有価証券報告書-第43期(2023/04/01-2024/03/31)

【提出】
2024/06/26 11:36
【資料】
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【項目】
157項目

対処すべき課題

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年6月26日)現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループでは、世界的な視野で建設・建築技術の高性能化を図りながら、市場ニーズに呼応した社会資本の充実、貢献に努めております。
当社は、21世紀のスタート、2001年4月1日に新しい経営理念を掲げました。
変化と新しい価値の創造
顧客に満足される新しい機能の創造
社会、自然環境との調和
社員の個性尊重 -意欲と能力の発揮による各人の豊かさの実現-
Making Changes, Creation of New Values for the Next Stage
当社の製品は、創業以来日本の社会資本の形成に大きく寄与してきたと認識しておりますが、日本経済における社会資本の形成が一段落し、プロダクト・サイクルが成熟期に入ったとの認識のもと、新しい理念は、変化と新しい価値の創造により重点を置くものとなっています。
この理念には、日常生活に身近な社会資本も常に人々の新しい要求に対し変化させなければならない、エスイーグループはコアテクノロジーをもとに長年培ってきた経験を活かし、これからも変化を先取りしながら新しい価値を創造し提供し続けていきたいとの想いが込められています。
(2)経営環境及び中長期的な会社の経営戦略
当初グループの主力事業である建設用資機材の製造・販売事業は、公共投資や建設業界の動向に大きく左右されます。中長期的には、「防災・減災、国土強靭化」、高速道路リニューアル、インフラ老朽化対応等需要面での好環境が続くことが予想されます。反面、これらの好環境の期間は、その終焉後に必要とされる新たな収益の柱となる新事業の創出及び既存事業の収益力の強化のために残された限りある準備期間と考えられます。
そのため、2020年3月には、2030年頃までの環境変化についての洞察を基に、2030年での「ありたい姿」「提供価値」について、「2030ビジョン」を策定しました。「2030ビジョン」実現のため、経営資源の戦略的投入・既存事業基盤の再構築と新たな価値の創造を骨子とした中期経営計画2020-2022を策定し、経営課題の解決に取り組みました。
しかしながら、中期経営計画2020-2022の3ヶ年は、新型コロナウイルス感染症拡大やウクライナ情勢等計画策定時には全く想定していない環境変化が生じ、期間中はそれらの環境変化が計画の遂行に大きな影響を与えました。財務上の数値面での計画比未達以上に、質的な変化を十分果たせなかったことが、大きな課題として残りました。
2022年度後半に、ありたい姿の抽象度が高かった「2030ビジョン」を、具体的な事業開発に結び付くようリニューアルする作業を開始し、その新ビジョンをもとに「中期経営計画2023-2025」を策定し、戦略的資源投入をより強化する計画としました。
[「中期経営計画2020-2022」の振り返り]
(百万円)2019年度2022年度2022年度
実績当初目標実績2019年度比当初目標比
連結売上高22,83926,00025,452+2,613△547
連結経常利益1,0631,6001,376+312△223
親会社株主に帰属する
当期純利益
2701,023870+599△152
営業利益率4.7%6.3%5.3%+0.6△1.0
ROE3.2%10.0%8.6%+5.4△1.4


戦略的
資源投入
「新たな価値創造」のための研究開発
(人件費・経費)・設備投資
計画実績
(3ヶ年合計概算額)(3ヶ年合計概算額)
25億円13億円
新たな
価値創造
ESCON二次製品開発では、埋設型枠、歩道床版、頭首工用の保護パネルの上市がほぼ予定通り進捗。しかしながら、今後の事業の柱になるには規模が小粒なため、今後は、ESCONスラブ(道路橋床版)等大規模修繕等を中心とした橋梁補修関連に開発資源を集中。
海外新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、長期に亘る渡航制限や現地活動の制限により、マーケティング活動の遅延。
エスイーグループの製品の海外展開とは別に、国内外の連携によるVJECを活用したBIM/CIM設計支援事業を立案。
プラズマ
発電事業
新型コロナウイルス感染症の拡大により研究開発、及び、資材の調達難により新実験棟の立ち上げが遅延。事業化の詳細決定を2023年度、発電所稼働は2026年度を目標としていたが、複数の発電方式の実証実験の優先順位も含め、工程を大幅に見直し。
その他事業土木分野の新製品の開発が主体で、新規事業の種まきまでに至らず。
既存事業基盤
再構築
工務部を中心とした設計折込体制・技術営業の強化や営業支援システムの導入等は進展。
生産面では、多品種少量生産への適応や技術情報の共有・伝承体制構築に遅れ。システム対応による抜本的な対応が急務。

[2030ビジョン(改訂後)]
《2030年度にエスイーグループがありたい姿》
エンジニアリングがつなぐ人とインフラ
Engineering With You.
私たちエスイーグループは、
1967年の創業以来、耐久性が高く、現場での調整が容易なインフラ資材を開発し、その土地の課題に寄り添い、最適なインフラの構造・資材・施工の組み合わせの実現に貢献してきました。橋をつなぐ、道路をつなぐだけでなく、その場所を周りの地域社会に、人々の暮らしを明日につなぐことにも通じるものでした。
時代は、「気候変動と自然災害」「インフラ老朽化」「少子高齢化や地域間格差」などの社会課題が深刻化し、耐久性の高さや維持管理性は、「サステナブルな社会」の仕組みとして意識されるようになりました。
今まで培った技術とエンジニアリングの力に新しい技術を積極的にクロスさせ、ときには、国内外の技術をオーガナイズし、これからも新たな価値の創造に挑戦し、内外のそこに住む人々のサステナビリティに貢献します。
サステナブルな社会へエスイーがつないでいきます。

[具体的な事業の姿(株式会社エスイー)]
これまでメーカーとして築いてきた事業基盤の上に、デジタルを活用したエンジニアリングサービスを展開し、国内外の防災、インフラの整備・維持管理に向けた幅広い貢献を担う企業となる。
・製品の開発による新分野開拓
官公需の分野内では、土木建設関係・道路・防災から砂防・農水等防災分野の拡大、土木建設関係以外の施設増強まで拡大。
官公需の分野を超えて、民需(交通・インフラ・建築)の鉄道・電力・通信等まで拡大。
・新しいビジネスモデルによる新事業
現在のモノ・製品の製造販売から、労役・サービスの提供(設計事業・施工維持管理支援)、更にはソリューションの提供(維持管理クラウドサービス等の新ビジネスモデル構築)まで拡大。
・海外事業
従来のODA・日系民間案件の建材貿易・ベトナム生産拠点構築に加え、海外事業の出発点としてBIM/CIM設計支援を位置付ける。
(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
長期ビジョンの実現、その前提となる環境変化に優先的に対処するための中期的な課題は以下のように認識しております。
①国土強靭化等の公共事業予算の追い風のある建設用資機材の製造・販売事業での着実な業容拡大と利益体質の強化
②今後の成長を牽引する新事業、新製品・新サービスなどの新しい価値の創造と早期収益化
③海外関連の事業再構築による業容を拡大
④企業価値向上のための資産効率の向上と経営基盤の強化
⑤建設用資機材の製造・販売事業以外では、
・建築用資材の製造・販売業での利益体質の強化
・建設コンサルタント事業の新たな収益の柱の育成
・補修・補強工事業においては抜本的な拡大策の展開
(4)中期経営計画2023-2025
以上の課題に対処するため、2022年度の後半より「中期経営計画2023-2025」の作成に取り掛かり、2023年5月に公表しております。
①中期経営計画の位置付け
この「中期経営計画2023-2025」の期間は、「2030ビジョン」のありたい姿実現に向けて、「既存事業の土台を盤石にしつつ、未来に向けた種まきをする期間」と位置づけております。
②基本方針
a)思い切った経営資源の戦略的投入の継続・強化
・・・前中期経営計画期間中に十分に実施できなかった戦略的な資源投入を強化します。先行投資により、本中期経営計画期間中の利益水準は2023年3月期に比較し低水準となりますが、戦略的な資源投入により2026年3月期以降の飛躍的な成長を遂げることを狙っていきます。
b)未来に向けた種蒔き
・・・従来より実証試験に注力してきた発電事業への先行投資を継続・強化します。
ESCON事業は、本中期経営計画期間中に橋梁大規模修繕関連の収益化を図り、利用分野を拡大します。新たに実施するBIM/CIM設計支援事業は本中期経営計画期間中にビジネスモデルを定着させ、拡大を図っていきます。既存事業領域から展開する新規事業等については開発体制の確立に注力し、抜本的に新規事業開発体制を改編していきます。
c)既存業務の土台固め
・・・既存事業の持続可能性を確実なものとし、上記の事業の展開に結び付けるために、生産業務の効率化・技術伝承対策、人材の定着・確保に向けた教育・評価制度改革等を実施していきます。
(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
経営指標につきましては、先行投資により、本中期経営計画期間中の利益水準は2023年3月期と比べ低い水準となります。2026年3月期には、報告セグメントに属さない研究開発費(その多くは発電事業に係るもの)を除いたレベルでは増益になる目標を掲げております。
資本効率の向上に係る目標の指標は、自己資本当期純利益率(ROE)としておりますが、上記の利益目標と同様に2023年3月期に比し、大幅な低下となりますが、報告セグメントに属さない研究開発部門の人件費・経費(その多くは発電事業に係るもの)を除いた既存事業では、9%を上回る水準を目指します。
株主還元につきましては、前中期経営計画と同様の方針のもと、株主資本配当率(DOE)(*)としております。
(*)株主資本配当率=配当金総額÷期末株主資本(新株式払込金を除く)×100
当事業年度を終える時点で、その時点での事業環境を踏まえ、計数計画を一部見直しました。具体的には、建設用資機材の製造・販売事業において、想定していたより当社製品を活用するODA案件が少なかったこと、新規製品の開発遅延等を主な要因として、売上高・利益を下方に修正しました。本項に記載の基本財務目標は、見直し後の数値を記載しております。2026年3月期には、報告セグメントに属さない研究開発部門の人件費・経費(その多くは発電事業に係るもの)を除いたレベルでは増益になる点は変更ございません。
基本財務目標2023年3月期2026年3月期
(当初計画)
2026年3月期当初計画比
売上高 (百万円)25,45228,50027,955△545
経常利益 (百万円)1,3761,2051,010△194
親会社株主に帰属する当期純利益 (百万円)870743546△197
経常利益 (百万円)
(報告セグメントに帰属しない研究開発部門の人件費・経費を除く)
1,7701,8931,777△115
収益性・配当
営業利益率 (%)5.34.23.6△0.6
自己資本当期純利益率(ROE) (%)8.67.0以上5.0△2.0
株主資本配当率(DOE) (%)3.83.5以上目安3.5以上目安