有価証券届出書(新規公開時)
事業内容
当社グループは、半導体・情報通信分野に欠かせない銅やレアメタルを原料とする先端素材の開発・製造・販売を主な内容としてグローバルな事業活動を行っており、半導体用スパッタリングターゲットや圧延銅箔を主力製品としております。これらに加えて、銅やレアメタルの資源開発や、製錬・リサイクル事業を手掛けており、上流から下流までをつなぐ強固なサプライチェーンを有することにより、安定的に先端素材をマーケットに供給し、持続可能な経済・社会の発展に貢献しております。
当社グループは、半導体材料セグメント、情報通信材料セグメント、基礎材料セグメントの3つの報告セグメントにて構成されております。成長戦略のコアである半導体材料セグメントと情報通信材料セグメントをフォーカス事業と位置づけ、先端素材分野での技術の差別化や市場創造を通じて、市場成長以上の利益成長を目指しております。一方、基礎材料セグメントをベース事業と位置づけ、銅・レアメタルの安定供給を通じてフォーカス事業を支える役割を担っております。各報告セグメントの主要製品、主要会社は以下のとおりです。
上記に加え、技術本部 結晶材料事業推進部にて化合物半導体や結晶材料を取り扱っております。
以下の事業区分は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記7.セグメント情報」に掲げるセグメントの区分と同一であり、各事業を構成する主要な関係会社の状況については、「第1 企業の概況 4 関係会社の状況」に記載しております。
(1) 半導体材料セグメント
(薄膜材料事業部)
高純度化や組成・組織制御などの当社のコア技術を駆使し、半導体や磁性材料向けのスパッタリングターゲットをはじめ、各種高機能デバイス、最先端IT機器、医療機器、電気自動車に用いられる製品をグローバルに展開しております。中でも、ロジックやメモリに用いられる半導体用スパッタリングターゲットが主力製品であり、市場規模1,462億円のマーケットにおいて世界シェアは64%(注1)です。当社は様々な素材の半導体用スパッタリングターゲットを取り扱っており、半導体の主要配線層に用いられる銅や銅合金、そのバリア層に用いられるタンタルに加えて、半導体の回路形成やトランジスタ部分等に用いられるチタン、コバルト及びタングステンの製品で世界シェアNo.1です(注2)。

半導体はシリコンウエハ上に数百回以上にわたり回路を形成して製造されますが、半導体用スパッタリングターゲットは回路形成に必要となる素材の層をつくる工程(成膜工程)の材料として用いられます。成膜に当たっては、上図のように真空状態の装置内でスパッタリングターゲットにアルゴンイオンを衝突させ、放出したターゲット原子を基板(シリコンウエハ等)上に付着させることによって薄膜を形成します。半導体が目的とする機能を発揮するためには様々な種類の高純度素材による回路形成が必要となりますが、当社の強みである高純度化技術や、多種多様な元素・合金を取り扱う技術により、様々な材料ニーズを満たしたスパッタリングターゲットの製造が可能です。
① 半導体用スパッタリングターゲット製造における当社のコア技術
当社の主力製品である、半導体用高純度銅スパッタリングターゲットの製造プロセスの概略図を以下に示します。

電解精製にて製造された高純度の電気銅を溶解してインゴットにし、そのインゴットを適切な幅に切断したのち、鍛造・圧延を施して必要な直径を持った円盤状の板(ターゲット材)に加工します。その後、熱処理によって結晶組織を均一化したターゲット材を、スパッタリング装置へ固定する役割を果たすバッキングプレートと接合(ボンディング)し、顧客から求められる特性に応じて表面の粗化から鏡面仕上げ等の加工を行い、品質や機能の分析評価を経て製品化されます。この一連の加工の中で、以下に記載する当社の複数のコア技術が活かされており、多数の金属品種において高品質な製品の安定的な供給を実現しております。
・高純度化技術
電解精製工程において、創業以来培ってきた高純度化技術により9N(99.9999999%)の銅の製造を実現しております。当技術により高純度銅スパッタリングターゲットに要求される6Nの銅を安定的に生産しております。
・組成・組織制御技術
ターゲット材の結晶組織がスパッタリングに適した大きさや向きとなるように制御・管理しております。これにより、成膜時の組成・組織が均一となり半導体の欠陥を引き起こす不純物であるパーティクル(発塵)の発生を抑えることに寄与しております。
・表面制御技術
バッキングプレートとターゲット材との接合状態が不均一な場合、スパッタリング時にターゲット材の表面温度が不均一になり様々な障害が生じます。そこで、ろう材による接合や異種材料間の拡散接合など、それぞれの材料に適した技術により、均一で強固な接合を実現しています。また、異種材料接合技術の応用により、銅箔と樹脂の複合材など、新しい材料の開発を進めています。
また、スパッタリングターゲットなどの材料は、その組成や純度だけでなく、表面状態も顧客のプロセスにおける製造効率に影響します。このため、出荷前の最終工程において、エッチングによる表面の粗化から鏡面仕上げまで、求められる特性に応じた最終加工を行っています。
・分析評価技術
当社で製造したスパッタリングターゲットは、材料として顧客のスパッタリング装置に組み込まれて使用されます。当社は自前のスパッタリング装置を所有しており、顧客が使用する条件下で評価を行うことによって最終形態で期待される機能や特性の実現、性能改善を図っております。
② 半導体製造装置メーカーとの強固な関係及び半導体メーカーとの信頼関係
当社は半導体製造装置メーカーから受ける素材提案を通じて品質技術情報を獲得し、その情報を基に半導体製造装置メーカーに対して材料提案や先行開発を継続して実施してきました。長年にわたるこれらの活動の結果、当社製品の多くが半導体製造装置メーカーから標準材料として指定されており、それにより当半導体製造装置メーカーの製造装置を使用する半導体メーカーからの安定的な受注獲得につながっていると考えております。
事実として、当社は大手半導体メーカーと長年にわたり取引を継続してきた実績を有しております。2023年の生産能力シェア(注3)において、半導体IDM企業のシェア上位10社のうち8社、半導体ファウンドリー企業のシェア上位10社のうち8社と20年以上の取引があります。加えて、高品質な製品の安定的供給が顧客から高く評価されており、当社顧客であるIntel社が設定しているEPIC Distinguished Supplier Award(注4)を2021年から2024年まで4年連続で受賞しているほか、TSMC社が設定しているExcellent Performance Awardを2024年に受賞しております。
③ 半導体メーカー拠点との地理的優位性を有する生産体制
当社は、半導体の世界的生産地である米国、台湾、韓国において、スパッタリングターゲット製造の下工程(注5)である機械加工拠点を有し、一定の在庫を保有することで、安定的かつ素早い製品供給体制を構築しております。なお、2024年3月期の当社の半導体用スパッタリングターゲットの販売比率は、台湾向けが約38%、韓国向けが約15%、米国向けが約12%、日本向けが約10%、中国向けが約10%、その他地域向けが約15%となっております。
また、米国・台湾においては技術サービス拠点としての役割も担い、顧客への迅速な品質対応も行っております。当社の高い技術レベルと各拠点での速やかな技術対応を組み合わせることにより、高い顧客満足度を実現しております。
注1.当該市場規模及び世界シェアは、富士経済「2024年 半導体材料市場の現状と将来展望」(2023年実績、アルミニウム系を除く半導体用スパッタリングターゲット市場における市場規模及び当社のシェア、販売金額ベース)より引用。市場規模について、為替レートは2023年末時点(141円/米ドル)で円換算。
2.富士経済「2024年 半導体材料市場の現状と将来展望」(2023年実績、アルミニウム系を除く半導体用スパッタリングターゲット市場における当社のシェア、販売金額ベース)に記載の銅、タンタル、チタン、コバルト及びタングステンを素材とする半導体用スパッタリングターゲットの市場規模及びシェアを参照。
3.「World Fab Forecast 2Q2024 update, published by SEMI」に基づき当社が推計した2023年における300mmウエハでの生産能力ベースのシェアを指します。当社の主な販売先は300mmウエハを取り扱うメーカーであり、先端半導体の製造には主に300mmウエハが用いられております。
4.全ての評価基準にわたって優れたパフォーマンスを発揮したサプライヤーをIntel社が表彰するものです。 全世界で数千社に及ぶ同社のサプライヤーのうち、わずか数百社のみが当プログラムへの参加資格を有しています。2024年の受賞者は同社のサプライチェーン全体で27社のみでした。
5.下工程とは、半導体用スパッタリングターゲット製造プロセスにおける加工・ボンディング工程を指します。
(タンタル・ニオブ事業部)
当社グループのTANIOBISは、世界各地に製造・販売拠点を有する世界有数のタンタルとニオブの材料メーカーであり、主要製品は半導体用スパッタリングターゲットやコンデンサ用のタンタル粉・ニオブ粉、SAWデバイスや光学レンズ用のタンタル酸化物・ニオブ酸化物、半導体用のタンタルやニオブ等の塩化物、その他の高機能粉末材料です。半導体用スパッタリングターゲット用のタンタル粉については、2022年に買収した東京電解株式会社(以下、「東京電解」という。)にてインゴット状に加工のうえ当社薄膜材料事業部に供給し、スパッタリングターゲットの材料として使用されております。
2023年にはブラジルのMibra鉱山におけるタンタル原料生産事業に参画し、これまで以上に安全や人権に配慮した倫理的かつ持続可能な「責任ある調達」を推進するとともに、TANIOBISの年間調達量の約2割のタンタル鉱石を安定的に調達する体制を整備いたしました。東京電解の買収及びMibra鉱山の原料事業参画によって、当社グループとして半導体用タンタルスパッタリングターゲットを上流から下流まで一気通貫で安定的に供給する体制を確立しております。
(2) 情報通信材料セグメント
(機能材料事業部)
機能材料事業部では、主力製品である圧延銅箔に加えて、AIサーバ向け等の高機能コネクタなどに使われるチタン銅、コネクタやリードフレームに使われるコルソン合金などの銅合金を取り扱っております。圧延銅箔は、スマートフォンやウェアラブル端末、モビリティ(xEV/ADAS)の分野で使用されるハイエンドなフレキシブル回路基板(FPC)に用いられており、屈曲性や耐久性における技術優位性や市場開発型アプローチの確立により、1stベンダーとしての地位を確保することで、市場規模405億円のマーケットにおいて、78%の世界シェア(注1)を誇っております。銅合金は、銅に様々な元素を添加して製造した製品で、AIサーバやスマートフォン、パソコンなどの電子機器のコネクタ端子や半導体リードフレームなどに使用され、近年の情報化社会には無くてはならない金属材料です。当社ではTi(チタン)を主な副成分とするチタン銅や、Ni(ニッケル)・Si(ケイ素)を主な副成分とするコルソン合金を中心に、顧客ニーズに合わせた多様な特性の製品を幅広く取り揃えております。

① 圧延銅箔製造における当社の技術優位性
圧延銅箔は、電気銅やリサイクル原料を溶解・鋳造して製造されたインゴットを熱間圧延・冷間圧延により必要な厚さにまで薄くして製造します。その後、結晶組織を均一にするための焼鈍や、顧客の要求するスペックにするための仕上げ圧延、表面に微細な凹凸を形成してプリント基板の樹脂との密着性を高めるための表面処理、幅分割等の工程を経て最終的に製品化がなされます。
圧延銅箔の主要用途であるFPCは、導電性金属である圧延銅箔と絶縁性を持った薄く柔らかいベースフィルム(ポリイミド等)とを貼り合わせた基材(FCCL)に電気回路を形成した基板です。僅かな隙間や繰り返し屈曲する可動部に用いられることから、圧延銅箔には優れた屈曲性や耐久性が求められます。当社は、FPC向けにHA箔を生産しておりますが、当該製品は結晶粒・結晶方位を調整することにより屈曲性・耐久性を飛躍的に向上させており、疲労寿命を迎えるまでに類似品である特殊電解銅箔対比で約3倍の屈曲に耐える(注2)品質の高さを有しております。また、当社は独自のノウハウにより高品質な薄箔の製造を実現しており、FPC用途において6μm(髪の毛の約100分の1)の薄さまで製造可能です。
② 市場開発型アプローチ
当社は、FPC向け圧延銅箔のエンドユーザーであるスマートフォンメーカー、ウェアラブル端末メーカー及びモビリティメーカーと20年以上にわたる強固な関係を構築しており、これらのエンドユーザーとの対話を通じて、早期の開発ニーズの把握や、ニーズに基づく材料提案を行ってきました。当社製品がエンドユーザーから材料指定を受けることにより、エンドユーザーに製品供給を行うCCL及びFPCメーカーからの安定的な受注を実現しております。

注1.富士キメラ総研「2024エレクトロニクス実装ニューマテリアル便覧」(2023年実績、FPC向けのみ、出荷数量ベース)
2.米国のプリント回路業界団体であるIPCが定める規格及びJIS規格に準拠したFPCの耐屈曲性の標準的な試験方法であるIPC屈曲試験(試験方法No.:IPC-TM650 2.4.3E)における疲労寿命までの屈曲回数を比較しております(破断寿命回数HA:約53万回、特殊電解銅箔:約17万回)。
(東邦チタニウム)
チタンは、軽量・高強度・高耐食という特性を持つ金属であり、航空機や海水淡水化プラント、発電プラントなど幅広い分野で利用されております。当社グループの東邦チタニウム株式会社では、金属チタン事業・触媒事業・化学品事業を軸とした事業展開を行っております。金属・チタン事業では、航空機材料用、医療用、産業設備用と幅広い分野で使用されているスポンジチタンやスポンジチタンを溶解・鋳造したチタンインゴットなどを製造しております。触媒事業では、ポリオレフィン製造用触媒などを製造しております。化学品事業では、積層セラミックコンデンサ等に使用される超微粉ニッケルや高純度酸化チタンなどを製造しております。
(タツタ電線)
電線・ケーブル製造で培った技術を多様な製品や事業に発展させており、電子材料事業、電線・ケーブル事業、その他事業を軸とした事業展開を行っています。電子材料事業では、モバイル端末等に使われる機能性フィルム、半導体分野で需要が高まる機能性ペーストなどを扱っております。電線・ケーブル事業では、ビルや住宅で使用される電力ケーブルからロボット用ケーブル、鉄道やプラントで使われる産業用ケーブルまで幅広く対応しております。
(3) 基礎材料セグメント
(資源事業部)
資源事業は当社の祖業であり、1905年に日立鉱山を開業して以来、国内外の鉱山を対象として、探鉱から開発、操業、休廃止鉱山の管理に至るまでをステークホルダーと協業しながら行ってきました。長年の現場経験を通じて培った鉱床評価技術、低品位銅鉱石から効率的に銅を分離・回収する技術、低環境負荷技術等を活用し、現在は海外の銅鉱山やレアメタル鉱山への参画や国内の含金珪酸鉱鉱山の操業を行っております。
銅鉱山については、カセロネス銅鉱山(チリ)、ロス・ペランブレス銅鉱山(チリ)及びエスコンディーダ銅鉱山(チリ)の権益を保有しており、当社銅製錬事業の原料となる銅精鉱の安定確保を図るとともに、投資リターンを得ております。このうち、エスコンディーダ銅鉱山、ロス・ペランブレス銅鉱山の生産コストは、グローバルで上位30%以内の低さとなっています(出所:Wood Mackenzie 「Copper Mine Composite Costs Mine 2022 データセット:2023 Q1」)。カセロネス銅鉱山については、2024年3月期にLundin社を経営パートナーとして迎え、同社の豊富な知見や高い鉱山運営能力を活かして、生産性向上やコスト競争力の強化を進めています。
(注) 1.「Data and analytics provided by S&P Global Market Intelligence」に基づき当社作成
埋蔵鉱量はReserve(既に発見されている資源量のうち、経済的に回収可能と考えられる量)の数値を採用しており、2023年4月に公表された2022年の数値を記載しております。
2. Wood Mackenzie“Asset Dashboard 2024 3Q”に基づき、権益100%ベースで当社作成
価値算定基準日は2024年1月1日、Discount rateは12.0%とし、鉱山の埋蔵鉱量はオペレータ―企業
の開示資料に記載のベースケースのシナリオを用いて算出しております。
3. 2025年1月末時点における権益比率を記載しております。
レアメタルについては、当社グループ内の事業シナジーを高めるべく、2023年3月期にブラジルのMibra鉱山におけるタンタル原料生産事業に参画したことに引き続き、タンタル鉱山やチタン鉱山の調査・開発等にも積極的に取り組んでいます。また、当社グループ会社である鹿児島県の春日鉱山株式会社においては含金珪酸鉱の生産を行っており、銅製錬の副原料(溶剤)としてJX金属製錬株式会社 佐賀関製錬所などに供給しています。
(金属・リサイクル事業部)
金属・リサイクル事業部は、金属製錬とリサイクルの一体的な事業運営を推進しております。銅精鉱と使用済み家電製品・電子機器などのリサイクル原料から、高効率な製錬プロセスを通じて純度99.99%以上の銅地金を生産するとともに、銅を製錬する過程の副産物として、貴金属やレアメタル、硫酸などの生産を行っております。当社グループの主要な製錬拠点であるJX金属製錬株式会社 佐賀関製錬所は、日系の同業他社が保有する製錬所対比で生産コストが低く、コスト競争力が高い製錬所となっております(出所:Wood Mackenzie 「2023 Copper Smelters League ranked on Net Cash Cost (¢/lb) 」)。今後、銅の需要はますます伸びていくことが予想されており、この需要拡大を支えるには銅精鉱に加えてリサイクル原料の活用拡大が必要不可欠であることから、当社グループはリサイクル原料の受入・処理能力を拡大し、リサイクル原料処理比率の向上を図っております。
① グリーンハイブリッド製錬
JX金属製錬株式会社 佐賀関製錬所では、リサイクル原料の増処理を進めるに当たり、銅精鉱が自ら発する酸化反応熱を最大限に活用し、化石燃料使用量をミニマイズするグリーンハイブリッド製錬を推進しております。これにより生産された銅は、拡大する需要を支える安定供給体制の構築と脱炭素や資源循環等のESGを重視した生産と供給という2つの使命を果たすために最適なサステナブルな銅であると考えております。2040年に銅製錬時のリサイクル原料処理比率を50%まで高めることを目標に、技術開発やリサイクル原料の増集荷・増処理体制の構築を進めております。
② サーキュラーエコノミー実現への貢献
当社は、2022年に策定したサステナブルカッパー・ビジョンの実現に向け、国内商社との戦略的パートナーシップを活用しながらリサイクル原料の増集荷・増処理体制の構築を進めております。
例えば、当社は2022年8月にカナダのリサイクラーであるeCycle Solutions Inc.の株式を取得いたしましたが、ITAD事業に知見を有する双日株式会社の資本参加を受入れ2023年4月から協業を開始しております。
また、2024年4月には三菱商事株式会社(以下、「三菱商事」という。)とともに、廃家電や廃電子機器、廃車載用リチウムイオン電池等の再利用を推進する目的でJX金属サーキュラーソリューションズ株式会社を新設し、同年7月に事業を開始しました。三菱商事の持つ産業横断型のグローバルなネットワークや知見を活用することで、リサイクル原料集荷やサプライチェーン全体の連携を強化し、銅やレアメタル等の非鉄金属資源のリサイクルの拡大を目指します。採掘された資源を廃棄せずに再利用し続けるサーキュラーエコノミーの実現に向け、貢献してまいります。
当社グループは、2024年12月31日時点において、当社及び連結子会社79社、持分法適用関連会社17社で構成されております。以下に示すとおり、グローバルなネットワークを構築しております。


(注)1. 当社は、業務集約及び効率化による経営コストの削減を目的として、磯原工場、日立事業所及びひたち
なか工場の管理間接部門を集約する形で「茨城事業所」を2025年4月より新設することを予定しておりま
す。
事業の系統図は以下のとおりです。

用語解説
本書にて使用している用語の定義について、以下に記載いたします。
(半導体材料セグメント)
(情報通信材料セグメント)
(基礎材料セグメント)
当社グループは、半導体材料セグメント、情報通信材料セグメント、基礎材料セグメントの3つの報告セグメントにて構成されております。成長戦略のコアである半導体材料セグメントと情報通信材料セグメントをフォーカス事業と位置づけ、先端素材分野での技術の差別化や市場創造を通じて、市場成長以上の利益成長を目指しております。一方、基礎材料セグメントをベース事業と位置づけ、銅・レアメタルの安定供給を通じてフォーカス事業を支える役割を担っております。各報告セグメントの主要製品、主要会社は以下のとおりです。
区分 | セグメント | 事業部・ 事業会社 | 主要製品 | 主要な会社 |
フォーカス事業 | 半導体 材料 | 薄膜材料事業部 | 半導体用スパッタリングターゲット、高純度金属、表面処理剤 | 当社、JX Advanced Metals USA, Inc.、JX Metals Singapore Pte.Ltd.、JX Metals Korea Co., Ltd.、JX金属商事㈱、台湾日鉱金属股份有限公司 |
タンタル・ ニオブ事業部 | タンタル・ニオブ金属粉末、タンタル・ニオブ酸化物粉末、塩化物・化合物 | 当社、TANIOBIS、東京電解㈱ | ||
情報通信 材料 | 機能材料事業部 | 圧延銅箔、チタン銅、コルソン合金 | 当社、JX METALS PHILIPPINES, Inc.、日鉱金属(蘇州)有限公司、JX金属商事㈱、台湾日鉱金属股份有限公司 | |
東邦チタニウム | 超微粉ニッケル、高純度酸化チタン、触媒製品、スポンジチタン、チタンインゴット | 東邦チタニウム㈱ | ||
タツタ電線 | 電磁波シールドフィルム、導電性ペースト、ボンディングワイヤ、インフラ・産業機器用電線 | タツタ電線㈱ | ||
ベース 事業 | 基礎 材料 | 資源事業部 | 銅精鉱、電気銅、モリブデン精鉱、含金珪酸鉱、タンタル精鉱 | 当社、SCM Minera Lumina Copper Chile、Minera Los Pelambres、Minera Escondida |
金属・リサイクル事業部 | 電気銅、型銅、貴金属、硫酸 | 当社、JX金属製錬㈱、パンパシフィック・カッパー㈱、JX金属サーキュラーソリューションズ㈱、eCycle Solutions Inc.、JX金属商事㈱、台湾日鉱金属股份有限公司 |
上記に加え、技術本部 結晶材料事業推進部にて化合物半導体や結晶材料を取り扱っております。
以下の事業区分は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記7.セグメント情報」に掲げるセグメントの区分と同一であり、各事業を構成する主要な関係会社の状況については、「第1 企業の概況 4 関係会社の状況」に記載しております。
(1) 半導体材料セグメント
(薄膜材料事業部)
高純度化や組成・組織制御などの当社のコア技術を駆使し、半導体や磁性材料向けのスパッタリングターゲットをはじめ、各種高機能デバイス、最先端IT機器、医療機器、電気自動車に用いられる製品をグローバルに展開しております。中でも、ロジックやメモリに用いられる半導体用スパッタリングターゲットが主力製品であり、市場規模1,462億円のマーケットにおいて世界シェアは64%(注1)です。当社は様々な素材の半導体用スパッタリングターゲットを取り扱っており、半導体の主要配線層に用いられる銅や銅合金、そのバリア層に用いられるタンタルに加えて、半導体の回路形成やトランジスタ部分等に用いられるチタン、コバルト及びタングステンの製品で世界シェアNo.1です(注2)。

半導体はシリコンウエハ上に数百回以上にわたり回路を形成して製造されますが、半導体用スパッタリングターゲットは回路形成に必要となる素材の層をつくる工程(成膜工程)の材料として用いられます。成膜に当たっては、上図のように真空状態の装置内でスパッタリングターゲットにアルゴンイオンを衝突させ、放出したターゲット原子を基板(シリコンウエハ等)上に付着させることによって薄膜を形成します。半導体が目的とする機能を発揮するためには様々な種類の高純度素材による回路形成が必要となりますが、当社の強みである高純度化技術や、多種多様な元素・合金を取り扱う技術により、様々な材料ニーズを満たしたスパッタリングターゲットの製造が可能です。
① 半導体用スパッタリングターゲット製造における当社のコア技術
当社の主力製品である、半導体用高純度銅スパッタリングターゲットの製造プロセスの概略図を以下に示します。

電解精製にて製造された高純度の電気銅を溶解してインゴットにし、そのインゴットを適切な幅に切断したのち、鍛造・圧延を施して必要な直径を持った円盤状の板(ターゲット材)に加工します。その後、熱処理によって結晶組織を均一化したターゲット材を、スパッタリング装置へ固定する役割を果たすバッキングプレートと接合(ボンディング)し、顧客から求められる特性に応じて表面の粗化から鏡面仕上げ等の加工を行い、品質や機能の分析評価を経て製品化されます。この一連の加工の中で、以下に記載する当社の複数のコア技術が活かされており、多数の金属品種において高品質な製品の安定的な供給を実現しております。
・高純度化技術
電解精製工程において、創業以来培ってきた高純度化技術により9N(99.9999999%)の銅の製造を実現しております。当技術により高純度銅スパッタリングターゲットに要求される6Nの銅を安定的に生産しております。
・組成・組織制御技術
ターゲット材の結晶組織がスパッタリングに適した大きさや向きとなるように制御・管理しております。これにより、成膜時の組成・組織が均一となり半導体の欠陥を引き起こす不純物であるパーティクル(発塵)の発生を抑えることに寄与しております。
・表面制御技術
バッキングプレートとターゲット材との接合状態が不均一な場合、スパッタリング時にターゲット材の表面温度が不均一になり様々な障害が生じます。そこで、ろう材による接合や異種材料間の拡散接合など、それぞれの材料に適した技術により、均一で強固な接合を実現しています。また、異種材料接合技術の応用により、銅箔と樹脂の複合材など、新しい材料の開発を進めています。
また、スパッタリングターゲットなどの材料は、その組成や純度だけでなく、表面状態も顧客のプロセスにおける製造効率に影響します。このため、出荷前の最終工程において、エッチングによる表面の粗化から鏡面仕上げまで、求められる特性に応じた最終加工を行っています。
・分析評価技術
当社で製造したスパッタリングターゲットは、材料として顧客のスパッタリング装置に組み込まれて使用されます。当社は自前のスパッタリング装置を所有しており、顧客が使用する条件下で評価を行うことによって最終形態で期待される機能や特性の実現、性能改善を図っております。
② 半導体製造装置メーカーとの強固な関係及び半導体メーカーとの信頼関係
当社は半導体製造装置メーカーから受ける素材提案を通じて品質技術情報を獲得し、その情報を基に半導体製造装置メーカーに対して材料提案や先行開発を継続して実施してきました。長年にわたるこれらの活動の結果、当社製品の多くが半導体製造装置メーカーから標準材料として指定されており、それにより当半導体製造装置メーカーの製造装置を使用する半導体メーカーからの安定的な受注獲得につながっていると考えております。
事実として、当社は大手半導体メーカーと長年にわたり取引を継続してきた実績を有しております。2023年の生産能力シェア(注3)において、半導体IDM企業のシェア上位10社のうち8社、半導体ファウンドリー企業のシェア上位10社のうち8社と20年以上の取引があります。加えて、高品質な製品の安定的供給が顧客から高く評価されており、当社顧客であるIntel社が設定しているEPIC Distinguished Supplier Award(注4)を2021年から2024年まで4年連続で受賞しているほか、TSMC社が設定しているExcellent Performance Awardを2024年に受賞しております。
③ 半導体メーカー拠点との地理的優位性を有する生産体制
当社は、半導体の世界的生産地である米国、台湾、韓国において、スパッタリングターゲット製造の下工程(注5)である機械加工拠点を有し、一定の在庫を保有することで、安定的かつ素早い製品供給体制を構築しております。なお、2024年3月期の当社の半導体用スパッタリングターゲットの販売比率は、台湾向けが約38%、韓国向けが約15%、米国向けが約12%、日本向けが約10%、中国向けが約10%、その他地域向けが約15%となっております。
また、米国・台湾においては技術サービス拠点としての役割も担い、顧客への迅速な品質対応も行っております。当社の高い技術レベルと各拠点での速やかな技術対応を組み合わせることにより、高い顧客満足度を実現しております。
注1.当該市場規模及び世界シェアは、富士経済「2024年 半導体材料市場の現状と将来展望」(2023年実績、アルミニウム系を除く半導体用スパッタリングターゲット市場における市場規模及び当社のシェア、販売金額ベース)より引用。市場規模について、為替レートは2023年末時点(141円/米ドル)で円換算。
2.富士経済「2024年 半導体材料市場の現状と将来展望」(2023年実績、アルミニウム系を除く半導体用スパッタリングターゲット市場における当社のシェア、販売金額ベース)に記載の銅、タンタル、チタン、コバルト及びタングステンを素材とする半導体用スパッタリングターゲットの市場規模及びシェアを参照。
3.「World Fab Forecast 2Q2024 update, published by SEMI」に基づき当社が推計した2023年における300mmウエハでの生産能力ベースのシェアを指します。当社の主な販売先は300mmウエハを取り扱うメーカーであり、先端半導体の製造には主に300mmウエハが用いられております。
4.全ての評価基準にわたって優れたパフォーマンスを発揮したサプライヤーをIntel社が表彰するものです。 全世界で数千社に及ぶ同社のサプライヤーのうち、わずか数百社のみが当プログラムへの参加資格を有しています。2024年の受賞者は同社のサプライチェーン全体で27社のみでした。
5.下工程とは、半導体用スパッタリングターゲット製造プロセスにおける加工・ボンディング工程を指します。
(タンタル・ニオブ事業部)
当社グループのTANIOBISは、世界各地に製造・販売拠点を有する世界有数のタンタルとニオブの材料メーカーであり、主要製品は半導体用スパッタリングターゲットやコンデンサ用のタンタル粉・ニオブ粉、SAWデバイスや光学レンズ用のタンタル酸化物・ニオブ酸化物、半導体用のタンタルやニオブ等の塩化物、その他の高機能粉末材料です。半導体用スパッタリングターゲット用のタンタル粉については、2022年に買収した東京電解株式会社(以下、「東京電解」という。)にてインゴット状に加工のうえ当社薄膜材料事業部に供給し、スパッタリングターゲットの材料として使用されております。
2023年にはブラジルのMibra鉱山におけるタンタル原料生産事業に参画し、これまで以上に安全や人権に配慮した倫理的かつ持続可能な「責任ある調達」を推進するとともに、TANIOBISの年間調達量の約2割のタンタル鉱石を安定的に調達する体制を整備いたしました。東京電解の買収及びMibra鉱山の原料事業参画によって、当社グループとして半導体用タンタルスパッタリングターゲットを上流から下流まで一気通貫で安定的に供給する体制を確立しております。
(2) 情報通信材料セグメント
(機能材料事業部)
機能材料事業部では、主力製品である圧延銅箔に加えて、AIサーバ向け等の高機能コネクタなどに使われるチタン銅、コネクタやリードフレームに使われるコルソン合金などの銅合金を取り扱っております。圧延銅箔は、スマートフォンやウェアラブル端末、モビリティ(xEV/ADAS)の分野で使用されるハイエンドなフレキシブル回路基板(FPC)に用いられており、屈曲性や耐久性における技術優位性や市場開発型アプローチの確立により、1stベンダーとしての地位を確保することで、市場規模405億円のマーケットにおいて、78%の世界シェア(注1)を誇っております。銅合金は、銅に様々な元素を添加して製造した製品で、AIサーバやスマートフォン、パソコンなどの電子機器のコネクタ端子や半導体リードフレームなどに使用され、近年の情報化社会には無くてはならない金属材料です。当社ではTi(チタン)を主な副成分とするチタン銅や、Ni(ニッケル)・Si(ケイ素)を主な副成分とするコルソン合金を中心に、顧客ニーズに合わせた多様な特性の製品を幅広く取り揃えております。

① 圧延銅箔製造における当社の技術優位性
圧延銅箔は、電気銅やリサイクル原料を溶解・鋳造して製造されたインゴットを熱間圧延・冷間圧延により必要な厚さにまで薄くして製造します。その後、結晶組織を均一にするための焼鈍や、顧客の要求するスペックにするための仕上げ圧延、表面に微細な凹凸を形成してプリント基板の樹脂との密着性を高めるための表面処理、幅分割等の工程を経て最終的に製品化がなされます。
圧延銅箔の主要用途であるFPCは、導電性金属である圧延銅箔と絶縁性を持った薄く柔らかいベースフィルム(ポリイミド等)とを貼り合わせた基材(FCCL)に電気回路を形成した基板です。僅かな隙間や繰り返し屈曲する可動部に用いられることから、圧延銅箔には優れた屈曲性や耐久性が求められます。当社は、FPC向けにHA箔を生産しておりますが、当該製品は結晶粒・結晶方位を調整することにより屈曲性・耐久性を飛躍的に向上させており、疲労寿命を迎えるまでに類似品である特殊電解銅箔対比で約3倍の屈曲に耐える(注2)品質の高さを有しております。また、当社は独自のノウハウにより高品質な薄箔の製造を実現しており、FPC用途において6μm(髪の毛の約100分の1)の薄さまで製造可能です。
② 市場開発型アプローチ
当社は、FPC向け圧延銅箔のエンドユーザーであるスマートフォンメーカー、ウェアラブル端末メーカー及びモビリティメーカーと20年以上にわたる強固な関係を構築しており、これらのエンドユーザーとの対話を通じて、早期の開発ニーズの把握や、ニーズに基づく材料提案を行ってきました。当社製品がエンドユーザーから材料指定を受けることにより、エンドユーザーに製品供給を行うCCL及びFPCメーカーからの安定的な受注を実現しております。

注1.富士キメラ総研「2024エレクトロニクス実装ニューマテリアル便覧」(2023年実績、FPC向けのみ、出荷数量ベース)
2.米国のプリント回路業界団体であるIPCが定める規格及びJIS規格に準拠したFPCの耐屈曲性の標準的な試験方法であるIPC屈曲試験(試験方法No.:IPC-TM650 2.4.3E)における疲労寿命までの屈曲回数を比較しております(破断寿命回数HA:約53万回、特殊電解銅箔:約17万回)。
(東邦チタニウム)
チタンは、軽量・高強度・高耐食という特性を持つ金属であり、航空機や海水淡水化プラント、発電プラントなど幅広い分野で利用されております。当社グループの東邦チタニウム株式会社では、金属チタン事業・触媒事業・化学品事業を軸とした事業展開を行っております。金属・チタン事業では、航空機材料用、医療用、産業設備用と幅広い分野で使用されているスポンジチタンやスポンジチタンを溶解・鋳造したチタンインゴットなどを製造しております。触媒事業では、ポリオレフィン製造用触媒などを製造しております。化学品事業では、積層セラミックコンデンサ等に使用される超微粉ニッケルや高純度酸化チタンなどを製造しております。
(タツタ電線)
電線・ケーブル製造で培った技術を多様な製品や事業に発展させており、電子材料事業、電線・ケーブル事業、その他事業を軸とした事業展開を行っています。電子材料事業では、モバイル端末等に使われる機能性フィルム、半導体分野で需要が高まる機能性ペーストなどを扱っております。電線・ケーブル事業では、ビルや住宅で使用される電力ケーブルからロボット用ケーブル、鉄道やプラントで使われる産業用ケーブルまで幅広く対応しております。
(3) 基礎材料セグメント
(資源事業部)
資源事業は当社の祖業であり、1905年に日立鉱山を開業して以来、国内外の鉱山を対象として、探鉱から開発、操業、休廃止鉱山の管理に至るまでをステークホルダーと協業しながら行ってきました。長年の現場経験を通じて培った鉱床評価技術、低品位銅鉱石から効率的に銅を分離・回収する技術、低環境負荷技術等を活用し、現在は海外の銅鉱山やレアメタル鉱山への参画や国内の含金珪酸鉱鉱山の操業を行っております。
銅鉱山については、カセロネス銅鉱山(チリ)、ロス・ペランブレス銅鉱山(チリ)及びエスコンディーダ銅鉱山(チリ)の権益を保有しており、当社銅製錬事業の原料となる銅精鉱の安定確保を図るとともに、投資リターンを得ております。このうち、エスコンディーダ銅鉱山、ロス・ペランブレス銅鉱山の生産コストは、グローバルで上位30%以内の低さとなっています(出所:Wood Mackenzie 「Copper Mine Composite Costs Mine 2022 データセット:2023 Q1」)。カセロネス銅鉱山については、2024年3月期にLundin社を経営パートナーとして迎え、同社の豊富な知見や高い鉱山運営能力を活かして、生産性向上やコスト競争力の強化を進めています。
カセロネス 銅鉱山 | ロス・ペランブレス 銅鉱山 | エスコンディーダ 銅鉱山 | |
オペレーター | Lundin社 | Antofagasta | BHP |
埋蔵鉱量(注1) | 約6億t | 約9億t | 約67億t |
NPV($mm)(注2) | $2,004 | $11,947 | $37,453 |
当社権益保有比率(注3) | 30.0% | 12.52% | 3.0% |
(注) 1.「Data and analytics provided by S&P Global Market Intelligence」に基づき当社作成
埋蔵鉱量はReserve(既に発見されている資源量のうち、経済的に回収可能と考えられる量)の数値を採用しており、2023年4月に公表された2022年の数値を記載しております。
2. Wood Mackenzie“Asset Dashboard 2024 3Q”に基づき、権益100%ベースで当社作成
価値算定基準日は2024年1月1日、Discount rateは12.0%とし、鉱山の埋蔵鉱量はオペレータ―企業
の開示資料に記載のベースケースのシナリオを用いて算出しております。
3. 2025年1月末時点における権益比率を記載しております。
レアメタルについては、当社グループ内の事業シナジーを高めるべく、2023年3月期にブラジルのMibra鉱山におけるタンタル原料生産事業に参画したことに引き続き、タンタル鉱山やチタン鉱山の調査・開発等にも積極的に取り組んでいます。また、当社グループ会社である鹿児島県の春日鉱山株式会社においては含金珪酸鉱の生産を行っており、銅製錬の副原料(溶剤)としてJX金属製錬株式会社 佐賀関製錬所などに供給しています。
(金属・リサイクル事業部)
金属・リサイクル事業部は、金属製錬とリサイクルの一体的な事業運営を推進しております。銅精鉱と使用済み家電製品・電子機器などのリサイクル原料から、高効率な製錬プロセスを通じて純度99.99%以上の銅地金を生産するとともに、銅を製錬する過程の副産物として、貴金属やレアメタル、硫酸などの生産を行っております。当社グループの主要な製錬拠点であるJX金属製錬株式会社 佐賀関製錬所は、日系の同業他社が保有する製錬所対比で生産コストが低く、コスト競争力が高い製錬所となっております(出所:Wood Mackenzie 「2023 Copper Smelters League ranked on Net Cash Cost (¢/lb) 」)。今後、銅の需要はますます伸びていくことが予想されており、この需要拡大を支えるには銅精鉱に加えてリサイクル原料の活用拡大が必要不可欠であることから、当社グループはリサイクル原料の受入・処理能力を拡大し、リサイクル原料処理比率の向上を図っております。
① グリーンハイブリッド製錬
JX金属製錬株式会社 佐賀関製錬所では、リサイクル原料の増処理を進めるに当たり、銅精鉱が自ら発する酸化反応熱を最大限に活用し、化石燃料使用量をミニマイズするグリーンハイブリッド製錬を推進しております。これにより生産された銅は、拡大する需要を支える安定供給体制の構築と脱炭素や資源循環等のESGを重視した生産と供給という2つの使命を果たすために最適なサステナブルな銅であると考えております。2040年に銅製錬時のリサイクル原料処理比率を50%まで高めることを目標に、技術開発やリサイクル原料の増集荷・増処理体制の構築を進めております。
② サーキュラーエコノミー実現への貢献
当社は、2022年に策定したサステナブルカッパー・ビジョンの実現に向け、国内商社との戦略的パートナーシップを活用しながらリサイクル原料の増集荷・増処理体制の構築を進めております。
例えば、当社は2022年8月にカナダのリサイクラーであるeCycle Solutions Inc.の株式を取得いたしましたが、ITAD事業に知見を有する双日株式会社の資本参加を受入れ2023年4月から協業を開始しております。
また、2024年4月には三菱商事株式会社(以下、「三菱商事」という。)とともに、廃家電や廃電子機器、廃車載用リチウムイオン電池等の再利用を推進する目的でJX金属サーキュラーソリューションズ株式会社を新設し、同年7月に事業を開始しました。三菱商事の持つ産業横断型のグローバルなネットワークや知見を活用することで、リサイクル原料集荷やサプライチェーン全体の連携を強化し、銅やレアメタル等の非鉄金属資源のリサイクルの拡大を目指します。採掘された資源を廃棄せずに再利用し続けるサーキュラーエコノミーの実現に向け、貢献してまいります。
当社グループは、2024年12月31日時点において、当社及び連結子会社79社、持分法適用関連会社17社で構成されております。以下に示すとおり、グローバルなネットワークを構築しております。


(注)1. 当社は、業務集約及び効率化による経営コストの削減を目的として、磯原工場、日立事業所及びひたち
なか工場の管理間接部門を集約する形で「茨城事業所」を2025年4月より新設することを予定しておりま
す。
事業の系統図は以下のとおりです。

用語解説
本書にて使用している用語の定義について、以下に記載いたします。
(半導体材料セグメント)
用語 | 解説 |
バリア層 | 金属配線と絶縁層の間に形成した金属・合金層で、配線金属原子の絶縁層への拡散を防ぐ役割を担う層です。銅配線の場合、バリア用途としてタンタルを使用するのが一般的です。 |
トランジスタ | 電気の流れをコントロールする半導体素子であり、電子回路において電気信号を増幅する機能と、電気を流したり止めたりスイッチングする機能を持っています。 |
インゴット | 精製した金属を鋳型に流し込み、塊状にしたものを指します。 |
IDM企業 | IDMはIntegrated Device Manufacturerの略称であり、半導体産業において、自社で開発から設計、製造、販売までを一貫して手掛けるメーカーを指します。 |
ファウンドリー企業 | 半導体産業において、製造に特化した企業を指します。半導体の設計を行う企業から設計データを受け取り、その設計に沿って半導体デバイスの製造を行います。 |
結晶材料 | 結晶とは単一もしくは複数の元素の原子、分子またはイオンが規則正しく配列している固体のことを指します。高品質の結晶材料を用いることにより、素子や検出器の効率をより高めることができます。 |
InP(インジウムリン) | 光通信用の受発光素子素材や赤外線センサ材料として用いられ、今後データセンターやモバイル通信量の増加により高い成長が期待される材料分野です。 |
CdZnTe(カドミウムジンクテルル) | 放射線センサ、赤外線センサ素子の素材として用いられ、防衛・メディカルなどの分野での成長が期待されています。 |
PVD | Physical Vapor Deposition(物理気相成長法)の略称であり、成膜工程に用いる金属材料を気化させて基板に成膜する方法を指します。スパッタリング法は代表的なPVDプロセスの1つであり、真空状態の装置内でスパッタリングターゲットにアルゴンイオンを衝突させ、放出したターゲット原子・分子をシリコンウエハやガラス等の基盤上に付着させ、薄膜を形成する技術を指します。 |
CVD | Chemical Vapor Deposition(化学気相成長法)の略称であり、気相の中で基板表面の化学反応によって成膜する方法を指します。 |
ALD | Atomic Layer Deposition(原子層積層法)の略称であり、基板に原子層を一層ずつ積み上げることによって成膜する方法を指します。 |
チップレット | 従前1つのチップに集積していた回路を複数の小さなチップに分割し、インターポーザ(チップ間をつなぐ基板)上に乗せて大規模回路として1パッケージに収める技術を指します。 |
ノード | チップのトランジスタなどの大きさ(回路世代)を指します。 |
SAWデバイス | 表面弾性波(Surface Acoustic Wave)を利用して電気信号を処理する電子部品を指します。表面弾性波は物質の表面を伝搬する波のことであり、SAWデバイスを用いることにより特定の周波数帯域の信号をフィルタリングしたり、共振させたりすることができます。スマートフォンや携帯電話などの無線通信機器に広く利用されています。 |
光学レンズ | 光を屈折させることで物体の像を形成するためのレンズを指します。カメラ、テレビカメラ、顕微鏡、望遠鏡などの光学機器で使用されます。 |
AIサーバ | AIの処理を専門に行う専用のサーバを指します。CPUが多く用いられる一般的なサーバとは異なり、一度に大量のデータを処理する並列処理に特化したGPUが多数用いられます。 |
GPU | Graphics Processing Unitの略称であり、画像や映像の処理を行うための演算装置です。複数の計算処理を同時に行う並列処理能力に優れており、大量のデータを高速に処理することができます。 |
(情報通信材料セグメント)
用語 | 解説 |
CCL | Copper Clad Laminateの略称であり、銅張(どうばり)積層板とも呼ばれます。プリント基板の製造に用いられる材料であり、銅箔にポリイミドフィルムなどの絶縁フィルムを貼り合わせたものを指します。 |
積層セラミックコンデンサ | セラミック材料と金属電極を交互に積み重ねた構造を持つコンデンサを指します。電極を積層化することにより高い静電容量が可能となり、スマートフォンやパソコン、自動車など多くの電子機器に使用されております。 |
超微粉ニッケル | 粒径が1μm以下のニッケル粉を指し、積層セラミックコンデンサの内部電極等に使用されます。東邦チタニウム㈱では、独自の気相還元反応技術により粒度分布幅の小さいニッケル粉末を生産することが可能であり、ハイエンドの積層セラックコンデンサの電極に使用されております。 |
(基礎材料セグメント)
用語 | 解説 |
銅精鉱 | 銅鉱山で産出された銅鉱石に破砕や浮遊選鉱等の処理を行って粉状にしたものであり、銅製錬の原料として用いられます。銅品位は20-40%程度であり、残りは主に鉄と硫黄で形成されています。 |
銅地金・電気銅 | 銅電解を経て精製される銅品位99.99%以上の高純度銅を指します。 |
含金珪酸鉱 | 少量の金や銀を含む珪酸質の鉱石を指します。銅鉱石などの精錬プロセスにて酸性溶剤として用いられます。金や銀は電解精錬プロセスにて回収されます。 |
ITAD | IT Asset Dispositionの略称であり、不要になったIT資産を、情報漏洩などのリスクを抑えつつ、再利用や再資源化などの環境問題に配慮した方法で適正に処理することを指します。 |