有価証券報告書-第134期(2024/04/01-2025/03/31)
■ 戦略、指標と目標
当社は1922年に創業し、2022年に100周年を迎えましたが、この間事業ポートフォリオを大きく変革してきました。1960年代には石油化学事業と繊維事業が売上高の大半を占めていましたが、社会課題の解決に向けた事業展開により、現在は「マテリアル」「住宅」「ヘルスケア」からなる3領域経営を進めています。大きな変革を遂げながら成長してきましたが、今後も、持続可能な社会への貢献と持続的な企業価値向上の2つのサステナビリティの好循環に向けてさらなる変革が必要です。
当社では、従業員に求める心構えとして「A-Spirit」という言葉を掲げています。旭化成の「A」と、アニマルスピリットの「A」をかけたもので、具体的には、野心的な意欲、健全な危機感、迅速果断、進取の気風、という4つのことを強く意識し、チャレンジングな人間、チャレンジングな人財であってほしいと伝えています。また、そのような想いから、社員一人ひとりが挑戦・成長を自ら求めていく「終身成長」と、当社の多様性を活かしコラボレーションを推進する「共創力」を人財戦略の柱としています。

A-Spiritの体現に向けて、課題と考えているのは次の3つです。
① 自律的なキャリア意識向上と組織の成長との好循環
A-Spiritや「終身成長」は、他律的、受動的な姿勢では体現できません。実現したい夢や意思、自身で思い描くキャリア、それらを原動力にして様々なテーマにチャレンジすることが重要です。今後事業ポートフォリオ転換を進め、高付加価値事業を創出するためには、自ら成長・挑戦機会を求め自律的に動く人財が従来以上に必要であり、社員と組織双方の成長につなげていくことが大切だと考えています。
② 個とチームの力を引き出すマネジメント力の向上
失敗を恐れず思い切って挑戦し、その挑戦(失敗も含め)から学び、また次の挑戦に繋げていくためには、マネージャーによる支援が不可欠です。当社には高い専門性を持った人財や挑戦心あふれる人財が数多く在籍していますが、それを最大限に活かしきりビジネス上の成果に繋げられるよう、マネジメント力の向上も課題と考えています。
③ 多様な人財の活躍
当社の強みは幅広い技術、多様な事業、多様な市場との接点を通じた無形資産であり、これらのポテンシャルを最大限に引き出し、価値創造に活かしていかなければなりません。そのためにも国籍やジェンダーなど属性における多様化をこれまで以上に推し進めながら、質的に多様な人財がつながり合い、化学反応を起こすことで企業価値向上につなげていきます。
以上の課題認識に対して、当社では従来、様々な人事施策を講じてきており、2025年4月に発表した中期経営計画では、あらためて心身の健康を重視し、当社の強みである自由闊達なコミュニケーションをベースとしながら、挑戦的風土の強化を進めることが肝要であるとの認識のもと、各種施策を一層推進していきます。
主要KPIとしては「従業員エンゲージメント(成長行動指標)」「ラインポスト+高度専門職における女性比率」「従業員エンゲージメント(活力指標の好意的回答者比率)」を掲げており、従来そのうちの「ラインポスト+高度専門職における女性比率」を役員報酬に連動させていましたが、2025年度より「従業員エンゲージメント(活力指標が好意的な状態の回答者の割合)」についても連動させることとしました。
(人財育成方針)
高度専門職制度の拡充によるプロフェッショナル人財の育成強化
概要:高度専門職制度とは、新事業創出、事業強化へ積極的に関与し、貢献できると期待できる人財に対しふさわしい処遇を行い、社内外に通用する専門性の高い人財を増やしていく仕組みです。各事業の拡大に必要な専門領域を特定し、各専門領域で課長待遇のエキスパートから執行役員待遇のエグゼクティブフェローまで役割定義を定め、その定義に沿って任命を行っています。高度専門職を設置する専門領域は事業方針に合わせて毎年見直しを行い、事業戦略と人財育成方針をリンクさせているほか、就任者のミッションの一つに「自身の後進の育成」を明確に位置づけることで、技術レベルをサステナブルに維持向上させる仕組みとしています。
KPI:前中計においては高度専門職の人数をKPIとして注視しており、2024年度は目標360名に対し373名と達成することができました。今後は、高度専門職の活動が新事業創出及び事業強化にこれまで以上につながるよう、各領域で活動ロードマップの策定や領域内外の連携を積極的に行う等の取り組みを強化していきます。

エンゲージメント向上 「KSA(活力と成長アセスメント)」
狙い:個人と組織の状態を可視化しマネジメントのPDCAを回すことで、活力や挑戦・成長行動を高めること。
概要:毎年1回、全従業員を対象にサーベイを実施し、3指標「上司部下関係・職場環境」「活力」「成長につながる行動」の組織毎の結果をラインマネージャーにフィードバックしています。各組織が当事者意識を持ち課題や目指したい状態、今後の取り組みについて話し合う「職場対話」を推進し、職場づくりを学ぶ研修も展開してきました。これまでの取り組みから、職場対話を効果的にするための環境整備も必要なケースがあることが分かってきており、今後は、個々の職場の状態に応じて対話にとどまらないアプローチも検討していきます。
KPI:モニタリング指標に定める「成長につながる行動」は2024年度3.73まで向上しました(2023年度3.72、2022年度3.71、2021年度3.69)。上司向け研修の拡大(延べ832名受講)により、2020年の導入時から推奨してきた「職場対話実施率」は2024年度73%と順調に推移しています。今後は、「活力」指標が好意的な状態の回答者(5段階中3.5以上)の割合を高めていくことをKPIに加え、2025年度以降、役員報酬にも連動させます。


DE&I、ジェンダーバランスの実現
狙い:急速に変化する事業環境に対応し継続的に新たな価値を生み出していくためには、人財の多様性を活かし共にビジネスを創り出していく「共創力」を高めることが不可欠であると考え、当社ではDE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)を経営課題の1つとして位置づけています。「共創力」を発揮していくためには、多様性を“拡げる”“つなげる”という2つの視点が重要であり、多様な技術・事業・人財を有機的につなげることで、当社ならではの価値が発揮できると考えています。
概要・KPI:ジェンダーバランスの実現に向けて、2022年度からKPIとして、管理職の中でも真に指導的役割を果たすポジション(ラインポスト及び高度専門職)の女性比率を2030年度までに10%以上にするという目標を掲げ、その比率を役員報酬にも連動させています(2024年度目標:5.0%以上、実績:4.9%)。
上記を達成するとともに、女性リーダーを継続的に輩出できる仕組みとして、候補者母集団を形成するための様々な取り組みを実施しています。2013年より継続的に実施しているメンタープログラムでは累計165名の新任女性管理職が参加し、直属の上司ではない斜めの関係の上位職が、各自のキャリア形成や課題解決に向けて主体的に考える機会を提供し成長を促すとともに、その後の自己成長に対する意欲を高めています。
また、ラインポストに就く女性管理職のさらなる成長意欲の喚起や視座向上を目的に、2023年度に女性の社外取締役(2名)、2024年度には女性の執行役員(2名)と女性管理職とのラウンドテーブルを実施しました。女性役員が自らのキャリアや経験談、女性管理職への期待を語るとともに、女性管理職同士が意見交換を行うことで経営に必要な視点を養い、参加者の挑戦意欲を高め、意識と行動変革を促す機会となっています。
ジェンダーバランスの実現を目指し、多様な働き方やキャリア形成を支援する施策としては、女性の管理職や高度専門職、育児休業を取得し家事・育児にも積極的に携わる男性社員など、社内で活躍する多様な人財を紹介する「ロールパーツモデルチャンネル」をイントラネットで展開しています。「自身の周囲にロールモデルが少ない」という社員の意見に対応して、様々なロールモデルとなる社員を紹介することで女性社員のキャリアアップへの挑戦意欲を高め、仕事と家庭を両立させるなど中長期的なキャリア形成のイメージを持ってもらうことを狙いとしています。
また、一人ひとりの多様性を活かし組織力に繋げていくためには、各自に内在するアンコンシャスバイアスを知り、コントロールする方法を習得することが重要であるとの考えから、2023年度に役員及び部長職全員に対してアンコンシャスバイアス研修を実施しました。2024年度には課長職全員にも展開し、職場の心理的安全性を高め、多様な社員の活躍を支援できる管理職の育成を図っています。
指導的立場に就く女性社員を増やしていくための上記の全社施策と並行して、各領域・事業会社においてバイネームでの女性人事計画を立て、実際の登用に繋がる取り組みを実施しています。また、2023年度に社長を委員長とするDE&I委員会を設置し、グループ全体における進捗状況の確認や課題改善に向けて、定期的にモニタリング及び意見交換を行っています。これらの様々な取り組みにより、1994年に3名だった女性管理職は2024年度335名に増加しています。また女性の執行役員は2名、取締役は2名、監査役は1名となっています(2025年6月現在)。

障がい者については特例子会社「旭化成アビリティ」での雇用を中心に、継続的に法定雇用率の達成を維持しています。2024年度の障がい者の法定雇用率2.5%のところ、グループ全体での年間雇用率は2.66%でした。直近の2025年3月末時点では2.61%(720名)となっており、2026年7月法定雇用率2.7%への引き上げに対しても備えを進めています。

キャリア採用に関しては、グループの強みである人財の多様性をさらに強化するために、多様な経験やバックグラウンドを有する人財の中途採用を積極的に行ってきました。また、管理職への登用についても同様の考え方で、2024年度はグループ国内正社員における管理職の16.0%をキャリア採用者が占めています。
当社グループにおける海外従業員比率は現在4割強を占めています。海外拠点の主要なポジションへの外国籍及び現地採用の人財登用を拡大し、優秀な人財は各事業に留めることなくグループ全体に貢献する人財として育成を行っています。その結果、グループ経営への参画も進み、現在4名の外国人が旭化成株式会社の執行役員に就任しています。
女性・外国人・キャリア入社者の中核人材登用に関してはコーポレート・ガバナンスに関する報告書にも記載しているほか、障がい者雇用に関する取り組みや各種データ類はサステナビリティレポートを参照ください。
https://www.asahi-kasei.com/jp/sustainability/social/human_resources/
終身成長とシニア人財の活躍
狙い:「終身成長」というコンセプトのもと、シニア人財がさらに専門性を磨き、環境に合わせて挑戦し変化し続けることができるよう支援し、シニア人財の持てる力をより一層引き出すこと。
概要:シニア人財のさらなる活躍の支援の施策として、2023年度から定年を65歳に引き上げました。60歳到達前の社員が自分のwill/can/mustを考えて、それに沿って職務をマッチングする、という仕組みで運用しています。50歳、55歳到達前の社員(2024年度300名程度)は、社内キャリアコンサルタント及び上司との面談を組み入れた節目研修を通じて、キャリアについて深耕する機会を持つことで、マッチングの質を高めていきます。さらに、60歳超の社員及びその上司への実態ヒアリングを行っており、施策の充実に反映していく予定です。
マネジメント力強化並びに次世代経営人財の育成
狙い:マネジメント層の成長、経営層候補の充実を旭化成グループ全体の成長につなげること。
概要:組織マネジメントで重要度の高い新任部長向けのプログラムを継続的に充実させています。新任部長一人ひとりに半年間のコーチングと集合研修で受講者間でのグループコーチングの機会を設けています。当プログラムでは、KSAを用いた自組織の課題分析と自己課題の整理を通じて、改善に向けたアクションプランの実行を支援しています。本プログラム受講者の上司の93%が部下である部長の行動や意識の変化を感じており、柔軟性、他者理解といったヒューマンスキル、組織を牽引しようという意識が向上したと回答しています。
また、次世代経営人財育成プログラムとして、各事業領域や事業会社のリーダー層からアセスメントや経営層との対話により選抜されたメンバーをグループ役員*1)候補として毎年プールし、エグゼクティブコーチングや異業種交流研修により個々の強みの発揮を支援しています。2024年度の活動ではプール人財の候補者拡大を目的に40歳前後を対象とした新たなプログラムを導入し、より若い層の育成を通じて人財プールの活性化に向けた取り組みを強化しています。
KPI:次世代経営人財育成の取り組みの結果、2024年度はグループ役員35ポジションに対して98名(事業部長41名・部長層57名)をプール人財としており、「グループ役員の後継準備率」は280%に達しています。また、2018年度以降、当プール人財から継続的にグループ役員が任命されており、現在のグループ役員35名の過半数が本プログラムから選出されています。
*1) 執行役員の中から旭化成グループ全体の企業価値向上に責任と権限を有する者として、旭化成の取締役会決議に基づきグループ役員を任命しており、具体的には旭化成株式会社の上席執行役員以上及びそれに相応する事業会社の執行役員がこれにあたります。
(社内環境整備方針)
経営戦略と人財戦略を連動させる仕組み
人事部門トップが経営会議メンバーであるほか、社長と人事担当役員・人事部長によるミーティングを定期的に実施し、経営戦略と人財戦略が常に連動する仕組みにしています。また各事業部門トップと人事担当役員・人事部長の定期ミーティングも実施し、事業ポートフォリオ転換を含めた事業課題を人事課題に落とし込み、施策に反映させています。さらには、人事施策が各事業現場にてうまく活用されていくため、HRBP(Human Resource Business Partner)が各事業部門のトップと日常的に議論を行い、人事施策の目的を共有し、企画段階から具体的な活用場面を想定した検討を行うようにしています。
また、経営戦略と人財戦略の連動をさらに進めるため、人事処遇制度を見直すこととし、制度改定に向けた準備を進めています。従来以上に挑戦・成長を評価し、力のある人を早期に登用する、また多様な人財の活躍を促進する仕組みとすることで、「A-Spirit」の体現に繋げていく考えです。
自律的なキャリア形成、「CLAP」の活用、みんなで学ぶ「新卒学部」
狙い:従業員一人ひとりの自律的なキャリア形成と成長の実現を通し、組織活性化や成果につなげること。
概要:1万超の社内外コンテンツを提供する学習プラットフォームCLAP(Co-Learning Adventure Place)を活用し、全従業員がいつでも学べるような環境を整備し、一人ひとりのキャリア自律を支援しています。その一例として、若手人財が主体的に学び続けるための取り組みとして、「みんなで学ぶ」環境を作るラーニングコミュニティを展開しています。2023年度からは新入社員を対象とした「新卒学部」という同期とともに学び合う9か月のコミュニティ活動を導入したことで、一人当たりのeラーニング学習時間は前年度新入社員の3.5倍に増え、キャリア不安の解消に繋がる結果となりました。この取り組みは、『日本の人事部』が主催する「HRアワード2024(後援:厚生労働省)」の企業人事部門最優秀賞を受賞しました。今後も継続的に学び続ける従業員の増加に向けて、ラーニングコミュニティを取り入れた学び方の変革に継続的に着手していきます。
KPI:2024年度は、CLAPアカウント所有者の約9割(20,800名程度)がCLAPにアクセスし、約8割(19,500名程度)が一つ以上の学習コンテンツを終了しています。外部コンテンツの提供に加えて、2024年度は200超の社内カリキュラムも提供し、キャリアの可能性を広げる学びや専門能力を習得できる環境を整えています。今後も社員の自律的キャリア形成の実現に向けて、社内知見を活かしたカリキュラム提供に向けた活動を推進していきます。
人財の可視化、事業領域を超えた人事異動、公募人事制度
狙い:多様な人財を活かしきること。
概要:幅広い技術、多様な事業、多様な市場との接点といった当社グループの強みを活かすべく、以前より事業領域を越えた人事異動を積極的に行っています。一例としては、当社の住宅事業は近年海外に進出しましたが、この事業展開にあたっては、グループ全体の人財・ノウハウなどの経営基盤を活用することで、スピーディに展開することができました。海外事業の拡大によって業績も伸び、キャッシュ創出力も高めています。2022年度からはタレントマネジメントシステムも導入し、人財の可視化を進め、グループ全体での人財の活用力を一層高めていきます。
また、公募人事制度については2003年度から運用しており、累計で約600名の人財が自らの意思で部署を異動し、新たな環境に挑戦しています。
人事部門の組織ケーパビリティの向上
狙い:人的資本経営を実践するための実働部隊である人事部門の組織能力を強化すること。
概要:人事部門に今後必要となる能力について改めて定義づけを行い、その中でもデータ利活用スキルとキャリアコンサルティング能力については特に力を入れて向上に努めています。データ利活用スキルについては、人事部門全体でデータドリブンな働きができることを目指し、大阪大学開本教授監修のもと独自のプログラムを内製しました。組織行動論等の人・組織に関する諸理論、データ収集や統計分析に関するノウハウを人事部門の社員の多くが習得しています。また、国家資格キャリアコンサルタントの資格取得も奨励しており、2025年4月時点で40名程度が資格を取得しています。
人財戦略及び具体策については、統合報告書にも記載がありますので、あわせて参照ください。
また、人事関連の諸データに関しては当社サステナビリティレポートにも掲載しています。
https://www.asahi-kasei.com/jp/sustainability/esg_data/
当社は1922年に創業し、2022年に100周年を迎えましたが、この間事業ポートフォリオを大きく変革してきました。1960年代には石油化学事業と繊維事業が売上高の大半を占めていましたが、社会課題の解決に向けた事業展開により、現在は「マテリアル」「住宅」「ヘルスケア」からなる3領域経営を進めています。大きな変革を遂げながら成長してきましたが、今後も、持続可能な社会への貢献と持続的な企業価値向上の2つのサステナビリティの好循環に向けてさらなる変革が必要です。
当社では、従業員に求める心構えとして「A-Spirit」という言葉を掲げています。旭化成の「A」と、アニマルスピリットの「A」をかけたもので、具体的には、野心的な意欲、健全な危機感、迅速果断、進取の気風、という4つのことを強く意識し、チャレンジングな人間、チャレンジングな人財であってほしいと伝えています。また、そのような想いから、社員一人ひとりが挑戦・成長を自ら求めていく「終身成長」と、当社の多様性を活かしコラボレーションを推進する「共創力」を人財戦略の柱としています。

A-Spiritの体現に向けて、課題と考えているのは次の3つです。
① 自律的なキャリア意識向上と組織の成長との好循環
A-Spiritや「終身成長」は、他律的、受動的な姿勢では体現できません。実現したい夢や意思、自身で思い描くキャリア、それらを原動力にして様々なテーマにチャレンジすることが重要です。今後事業ポートフォリオ転換を進め、高付加価値事業を創出するためには、自ら成長・挑戦機会を求め自律的に動く人財が従来以上に必要であり、社員と組織双方の成長につなげていくことが大切だと考えています。
② 個とチームの力を引き出すマネジメント力の向上
失敗を恐れず思い切って挑戦し、その挑戦(失敗も含め)から学び、また次の挑戦に繋げていくためには、マネージャーによる支援が不可欠です。当社には高い専門性を持った人財や挑戦心あふれる人財が数多く在籍していますが、それを最大限に活かしきりビジネス上の成果に繋げられるよう、マネジメント力の向上も課題と考えています。
③ 多様な人財の活躍
当社の強みは幅広い技術、多様な事業、多様な市場との接点を通じた無形資産であり、これらのポテンシャルを最大限に引き出し、価値創造に活かしていかなければなりません。そのためにも国籍やジェンダーなど属性における多様化をこれまで以上に推し進めながら、質的に多様な人財がつながり合い、化学反応を起こすことで企業価値向上につなげていきます。
以上の課題認識に対して、当社では従来、様々な人事施策を講じてきており、2025年4月に発表した中期経営計画では、あらためて心身の健康を重視し、当社の強みである自由闊達なコミュニケーションをベースとしながら、挑戦的風土の強化を進めることが肝要であるとの認識のもと、各種施策を一層推進していきます。
主要KPIとしては「従業員エンゲージメント(成長行動指標)」「ラインポスト+高度専門職における女性比率」「従業員エンゲージメント(活力指標の好意的回答者比率)」を掲げており、従来そのうちの「ラインポスト+高度専門職における女性比率」を役員報酬に連動させていましたが、2025年度より「従業員エンゲージメント(活力指標が好意的な状態の回答者の割合)」についても連動させることとしました。
(人財育成方針)
高度専門職制度の拡充によるプロフェッショナル人財の育成強化
概要:高度専門職制度とは、新事業創出、事業強化へ積極的に関与し、貢献できると期待できる人財に対しふさわしい処遇を行い、社内外に通用する専門性の高い人財を増やしていく仕組みです。各事業の拡大に必要な専門領域を特定し、各専門領域で課長待遇のエキスパートから執行役員待遇のエグゼクティブフェローまで役割定義を定め、その定義に沿って任命を行っています。高度専門職を設置する専門領域は事業方針に合わせて毎年見直しを行い、事業戦略と人財育成方針をリンクさせているほか、就任者のミッションの一つに「自身の後進の育成」を明確に位置づけることで、技術レベルをサステナブルに維持向上させる仕組みとしています。
KPI:前中計においては高度専門職の人数をKPIとして注視しており、2024年度は目標360名に対し373名と達成することができました。今後は、高度専門職の活動が新事業創出及び事業強化にこれまで以上につながるよう、各領域で活動ロードマップの策定や領域内外の連携を積極的に行う等の取り組みを強化していきます。

エンゲージメント向上 「KSA(活力と成長アセスメント)」
狙い:個人と組織の状態を可視化しマネジメントのPDCAを回すことで、活力や挑戦・成長行動を高めること。
概要:毎年1回、全従業員を対象にサーベイを実施し、3指標「上司部下関係・職場環境」「活力」「成長につながる行動」の組織毎の結果をラインマネージャーにフィードバックしています。各組織が当事者意識を持ち課題や目指したい状態、今後の取り組みについて話し合う「職場対話」を推進し、職場づくりを学ぶ研修も展開してきました。これまでの取り組みから、職場対話を効果的にするための環境整備も必要なケースがあることが分かってきており、今後は、個々の職場の状態に応じて対話にとどまらないアプローチも検討していきます。
KPI:モニタリング指標に定める「成長につながる行動」は2024年度3.73まで向上しました(2023年度3.72、2022年度3.71、2021年度3.69)。上司向け研修の拡大(延べ832名受講)により、2020年の導入時から推奨してきた「職場対話実施率」は2024年度73%と順調に推移しています。今後は、「活力」指標が好意的な状態の回答者(5段階中3.5以上)の割合を高めていくことをKPIに加え、2025年度以降、役員報酬にも連動させます。


DE&I、ジェンダーバランスの実現
狙い:急速に変化する事業環境に対応し継続的に新たな価値を生み出していくためには、人財の多様性を活かし共にビジネスを創り出していく「共創力」を高めることが不可欠であると考え、当社ではDE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)を経営課題の1つとして位置づけています。「共創力」を発揮していくためには、多様性を“拡げる”“つなげる”という2つの視点が重要であり、多様な技術・事業・人財を有機的につなげることで、当社ならではの価値が発揮できると考えています。
概要・KPI:ジェンダーバランスの実現に向けて、2022年度からKPIとして、管理職の中でも真に指導的役割を果たすポジション(ラインポスト及び高度専門職)の女性比率を2030年度までに10%以上にするという目標を掲げ、その比率を役員報酬にも連動させています(2024年度目標:5.0%以上、実績:4.9%)。
上記を達成するとともに、女性リーダーを継続的に輩出できる仕組みとして、候補者母集団を形成するための様々な取り組みを実施しています。2013年より継続的に実施しているメンタープログラムでは累計165名の新任女性管理職が参加し、直属の上司ではない斜めの関係の上位職が、各自のキャリア形成や課題解決に向けて主体的に考える機会を提供し成長を促すとともに、その後の自己成長に対する意欲を高めています。
また、ラインポストに就く女性管理職のさらなる成長意欲の喚起や視座向上を目的に、2023年度に女性の社外取締役(2名)、2024年度には女性の執行役員(2名)と女性管理職とのラウンドテーブルを実施しました。女性役員が自らのキャリアや経験談、女性管理職への期待を語るとともに、女性管理職同士が意見交換を行うことで経営に必要な視点を養い、参加者の挑戦意欲を高め、意識と行動変革を促す機会となっています。
ジェンダーバランスの実現を目指し、多様な働き方やキャリア形成を支援する施策としては、女性の管理職や高度専門職、育児休業を取得し家事・育児にも積極的に携わる男性社員など、社内で活躍する多様な人財を紹介する「ロールパーツモデルチャンネル」をイントラネットで展開しています。「自身の周囲にロールモデルが少ない」という社員の意見に対応して、様々なロールモデルとなる社員を紹介することで女性社員のキャリアアップへの挑戦意欲を高め、仕事と家庭を両立させるなど中長期的なキャリア形成のイメージを持ってもらうことを狙いとしています。
また、一人ひとりの多様性を活かし組織力に繋げていくためには、各自に内在するアンコンシャスバイアスを知り、コントロールする方法を習得することが重要であるとの考えから、2023年度に役員及び部長職全員に対してアンコンシャスバイアス研修を実施しました。2024年度には課長職全員にも展開し、職場の心理的安全性を高め、多様な社員の活躍を支援できる管理職の育成を図っています。
指導的立場に就く女性社員を増やしていくための上記の全社施策と並行して、各領域・事業会社においてバイネームでの女性人事計画を立て、実際の登用に繋がる取り組みを実施しています。また、2023年度に社長を委員長とするDE&I委員会を設置し、グループ全体における進捗状況の確認や課題改善に向けて、定期的にモニタリング及び意見交換を行っています。これらの様々な取り組みにより、1994年に3名だった女性管理職は2024年度335名に増加しています。また女性の執行役員は2名、取締役は2名、監査役は1名となっています(2025年6月現在)。

障がい者については特例子会社「旭化成アビリティ」での雇用を中心に、継続的に法定雇用率の達成を維持しています。2024年度の障がい者の法定雇用率2.5%のところ、グループ全体での年間雇用率は2.66%でした。直近の2025年3月末時点では2.61%(720名)となっており、2026年7月法定雇用率2.7%への引き上げに対しても備えを進めています。

キャリア採用に関しては、グループの強みである人財の多様性をさらに強化するために、多様な経験やバックグラウンドを有する人財の中途採用を積極的に行ってきました。また、管理職への登用についても同様の考え方で、2024年度はグループ国内正社員における管理職の16.0%をキャリア採用者が占めています。
当社グループにおける海外従業員比率は現在4割強を占めています。海外拠点の主要なポジションへの外国籍及び現地採用の人財登用を拡大し、優秀な人財は各事業に留めることなくグループ全体に貢献する人財として育成を行っています。その結果、グループ経営への参画も進み、現在4名の外国人が旭化成株式会社の執行役員に就任しています。
女性・外国人・キャリア入社者の中核人材登用に関してはコーポレート・ガバナンスに関する報告書にも記載しているほか、障がい者雇用に関する取り組みや各種データ類はサステナビリティレポートを参照ください。
https://www.asahi-kasei.com/jp/sustainability/social/human_resources/
終身成長とシニア人財の活躍
狙い:「終身成長」というコンセプトのもと、シニア人財がさらに専門性を磨き、環境に合わせて挑戦し変化し続けることができるよう支援し、シニア人財の持てる力をより一層引き出すこと。
概要:シニア人財のさらなる活躍の支援の施策として、2023年度から定年を65歳に引き上げました。60歳到達前の社員が自分のwill/can/mustを考えて、それに沿って職務をマッチングする、という仕組みで運用しています。50歳、55歳到達前の社員(2024年度300名程度)は、社内キャリアコンサルタント及び上司との面談を組み入れた節目研修を通じて、キャリアについて深耕する機会を持つことで、マッチングの質を高めていきます。さらに、60歳超の社員及びその上司への実態ヒアリングを行っており、施策の充実に反映していく予定です。
マネジメント力強化並びに次世代経営人財の育成
狙い:マネジメント層の成長、経営層候補の充実を旭化成グループ全体の成長につなげること。
概要:組織マネジメントで重要度の高い新任部長向けのプログラムを継続的に充実させています。新任部長一人ひとりに半年間のコーチングと集合研修で受講者間でのグループコーチングの機会を設けています。当プログラムでは、KSAを用いた自組織の課題分析と自己課題の整理を通じて、改善に向けたアクションプランの実行を支援しています。本プログラム受講者の上司の93%が部下である部長の行動や意識の変化を感じており、柔軟性、他者理解といったヒューマンスキル、組織を牽引しようという意識が向上したと回答しています。
また、次世代経営人財育成プログラムとして、各事業領域や事業会社のリーダー層からアセスメントや経営層との対話により選抜されたメンバーをグループ役員*1)候補として毎年プールし、エグゼクティブコーチングや異業種交流研修により個々の強みの発揮を支援しています。2024年度の活動ではプール人財の候補者拡大を目的に40歳前後を対象とした新たなプログラムを導入し、より若い層の育成を通じて人財プールの活性化に向けた取り組みを強化しています。
KPI:次世代経営人財育成の取り組みの結果、2024年度はグループ役員35ポジションに対して98名(事業部長41名・部長層57名)をプール人財としており、「グループ役員の後継準備率」は280%に達しています。また、2018年度以降、当プール人財から継続的にグループ役員が任命されており、現在のグループ役員35名の過半数が本プログラムから選出されています。
*1) 執行役員の中から旭化成グループ全体の企業価値向上に責任と権限を有する者として、旭化成の取締役会決議に基づきグループ役員を任命しており、具体的には旭化成株式会社の上席執行役員以上及びそれに相応する事業会社の執行役員がこれにあたります。
(社内環境整備方針)
経営戦略と人財戦略を連動させる仕組み
人事部門トップが経営会議メンバーであるほか、社長と人事担当役員・人事部長によるミーティングを定期的に実施し、経営戦略と人財戦略が常に連動する仕組みにしています。また各事業部門トップと人事担当役員・人事部長の定期ミーティングも実施し、事業ポートフォリオ転換を含めた事業課題を人事課題に落とし込み、施策に反映させています。さらには、人事施策が各事業現場にてうまく活用されていくため、HRBP(Human Resource Business Partner)が各事業部門のトップと日常的に議論を行い、人事施策の目的を共有し、企画段階から具体的な活用場面を想定した検討を行うようにしています。
また、経営戦略と人財戦略の連動をさらに進めるため、人事処遇制度を見直すこととし、制度改定に向けた準備を進めています。従来以上に挑戦・成長を評価し、力のある人を早期に登用する、また多様な人財の活躍を促進する仕組みとすることで、「A-Spirit」の体現に繋げていく考えです。
自律的なキャリア形成、「CLAP」の活用、みんなで学ぶ「新卒学部」
狙い:従業員一人ひとりの自律的なキャリア形成と成長の実現を通し、組織活性化や成果につなげること。
概要:1万超の社内外コンテンツを提供する学習プラットフォームCLAP(Co-Learning Adventure Place)を活用し、全従業員がいつでも学べるような環境を整備し、一人ひとりのキャリア自律を支援しています。その一例として、若手人財が主体的に学び続けるための取り組みとして、「みんなで学ぶ」環境を作るラーニングコミュニティを展開しています。2023年度からは新入社員を対象とした「新卒学部」という同期とともに学び合う9か月のコミュニティ活動を導入したことで、一人当たりのeラーニング学習時間は前年度新入社員の3.5倍に増え、キャリア不安の解消に繋がる結果となりました。この取り組みは、『日本の人事部』が主催する「HRアワード2024(後援:厚生労働省)」の企業人事部門最優秀賞を受賞しました。今後も継続的に学び続ける従業員の増加に向けて、ラーニングコミュニティを取り入れた学び方の変革に継続的に着手していきます。
KPI:2024年度は、CLAPアカウント所有者の約9割(20,800名程度)がCLAPにアクセスし、約8割(19,500名程度)が一つ以上の学習コンテンツを終了しています。外部コンテンツの提供に加えて、2024年度は200超の社内カリキュラムも提供し、キャリアの可能性を広げる学びや専門能力を習得できる環境を整えています。今後も社員の自律的キャリア形成の実現に向けて、社内知見を活かしたカリキュラム提供に向けた活動を推進していきます。
人財の可視化、事業領域を超えた人事異動、公募人事制度
狙い:多様な人財を活かしきること。
概要:幅広い技術、多様な事業、多様な市場との接点といった当社グループの強みを活かすべく、以前より事業領域を越えた人事異動を積極的に行っています。一例としては、当社の住宅事業は近年海外に進出しましたが、この事業展開にあたっては、グループ全体の人財・ノウハウなどの経営基盤を活用することで、スピーディに展開することができました。海外事業の拡大によって業績も伸び、キャッシュ創出力も高めています。2022年度からはタレントマネジメントシステムも導入し、人財の可視化を進め、グループ全体での人財の活用力を一層高めていきます。
また、公募人事制度については2003年度から運用しており、累計で約600名の人財が自らの意思で部署を異動し、新たな環境に挑戦しています。
人事部門の組織ケーパビリティの向上
狙い:人的資本経営を実践するための実働部隊である人事部門の組織能力を強化すること。
概要:人事部門に今後必要となる能力について改めて定義づけを行い、その中でもデータ利活用スキルとキャリアコンサルティング能力については特に力を入れて向上に努めています。データ利活用スキルについては、人事部門全体でデータドリブンな働きができることを目指し、大阪大学開本教授監修のもと独自のプログラムを内製しました。組織行動論等の人・組織に関する諸理論、データ収集や統計分析に関するノウハウを人事部門の社員の多くが習得しています。また、国家資格キャリアコンサルタントの資格取得も奨励しており、2025年4月時点で40名程度が資格を取得しています。
人財戦略及び具体策については、統合報告書にも記載がありますので、あわせて参照ください。
また、人事関連の諸データに関しては当社サステナビリティレポートにも掲載しています。
https://www.asahi-kasei.com/jp/sustainability/esg_data/