有価証券報告書-第79期(2023/04/01-2024/03/31)
対処すべき課題
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、企業理念「Materials Innovation-マテリアルを通じて価値を創造し、人間社会(人・社会・環境)に貢献します。」を着実に実現しうる企業として、経営の効率化と透明性・健全性の維持により継続的に企業価値を創造し、全てのステークホルダーから信頼され、満足される魅力ある企業の実現を目指しております。創業から現在までに築き上げてきた良き企業文化を継承するとともに、時代や環境、価値観の変化に迅速に対応できるスピード感のある経営に努め、マテリアルを通じて価値を創造するイノベーション・カンパニーとして、全てのステークホルダーの皆様の信頼に応えてまいります。当社グループでは、好奇心・寛容さ・適応力に基づく文化を今後も発展させ、責任ある企業市民であるために、単に経営の知見だけではなく、企業としてのありたい姿に不可欠なコアバリュー(基本的価値観)を示してまいります。
(2)中長期的な会社の経営戦略、目標とする経営指標
<中長期的な会社の経営戦略>経営方針では、持続的(Sustainable)成長を目指しすべてのステークホルダーに価値を創造すること及びあらゆる環境変化に適応する強靭な(Resilient)組織を作ることをVisionとして掲げております。
当社グループの強みは技術にあり、技術により新たな事業を生み出し、顧客や社会の課題を解決し、より社会を豊かにしていくことが当社グループの存在価値であります。
2024年度を最終年度とした経営方針では「中長期的なレジリエンス(強靭性)とサステナビリティ(持続可能性)を備えた事業構造・経営体制への転換」を最重要事項とし、これまでに培ってきた技術によって社会課題を解決していくため、イノベーションとの親和性が高い半導体材料事業を中心としたデジタルソリューション事業、ライフサイエンス事業をコア事業として持続的な成長を実現し、中長期的な企業価値の向上を達成してまいります。
(3)経営環境について
2025年3月期連結会計年度も、ウクライナ情勢の緊迫化などの地政学的変動、米中間のデカップリング(分断)、グローバル各国での物価上昇の広がりによる需要抑制、各国の金利政策を受けた為替 影響など不透明な状況が続くことが見込まれています。
当社の対面市場である半導体市場につきましてはデジタルインフラの需要に支えられ、回復を見込んでいます。また、ライフサイエンス事業も中長期的な観点で堅調な需要見通しに変わりはありません。合成樹脂事業の主要対面市場である世界の自動車生産台数は前年並みを見込んでおります。
このような事業環境の中、当社は、レジリエンスとサステナビリティを重ね持った企業体となるために更なる事業構造及び経営体制の強化へ向け、成長事業である半導体材料事業、ライフサイエンス事業について積極的な研究開発および事業投資を今後も実行してまいります。
(利益配分に関する基本方針および当期・次期の配当)
当社は、自己株買いも含めた総還元性向で50%程度を維持する方針としておりましたが、2023年
6月26日の取締役会において、JICC-02 株式会社による当社株式等に対する公開買付け(2024年3
月19日開始)に関わる賛同の意見表明および応募推奨を決議し、JICC-02 株式会社による当社の普通株式、新株予約権及び米国預託証券に対する公開買付けが行われる予定であることを踏まえ、2023年4月27日付けで公表した2024年3月期の配当予想を修正し、2023年9月30日(第2四半期末)を基準日とする剰余金の配当及び2024年3月31日(期末)を基準日とする剰余金の配当を行わないことを決議いたしました。
(4)対処すべき課題
<デジタルソリューション事業>デジタルソリューション事業については、半導体材料事業は、従来通り最先端プロセス向けを中心に、中でも3ナノメートル世代以降向けEUVフォトレジストにより注力し、リソグラフィ材料のグローバル市場でのシェアの維持拡大に努めます。また、材料ポートフォリオを広げ、半導体チップの微細化や3次元実装化、5G需要を確実に取り込むべく、販売拡大に努めます。需要環境は、今年度を底に2024年度は徐々に回復していくことが見込まれております。今後も事業の選択と集中をより明確化し、2024年度以降の本格回復に向けEUVフォトレジストへの積極投資、及びコスト構造の見直しや効率化を推進し、強靭な事業体制を築いてまいります。ディスプレイ材料事業は、顧客業界の変化に対応した構造改革を確実に実行し、引き続き液晶パネル市場の成長が見込まれる中国市場において、大型TV用液晶パネル向けに競争力のある配向膜、絶縁膜を中心に、販売の拡大を進めてまいります。また、低温硬化絶縁膜といったOLED(Organic Light Emitting Diode)材料や光FFS(Fringe Field Switching)配向膜を中心にモバイル用途への拡販も進めてまいります。エッジコンピューティング事業については、主にスマートフォンの小型カメラに使用されるNIRカットフィルターの更なる拡販などにより、事業拡大に努めます。
<ライフサイエンス事業>ライフサイエンス事業は、KBIによるCDMO事業の新規受託拡大、パイプライン(先行契約)増加などの顧客基盤の拡大と業務の効率化、Crown BioscienceのCRO事業における競争力あるサービスの拡大を中心として、売上収益及び利益率の更なる向上を図ってまいります。KBIにおいては、米国ノースカロライナ新工場をフル稼働し、生産キャパシティを拡大させ、売上収益の向上に努めます。また、収益性強化に向けた継続的な取り組みとして固定費及びオペレーションの最適化、販売政策の強化などの構造改革を実行しマージンの改善に注力してまいります。Crown Bioscienceにおいては2023年4月に買収を完了したIndivumed GmbH & Co.KGのIndivuServ事業部門とのシナジーの発現、サービスの拡大を進めていきます。診断薬材料およびバイオプロセス材料のグローバルな採用拡大、MBLの診断薬事業の強化、また、JSR Bioscience and informatics R&D center (JSR BiRD)やJSR・慶應義塾大学医学化学イノベーションセンター(JKiC)などの研究活動なども合わせ、当社グループ一体となって力強い事業拡大を進めてまいります。
<合成樹脂事業>合成樹脂事業では、自動車業界の生産性改革や高品質化に対応するきしみ音対策材HUSHLLOYⓇ、めっき用材料PLATZONⓇといった特色のある差別化製品をグローバル市場において拡販するとともに、原料価格高騰に適切に対応し、利益の確保に努めてまいります。
<次世代研究>RDテクノロジー・デジタル変革センターを中心にコンピュータ技術、データサイエンスの応用による研究開発業務全般の加速、新規事業創出に向けた高度な機能・特性を有する革新的材料の開発研究、JSR・東京大学協創拠点CURIEにおけるJSR製品開発の理論的な理解の探索を進めております。また、国内外の大学や研究機関との共同研究などのオープンイノベーションを推進しており、ライフサイエンス分野のJKiCでは、医学的見地と素材開発の知見を融合させて、様々な研究領域に取り組んでおります。更に、JSR BiRDでは次世代医療およびマテリアルズ・インフォマティクスを軸とする新規事業創出にむけたオープンイノベーション拠点として、安全安心で豊かなデジタル社会、低環境負荷で持続可能な社会に貢献していくことを目指し、未来に向けた価値の創出に取り組んでおります。
(5)その他の対処すべき課題
▶持続性(サステナビリティ)と強靭化(レジリエンス)
当社グループは、企業理念に立脚して様々なステークホルダー(利害関係者)と良好な関係を築き、信頼され、世の中に必要とされるグローバル企業となることを目指しております。企業理念を礎に、先行きが不確実で激変する経営環境の中で、組織の持続性(サステナビリティ)と強靭化(レジリエンス)を中期経営方針の中核として事業活動を推進し、中長期的な成長及び企業価値の向上に努めます。
▶ESG課題への取り組み
E(環境)
当社グループは、事業活動により顧客企業を通して、地球環境保全に貢献しております。引き続き、低温焼成ディスプレイ材料の提供、配向膜リサイクル事業やプラスチック部材のクローズドリサイクルの顧客との協業、などにより、ライフサイクル全体での環境負荷低減に貢献しています。また、GHG排出量に関しては、2050年度に実質ネットゼロとすることを目標に掲げており、そのマイルストーンとして2030年度に30%削減を目指して、今後も目標達成に向けて積極的に取り組むと共に、一層の排出量削減の検討を進めてまいります。
S(社会)
当社グループは、持続的成長を目指しすべてのステークホルダーにとって価値を創造し、あらゆる環境変化に適応できる強靭な組織を築き上げるため、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンを尊重し、すべての従業員個々の可能性を最大限に引き出すことに注力しております。従業員ひとりひとりが健康でエンゲージメントの高い状態を維持できるよう、当社グループでの経験・体験を改善する取り組みを支援するために、継続的にグループ全体の従業員エンゲージメント調査を実施しております。調査結果を慎重に検証し、コミュニケーションを通じた繋がりをエンゲージメント向上の重点項目として、経営層と従業員層の双方向の対話を活性化させるプログラムを策定し実行しています。また企業存続の前提は従業員の健康であると再定義し、従業員個々の健康ニーズをサポートする「JSR Health Promotion」活動の強化に取り組んでいます。このような取り組みを通じて、競争力強化と企業価値向上を目指してまいります。
G(コーポレート・ガバナンス)
<取締役会の概要>当社の取締役会は代表取締役CEOを含む5名の社内取締役と、経営執行および財務活動に精通した4名の独立社外取締役から構成されており、1名の常勤監査役と財務・会計・税務および会社法を含む法務の専門家2名の独立社外監査役が毎回出席しております。
事業環境の急速な変化に対応すべく、メンバーの過半数を独立社外取締役で構成し、独立社外取締役が委員長を務める指名諮問委員会からの答申に基づき、取締役会のさらなる多様性の拡充を進めました。
<当社グループの経営体制の継承と評価(指名諮問委員会の取り組み)>指名諮問委員会は、独立社外取締役を委員長とし、独立社外取締役4名(委員長含む)、代表取締役CEO兼社長の1名で構成され、CEOおよび社長の選解任、取締役会の構成及び選任や当社グループの経営体制、重要な経営ポストの継承計画について客観的かつ長期的に検討を行っております。
2023年度においても、CEO兼社長は同委員会に対して年間経営活動報告を行い、同委員会で評価が行われました。
また、今後の経営層の後継者計画や取締役会の構成及び選任等に関する検討を行いました。
<役員報酬体系の公平性と透明性の確保(報酬諮問委員会の取り組み)>報酬諮問委員会は、独立社外取締役を委員長とし、独立社外取締役4名(委員長含む)、代表取締役CEO兼社長および代表取締役常務執行役員の6名で構成され、外部機関からデータおよび助言を受けて、毎年度の業績などを考慮しながら公平、透明性、かつ競争力を持った報酬制度および報酬額、役員報酬の基本方針の取締役会への答申を行っております。
2023年度は、例年通り、ベンチマークデータに基づき報酬制度および報酬額、または役員報酬の基本方針の妥当性の確認を行いました。
<政策保有株式の縮減>個別の政策保有株式につき、保有目的、リスク・リターン、資本コスト等を考慮し、取締役会において政策保有株式の保有状況および保有方針を確認し、縮減を行っております。
<リスクに対する取り組み>当社グループは「JSR グループ リスク管理規程」に基づき、顕在化あるいは潜在化している重大なリスクを特定し、当該リスクへの対応方針の策定およびリスクマネジメント計画の立案・実行により、リスクを包括的に管理しています。また、本規程では平時におけるBCM(事業継続マネジメント)を統括する組織や運用体制、有事におけるBCP(事業継続計画)発動と解除の基準・BCP 発動時の組織体制などについて定めております。また、大地震等による大規模災害の発生に備えた危機管理訓練や、昨今のサイバー攻撃リスクの高まりを受けグループ内注意喚起や対応演習などの施策も実施いたしました。
今後とも国際情勢や各国・地域の規制・政策に関するリスクの把握に努めるとともに世界各拠点の文化の違いや独自性を尊重しつつ、情報の一元管理を行い適時・適切なアクションに繋げることで、危機管理および事業継続に努めてまいります。
以上のような課題に対して確実に取り組み、CEO兼社長のリーダーシップの下、グローバルに遅滞なく遂行してまいります。
なお、業績見通し等の将来に関する記述は、当社が現在入手している情報及び合理的であると判断する一定の前提に基づいており、その達成を当社として約束する趣旨のものではありません。また、実際の業績等は様々な要因により大きく異なる可能性があります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、企業理念「Materials Innovation-マテリアルを通じて価値を創造し、人間社会(人・社会・環境)に貢献します。」を着実に実現しうる企業として、経営の効率化と透明性・健全性の維持により継続的に企業価値を創造し、全てのステークホルダーから信頼され、満足される魅力ある企業の実現を目指しております。創業から現在までに築き上げてきた良き企業文化を継承するとともに、時代や環境、価値観の変化に迅速に対応できるスピード感のある経営に努め、マテリアルを通じて価値を創造するイノベーション・カンパニーとして、全てのステークホルダーの皆様の信頼に応えてまいります。当社グループでは、好奇心・寛容さ・適応力に基づく文化を今後も発展させ、責任ある企業市民であるために、単に経営の知見だけではなく、企業としてのありたい姿に不可欠なコアバリュー(基本的価値観)を示してまいります。
(2)中長期的な会社の経営戦略、目標とする経営指標
<中長期的な会社の経営戦略>経営方針では、持続的(Sustainable)成長を目指しすべてのステークホルダーに価値を創造すること及びあらゆる環境変化に適応する強靭な(Resilient)組織を作ることをVisionとして掲げております。
当社グループの強みは技術にあり、技術により新たな事業を生み出し、顧客や社会の課題を解決し、より社会を豊かにしていくことが当社グループの存在価値であります。
2024年度を最終年度とした経営方針では「中長期的なレジリエンス(強靭性)とサステナビリティ(持続可能性)を備えた事業構造・経営体制への転換」を最重要事項とし、これまでに培ってきた技術によって社会課題を解決していくため、イノベーションとの親和性が高い半導体材料事業を中心としたデジタルソリューション事業、ライフサイエンス事業をコア事業として持続的な成長を実現し、中長期的な企業価値の向上を達成してまいります。
(3)経営環境について
2025年3月期連結会計年度も、ウクライナ情勢の緊迫化などの地政学的変動、米中間のデカップリング(分断)、グローバル各国での物価上昇の広がりによる需要抑制、各国の金利政策を受けた為替 影響など不透明な状況が続くことが見込まれています。
当社の対面市場である半導体市場につきましてはデジタルインフラの需要に支えられ、回復を見込んでいます。また、ライフサイエンス事業も中長期的な観点で堅調な需要見通しに変わりはありません。合成樹脂事業の主要対面市場である世界の自動車生産台数は前年並みを見込んでおります。
このような事業環境の中、当社は、レジリエンスとサステナビリティを重ね持った企業体となるために更なる事業構造及び経営体制の強化へ向け、成長事業である半導体材料事業、ライフサイエンス事業について積極的な研究開発および事業投資を今後も実行してまいります。
(利益配分に関する基本方針および当期・次期の配当)
当社は、自己株買いも含めた総還元性向で50%程度を維持する方針としておりましたが、2023年
6月26日の取締役会において、JICC-02 株式会社による当社株式等に対する公開買付け(2024年3
月19日開始)に関わる賛同の意見表明および応募推奨を決議し、JICC-02 株式会社による当社の普通株式、新株予約権及び米国預託証券に対する公開買付けが行われる予定であることを踏まえ、2023年4月27日付けで公表した2024年3月期の配当予想を修正し、2023年9月30日(第2四半期末)を基準日とする剰余金の配当及び2024年3月31日(期末)を基準日とする剰余金の配当を行わないことを決議いたしました。
(4)対処すべき課題
<デジタルソリューション事業>デジタルソリューション事業については、半導体材料事業は、従来通り最先端プロセス向けを中心に、中でも3ナノメートル世代以降向けEUVフォトレジストにより注力し、リソグラフィ材料のグローバル市場でのシェアの維持拡大に努めます。また、材料ポートフォリオを広げ、半導体チップの微細化や3次元実装化、5G需要を確実に取り込むべく、販売拡大に努めます。需要環境は、今年度を底に2024年度は徐々に回復していくことが見込まれております。今後も事業の選択と集中をより明確化し、2024年度以降の本格回復に向けEUVフォトレジストへの積極投資、及びコスト構造の見直しや効率化を推進し、強靭な事業体制を築いてまいります。ディスプレイ材料事業は、顧客業界の変化に対応した構造改革を確実に実行し、引き続き液晶パネル市場の成長が見込まれる中国市場において、大型TV用液晶パネル向けに競争力のある配向膜、絶縁膜を中心に、販売の拡大を進めてまいります。また、低温硬化絶縁膜といったOLED(Organic Light Emitting Diode)材料や光FFS(Fringe Field Switching)配向膜を中心にモバイル用途への拡販も進めてまいります。エッジコンピューティング事業については、主にスマートフォンの小型カメラに使用されるNIRカットフィルターの更なる拡販などにより、事業拡大に努めます。
<ライフサイエンス事業>ライフサイエンス事業は、KBIによるCDMO事業の新規受託拡大、パイプライン(先行契約)増加などの顧客基盤の拡大と業務の効率化、Crown BioscienceのCRO事業における競争力あるサービスの拡大を中心として、売上収益及び利益率の更なる向上を図ってまいります。KBIにおいては、米国ノースカロライナ新工場をフル稼働し、生産キャパシティを拡大させ、売上収益の向上に努めます。また、収益性強化に向けた継続的な取り組みとして固定費及びオペレーションの最適化、販売政策の強化などの構造改革を実行しマージンの改善に注力してまいります。Crown Bioscienceにおいては2023年4月に買収を完了したIndivumed GmbH & Co.KGのIndivuServ事業部門とのシナジーの発現、サービスの拡大を進めていきます。診断薬材料およびバイオプロセス材料のグローバルな採用拡大、MBLの診断薬事業の強化、また、JSR Bioscience and informatics R&D center (JSR BiRD)やJSR・慶應義塾大学医学化学イノベーションセンター(JKiC)などの研究活動なども合わせ、当社グループ一体となって力強い事業拡大を進めてまいります。
<合成樹脂事業>合成樹脂事業では、自動車業界の生産性改革や高品質化に対応するきしみ音対策材HUSHLLOYⓇ、めっき用材料PLATZONⓇといった特色のある差別化製品をグローバル市場において拡販するとともに、原料価格高騰に適切に対応し、利益の確保に努めてまいります。
<次世代研究>RDテクノロジー・デジタル変革センターを中心にコンピュータ技術、データサイエンスの応用による研究開発業務全般の加速、新規事業創出に向けた高度な機能・特性を有する革新的材料の開発研究、JSR・東京大学協創拠点CURIEにおけるJSR製品開発の理論的な理解の探索を進めております。また、国内外の大学や研究機関との共同研究などのオープンイノベーションを推進しており、ライフサイエンス分野のJKiCでは、医学的見地と素材開発の知見を融合させて、様々な研究領域に取り組んでおります。更に、JSR BiRDでは次世代医療およびマテリアルズ・インフォマティクスを軸とする新規事業創出にむけたオープンイノベーション拠点として、安全安心で豊かなデジタル社会、低環境負荷で持続可能な社会に貢献していくことを目指し、未来に向けた価値の創出に取り組んでおります。
(5)その他の対処すべき課題
▶持続性(サステナビリティ)と強靭化(レジリエンス)
当社グループは、企業理念に立脚して様々なステークホルダー(利害関係者)と良好な関係を築き、信頼され、世の中に必要とされるグローバル企業となることを目指しております。企業理念を礎に、先行きが不確実で激変する経営環境の中で、組織の持続性(サステナビリティ)と強靭化(レジリエンス)を中期経営方針の中核として事業活動を推進し、中長期的な成長及び企業価値の向上に努めます。
▶ESG課題への取り組み
E(環境)
当社グループは、事業活動により顧客企業を通して、地球環境保全に貢献しております。引き続き、低温焼成ディスプレイ材料の提供、配向膜リサイクル事業やプラスチック部材のクローズドリサイクルの顧客との協業、などにより、ライフサイクル全体での環境負荷低減に貢献しています。また、GHG排出量に関しては、2050年度に実質ネットゼロとすることを目標に掲げており、そのマイルストーンとして2030年度に30%削減を目指して、今後も目標達成に向けて積極的に取り組むと共に、一層の排出量削減の検討を進めてまいります。
S(社会)
当社グループは、持続的成長を目指しすべてのステークホルダーにとって価値を創造し、あらゆる環境変化に適応できる強靭な組織を築き上げるため、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンを尊重し、すべての従業員個々の可能性を最大限に引き出すことに注力しております。従業員ひとりひとりが健康でエンゲージメントの高い状態を維持できるよう、当社グループでの経験・体験を改善する取り組みを支援するために、継続的にグループ全体の従業員エンゲージメント調査を実施しております。調査結果を慎重に検証し、コミュニケーションを通じた繋がりをエンゲージメント向上の重点項目として、経営層と従業員層の双方向の対話を活性化させるプログラムを策定し実行しています。また企業存続の前提は従業員の健康であると再定義し、従業員個々の健康ニーズをサポートする「JSR Health Promotion」活動の強化に取り組んでいます。このような取り組みを通じて、競争力強化と企業価値向上を目指してまいります。
G(コーポレート・ガバナンス)
<取締役会の概要>当社の取締役会は代表取締役CEOを含む5名の社内取締役と、経営執行および財務活動に精通した4名の独立社外取締役から構成されており、1名の常勤監査役と財務・会計・税務および会社法を含む法務の専門家2名の独立社外監査役が毎回出席しております。
事業環境の急速な変化に対応すべく、メンバーの過半数を独立社外取締役で構成し、独立社外取締役が委員長を務める指名諮問委員会からの答申に基づき、取締役会のさらなる多様性の拡充を進めました。
<当社グループの経営体制の継承と評価(指名諮問委員会の取り組み)>指名諮問委員会は、独立社外取締役を委員長とし、独立社外取締役4名(委員長含む)、代表取締役CEO兼社長の1名で構成され、CEOおよび社長の選解任、取締役会の構成及び選任や当社グループの経営体制、重要な経営ポストの継承計画について客観的かつ長期的に検討を行っております。
2023年度においても、CEO兼社長は同委員会に対して年間経営活動報告を行い、同委員会で評価が行われました。
また、今後の経営層の後継者計画や取締役会の構成及び選任等に関する検討を行いました。
<役員報酬体系の公平性と透明性の確保(報酬諮問委員会の取り組み)>報酬諮問委員会は、独立社外取締役を委員長とし、独立社外取締役4名(委員長含む)、代表取締役CEO兼社長および代表取締役常務執行役員の6名で構成され、外部機関からデータおよび助言を受けて、毎年度の業績などを考慮しながら公平、透明性、かつ競争力を持った報酬制度および報酬額、役員報酬の基本方針の取締役会への答申を行っております。
2023年度は、例年通り、ベンチマークデータに基づき報酬制度および報酬額、または役員報酬の基本方針の妥当性の確認を行いました。
<政策保有株式の縮減>個別の政策保有株式につき、保有目的、リスク・リターン、資本コスト等を考慮し、取締役会において政策保有株式の保有状況および保有方針を確認し、縮減を行っております。
<リスクに対する取り組み>当社グループは「JSR グループ リスク管理規程」に基づき、顕在化あるいは潜在化している重大なリスクを特定し、当該リスクへの対応方針の策定およびリスクマネジメント計画の立案・実行により、リスクを包括的に管理しています。また、本規程では平時におけるBCM(事業継続マネジメント)を統括する組織や運用体制、有事におけるBCP(事業継続計画)発動と解除の基準・BCP 発動時の組織体制などについて定めております。また、大地震等による大規模災害の発生に備えた危機管理訓練や、昨今のサイバー攻撃リスクの高まりを受けグループ内注意喚起や対応演習などの施策も実施いたしました。
今後とも国際情勢や各国・地域の規制・政策に関するリスクの把握に努めるとともに世界各拠点の文化の違いや独自性を尊重しつつ、情報の一元管理を行い適時・適切なアクションに繋げることで、危機管理および事業継続に努めてまいります。
以上のような課題に対して確実に取り組み、CEO兼社長のリーダーシップの下、グローバルに遅滞なく遂行してまいります。
なお、業績見通し等の将来に関する記述は、当社が現在入手している情報及び合理的であると判断する一定の前提に基づいており、その達成を当社として約束する趣旨のものではありません。また、実際の業績等は様々な要因により大きく異なる可能性があります。