきます。
2020年以降も、中長期に亘る持続的な利益成長につながる事業投資(注)を最優先に実行し、同時に事業投資による利益成長と株主還元のバランスを重視するという経営資源配分方針に変更はありません。
(注)お客様へ新たな価値・満足を継続的に提供することで、質の高いトップライン成長を目指す。たばこ事業の成長投資を最重要視
(3)全社利益目標及び株主還元の方針
当社グループは、経営理念及び資源配分方針を踏まえ、全社利益目標及び株主還元の中長期の方向性を「経営計画2020」において設定しています。 「経営計画2020」においても、引き続き為替一定ベースの調整後営業利益の成長率における、中長期に亘る年平均mid to high single digit成長を目指してまいります。
株主還元方針については、積極的な事業投資を継続しながらも、起こり得る環境変化にも対応できる強固な財務基盤(注1)を維持しつつ、中長期の利益成長に応じた株主還元の向上を図ってまいります。
具体的には、1株当たり配当金の安定的・継続的な成長(注2)を目指してまいります。
自己株式取得は、事業環境や財務状況の中期的な見通し等を踏まえて、実施の是非を検討することといたします。
なお、引き続きグローバルFMCG(注3)の還元動向をモニタリングしてまいります。
(注1)「財務方針」として、経済危機等の環境変化に備えた堅牢性及び事業投資機会等に対して機動的に対応できる柔軟性を担保する強固な財務基盤を保持する
(注2)中長期の為替一定ベースの調整後営業利益の成長率の見通しを基本としつつ、当期利益の水準も勘案
(注3)ステークホルダーモデルを掲げ、高い事業成長を実現しているグローバルFast Moving Consumer Goods(日用消費財)企業群
(4)経営環境及び全社利益目標達成に向けた基本戦略
ⅰ経営環境
当社グループ経営を取り巻く経営環境は、グローバルにおける景気の動向、為替変動リスク及び国際的な地政学リスク等、不確実性を増していると認識しております。こうした不透明な経営環境を乗り越え、適切にグローバルビジネスを運営し、持続的な利益成長を実現するためには、「変化への対応力」が必要であると考えております。これは、不確実性に対処すべく、計画策定時において想定の範囲を拡げるとともに、それでも起こりうる想定を超える変化・出来事に対して、素早く・柔軟に対応する能力を指しており、この変化への対応における巧拙とスピード感こそが、今後の企業の競争力を決定する重要なファクターになると考えております。
加えて、デジタル・テクノロジーの進展に伴う産業の境界を越えた競争状況の現出や、お客様行動の変化等を踏まえ、「変化への対応力」という受け身の対応だけではなく、自ら変化を起こし、変革をリードする組織への進化を加速してまいります。
当社グループは、不確実性を増す経営環境を見極め、スピード感を持って競争力を強化すべく、期間を3年間とした経営計画を1年毎にローリングを行う方式で策定しております。
ⅱ基本戦略
当社グループは目標達成に向けた基本戦略として「質の高いトップライン成長」「コスト競争力の更なる強化」「基盤強化の推進」を掲げており、それぞれ選択と集中の考え方を通じて実行していきます。
中でも「質の高いトップライン成長」を最重要視しており、以下各事業戦略の中で述べるブランドやカテゴリーといった注力分野にリソースを集中し、商品・サービスの付加価値を向上させていきます。
「コスト競争力の更なる強化」については、事業コスト、コーポレートコストの双方においてその最適化を進め、品質の維持・向上との両立を図りながらスピーディーかつ効率的な事業運営体制を構築し、利益率の改善及びキャッシュ・フロー創出力の強化を目指していきます。加えて、事業継続能力の向上を図るとともに、コスト競争力の強化を目指していきます。
「基盤強化の推進」にあたっては、前例にとらわれることなく、変化する環境を適切にとらえ、常に挑戦する姿勢を持ち続けることが重要です。このような観点に基づき、不断の改善に取り組んでいきます。加えて70以上の国と地域での事業展開、更に100か国以上の国籍を持つ社員が働く当社グループ人財の多様性を活用し、コラボレーションを推進することにより、シナジーを最大化していきます。なお、すべての企業活動及び成果は人財によって生み出されていることを強く認識しており、人財育成についても一層強化していきます。
セグメント毎の経営環境及び事業戦略については以下のとおりです。
[たばこ事業] たばこ事業は、当社グループ利益成長の中核かつ牽引役であり、為替一定ベースの調整後営業利益の成長率について、「中長期に亘って年平均mid to high single digit成長」を目指します。国内たばこ事業は高い競争優位性を保持する利益創出の中核事業としての、また、海外たばこ事業は利益成長の牽引役である、もう一つの中核事業としての役割を担っていきます。
ⅰ経営環境
たばこ製品については、現在多種多様な製品形態が市場に流通しており、以前よりお客様に親しまれているカテゴリーとしては、紙巻たばこを筆頭に、Fine cut、シガー、パイプ、無煙たばこ、水たばこ、クレテック等が挙げられます。加えて、近年人気が高まっているカテゴリーとして、E-Vapor製品及び加熱式たばこ等のRRPカテゴリーがあります。E-Vapor製品は、たばこ葉を使用せず、ニコチンが含まれるリキッドを加熱して愉しむ製品で、欧米の市場を中心にプレゼンスを拡大しています。E-Vapor製品は、たばこ葉を使用していないことから、多くの市場において規制・税制上たばこ製品としての取扱いを受けてきませんでしたが、各国の規制・税制に変化が見られています。加熱式たばこは、たばこ葉を使用し、たばこ葉を燃焼させずに、加熱等によって発生するたばこベイパー(たばこ葉由来の成分を含む蒸気)を愉しむ製品で、日本市場を中心に伸長しています。加熱式たばこは、たばこ葉を使用していることから、原則として規制・税制上たばこ製品としての取扱いを受けます。加熱式たばこは、各社が開発に力を入れており、イノベーションを通じた更なる成長が期待されます。また、鼻や口に直接たばこを含んで味・香りを愉しむ、煙の出ない製品である無煙たばこについても、以前より市場が形成されていた欧州や米国を中心にプレゼンスが拡大してきています。
世界の紙巻総需要は年間約5.3兆本(注1)、金額ベースの市場規模は約7,000億米ドル(注1)です。世界最大の市場は中国であり、世界の紙巻総需要の40%超を消費しておりますが、同国の専売企業である中国国家煙草総公司が製造・流通・販売をほぼ独占しています。また、インドネシア、米国、ロシア、日本が中国に次ぐ市場規模となります(注1)。たばこ産業における主なグローバルプレーヤーは、中国国家煙草総公司を除けば、フィリップ・モリス・インターナショナル社、ブリティッシュ・アメリカン・タバコ社、JTグループ、インペリアル・ブランズ社があります。RRPにおいては、この4社に加え、電子たばこを販売している米国のジュール社や、無煙たばこを主力製品としているスウェーデンのスウェディッシュ・マッチ社も挙げられます。
紙巻たばこ市場は、成熟市場と新興市場とで異なる特徴を有しており、成熟市場においては、経済成長が限定的であることや、増税及び規制の強化、人口構造の変化等の様々な要因によって、紙巻総需要は減少傾向にあります。また、お客様の需要がより低い価格帯の製品へと移行する動きも複数の市場で見受けられます。一方、新興市場においては、人口の増加と経済成長に伴い、中東、アフリカを中心とした多くの国々で紙巻総需要は増加傾向にあります。加えて、所得の増加に伴い、お客様の需要はより高品質・高価格帯の製品へと移行する傾向があります。
世界の紙巻総需要(注1)は、僅かながらも減少傾向にあります。しかしながら、たばこ産業の利益創出構造は引き続き堅固であり、厳しい環境下においても、主に紙巻たばこにおける製品単価の上昇により、今次経営計画の期間においても市場全体の売
上規模は成長を続けると見立てています。この総需要の減少と売上規模の増加傾向は、今後も継続するものと予想されます。また、RRPカテゴリーの売上規模も伸長しており、加熱式たばことE-Vapor製品を合わせたグローバルベース(注2)の税抜総売上高が2022年には400億米ドル規模に拡大する見込みです。
(注1)2018年度データ
(注2)中国を除く
ⅱ基本戦略
<質の高いトップライン成長>・RRPへの取組み強化 RRPは、お客様、社会及び当社グループの事業にとって有益であると考えており、RRPをたばこ事業の将来に亘る持続的成長の柱と位置づけ、優先的な資源配分を実施してまいります。より多くのお客様に選択いただけるRRPの開発に注力し、イノベーションによる高品質な製品ポートフォリオの拡充を通じて、変化するお客様ニーズを満たしていきます。なお、既存のたばこ製品については、利益基盤としてその重要性に変更はなく、引き続き事業投資を通じた持続的成長を目指してまいります。
・ブランド・エクイティ強化を通じた既存主要市場におけるシェアの維持・拡大 たばこ事業は、「卓越したブランド・ポートフォリオ」を原動力として、過去数年間に亘って、当社グループ主要市場の多くで、その市場シェア伸張を実現してきました。
今後も市場シェア伸張を目指すべく、当社グループは、主要ブランド、特にGFBへの継続的な投資を通じたブランド・エクイティの向上に注力していきます。その一方で、当社グループが事業展開する各国・各地域のお客様の嗜好に合わせ、ローカルブランドによる補完も適切に実行し、ブランド・エクイティ強化に向けた継続的な投資を行っていきます。
具体的には、喫味品質の主たる要素である「ブレンド技術」「香料技術」「フィルターをはじめとする材料技術」、そしてそれらを「加工する技術」を更に進化させていくとともに、外観品質として重要な「パッケージ開発力」も加えた、付加価値あるたばこ創りの5つの主要素に注力していきます。
また、たばこ業界は、世界的な広告・販売促進規制等の進行によって、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌の4大マスメディアの活用が著しく制限されており、お客様との適切なブランドコミュニケーションを展開するうえで、店頭を中心としたコミュニケーション媒体の重要性が高まっていると認識しております。したがって、流通・プロモーション戦略上は、国・地域毎の規制環境により販売チャネル、お客様の購買動向、競合動向が異なることを踏まえたトレードマーケティングの推進を重要テーマと考えております。
・地理的拡大
たばこ事業は、1999年のRJRナビスコ社の米国以外の海外たばこ事業及び2007年のGallaher社といった大型買収・統合を実現し、グローバルたばこメーカーとしてのプレゼンスを高めてきました。
これら二度の大型買収・統合を柱とした地理的拡大施策は、過去10数年間に亘って、たばこ事業成長の中核的役割を担い、特にスピード感ある適切な統合施策の実行は、買収によって獲得したグローバル事業基盤の自律的な強化・拡充に大きく貢献してきました。
その後も、新規市場への参入及び既存市場でのプレゼンス拡大を推進すべく、既存事業への投資強化及び外部資源の獲得として買収及び出資を行うなど、先進国を中心とした高マージン市場と新興国を中心とした高成長市場のバランスの取れた地理的ポートフォリオの構築を実現してまいりました。今後も、更なるグローバル事業基盤の強化及び拡充を図るため、既に強固な基盤を有する市場及び成長ポテンシャルが高い市場へバランス良く投資し、自律的な成長を目指します。また同時に、更なる外部資源の獲得による成長機会の探索及び実行についても、重要な戦略オプションと考えております。
<コスト競争力の更なる強化>たばこ事業は、これまで同様に不断のコスト改善を追求し、品質の維持・向上との両立を図りながら、スピーディーかつ効率的な事業運営体制の構築を目指します。また、これまで以上に、グローバルサプライチェーンの全体最適化を志向していきます。具体的には、葉たばこのグローバル調達における垂直統合や、材料品調達における材料スペックの統一化、サプライヤー間の互換性の確保によるコスト低減を促進していくとともに、市況に応じた機動的な調達と原材料在庫の適正化による原材料費の抑制を追求していきます。また、生産性の向上を目指した製造体制の見直しと設備投資の最適化を通じた加工費の節減も継続的に実施していきます。同時に、事業継続能力を向上させるべく、代替性確保と重要機能の分散化という観点から、マルチソーシング体制の確立と、グローバルな製造拠点の相互活用による製造能力の最適配分、優先銘柄に関する製造能力のエリア分散を目指しております。
上記施策を通じて、品質に妥協することなくコスト効率化を実現し、更なるマージン改善及び運転資本や投資最適化によるキャッシュ・フロー創出力の強化を目指していきます。
<基盤強化の推進>たばこ事業の持続的利益成長を支える基盤として、「人財育成」を重要なテーマと考えております。
当社グループは70以上の国と地域で事業を展開しており、世界中で100か国以上の国籍の社員が、国籍・性別・年齢の区別なく働いております。こうした多様性を活かし、コラボレーションを推進する中で、シナジーを最大化しております。すべての企業活動・成果は人財によって生み出されるものだという強い認識の下、グローバルな人財の獲得・育成について、更に進化させていきたいと考えております。
たばこ事業は、上記事業戦略の着実な実行により、引き続き業界を代表するグローバルたばこメーカーとしてのプレゼンス向上を目指すとともに、当社グループにおける利益成長の中核かつ牽引役としての役割を一層強化していきます。
[医薬事業] 医薬事業は、次世代戦略品の研究開発推進と各製品の価値最大化を通じ、当社グループへの安定的な利益貢献を目指します。
ⅰ経営環境
2018年における世界の医薬品市場規模は、前年度比5.2%増の約1兆1,982億米ドルと成長を続けています(注)。健康意識の高まり、人口の増加、公的医療制度の充実等に伴い、先進的な医薬品の需要が高まっている一方で、高齢化や財政赤字等の背景もあり、各国政府は薬価コントロールを強めており、医療費の抑制を図っています。
日本においては、2019年10月に消費税率の引き上げがあり、これに伴う薬価基準改定による業界全体の平均薬価引き下げ率は2.4%となりました。また、日本の医療用医薬品市場におけるジェネリック医薬品の規模は、政府による医療費抑制を目的とした普及促進に伴い拡大しています。加えて、薬価制度の抜本的改革により、2021年より毎年段階的な薬価引き下げ等が行われることになり、企業にとっては引き続き厳しい状況が予想されます。
有望な創薬標的の発見は容易ではなく、また新薬の承認審査基準が厳格化する中で、グローバルの開発競争は厳し
さを増しています。当社は、国際的に通用するオリジナル新薬創出のための研究開発主導型事業を運営しており、日
本国内だけでなく、海外のメガファーマやベンチャー企業等、多数の企業と競合関係にあります。
(注)Copyright © 2020 IQVIA.
Created based on IQVIA World Review Excecutive ™ Summary 2014-2018 より引用 無断転載禁止
ⅱ基本戦略
<安定的な利益貢献>安定的な利益貢献のために、具体的には「次世代戦略品の研究開発推進と最適タイミングでの導出」「各製品の価値最大化」を重要課題とした収益基盤の更なる強化に努めます。
・「次世代戦略品の研究開発推進と最適タイミングでの導出」
医薬事業の持続的発展の観点から、次世代戦略品の研究開発推進は重要な課題です。新薬創出のハードルが年々上昇している中、世界の医療現場におけるアンメットニーズに徹底的にこだわり、世界中から創薬のタネを求めることによって研究テーマの充実を図るとともに、候補化合物ごとに柔軟かつきめ細やかな研究マネジメントを実践することによって、迅速な臨床開発フェーズへの移行を目指します。
近年、世界規模で研究開発競争が激化しており、医療現場ニーズを見据えた完成度の高い開発戦略の構築と、スピード感のある臨床試験の実施が必要不可欠です。研究開発スピードを加速し、早期に世界の患者様に当社グループが創製した新薬をお届けするために、自社での開発推進に加え、引き続き、他社(特にグローバルメガファーマ)への導出や提携等の機会も積極的に追求していきます。
・「各製品の価値最大化」
2014年以降、「リオナ錠」(高リン血症治療剤)、「シダトレンスギ花粉舌下液」、「ミティキュアダニ舌下錠」及び「シダキュアスギ花粉舌下錠」(減感作療法(アレルゲン免疫療法)薬)を国内で発売しました。また、海外においては各ライセンスパートナー企業が、「Stribild」及び「Genvoya」(抗HIV薬)並びに「Mekinist」(メラノーマ、非小細胞肺がん治療薬)を販売中です。これら各製品を通じた医療現場への貢献を最大化すべく、当社のグループ会社である鳥居薬品やライセンスパートナー企業と緊密に連携し、市場への着実な浸透を図っていきます。
なお、こうした諸活動の推進を実効あるものとするためには、医療現場におけるアンメットニーズや最新の創薬研究に精通し、それをもとに完成度の高い開発戦略や製品価値最大化戦略を構築しうる人財、世界のアカデミアや製薬企業とわたりあえるグローバル人財の育成が急務であると認識しており、それに向けた取組みに注力していきます。
[加工食品事業]
加工食品事業は、高品質なトップライン成長による中長期に亘る利益成長を通じ、当社グループへの利益貢献を目指します。
ⅰ経営環境
2018年における日本国内の冷凍食品消費数量は、前年度比1.4%増の289万トンと過去最高を記録し、輸入品を含む国内消費金額は前年度比1.6%増の1兆746億円となり、2年連続で1兆円を上回りました(注)。
日本の加工食品市場は、ライフスタイルの変化に伴い、今後も需要が伸長すると考えられます。その中でも冷凍食品は、いつでも手軽に出来たてのおいしさを再現でき、バリエーションが豊富であるため、現代の多様なニーズを満たすことが期待されます。
当社のグループ会社であるテーブルマーク㈱の競合企業は、マルハニチロ、ニチレイフーズ、味の素冷凍食品、日本水産といった大手企業に加え、数多くの中小企業が挙げられますが、各種の製品カテゴリーごとにすみ分けがなされております。一方で、流通各社でのプライベートブランド製品の拡大や卸企業の業界再編等、販路の動向にも注視することが必要と考えており、また、原材料においても世界的な食料不足を背景とした価格変動等のリスクが依然として存在しております。
(注)出典:日本冷凍食品協会
ⅱ基本戦略
<質の高いトップライン成長>ステープル(主食)商品を中心とした冷凍・常温加工食品、調味料及びベーカリーを主力として事業を展開しております。中でも、高い商品力・市場シェアを有するステープル商品に注力します。具体的には、お客様ニーズ把握力、アイデア創出力・具現化力の更なる強化を図ることにより、当社グループ独自の製造技術を一層活かしつつ、「お客様にとって、その価格に相応しい付加価値ある商品づくり」を目指します。また、商品戦略と連動した効果・効率的な広告宣伝及び販売促進活動の展開並びに営業力の強化を図ることによって、更なる市場シェア拡大を目指します。
<コスト競争力の更なる強化>原材料調達力の強化、物流網の効率的運用、自社グループ工場の生産性改善によるコスト低減に加えて、販売促進施策の選択と集中による営業活動経費の効率的執行、全社的な固定費削減努力を継続的に行い、コスト競争力の強化に努めます。
<基盤強化の推進>・食の安全管理
今後も引き続き、お客様に安全で高品質の商品を提供していくため、「フードセーフティ」「フードディフェンス」「フードクオリティ」「フードコミュニケーション」の4つの視点をもとに食の安全管理に万全を期した事業運営を行っていきます。
「フードセーフティ」では、既に導入済の食品安全マネジメントシステムを活用し、リスクを極小化する活動を展開します。
「フードディフェンス」では、意図的な攻撃を防ぐための仕組みとして導入済であるフードディフェンスプログラムを推進しております。
「フードクオリティ」では、食品本来の品質である「おいしさ」を追求するとともに、お問い合わせ・ご指摘情報からの継続的な改善による、商品付加価値とお客様満足度の向上を目指します。
「フードコミュニケーション」では、お客様の要望に真摯に耳を傾けるとともに、当社グループの活動の「見える化」を推進するため、積極的に情報を提供する取組みを行います。
・人財育成
事業を支える人財の育成は重要なテーマであり、高いマーケティング能力や商品開発能力等様々なスキルを有する人財の育成に向け、能力開発プログラムの策定及び適切なキャリアパスの構築を図り、その実行に努めていきます。
以上のとおり、当社グループは、「4Sモデル」の追求を経営理念とし、「変化への対応力」を高めながら、大胆かつスピーディーに意識・行動を変革し、各事業の成長戦略を着実に実行することによって、持続的利益成長を実現し、中長期に亘る企業価値の継続的な向上を目指していきます。