有価証券報告書-第81期(平成28年4月1日-平成29年3月31日)

【提出】
2017/06/29 15:38
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業績等の概要

(1) 業績
当連結会計年度における世界経済は、米国および欧州において景気の回復基調が継続し、中国をはじめとするアジアの新興国も政策効果などにより景気が回復に転じた結果、総じて緩やかに成長しました。
国内経済は、個人消費が徐々に持ち直し、企業収益も年度後半の円高一巡や海外経済の緩やかな成長に伴い改善するなど、力強さはないものの成長が続きました。
当社グループを取り巻く市場環境は、国内においては、需要の増加や在庫調整の進展などにより製造業の生産活動に復調の動きがみられましたが、設備投資は年度前半の円高進行による先行き懸念を受け伸び悩みました。海外においては、東アジア・東南アジアの水処理需要が引き続き増加しました。
このようななか、当社グループは平成27年度からスタートした3ヵ年の中期経営計画「CK-17」(Competitive Kurita 2017)に基づき、海外事業の拡大と収益性の改善および競争力のある商品・サービスの創出に注力しました。
海外事業の拡大については、米国での事業展開を加速するため、米国の水処理薬品の製造・販売会社であるフレモント・インダストリーズ,LLCを買収し、米国中西部に事業基盤を獲得しました。また、欧州・中東・アフリカ地域での経営効率を高めるため、クリタ・ヨーロッパGmbHとクリタ・ヨーロッパ APW GmbHを合併し、保有技術・ノウハウの融合と販売・生産体制の再編に取り組みました。さらに、海水淡水化と排水回収再利用に関する技術開発のスピードアップを図るとともに、最先端技術の情報収集とアジア地区顧客に対する技術PRのため、シンガポールに研究開発を行う新会社を設立することを決定しました。
収益性の改善については、既存の技術・商品に、独自のセンシング技術・水処理データ解析ノウハウを組み合わせ、顧客に対する提案力の強化に努めました。また、高い付加価値を提供できる案件に集中して取り組むとともに生産業務におけるプロセスの見直しや標準化を進めたことにより、工事案件の採算性が改善しました。
競争力のある商品・サービスの創出については、当社が保有する水処理装置と水処理薬品の要素技術を組み合わせた、水の再利用に貢献する標準型排水回収システム「CORR™システム(The Customized Optimal Ready-made Recycle System)」を開発しました。また、北米でIoTを活用したビッグデータ解析により商業施設・産業施設の節水に貢献するサービスを展開する米国ベンチャー企業のアパナInc.に出資し、同社との協業による新たなサービス事業の検討に着手しました。
結果として、当期の受注高は218,730百万円(前年同期比1.1%減)、売上高は214,187百万円(前年同期比0.1%減)となりました。利益につきましては、営業利益は19,452百万円(前年同期比1.9%減)、経常利益は20,074百万円(前年同期比1.8%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は法人税率改正などにより税金費用負担が軽減されたことから14,506百万円(前年同期比15.3%増)となりました。
セグメント別の業績は次のとおりであります。
(水処理薬品事業)
CK-17計画において水処理薬品事業は、国内市場における収益基盤を再構築するとともに、海外市場におけるシェアを拡大し、日本・アジア・欧州・北南米地域での世界四極体制の構築を目指しています。
国内では、IT・センシング技術の活用により収集したデータの解析結果に基づく提案活動を強化し、シェア拡大を図りました。海外においては、海外子会社の合併や企業買収のほか、成長市場であるベトナムおよびUAE(ドバイ)に現地法人を設立し、世界四極体制の整備を進めました。
新商品としては、小型冷却塔の中に置くだけの簡易な処理で長期間に渡ってレジオネラ属菌の繁殖防止、汚れの付着低減および腐食抑制効果を発揮する固形カートリッジ型の冷却水薬品「カプセルゼロ™KS」、ならびにトンネルなどの地下インフラ建設工事で用いられる泥水式シールド工法において発生する泥水の脱水性能・ろ過速度を向上させることにより泥水処理コストを低減する脱水剤「ソイルフレッシュ®」の新シリーズを開発しました。また、平成26年度の欧州事業買収により獲得した水処理薬品「セタミン®」を改良し、日本の毒物および劇物取締法とPRTR制度の対象物質を含有しないボイラ向け皮膜性アミン防食剤「セタミン®JP」を上市しました。さらに、IT・センシング技術を活用した水処理管理サービス「テレマックNEO®」および「S.sensing®」の用途拡大、機能向上に取り組み、サービスのラインナップを増やし、提案の幅を広げました。
受注高・売上高につきましては、国内では、顧客工場の操業度回復の動きがみられたことに加え、新商品・新サービスを活用した課題解決提案を強化したことにより、主力商品のボイラ薬品が増加に転じたほか、冷却水薬品、鉄鋼向けプロセス薬品が伸長し、受注高・売上高はともに増加しました。海外では、前連結会計年度から新規連結した欧州における買収事業の経営成績の連結対象期間が1ヵ月分増加したものの、円高の進行により海外子会社の受注高・売上高の円換算額が目減りし、受注高・売上高は減少しました。
事業全体の利益につきましては、前連結会計年度に発生した欧州における買収事業の取得原価の当初配分額の見直しに伴う一時的な費用がなくなったことから増益となりました。
この結果、水処理薬品事業全体の受注高は82,118百万円(前年同期比1.6%減)、売上高は81,883百万円(前年同期比2.1%減)、営業利益は7,231百万円(前年同期比11.8%増)となりました。
(水処理装置事業)
CK-17計画において水処理装置事業は、収益・コスト構造を見直し、将来にわたり安定収益を確保できる体制をつくりあげること、そして収益の柱となる新たなビジネスモデルを創出し、事業を持続的に成長させていくことを目指しています。
国内では、営業、生産(設計・工事など)、開発の連携を強化し、注力する産業分野・顧客の課題や要求レベルに合致した総合的な提案を強化するとともに、規格型装置・標準図面の整備および業務プロセスの見直しによる生産活動の効率化に取り組みました。海外では、日本本社、海外グループ会社間の連携強化、およびプロジェクトマネジャーによる工程・原価管理の強化を図りました。また、前期後半に韓国大手半導体メーカー向けに開始した第1期の超純水供給事業は、顧客工場の安定操業への貢献により信頼を獲得し、当期の第2期の受注につながり、韓国における事業拡大の基盤を整えました。
新商品としては、食品産業廃棄物をメタン発酵してバイオガス発電を行う施設向けに、メタン発酵時に発生する高濃度窒素系廃液を高効率に処理する技術「連続一槽型ANAMMOXプロセス」を開発し、当社の湿式メタン発酵システムの競争力を向上しました。また、顧客の敷地内に当社資産の中小型純水装置を設置し、運転状況や処理水質をリアルタイムで遠隔監視する純水供給サービス「KWSS(Kurita Water Supply Service)」を開始しました。
受注高・売上高につきましては、国内では、電子産業分野においては、メンテナンス・サービスの受注高は、前期に好調であった反動もあり減少しましたが、水処理装置の受注高は大型案件の受注により大幅に増加しました。また同分野向けの売上高は、メンテナンス・サービスは概ね横ばいでしたが、水処理装置は減少しました。一般産業分野においては、水処理装置の受注高は、前期の大型案件受注の反動があり減少しましたが、メンテナンス・サービスの受注高は民間工場向け、官公需向けともに増加しました。電力分野の受注高は、火力発電所向け排水処理装置や設備洗浄工事の大型案件の受注により大幅に増加し、土壌浄化の受注高も大型案件の受注があり増加しました。売上高は、電力向けの水処理装置は減少しましたが、その他の水処理装置、土壌浄化およびメンテナンス・サービスは増加しました。海外では、受注高は、前期の中国および台湾向けの大型案件の反動で減少しましたが、売上高は中国および韓国の電子産業向け大型案件を中心に増加しました。なお、超純水供給事業の国内および海外を合わせた売上高は、新たに契約した案件の収益計上がありましたが、契約期間満了や一部顧客との契約変更による影響があり、減少しました。
事業全体の利益につきましては、水処理装置およびメンテナンス・サービスは、売上高増加と原価管理徹底による採算性改善があったものの、超純水供給事業の減収の影響を受け減益となりました。
この結果、水処理装置事業全体の受注高は136,611百万円(前年同期比0.9%減)、売上高は132,304百万円(前年同期比1.2%増)、営業利益は12,220百万円(前年同期比8.6%減)となりました。
(2) キャッシュ・フロー
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、65,438百万円となり、前連結会計年度末に比べ21,846百万円増加しました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動で得られた資金は、33,941百万円(前年同期比7,359百万円増)となりました。これは主に、税金等 調整前当期純利益20,465百万円、のれん償却を含む減価償却費15,857百万円、売上債権の減少額2,030百万円、仕入債務の増加額1,525百万円等で資金が増加したことに対し、その他の流動資産の増加額866百万円、法人税等の支払額6,893百万円等で資金が減少したことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動で使用した資金は、1,119百万円(前年同期比32,053百万円減)となりました。これは主に、定期預金の預入・払戻による差引収入13,960百万円等で資金が増加したことに対し、超純水供給事業用設備等の有形固定資産の取得による支出10,156百万円、事業買収に伴う支出(買収資産に含まれる現金及び現金同等物控除後)4,506百万円等で資金を使用したことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、10,154百万円(前年同期比4,447百万円増)となりました。これは主に、長期借入による収入2,329百万円で資金が増加したことに対し、配当金の支払額5,761百万円、自己株式の取得による支出5,195百万円及び短期借入金の純減額665百万円等で資金を使用したことによるものであります。