有価証券報告書-第57期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/18 15:37
【資料】
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【項目】
127項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
近年、わが国の国民医療費は増大を続け、その対策として、ジェネリック医薬品の使用割合を80%とすること、バイオシミラーの品目数倍増を目指すことなどが政府方針として打ち出されております。
当社グループでは、創立以来、健康な生活を願う人々の期待に応えるため、経済性に優れ品質の高い医療用医薬品の製造販売を続けております。そして、絶え間ない創造と挑戦によりジェネリック医薬品に対する社会的要請に応え、世界の患者様と、それを支えるご家族のためにグローバル総合ジェネリックメーカーに進化し、社会に貢献することを目指し、「我々は、我々のジェネリック医薬品が世界の患者様とそのご家族・薬剤師様・お医者様・卸売業者の方々・製薬企業の方々に必要とされ、提供し続けるために自ら存続する努力を行い、ジェネリックメーカーとして世界で卓越する。」を当社グループのミッションステートメントとして掲げております。
(2) 経営環境・経営戦略等と優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
ジェネリック医薬品業界においては、政府目標である「後発医薬品の数量ベースでの使用割合80%」の実現に向けた各種ジェネリック医薬品使用促進策が講じられ、目標の80%に迫っているものの、金額ベースでの使用割合とは乖離が大きく、バイオシミラーを含めた一層の使用促進策の検討が行われております。加えて、2023年3月期までに、大型新薬が特許切れを迎えることや、フォーミュラリー等の普及により、国内のジェネリック医薬品市場はさらに拡大・成長する見込みがあります。
一方で、これまで概ね2年に一度であった薬価改定が毎年実施される見通しとなり、ジェネリック医薬品業界においては一層の収益力強化が求められる状況となっております。
このような状況下で当社は、2019年5月に、第8次中期経営計画「NEXUS∞」(2020年3月期~2022年3月期)を策定し、様々なビジネスパートナーと連繋・拡大成長する中で創出される3つのシナジーを最大化し、患者様とそのご家族を中心に据えた事業を推進することで、グローバル総合ジェネリックメーカーへさらなる進化を遂げることを目指しております。そして、“Better than the Best.”「無限大の連繋力で今を超える」をテーマに、『①事業領域のさらなる深化/進化』『②徹底したオペレーション最適化の追求』『③グローバル水準の品質確保、競争力強化』『④ESG活動を基盤としたライフサイエンス企業としての信頼確保』の4つの基本戦略を遂行しております。
<4つの基本戦略>①事業領域のさらなる深化/進化
・患者様とそのご家族の負担軽減、医療費削減に貢献するため、バイオシミラー、抗がん剤のジェネリック医薬品の製品ラインアップを拡充いたします。
・地域社会に貢献する包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)への取り組みを促進いたします。
・医療用医薬品メーカーとして患者様とそのご家族のためにビジネスパートナーとの戦略的提携を促進いたします。
②徹底したオペレーション最適化の追求
・患者様とそのご家族のニーズ(生の声)へ迅速に応える製品開発・製品改良を行います。
・国内最大のジェネリックメーカーとしての調達力・生産力を活かした原価低減及び製造内製化を促進いたします。
・エルメッドとの統合効果の追求を行います。
③グローバル水準の品質確保、競争力強化
・Sagentの強みである低分子ジェネリック注射剤に加え、バイオシミラーの拡充、コンパウンドビジネス及びオーファンドラッグの強化による米国市場での事業規模を拡大いたします。
・アジアにおける日医工ブランド製品の規模を拡大いたします。
・世界各国の品質基準を満たすグローバルな開発体制の推進と製品ラインアップの拡充を図ります。
・積極的なアライアンス提携等による新たなビジネス圏への展開を行います。
④ESG活動を基盤としたライフサイエンス企業としての信頼確保
・健全な経営基盤を支えるガバナンス体制、コンプライアンス体制の堅持・向上を図ります。
・健康・生命に関わる製薬企業としての誇りを持ち、社会貢献活動に積極的に取り組みます。
・社会的債務の一つとして、事業活動に伴う環境負荷の低減と改善に向けた取り組みを継続的に推進します。
・個々の強み・能力を最大限に生かす多様な成長の機会を提供しつつ、柔軟な働き方を促進することで働きやすい環境づくりに努めます。
<4つの基本戦略の進捗状況>①事業領域のさらなる深化/進化
2019年11月に、お医者様専用のコミュニティサイト「MedPeer」、薬剤師様専用のコミュニティサイト「ヤクメド」を運営するメドピア株式会社(以下、メドピア)と業務提携し、メドピアのコミュニティサイトと当社のオウンドサイトを連携させた新しいジェネリック医薬品のデジタルマーケティング展開を目指した活動を開始しております。そして2020年9月には、合弁会社を設立し、患者様とクリニックを繋ぐかかりつけクリニック支援サービス「kakari for Clinic」サービスを開始しております。
②徹底したオペレーション最適化の追求
PMP8(Profit Management Plan 8)を策定し、2022年3月期までの3年間で累計150億円以上のコスト削減を目標として取り組んでおります。2021年3月期においては、製造収率の改善、廃棄削減、調達コスト低減、製造所・原薬統合等に取り組み、46億円のコスト削減を実現しました。
③グローバル水準の品質確保、競争力強化
Sagent グループにおいては、モントリオール工場にてFDA認定を受け、米加両国あわせたFDA認定工場にてコスト競争力、安定供給能力の強化を図るべく、自社製品の内製化を進めております。
また、インフリキシマブBSの早期承認申請やオーファンドラッグの早期の市場投入を目指し取り組んでおります。
そして、コンパウンド製剤のラインアップを拡充し、増産に向けた対応を開始しております。
④ESG活動を基盤としたライフサイエンス企業としての信頼確保
これまでに22自治体と地域連携協定を締結し、医薬品企業として培ってきた知見・ノウハウを活用し社会・地域の課題解決に向けての取り組みを進めており、新型コロナウイルス感染症対策としては手指消毒薬の寄付や感染症防止に関する講習会開催等を行っております。
<目標とする経営指標>第8次中期経営計画「NEXUS∞」において、下記5項目について計数目標値を設定しております。
①海外売上高 600億円(2022年3月期)
海外を今後の成長ドライバーと位置付け、米国におけるバイオシミラーの展開、東南アジア5か国での承認取得を目指します。
②PMP8によるコスト削減 150億円(2020年3月期~2022年3月期累計)
国内外で連携してのオペレーション最適化、エルメッドとの統合効果追求などによるコスト削減策を実施します。
③配当性向 25%~30%(中期経営計画期間中、同水準を維持)
④女性管理職比率 15%以上(2022年3月期)
⑤原薬複数化比率 自社製品の70%(2022年3月期)
(新型コロナウイルス感染症の影響について)
新型コロナウイルス感染症に関して、当社グループでは、在宅勤務、各部署の執務場所分散等を実施し、全社員が感染拡大防止に努めております。これまでのところ全生産拠点においてほぼ通常通りの稼働を続けており、売上面においても、新型コロナウイルス関連製品が伸長するなどのプラス面がある反面、患者様の受診抑制、手術延期、営業活動制限による売上への影響や、Sagent においては一部製品について資材の不足により製造委託先からの製品供給が滞るなどの影響もあり、今後の新型コロナウイルス感染症拡大の状況次第では、業績へ大きな影響を及ぼす事象の発生可能性も否定できないと認識しております。
別途新型コロナウイルス感染症に関連した治療薬候補として挙がっている当社の『注射用フサン®』の臨床試験が国内外で行われており、さらには国内においてCOVID-19診療の手引きにデキサメタゾン(当社製品名『デカドロン錠』)が治療薬として記載されております。