有価証券報告書-第76期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/17 14:57
【資料】
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【項目】
133項目
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、企業理念「Materials Innovation-マテリアルを通じて価値を創造し、人間社会(人・社会・環境)に貢献します。」を着実に実現しうる企業として、経営の効率化と透明性・健全性の維持により継続的に企業価値を創造し、全てのステークホルダーから信頼され、満足される魅力ある企業の実現を目指しております。創業から現在までに築き上げてきた良き企業文化を継承するとともに、時代や環境、価値観の変化に迅速に対応できるスピード感のある経営に努め、マテリアルを通じて価値を創造するイノベーション・カンパニーとして、全てのステークホルダーの皆様の信頼に応えてまいります。当社グループでは、好奇心・寛容さ・適応力に基づく文化を今後も発展させ、責任ある企業市民であるために、単に経営の知見だけではなく、企業としてのありたい姿に不可欠なコアバリュー(基本的価値観)を示してまいります。
(2)中長期的な会社の経営戦略、目標とする経営指標
<中長期的な会社の経営戦略>2020年3月期(2019年度)を最終年度とした中期経営計画「JSR20i9」の終了に伴い策定予定であった新中期経営計画につきましては、新型コロナウイルス感染の世界的な拡大を受け、当面の危機対応を優先させて発表を延期することとしておりましたが、先般、2025年3月期(2024年度)までの経営方針として発表いたしました。
今回の経営方針では、今後の社会の発展に重要であり、市場の成長が期待され、技術革新の要求が高くJSRグループの強みを発揮できる、デジタルソリューション事業とライフサイエンス事業をコア事業と定めました。2024年度の数値目標としましては、デジタルソリューション事業とライフサイエンス事業の拡大の結果、二事業で売上収益3,000億円以上、過去最高利益の更新、株主資本利益率(ROE)10%以上を目指します。また、各事業については投下資本利益率(ROIC)による投下資本リターンの管理を行い最大化を図っていきます。なお、石油化学系事業につきましては、中長期的観点での事業構造改革の必要性を認識しており、特に競争面で厳しい状況にあるエラストマー事業については収益改善策と事業構造改革に取り組みつつ、戦略的なアプローチの見直しを進めてきた結果、エラストマー事業が今後も成長し続けるためには、事業体制の抜本的な変革が必要であるとの結論に至り、5月11日に対象事業を子会社化し、ENEOSホールディングス傘下のENEOS株式会社にその株式を譲渡することを決定しました。
(3)経営環境について
2021年度も、新型コロナウイルス感染症の再拡大による国際情勢の変化や米国と中国の二大大国の対立が続くものの、世界の経済成長率が上方修正されるなど、事業環境の改善が見込まれています。主要国における追加支援策やワクチン普及の後押しを得て景気上昇が期待される一方、防疫の為の強力な経済活動抑制の導入リスクなどが加わり、先行きは不透明な状態が継続し、地政学的変動への対応が引き続き求められます。半導体市場につきましてはデジタルインフラの需要に支えられ、エッセンシャル事業として力強く成長し、ディスプレイの生産も成長が継続すると想定しております。また、ライフサイエンス分野も中長期的な観点で堅調な需要見通しに変わりはありません。世界の自動車生産台数は、半導体不足による生産への影響など不透明な環境も見込まれますが、今後も新型コロナウィルス感染拡大の影響からの回復基調が続くと想定しております。自動車タイヤ生産につきましては、一部自動車タイヤ工場の稼働停止や世界景気の低迷など、不透明な環境も予想されますが、自動車生産と同様に回復基調は継続すると想定しております。
このような事業環境の中、当社は、持続性と強靭(レジリエンス)性を重ね持った企業体とするために更なる事業構造及び経営体制の強化へ向け、成長事業である半導体材料事業、ライフサイエンス事業について積極的な研究開発および事業投資を実行してまいります。一方、石油化学系事業(エラストマー事業、合成樹脂事業)では踏み込んだ構造改革を継続いたします。製造原価の低減や適切な在庫管理に注力し、労働安全の維持、安定操業に努めます。
デジタルソリューション事業については、半導体材料事業は、従来通り最先端プロセス向けを中心に展開し、中でも5ナノメートル世代以降向けEUVフォトレジストにより注力し、リソグラフィ材料のグローバル市場でのシェアを維持・拡大に努めます。また、実装材料では、材料ポートフォリオを広げ、5G需要を確実に取り込むべく、販売拡大に努めます。洗浄剤につきましては、2020年度後半に商業生産を開始した米国の最先端半導体向け機能性洗浄剤工場を順調に稼働させ、市場シェアの向上を目指します。ディスプレイ材料事業は、顧客業界の変化に対応した構造改革を確実に実行し、引き続き液晶パネル市場の成長が見込まれる中国市場において、大型TV用液晶パネル向けに競争力のある配向膜、絶縁膜を中心に、販売の拡大を進めてまいります。エッジコンピューティング事業については、主にスマートフォンの小型カメラに使用されるNIRカットフィルターの更なる拡販などにより、事業拡大に努めます。
ライフサイエンス事業は、KBI、SelexisによるCDMO事業の新規受託拡大、Crown BioのCRO事業におけるパイプライン(先行契約)増加により、売上収益及び利益率の更なる向上を図ってまいります。KBIは2020年度に投資を決定した米国ノースカロライナ及びスイスジュネーブでの能力増強を活かして売上収益の向上に努めます。診断薬材料およびバイオプロセス材料のグローバルな採用拡大、医学生物学研究所の完全子会社化による診断薬事業の強化、また、JKiC(JSR・慶應義塾大学医学化学イノベーションセンター)の研究活動なども合わせ、当社グループ一体となって力強い事業拡大を進めてまいります。
エラストマー事業については、合成ゴムの国内ナンバーワン企業として、SSBR(溶液重合ブタジエン・スチレンゴム)をはじめとする高付加価値合成ゴムの分野を中心に、高い技術力を持ち、国際的な信頼を獲得しておりますが、グローバル競争が激化するなど、事業環境は厳しさを増しております。そのような環境下で、収益改善策と事業構造改革に取り組みつつ、戦略的なアプローチの見直しを進めてきた結果、エラストマー事業が今後も成長し続けるためには、事業体制の抜本的な変革が必要であるとの結論に至り、5月11日に対象事業を子会社化し、ENEOSホールディングス傘下のENEOS株式会社にその株式を譲渡することを決定しました。
合成樹脂事業については、自動車業界の生産性改革や高品質化に対応する、きしみ音対策材HUSHLLOYⓇ、めっき用材料PLATZONⓇといった特色のある差別化製品を特に海外市場において拡販することにより事業拡大に努めてまいります。
(4)対処すべき課題
<デジタルソリューション事業>デジタルソリューション事業は、半導体材料事業へのリソース投入を集中し、積極的な規模拡大を図ります。
半導体材料事業は、通信の高速化、データ通信・容量の増加などにより、半導体需要の増加が見込まれる中、先端リソグラフィ材料市場でのシェアを維持・拡大します。中でも、5nm世代以降に向けたEUVリソグラフィ材料の開発・販売に注力してまいります。また、先端半導体の製造に使用される実装材料・機能性洗浄剤・CMP材料といった周辺材料の販売拡大にも注力し、製品ポートフォリオを拡大することで市場成長を上回る事業成長を達成いたします。2020年度には、米国に最先端半導体向け機能性洗浄剤の工場が稼働開始し、初出荷に至りました。これにより、最先端の半導体製造プロセス用の機能性洗浄剤の供給体制を確立し、更なる半導体材料の事業拡大に努めます。
ディスプレイ材料事業は引き続き液晶パネル市場の堅調な成長が見込まれる中国市場向けの拡販を強化し、製品ポートフォリオの最適化を行い、大型液晶パネル向けに競争力のある配向膜、絶縁膜を中心に販売の拡大を進めていくとともに顧客業界の構造変化への対応を進めてまいります。同時に、高輝度で高性能なLCDパネル製造に貢献する低温で処理することが可能な材料、OLED材料などの成長領域での取り組みも進めます。
エッジコンピューティング事業については、主にスマートフォンの小型カメラに使用されるNIR(近赤外線)カットフィルターのさらなる拡販を行います。これにより、デジタルソリューション事業を世の中のデジタル化を支援するより幅広い事業としてまいります。
<ライフサイエンス事業>ライフサイエンス事業は短期から中期ではパイプライン(先行投資)の増加を通じた売り上げ成長の加速、将来に向けたグループシナジーの創出に注力していきます。KBI、SelexisによるCDMO事業(医薬品の開発・製造受託事業)の新規受託拡大に加え、Crown BioのCRO事業(医薬品の開発受託事業)の複数年受託契約の増加や、診断薬材料およびバイオプロセス材料のグローバルな採用拡大、㈱医学生物学研究所(MBL)における診断薬および特殊抗体開発事業の安定的な成長が見込まれます。2020年度には、KBIの米国と欧州での能増、Selexisの欧州での能増を決定しました。SelexisとKBIで進めているCDMOはプロジェクトの増加が今後の成長を牽引していきます。また、MBLの完全子会社化も実施しました。これにより、当社はMBLの研究開発・商業化活動を積極的かつ柔軟に支援することができるようになり、当社グループ内での協業を加速させ競争力を強化してまいります。
<次世代研究>慶應義塾大学医学部および大学病院との共同研究施設「JSR・慶應義塾大学医学化学イノベーションセンター」(JKiC)において、革新的な材料、製品および技術の開発に取り組んでおります。JKiCでは、医学的見地と素材開発の知見を融合させて、主に4つの領域(①精密医療、②幹細胞生物学と細胞医療、③微生物叢(マイクロバイオーム)、④先端医療機器において、実社会への実装を目指して研究・開発を進めております。慶應義塾大学が世界をリードするマイクロバイオーム分野における研究では、既に当社が研究結果の独占的実施権を取得するなど、進捗が見られます。
また、川崎市殿町地区にライフサイエンス分野を含む次世代研究を行う新研究所「JSR Bioscience and informatics R&D Center(略称:JSR BiRD)」を2021年度中に開所予定です。JSR BiRDではJKiCから生まれる研究成果を社会実装につなげる開発支援を行うだけではなく、先端デジタル技術を材料技術開発に広く応用するマテリアルズ・インフォマティクスを使った研究や、実験設備やオフィスを外部パートナーに広く開放してオープンイノベーションを実践することで、新規ビジネスの創出を促進・加速していきます。
当社では、デジタルトランスフォーメーションの取り組みを強化しています。デジタル技術をR&Dのみでなくビジネス全体に取り入れ、業界をリードするデジタル企業への変革を進めます。量子科学計算による高度なシミュレーション技術の開発や応用を含め、データを活用した革新的な材料開発や事業の創出により、顧客、従業員の体験を向上させ、ステークホルダーに価値を提供していきます。
(5)その他の対処すべき課題
▶持続性(サステナビリティ)と強靭化(レジリエンス)
当社グループは、企業理念に立脚して様々なステークホルダー(利害関係者)と良好な関係を築き、信頼され、世の中に必要とされるグローバル企業となることを目指しております。2020年6月には、CSR(企業の社会的責任)活動のみならず企業活動を通じた価値創造により、すべてのステークホルダーに貢献するサステナビリティ活動を推進する目的で、サステナビリティ推進会議を中核とする推進体制を発足させました。企業理念を礎に中期的な成長および企業価値の向上を目指す一方、先行きが不確実で激変する経営環境の中で、組織の持続性(サステナビリティ)と強靭性(レジリエンス)をテーマとして事業活動を推進し企業価値の向上に努めます。
▶ESG課題への取り組み
E(環境)
当社グループは、事業活動により顧客企業を通して、地球環境保全に貢献しています。また、2050年のGHG排出「実質ネットゼロ」※1を目指し、今後も積極的に挑戦していきます。2020年10月に賛同を表明したTCFD※2提言のシナリオ分析を活用して、気候変動がビジネスに与える影響を検討し、あらゆる局面に対応できるレジリエントな企業体制を構築します。
※1:最終的にCo₂の排出量をゼロにすること ※2:金融安定理事会(FSB)によって設立された気候関連財務情報開示タスクフォース。2017年6月、FSBは気候変動リスクが金融機関や企業、政府などにおよぼす影響を、財務報告において開示することを求める提言を公表した。
S(社会)
当社グループは、ダイバーシティ&インクルージョンを尊重し、すべての従業員の可能性を最大限に引き出すことに注力しています。今後、従業員エンゲージメント※3の高い社員を増やす取り組みを行い、従業員のエンゲージメント指標を策定する予定です。この取り組みを開始するにあたって、2020年度には初めてグループ全体の従業員エンゲージメント調査を実施しました。
※3従業員が企業理念や方針を理解し、企業を信頼して貢献意欲を持っている状態
G(コーポレート・ガバナンス)
<取締役会の概要>当社の取締役会は代表取締役CEOを含む5名の社内取締役と、経営執行および財務活動に精通した4名の独立社外取締役から構成されており、1名の常勤監査役と財務・会計・税務および会社法を含む法務の専門家2名の独立社外監査役が毎回出席しております。
グローバル化、IT化、デジタル化等の事業環境の急速な変化に対応すべく、メンバーの過半数を独立社外取締役で構成し、筆頭独立社外取締役が委員長を務める指名諮問委員会からの答申に基づき、取締役会のさらなる多様化を図っております。2020年度は、社内からの女性取締役を選任いたしました。
<当社グループの経営体制の継承と評価(指名諮問委員会の取り組み)>指名諮問委員会は、筆頭独立社外取締役を委員長とし、独立社外取締役4名(委員長含む)、代表取締役CEOおよび代表取締役社長兼COOの6名で構成され、CEOおよび社長の選解任、取締役会の構成及び選任や当社グループの経営体制、重要な経営ポストの継承計画について客観的かつ長期的に検討を行っております。
2020年度についても、CEOおよび社長から同委員会に対する年間経営活動報告が行われ、年間経営活動に対する評価を行いました。また、今後の経営層の後継者計画や取締役会の構成及び選任等に関する検討を行いました。
<役員報酬体系の合理性と透明性の確保(報酬諮問委員会の取り組み)>報酬諮問委員会は、筆頭独立社外取締役を委員長とし、独立社外取締役4名(委員長含む)、代表取締役CEOおよび代表取締役社長兼COOの6名で構成され、外部機関からデータおよび助言を受けて、毎年度の業績などを考慮しながら公平、透明性、かつ競争力を持った報酬制度および報酬額、役員報酬の基本方針の取締役会への答申を行っております。
2020年度は、例年通り、ベンチマークデータに基づき報酬制度および報酬額、または役員報酬の基本方針の妥当性の確認を行うとともに、新たな業績連動型の株式報酬の導入などの報酬制度の改定に取り組みました。
<当社取締役会の実効性評価の結果概要について>当社取締役会では、毎年、取締役会の実効性評価を実施し、実効性の向上を通じて、当社の企業価値の最大化を図っております。2020年度の実効性評価の結果、当社の取締役会は有効に機能しているとの結論を得ました。今後も実効性評価を実施してまいります。
<政策保有株式の縮減>個別の政策保有株式につき、保有目的、リスク・リターン、資本コスト等を考慮し、取締役会において政策保有株式の保有状況および保有方針を確認し、従来の方針通りに縮減を行い、最適化を進めております。
<危機管理の取り組み>新型コロナウイルス対応において、当社グループは世界の基幹産業を支える素材産業として、日本、アジアおよび欧米の当社グループの主要製造・研究・開発拠点の稼働を維持するために行動規範の制定、保護具の供給および着用の徹底、全世界の従業員との情報共有、各拠点での在宅勤務環境の整備など安全に企業活動ができるよう、自社の経済活動の継続に努めております。今後とも世界各拠点の文化の違いや独自性を尊重しつつ、情報の一元管理を行い適切なアクションに繋げることで、危機管理および事業継続に努めてまいります。
以上のような課題に対して確実に取り組み、CEOおよび社長のリーダーシップの下、グローバルに遅滞なく遂行してまいります。
なお、業績見通し等の将来に関する記述は、当社が現在入手している情報及び合理的であると判断する一定の前提に基づいており、その達成を当社として約束する趣旨のものではありません。また、実際の業績等は様々な要因により大きく異なる可能性があります。

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