有価証券報告書-第125期(2024/04/01-2025/03/31)
② 戦略
気候関連のリスク・機会について、川上から川下までのサプライチェーン全体を見渡して、短期・中期・長期における社会動向や規制動向などを予測し、TCFD提言の例示を参考にしながら、幅広くリスク・機会の項目を選定しています。
選定したリスク項目について、主に2℃シナリオの途上に起こる「低炭素経済への移行に関するリスク」と、世界のCO2排出量削減未達により4℃シナリオに至った場合に発生する「気候変動による物理的変化に関するリスク」を想定し、TCFDの分類に沿って整理した上で事業インパクトを評価しました。
<検討に用いた主なシナリオや予測>2℃シナリオ:IPCC RCP2.6、IEA ETP 2DS 等
4℃シナリオ:IPCC RCP8.5、S&P Globalの“Mobility and Energy Future” サービスデータ 等
なお、ここでいう評価(影響度)、リスク/機会が現れる時期は、次の通りです。
小:数億円程度の影響
中:50億円程度の影響
大:100億円以上の影響
短期:中期経営計画の目標年度に合わせた2025年頃まで
中期:長期経営計画の目標年度に合わせた2030年頃まで
長期:長期経営計画の目指す姿に合わせた2040年頃まで
<気候関連のリスク>
また、主要な事業拠点を対象に、現状の洪水・渇水・高潮等のリスクポテンシャル調査を行い、想定される被害の程度や頻度を勘案した結果、深刻な被害が発生する可能性は低いことが分かりました。
一方、将来の洪水・渇水・高潮等のリスクポテンシャル調査も行い、降水量の増加が見込まれる地域があることが分かりました。しかし、洪水や土砂崩れなどのリスク増に直結するか否かは、各事業拠点の立地(地盤、標高、河川との距離など)や治水対策の状況によるため、引き続き調査を行います。
<気候関連の機会>
気候変動のリスクと機会をより具体的にするため、各事業について、2℃及び4℃シナリオ下における事業環境とその対応について検討した結果、物理的リスクについての致命的な影響は見受けられませんでした。
事業については、現在、売上収益の8割を占める内燃機関に関連する事業が大きな変革を迫られており、一方で、脱炭素社会の実現に向けて、水素関連をはじめとして新たなニーズや市場が期待されることから、「2030 長期経営計画 日特BX」において、今後注力する事業分野の一つに「環境・エネルギー」を掲げ、2040年に向けて事業ポートフォリオ転換(売上収益構成比率:内燃機関事業40%、非内燃機関事業60%)を推進しています。2025年3月期において事業ポートフォリオ転換進捗は(売上収益構成比率:内燃機関事業84%、非内燃機関事業16%)です。
自動車関連事業では2℃シナリオ下において、規制強化により将来的に売上減少が見込まれるため、事業ポートフォリオ転換が必要です。その他の事業については、2℃及び4℃いずれのシナリオ下においても、市場の動向を注視し、柔軟かつ戦略的に事業を展開しており、中・長期の観点からも高いレジリエンス性を有しています。
※1 内燃機関事業の財務面の影響額について
S&P Globalの分析に基づく当社予測では、各国の気候変動対策によって内燃機関への規制が進むことで、内燃機関を有する自動車は2030年代半ば以降減少すると見込んでいます。
一方、当社の内燃機関事業の中核であるスパークプラグは、新車用だけでなく補修用の需要もあり、当社予測では、引き続き内燃機関を有する自動車が保有されていると考えられることから、2040年以降に売上がピークを迎え、徐々に下降していくことを見込んでいます。こうした状況を踏まえて、内燃機関事業の売上収益が2040年度以降に2024年度から5%減少すると仮定して試算すると、売上収益の減少額は270億円、営業利益の減少額は70億円程度になります。
気候関連のリスク・機会について、川上から川下までのサプライチェーン全体を見渡して、短期・中期・長期における社会動向や規制動向などを予測し、TCFD提言の例示を参考にしながら、幅広くリスク・機会の項目を選定しています。
選定したリスク項目について、主に2℃シナリオの途上に起こる「低炭素経済への移行に関するリスク」と、世界のCO2排出量削減未達により4℃シナリオに至った場合に発生する「気候変動による物理的変化に関するリスク」を想定し、TCFDの分類に沿って整理した上で事業インパクトを評価しました。
<検討に用いた主なシナリオや予測>2℃シナリオ:IPCC RCP2.6、IEA ETP 2DS 等
4℃シナリオ:IPCC RCP8.5、S&P Globalの“Mobility and Energy Future” サービスデータ 等
なお、ここでいう評価(影響度)、リスク/機会が現れる時期は、次の通りです。
小:数億円程度の影響
中:50億円程度の影響
大:100億円以上の影響
短期:中期経営計画の目標年度に合わせた2025年頃まで
中期:長期経営計画の目標年度に合わせた2030年頃まで
長期:長期経営計画の目指す姿に合わせた2040年頃まで
<気候関連のリスク>
| リスク項目 | 事業インパクト(リスク) | 評価 (影響度) | リスクが 現れる時期 | ||
| 低炭素経済への移行に関するリスク | 政 策 ・ 法 規 制 | 炭素税 | ・炭素税が導入されると燃料調達コストに税金が課されることになるため、エネルギーコストや原材料コストが増加する。 | 大 | 短期~長期 |
| 国境炭素税 | ・国境炭素税が導入されると、輸出する製品に課税されることになるため、製品の価格競争力が低下する。 | 大 | 短期~長期 | ||
| 炭素排出規制 | ・GHG削減目標の達成が求められ、設備投資や再エネ電力購入等の対応コストが増加する。 | 大 | 短期~長期 | ||
| ガソリン車販売 | ・ガソリン車の新車販売を禁止する国では、OEM需要が無くなり、売上が減少する。 | 大 | 中期~長期 | ||
| 技 術 | 省エネ・再エネ技術の普及 | ・新たな省エネ・再エネ技術を導入するために、設備投資等の対応コストが増加する。 | 中~大 | 短期~長期 | |
| 新技術開発 | ・新技術への研究開発の投資コストが増加する。 | 大 | 短期~長期 | ||
| 市 場 | 顧客の変化 | ・2030年代以降に中古車でもZEVを選ぶ人が増え、プラグの交換需要が減少し、売上が減少する。 ・ライフサイクルでのCO2排出量が少ない製品が選ばれるようになり、従来品の売上が減少する。 | 大 | 長期 | |
| 評 判 | 投資家の変化 | ・内燃機関への風当たりが強くなり、ダイベストメントの対象となる。 | 小~中 | 中期~長期 | |
| 求職者の変化 | ・内燃機関への風当たりが強くなり、就職先として選ばれなくなる。 | 小~中 | 短期~中期 | ||
| 気候変動による物理的変化に関するリスク | 急 性 | 異常気象の激甚化 | ・台風等によって工場等への被害が発生し、操業停止や生産減少などが起こる。また、設備復旧への追加コスト等が発生する。損害保険料も増加する。 | 小~中 | 短期~長期 |
| 慢 性 | 海面の上昇 | ・海面上昇に伴って洪水や高潮が増加し、沿岸部にある工場や交通インフラが被害を受けてサプライチェーンが寸断され、対応コストが発生する。 | 小~中 | 長期 | |
| 降水・気象パターンの変化 | ・水不足が深刻化する地域にある工場で水利用が制限され、操業を停止・減少せざるを得なくなり、別工場での生産や輸送などの対応コストが発生する。 | 小~中 | 長期 | ||
| 平均気温の上昇 | ・猛暑の中で働く従業員に熱中症が頻発し、体力的な負担が増加するため、猛暑対応のためのコストや人件費が増加する。 | 小~中 | 長期 | ||
また、主要な事業拠点を対象に、現状の洪水・渇水・高潮等のリスクポテンシャル調査を行い、想定される被害の程度や頻度を勘案した結果、深刻な被害が発生する可能性は低いことが分かりました。
一方、将来の洪水・渇水・高潮等のリスクポテンシャル調査も行い、降水量の増加が見込まれる地域があることが分かりました。しかし、洪水や土砂崩れなどのリスク増に直結するか否かは、各事業拠点の立地(地盤、標高、河川との距離など)や治水対策の状況によるため、引き続き調査を行います。
<気候関連の機会>
| 側面 | 主な機会 | 機会が 現れる時期 |
| 資源の効率性 | ・新たな省エネ・再エネ技術の社内への導入が進み、エネルギーコストが減少する。 | 短期~長期 |
| エネルギー源 | ・炭素税が課税されない燃料として水素の需要が高まり、水素エネルギー市場で新たな機会が生まれる。 ・メタネーションなどの技術が発達し、e-Fuelなどの合成燃料が普及すると、現状の内燃機関ビジネスが継続される。 | 長期 |
| 製品/サービス | ・燃費規制に対応していくために、高付加価値製品の需要が増える。 | 短期~中期 |
| ・GHG削減が義務化されることで水素エネルギー市場が拡大すると予想され、水素関連技術やSOFC、SOECの需要が高まって、ビジネス機会が生まれる。 | 長期 | |
| ・電気を利用して水素を作る(SOEC)、回収したCO2を燃料にするなどのCO2循環関連ソリューションの需要が高まる。 | 長期 | |
| ・災害に備えて、エネルギーの地産地消(分散型の発電)が注目され、SOFCの需要が高まる。 | 長期 | |
| ・電気モーターや発電機に使われるセラミック関連技術・製品の需要が高まる。 | 中期~長期 | |
| 市場 | ・社会のニーズを捉えた気候変動に関連する新技術を開発することで、ビジネス機会が生まれる。 | 中期~長期 |
| 強靭性(レジリエンス) | ・災害に備えて、サプライチェーンも含めてBCM/BCPを継続的に強化していくことで、レジリエンスが高まる。 | 短期~長期 |
気候変動のリスクと機会をより具体的にするため、各事業について、2℃及び4℃シナリオ下における事業環境とその対応について検討した結果、物理的リスクについての致命的な影響は見受けられませんでした。
事業については、現在、売上収益の8割を占める内燃機関に関連する事業が大きな変革を迫られており、一方で、脱炭素社会の実現に向けて、水素関連をはじめとして新たなニーズや市場が期待されることから、「2030 長期経営計画 日特BX」において、今後注力する事業分野の一つに「環境・エネルギー」を掲げ、2040年に向けて事業ポートフォリオ転換(売上収益構成比率:内燃機関事業40%、非内燃機関事業60%)を推進しています。2025年3月期において事業ポートフォリオ転換進捗は(売上収益構成比率:内燃機関事業84%、非内燃機関事業16%)です。
| 検討対象とした事業 | 製品 | 今後の事業リスクと事業機会への対応 | 財務面の影響 | 長期経営計画での売上収益目標 |
| 自動車関連事業 | スパークプラグ、グロープラグ、 センサ | 2℃シナリオ下では、内燃機関を有する自動車への規制が厳しくなることで、将来、内燃機関部品の売上減少が想定される。一方で、電動車市場などの新市場への機会が生じる。 4℃シナリオ下では、内燃機関のさらなる省エネと有害ガスの排出抑制が求められるため、高性能化への対応を行う。 | 売上収益の一部に影響 ※1 | 4,500億円 (2029年度) |
| 燃料電池事業 | 燃料電池 | 2℃/4℃のいずれのシナリオ下においても非化石エネルギーの需要拡大が予想されるため、当該市場への対応を引き続き強化。 2℃シナリオにおいては、水素インフラの普及が予想され、加速的に市場が増える可能性がある。 | 2,000億円規模の市場が予想され、水素インフラの普及状況によっては上振れの可能性あり | 3,000億円 (2029年度) |
| その他の事業 | 半導体製造装置用部品、半導体パッケージ、酸素濃縮装置、ベアリング用ボールなど | 2℃/4℃のいずれのシナリオにおいても、リスク及び機会への影響は小さい。 | 小さい |
自動車関連事業では2℃シナリオ下において、規制強化により将来的に売上減少が見込まれるため、事業ポートフォリオ転換が必要です。その他の事業については、2℃及び4℃いずれのシナリオ下においても、市場の動向を注視し、柔軟かつ戦略的に事業を展開しており、中・長期の観点からも高いレジリエンス性を有しています。
※1 内燃機関事業の財務面の影響額について
S&P Globalの分析に基づく当社予測では、各国の気候変動対策によって内燃機関への規制が進むことで、内燃機関を有する自動車は2030年代半ば以降減少すると見込んでいます。
一方、当社の内燃機関事業の中核であるスパークプラグは、新車用だけでなく補修用の需要もあり、当社予測では、引き続き内燃機関を有する自動車が保有されていると考えられることから、2040年以降に売上がピークを迎え、徐々に下降していくことを見込んでいます。こうした状況を踏まえて、内燃機関事業の売上収益が2040年度以降に2024年度から5%減少すると仮定して試算すると、売上収益の減少額は270億円、営業利益の減少額は70億円程度になります。