有価証券報告書-第19期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/30 11:09
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86項目

有報資料

当事業年度における研究開発活動の状況は以下のとおりであり、創薬事業に係る研究開発費の総額は373,095千円となっております。
「当社パイプラインの現状と展望」
「PC-SOD(LT-1001)」は、当社独自のDDS技術を用いたバイオ医薬品であり、様々な疾患の原因となっている活性酸素を消去できる画期的な新薬です。ライセンス先の北京泰徳製薬による心筋梗塞を対象とする開発に関しては、当事業年度において第Ⅱ相臨床試験を進めました。当初の予定では当事業年度中に終了する予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の影響などにより、2021年中の終了を目指す状況であります。一方、当社においては、CIPN(化学療法誘発性末梢神経障害)を対象とする臨床試験に向けて準備を進めて参りました。CIPNはオキサリプラチンなどの抗がん剤による副作用の一種であり、抗がん剤投与後にしびれなどが生じ、重篤な場合には抗がん剤の投与を止めなくてはならなくなり、臨床現場で大きな問題になっています。現在、この副作用を予防する方法(薬)がないこと、及びこの副作用の原因が活性酸素であることに着目した当社はこれまで動物実験を進め、PC-SODが顕著な効果を示すことを発見しました。当事業年度では、動物実験でPC-SODが抗がん作用それ自体には悪影響を与えないことを確認したり、PMDA(医薬品医療機器総合機構)と臨床試験に向けて協議を行ったりしました。その結果、本年中には、臨床試験を開始(治験届を提出)できる見込みとなりました。PC-SODに関してはこれまで、様々な疾患を対象に開発してきましたが、CIPNというこの新しい対象疾患は動物実験での顕著な効果と臨床ニーズの観点から、大変有望であると考えております。既にご報告しておりますように、CIPNというアンメットメディカルニーズ(臨床で解決されていない課題)に興味を持った国内製薬企業と既に共同研究契約を締結しており、今回の臨床試験もこの契約に則って行います。そこで、この臨床試験で効果が確認できましたら、上市への道筋が見えて参ります。一方、腎疾患を対象とした開発に関しましても、大学との共同研究として進めております。
「ドライアイ治療薬(LT-4002)」は、DR技術により見出したドライアイ治療薬です。前期第Ⅱ相臨床試験では良好な結果が得られました。一方、後期第Ⅱ相臨床試験では、プラセボと比較して主要な評価項目(自覚症状等)において改善傾向が認められておりますが、目標としたレベルの統計的有意差は得られておらず、有効性を明確に示すことはできませんでした。そこで現在は、今後の開発を共同で進めて頂けるパートナーを探しております。特に、シノバイオグループの企業で興味を持っている企業がありますので、今後交渉を進めたいと考えております。
「新型コロナウイルス感染症治療薬(LT-4012)」は、当事業年度に、筑波大学医学部のスクリーニング系と当社のDR技術により発見され、特許を共同で出願した新しいパイプラインです。新しいメカニズムで新型コロナウイルスの増殖を抑える既承認薬であり、試験管内ではウイルスの増殖をほぼ完全に抑える効果が得られておりますので、現在、動物実験の準備を進めております。
「肥満症治療薬(LT-4011)」も、当事業年度に、東京大学医学部のスクリーニング系と当社のDR技術により発見され、共同で特許を出願した新しいパイプラインです。このスクリーニング系は、東京大学医学部で肥満に関与する新しい因子を発見したことに基づいており、新しいメカニズムで肥満を改善する既承認薬の開発を目指しております。試験管内で、目的の効果を示す複数の既承認薬が得られましたので、今後その解析を進めて参ります。
「COPD(慢性閉塞性肺疾患)治療薬(LT-3002)」はDR技術を基に見出した抗炎症作用と長時間作用型気管支拡張作用を併せ持った新規低分子化合物です。また、「NSAID(非ステロイド性抗炎症薬)(LT-3001)」は副作用が少なく、かつ即効性を持つ新規低分子化合物であります。当事業年度では大学との共同研究で新しい適応症に関する研究を進めました。
「肺線維症治療薬(LT-4010)」は、当社のDR技術と武蔵野大学の肺線維症研究を活かした共同研究開発により、新しいメカニズムで肺の線維化を改善する既承認薬を発見したものです。当事業年度では、既に承認された医薬品に副作用の問題があることに着目し、安全性の観点からの差別化に取り組みました。
「ステルス型ナノ粒子製剤(LT-2003、LT-2004)」は、当社の持つDDS技術(ステルス型ナノ粒子)を使ってプロスタグランジンE1やプロスタグランジンI2をナノ粒子化したものです。当事業年度では、核酸封入ナノ粒子を完成させ動物実験でその効果を検証しておりました。
2019年2月に新設した湘南研究所に関しては、上述のように複数の特許を出願するなど、目に見える成果が生まれました。また、湘南アイパークに同居する多くの企業と交流し、事業提携に関する協議も継続しております。研究員は在宅勤務対応を取ることは難しいですが、最大限の感染予防を講じた上で、更なる研究成果をあげるために日夜努力しております。
ノーベルファーマ株式会社との共同研究に関しては、二件の共同臨床試験を行いました(LT-5001)。このうち一件目に関しては、当事業年度において、目標症例数に達する前に中止しました。これは、予定したペースでは被験者のリクルートが進んでいないこと、さらに、新型コロナウイルス感染症拡大のため、今後も新規症例のリクルートが難しいことなどから、コストを抑えるために決定したものです。今後、臨床試験の結果を詳細に解析し、再度臨床試験を行う場合のプロトコール改善に役立てたいと考えています。一方、二件目に関しましても、新型コロナウイルス感染症拡大の影響等により、予定したペースでは被験者のリクルートが進んでおりません。そこで、本件につきましても、目標症例数に達する前に中止する方向で先方と協議しております。
「ライセンス活動と共同研究開発の推進」
ライセンス活動は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で海外のライセンス会議に出席できませんでしたが、メールでのやり取りや電話会議などでライセンス交渉を継続しています。特に、LT-4002に関しては、複数の企業と共同開発について協議を行いました。
当社はこれまで多くの公的研究機関と共同研究を行ってきましたが、当事業年度においても、新たに北海道大学遺伝子病態制御研究所、日本大学医学部、筑波大学医学部、学習院大学理学部等と共同研究契約を結び共同研究を開始しました。
これまで当社が牽引してきたDR研究は、最近多くのアカデミアが注目する分野となっています。そこで当社が独自に開発した既承認薬ライブラリをアカデミアに提供し共同でDR研究を行う事業を強化するため、有望な共同研究のアイデアに対して、既承認薬ライブラリだけでなく研究費も当社が提供するという新たな取り組みを行っております。当事業年度では多くの応募を頂き、複数の研究機関と契約を締結し共同研究を開始しました。また、新型コロナウイルス問題の解決に貢献するため、このウイルス関連の研究を行っている研究機関に既承認薬ライブラリを提供するプロジェクトも行っており、上記の筑波大学医学部との特許共同出願の成果に繋がっております。
一方、DRに対する製薬企業の関心は年々高まっており、当社代表取締役である水島徹は多くの製薬企業からの様々な相談を持ち掛けられております。そこで、これをコンサルビジネスとして発展させ、売上に寄与させたいと考えました。当事業年度では、あすか製薬株式会社より、DRに関するコンサルティング業務の依頼を受け、コンサルティング業務委託契約を締結することを決定しました(契約日:2021年4月7日)。具体的には、同社が有するDRに関するプロジェクトに関し、研究・知財・薬価・臨床・製造など、様々な観点から当社が助言を行います。当社は、本業務を真摯に実施すると共に、同様のコンサルティング業務を拡大して行き、売上の増加に繋げたいと考えています。またコンサルティングを通して製薬企業との信頼関係を深め、将来的なライセンス契約や共同研究開発契約に繋げられるよう努めて参ります。
一方、大手製薬企業は研究開発の効率化を目指し、研究開発の一部分を自社実施から外部委託に転換しております。例えば、DDSを含む製剤開発も外部委託化が進んでおります。当社としては、この動きを大きなチャンスと考えております。つまり、当社の持つDDSを含む製剤開発技術を活かし、大手製薬企業からの製剤開発受託事業が新しいビジネスになると考えました。これにより、当社の経営課題である売上の増加と、大手製薬企業との信頼関係の深化に役立てたいと考えています。当事業年度では、国内大手製薬企業から開発中新薬のDDS製剤開発を受託し、当社のDDS技術を活かした製剤を調製し提供しました(売上を計上)。当該製薬企業での試験では良好な結果が得られており、今後の展開が期待されます。また別の国内大手製薬企業とも契約を結び、開発中の新規物質をご提供頂き、製剤化への予備試験を実施しました。
当社は北京泰徳製薬からの配当金により経常利益は黒字基調ですが、営業利益は創業より赤字が続いております。営業利益の黒字化は新薬の上市を達成しなくてはなりませんが、現経営陣は、当面の売上の確保に最大限努めております。製薬企業からの受託研究は、当面の収入を増やすだけではなく、将来の利益の確保(ロイヤルティ)にも貢献すると考えています。なお、中国における薬価の引き下げ政策等により、中国の製薬企業の業績は悪化しております。北京泰徳製薬も例外ではなく、2019年の決算では、売上が約12%、純利益が約18%減少しました。また最近、2020年の売上が前年から約36%減少したとの報告を受けました。当社としましては、北京泰徳製薬の業績を少しでも向上させるために協力すると共に、配当金に頼らない経営基盤をできる限り早く確立できるように尽力しております。
「中国関連事業」
北京泰徳製薬は、当社が発明した医薬品を中国で開発・発売することにより、中国有数の製薬企業に成長しました。現経営陣は北京泰徳製薬との関係強化が当社の発展に寄与すると考えており、当事業年度においても包括的支援契約を延長し、PC-SODの開発や販売戦略上必要な日本企業との連携仲介や医薬品の提供などの支援活動に注力しました。また、両社の研究開発チームは定期的に情報交換しており、北京泰徳製薬のさらなる発展が当社の事業基盤・経営基盤をより強固にすると考え、支援事業を推進しております。なお、2021年度も包括的支援契約を継続することになりました。さらに、当事業年度においては、北京泰徳製薬との更なる提携強化を目的に、これまで交流してきた研究開発や事業開発部門に加え、生産部門、臨床部門、販売部門との交流を開始しました。今後、例えば国内製薬企業の委託生産を北京泰徳製薬が受託する、或いは国内製薬企業が持つ医薬品の中国での販売権を北京泰徳製薬が獲得するなどの仲介を当社が行い、当社の新しいビジネスにしたいと考えております。
さらに、北京泰徳製薬の親会社であるシノバイオとの連携を深めることが当社の企業価値の向上に繋がると考え、これまで当社と先方のCEOが定期的に交流して参りました。その中で、当社の技術・ノウハウ・人材・パイプラインを評価したシノバイオが、当社との資本業務提携を目的とした公開買付けを当事業年度に実施しました。そして、公開買付け終了後の2021年3月25日、シノバイオと当社は資本業務提携基本契約書を締結しました。本業務提携により当社は以下のようなシナジー効果を得られると考えています。
Ⅰ)ライセンスアウト成功による当社の収益拡大
シノバイオグループ企業に当社パイプラインをライセンスアウトすることによる、当社の収益拡大
Ⅱ)資金支援による当社の研究開発の加速や収益基盤の向上
研究開発の加速や他の製薬企業等への投資に充当する資金が必要となった場合に、シノバイオが資金支援を行い、当社単独の資金力では実行できなかった研究開発や投資案件の実行が可能となることによる、当社の研究開発の加速や収益基盤の向上
Ⅲ)新ビジネスによる当社のビジネス拡大
ⅰ)中国や東南アジアへの進出を目指す日本企業をシノバイオに紹介し、当社が紹介した日本企業又はシノバイオより、ロイヤリティや売上の一部を紹介報酬として受け取るビジネスの拡大
ⅱ)シノバイオが日本企業から医薬品を導入する際、及びシノバイオのパイプラインを日本企業へ導出する際の仲介を当社が行い、当社が紹介した日本企業又はシノバイオより、ロイヤリティや売上の一部を紹介報酬として受け取るビジネスの拡大
このように本業務提携は、当社の研究開発の加速や収益の多角化(北京泰徳製薬の配当以外の収入源の確保)に繋がると期待しています。
シノバイオによる公開買付けや資本業務提携は、業界に大きなインパクトを与えました。再上場へ向けた証券会社との契約だけでなく、銀行系や証券系などの投資会社が当社にコンタクトし、共同投資の提案を積極的にして頂けるようになりました。また、中国ビジネスに興味を持つ製薬企業からの問い合わせも増えております。当社としては、このチャンスを活かし、研究開発の加速や収益の多角化を達成し再上場への礎にしたいと考えております。

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