有価証券報告書-第72期(令和1年7月1日-令和2年6月30日)

【提出】
2020/09/25 9:57
【資料】
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【項目】
178項目

対処すべき課題

(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、創業以来「喜んで働く」ことを経営理念として、「カスタマー・ファースト」を貫き、客先のニーズに合せてパッケージングプラントをターンキーで提供するビジネスを主体とし、そこで培われた技術の応用展開によってニュービジネスにチャレンジし、会社の発展とともに社会に貢献することを目指しております。
(2) 目標とする経営指標
当社グループは、経営の効率化による収益性の向上を重要視しており、売上高および収益の長期・持続的な増大を目標に、売上高経常利益率を重要な経営指標としております。
(3) 中長期的な会社の経営戦略
当社グループは、長期の売上高目標を2,000億円とし、中期の戦略を立案のうえ、世界のトップを走る技術の開発・育成・強化を図り、売上高経常利益率の向上を目指します。
各事業分野において、ダントツ製品の開発により新分野を開拓し、新興国をはじめグローバルに販売の拡大を目指すとともに、事業の内容に応じて、適時にM&Aを実行し、対応力強化を図ります。
また、熾烈な価格競争が続く今日、競争力を維持するため、徹底的なコスト破壊を推進します。
(4) 経営環境および会社の対処すべき課題
① 経営環境
各セグメントにおける経営環境は以下のとおりであります。なお、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、各国において移動制限や外出自粛要請などの措置が講じられ、世界経済はかつて経験したことのない状況にあります。当社グループでは、殆どの製品を受注生産しており、新型コロナウイルス感染拡大前の受注残高があること、また主力のパッケージングプラント事業においては飲料・食品・日用品・薬品などの生活必需品を生産するユーザーが多いことから、直ちに大きな影響を受けることは想定されておりませんが、終息の時期を予測することは困難とされていることを考慮し、引き続き影響が最小限で留まるよう努めます。
(a) パッケージングプラント事業
パッケージングプラント事業は、顧客が清涼飲料業界を中心に酒類、食品、医薬品、トイレタリーなど多岐に亘っており、また生活必需品を生産するユーザーが多いことから、景気の影響を受けにくいという特長があります。その中でも、飲料を無菌環境下でペットボトルに常温で充填する無菌充填システムに関しては、技術的な優位性が多くのユーザーに支持されており、国内シェアは80~90%と推定しております。当社グループの飲料用無菌充填システムは、ペットボトルの薄肉化によるプラスチック消費量の削減、水資源の消費量の削減、また再生ペット樹脂100%ボトルへの技術的な対応などを実現しており、プラスチックごみの海洋汚染への問題意識が高まる中、ペットボトルのリサイクルをはじめ、持続可能な社会の実現に向けてユーザーが推進している活動に貢献しております。
国内の飲料市場は、健康志向の高まりからお茶や清涼飲料水などの低酸性飲料に人気が集中しており、消費者のニーズや嗜好の多様化も見られ、消費マインドの底堅さを背景に設備需要は堅調に推移してきました。しかしながら、少子化により国内の人口減少が進んでいることから、市場は長期的には縮小すると見込まれます。また、プラスチックごみによる海洋汚染問題をはじめとして、環境に配慮した容器や環境保全への取り組みがより一層求められることが見込まれます。このような状況のなか、当社グループが開発した環境に配慮し薬剤や無菌水の使用量を大幅に削減した電子線ボトル滅菌方式による無菌充填システムの市場ニーズは今後益々高まるものと見ており、これらの拡販戦略により更なる需要喚起は可能と見込んでおります。
また、海外においては、アジア等の新興国では消費者の嗜好の変化や所得水準の向上により衛生環境への意識が高まっていること、北米市場では健康志向の高まりにより低酸性飲料の需要が増加していることから、飲料用無菌充填システムの需要増加が見込まれ、海外での販売拡大が期待できる環境下にあります。
なお、近年注力しております再生医療システム事業では、主に大学やスタートアップ企業との共同研究開発ならびに講座等への協力を通じた産学官連携により高度な先端医療技術の研究をサポートするとともに、再生医療の実用化に向けた量産体制を担うための製品開発を進めております。再生医療システム事業は、現在揺籃期を脱しつつあり、将来の中核を担う事業に発展すると見込んでおります。
(b) メカトロシステム事業
メカトロシステム事業では、医療機器、半導体製造装置、切断加工機およびプレス機の製造販売を行っており、当事業の第1の柱である医療機器は、そのほとんどがOEM契約により製造している人工透析装置であります。国内における透析患者数は近年増加率が縮小傾向にあり、長期的には、国内人口の減少に伴い需要が減少していくことが予測されます。一方、海外では、ここ数年中国、インドを中心に世界の透析患者数が増加しており、当社の人工透析装置の海外向け売上高の割合は70%を超えております。このような状況のなか、当社はこれまで未開拓であった米国市場向けを視野に入れ製品開発を進め、米国食品医薬品局(FDA)の認可を受けるとともに、人工透析装置の生産工場を拡張し、米国市場への供給体制が整いました。
当事業の第2の柱である半導体製造装置は、約50%をアジア諸国へ輸出しております。半導体業界は、短周期での技術革新により常に最先端の技術が求められ、当社では顧客ニーズに応じた研究開発に持続的に注力しております。今後においては特に5G対応の光通信用部品を製造するボンダの需要が拡大するものと見込んでおります。
(c) 農業用設備事業
農業用設備事業では、主として農協向けに柑橘類用、落葉果樹類用および蔬菜類用の選果・選別プラントを製造販売しております。日本国内における農業を取り巻く環境は、各国際協定により、多くの農産物が関税撤廃の対象となっており、今後、国内産地の競争力の低下が懸念される状況にあります。更には、農業従事者の高齢化や担い手不足を背景とした大規模化など、農業の構造改革が今後もより一層加速することが見込まれます。これに対し国は、収益強化に計画的に取り組む産地を対象に、その実現に必要な農業機械の導入、集出荷施設等の整備支援政策をとっており、この政策のもと、集出荷施設の再編や施設の大型化に伴う設備更新需要は高まるものと見込まれます。このような状況のなか、当社グループは選果・選別システムの国内トップメーカーとして、農業生産力を高めるための先端技術である「スマート農業」を推進し農業の持続的発展に貢献すべく努めます。今後においては、高品質で付加価値の高い国際競争力のある農産物の生産の実現に向けて、最新のAI技術等を応用した光センサ、ならびに、サイズや形状・硬度が不均一な青果物であっても適切な力加減で柔軟かつ正確な把持やハンドリングが可能なリアルハプティクス技術により、自動化と省力化が図られた高品質な選果・選別プラントの市場ニーズに高まりが見られ、当社の選果・選別プラントの需要は増加すると見込んでおります。
② 会社の対処すべき課題
当社グループは、グローバル競争に勝ち抜いて成長、発展するため、技術力と品質の向上に注力し、国内外を問わず新市場を開拓し、新製品の開発に努めるため、以下の重点施策に取り組みます。
(a) 世界のトップを走るダントツ製品づくりをさらに推進し、収益の拡大を目指します。
(b) 海外市場の開拓により、海外売上の拡大に注力します。
(c) 3カイ(改善、改革、開発)の強力推進および予実管理の徹底に取り組み、収益力の向上に努めます。
(d) 再生医療システムについては、新機種の開発や機器の販売とともに細胞培養受託加工事業にも取り組みます。
(e) これらの諸施策を推進しつつ、持続的な企業成長を確保するため、新製品開発、新市場開拓、新事業創出を推進する人財育成に注力します。
(f) 新事業分野への参入やM&Aに戦略的に取り組みます。