有価証券報告書-第37期(2024/04/01-2025/03/31)
2)戦略
当社グループの事業に影響を与えると想定される気候関連リスク・機会を特定した上で、国際エネルギー機関(IEA)や気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が公表する複数のシナリオを参照の上、パリ協定の目標である「産業革命前からの気温上昇を1.5℃未満に抑える」ことを想定した政策移行への影響が大きいシナリオ(1.5℃シナリオ)、及び環境規制が強化されず物理リスクが高まるシナリオ(4.0℃シナリオ)それぞれの世界観においてTCFDが提言するシナリオ分析を実施し、顕在化時期の時間軸を短・中・長期として、各リスクと機会の事業への影響度と発生可能性を分析しております。また、各リスクと機会への対応戦略を短期と中長期の時間軸で検討し、リスクを最小化することに加え、機会にも注目・転換することで、事業機会を拡大・創出し、何れの気候変動シナリオ下でも、当社グループのレジリエンスの向上と持続的成長を実現できるように取り組んでまいります。
⦅気候シナリオ分析の前提⦆
⦅気候シナリオの概要⦆
⦅1.5℃シナリオで識別したバリューチェーン上の気候関連リスク・機会と対応策⦆
⦅4.0℃シナリオで識別したバリューチェーン上の気候関連リスク・機会と対応策⦆
⦅気候及び水関連リスクの財務影響評価⦆
シナリオ分析で識別した気候及び水関連リスクのうち以下2つのリスクについて、当社グループへの財務影響額を試算した結果は以下の通りです。
当社グループの事業に影響を与えると想定される気候関連リスク・機会を特定した上で、国際エネルギー機関(IEA)や気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が公表する複数のシナリオを参照の上、パリ協定の目標である「産業革命前からの気温上昇を1.5℃未満に抑える」ことを想定した政策移行への影響が大きいシナリオ(1.5℃シナリオ)、及び環境規制が強化されず物理リスクが高まるシナリオ(4.0℃シナリオ)それぞれの世界観においてTCFDが提言するシナリオ分析を実施し、顕在化時期の時間軸を短・中・長期として、各リスクと機会の事業への影響度と発生可能性を分析しております。また、各リスクと機会への対応戦略を短期と中長期の時間軸で検討し、リスクを最小化することに加え、機会にも注目・転換することで、事業機会を拡大・創出し、何れの気候変動シナリオ下でも、当社グループのレジリエンスの向上と持続的成長を実現できるように取り組んでまいります。
⦅気候シナリオ分析の前提⦆
| 対象範囲 | 事業拠点 | 国内外グループ会社の全事業拠点(連結売上高カバー率100%) |
| 製品 | 減速装置、メカトロニクス製品(連結売上高カバー率100%) | |
| バリューチェーン | 上流(サプライヤー様)、直接操業(当社グループ会社)、下流(お客様) | |
| 時間軸の定義 | 短期:0~3年、中期:3~10年、長期:10~30年、超長期:31年以上 | |
⦅気候シナリオの概要⦆
| シナリオ | シナリオの概要 | 主要な 参照シナリオ |
| 1.5℃ シナリオ | ⦅世界観⦆ ・規制強化により気候変動が沈静化し、低炭素型の市場や技術進歩が進展する。 ・サステナビリティ志向の浸透により、各所でコストが増加、企業では調達・生産・製造・物流・販売等の側面からの事業の見直しに直面する。 ⦅主な仮定・パラメーター⦆ ・炭素税額の上昇などにより再エネ利用や高効率化が進展 ・省エネ、脱炭素製品向け部品の需要が増加 ・政策における脱炭素や循環型経済が推進・拡大 ・2050年には90%の電気が再生可能エネルギー由来に ・再生材のニーズが増加 ・低炭素化に向けた研究開発やプロセス改善が促進 ・温室効果ガス排出量等の情報開示要請の加速 ・GHG排出企業からの投資引き上げが進む 等 | ⦅IEA⦆ NZE2050 (Net Zero Emissions by 2050 Scenario) |
| 4.0℃ シナリオ | ⦅世界観⦆ ・化石燃料への依存が継続する中で、洪水・台風等自然災害が頻発化する。 ・気温・海面上昇等の不可逆変化により企業の生産活動が不安定化する。 ⦅主な仮定・パラメーター⦆ ・低炭素化が進まず大量の温室効果ガスを排出 ・自然災害により企業活動が停滞、生産・調達等が遅延 ・2100年には、猛暑日(最高気温 35℃以上の日)が現在よりも20日前後増加 ・降水パターンの変化で、干ばつや季節による降雨量の差が拡大し、操業に必要な水の確保が困難に ・2050年で約20cm、2100年頃には約70cm海面が上昇する 等 | ⦅IPCC⦆ RCP8.5(Representative Concentration Pathways 8.5) |
⦅1.5℃シナリオで識別したバリューチェーン上の気候関連リスク・機会と対応策⦆
| リスク/機会 | 顕在化時期 | 発生可能性 | 影 響 度 | 対応戦略 | ||||
| 区 | 分 | 要因 | 事業への影響 (財務・非財務) | 時間軸 | 主な施策 | |||
| 移行リスク | 法規制 | 規制強化 | サステナビリティ関連法規制の拡大・厳格化に伴う対応負荷の増加、対応を怠ることで取引制限、罰則等に発展する可能性 | 短期 | 中 | 大 | 短期 | ・関連規制の動向調査と事業への影響評価を実施し、早期から対応策を実施 ・連結グループでのサステナビリティ情報管理・開示体制の強化 |
| 中長期 | ・サステナビリティ情報管理の効率化、IT基盤をグループ全体で構築 ・新たな規制への早期準備し、対応することで事業機会損失を防止 | |||||||
| 原材料 価格高騰 | 電化や脱炭素に伴う原材料価格の高騰(鋼材・アルミ・鋼・レアアース等) | 中期 | 低 | 大 | 短期 | ・原材料価格上昇による財務的影響を評価 | ||
| 中長期 | ・新素材の利用可能性の研究を推進 ・使用済自社製品の回収・リサイクルシステムの構築を検討・実施 | |||||||
| 規制強化 | カーボンプライシングにより排出に伴う支出(課税)が増加 ※28ページ⦅気候及び水関連リスクの財務影響評価⦆を参照 | 中期 | 高 | 大 | 短期 | ・カーボンプライシング(炭素税)による事業への影響評価、対応策実施 | ||
| 中長期 | ・電化、再エネ転換を推進し、GHG絶対排出量を削減 ・電化が困難な設備は、低炭素燃料(バイオマス・水素等)への燃料転換を推進 | |||||||
| 技術 | 低炭素技術の開発 | 低炭素製品の開発競争が激化し、対応が遅れた場合、製品の競争力が低下 | 中期 | 低 | 大 | 短期 | ・低炭素製品に関するお客様および技術の動向を調査し、ニーズに応える製品・サービスの提供に向けた戦略を策定 ・製品LCA(ライフサイクルアセスメント)を実施し、環境性能を可視化・改善 | |
| 中長期 | ・環境配慮設計の推進 ・調達先と協働して、サプライチェーン(調達部材)の低炭素化を推進 | |||||||
| 省エネ技術の普及 | 排出削減に向けた設備投資や省エネ化の負担増 | 短期 | 中 | 大 | 短期 | ・定期的にGHG排出削減対策のコスト効果を詳細に分析し、ネットゼロ移行計画を改定 ・ICP(社内炭素価格)導入により、省エネ設備投資の経済的優位性を可視化し、省エネ設備投資を検討・実施 | ||
| 中長期 | ・省エネ設備投資に係る補助金制度を活用し、イニシャルコストを削減 | |||||||
| リスク/機会 | 顕在化時期 | 発生可能性 | 影 響 度 | 対応戦略 | ||||
| 区 | 分 | 要因 | 事業への影響 (財務・非財務) | 時間軸 | 主な施策 | |||
| 移行リスク | 市場 | エネルギー価格の 高騰 | 再生可能エネルギーの導入に伴うエネルギー価格の高騰 | 短期 | 低 | 中 | 短期 | ・エネルギー消費量削減につながる設備更新等により、GHG排出量削減を推進 ・再エネ価格変動の予測分析に基づき、戦略的に再エネ転換を推進 |
| 中長期 | ・電力価格予測に基づき、PPAによる価格固定化を検討 ・適格カーボンクレジットの活用 | |||||||
| 原材料の 価格高騰 | 電化や脱炭素に伴う原材料価格の高騰(鋼材・アルミ・鋼・レアアース等) | 中期 | 低 | 大 | 短期 | ・原材料価格上昇による財務的影響を評価 | ||
| 中長期 | ・新たな素材(他の金属・樹脂等)の利用可能性を検討 ・使用済自社製品の回収・リサイクルシステムを構築 | |||||||
| 低炭素技術の開発 | 低炭素材料(グリーン材料・リサイクル材料)への切り替えのための技術開発費増加 | 短中期 | 低 | 大 | 短期 | ・低炭素材料に関する規制、市場動向、技術動向を調査し、研究開発を推進 | ||
| 中長期 | ・低炭素材料の調達コスト低減および安定供給に向け、調達先と協働 | |||||||
| 既存技術の需要減 | 石油・天然ガス・紙の需要減少に伴う関連用途向け製品の売上減 | 中期 | 低 | 小 | 短期 | ・市場、お客様、技術動向の調査に基づき、事業戦略を構築・展開 | ||
| 中長期 | ・市場、お客様動向に沿った新製品・サービスの開発、販売を推進 | |||||||
| 評判 | 企業イメージの 低下 | 気候変動対応が不十分と判断されることによるレピュテーションリスク(社会、消費者、従業員) | 中期 | 中 | 大 | 短期 | ・気候移行計画、目標に対する進捗などの気候関連情報開示を強化 | |
| 中長期 | ・地球環境、事業環境の変化に応じた気候移行計画の見直し・遂行 ・2030年度のGHG排出量を、2022年度比30%減目標達成 ・2050年ネットゼロ目標の達成 | |||||||
| リスク/機会 | 顕在化時期 | 発生可能性 | 影 響 度 | 対応戦略 | ||||
| 区 | 分 | 要因 | 事業への影響 (財務・非財務) | 時間軸 | 主な施策 | |||
| 機会 | 資源効率 | 省エネ技術の普及 | 低GHG排出設備への更新の結果、エネルギーコストの削減や炭素税の負担が軽減 | 中期 | 中 | 大 | 短期 | ・GHG排出削減対策のコスト効果を詳細に分析し、ネットゼロ移行計画を改定 ・ICP(社内炭素価格)を導入し、省エネ設備投資による経済的効果を可視化することで、省エネ設備投資を促進 |
| 中長期 | ・省エネ設備投資に係る補助金制度を活用し、イニシャルコストを削減 | |||||||
| 製品とサ|ビス | 低炭素技術の普及 | 社会の低炭素志向が促進されることによる低炭素製品関連への売上増加 | 中期 | 高 | 大 | 短期 | ・低炭素製品の市場動向を調査し、新たな用途開拓を推進 | |
| 中長期 | ・ハーモニックドライブ®の小型・扁平という特長を活かし、低炭素社会のニーズに応える製品を開発、販売 | |||||||
| 低炭素技術の開発 | 低炭素材料に対する需要拡大 | 中期 | 高 | 大 | 短期 | ・低炭素材料に関する規制、市場動向、技術動向を調査し、研究開発を推進 | ||
| 中長期 | ・調達先との協働で、低炭素材料の低コスト化および安定供給を推進 | |||||||
⦅4.0℃シナリオで識別したバリューチェーン上の気候関連リスク・機会と対応策⦆
| リスク/機会 | 顕在化時期 | 発生可能性 | 影 響 度 | 対応戦略 | ||||
| 区 | 分 | 要因 | 事業への影響 (財務・非財務) | 時間軸 | 主な施策 | |||
| 物理リスク | 急性 | 自然災害の激甚化 | 自然災害(台風・豪雨等)の激甚化・頻発化により、サプライチェーンの混乱が生じ、原材料の調達遅延や停止が発生 | 短期 | 中 | 中 | 短期 | ・調達先/原材料のリスク評価を実施し、被災時の代替策を検討 |
| 中長期 | ・調達部材の内製化を検討 ・リスク分散の観点から調達先の多様化を推進 | |||||||
| 自然災害の激甚化・頻発化により、事業拠点の損壊や操業停止、生産量の減少が発生 ※28ページ⦅気候及び水関連リスクの財務影響評価⦆を参照 | 短期 | 中 | 中 | 短期 | ・国内外グループ全拠点の被災リスク評価を実施 ・観測史上最大レベルの自然災害を想定し、事業拠点およびグループ全体のBCPを見直す | |||
| 中長期 | ・製造拠点被災時の代替生産計画を策定 ・浸水防止設備の設置 ・被災リスクや影響が大きい事業拠点の移転を検討・実施 | |||||||
| 慢性 | 水不足 | 降水パターンの変化により水利用可能性が低下、取水制限等が実施されることで操業停止が発生、水価格高騰により生産コストが増加 | 中長期 | 低 | 中 | 短期 | ・グループ全拠点の水リスク評価を実施し、高リスク拠点における対策を実施 | |
| 中長期 | ・生産プロセスにおける水使用効率の改善、水リサイクルシステムの導入等により水使用量を削減 ・水リスクが高い事業拠点の移転を検討・実施 | |||||||
| 海面上昇 | 海面水位上昇による沿岸部事業拠点の浸水被害増加 | 超長期 | 低 | 小 | 短期 | ・沿岸部事業拠点を対象に、長期的な海面水位上昇のリスク評価を実施 | ||
| 中長期 | ・海面水位上昇による影響が懸念される事業拠点の移転を検討・実施 | |||||||
| 気温上昇 | 気温上昇により労働生産性が低下 | 中期 | 低 | 小 | 短期 | ・熱中症防止施策の徹底 ・従業員教育などによる救護体制の強化 | ||
| 中長期 | ・空調設備システムの見直し・導入 ・高温となる時間帯を考慮した勤務時間や勤務ローテーションを実施 | |||||||
| 気温上昇に対応するため、事業拠点の冷房設備の増設・更新費用、空調費用が増加 | 中期 | 中 | 大 | 短期 | ・ICP(社内炭素価格)導入により、省エネ設備投資の経済的優位性を可視化し、省エネ設備投資を促進 | |||
| 中長期 | ・省エネ設備投資に係る補助金制度を活用し、イニシャルコストを削減 ・空調システムの高効率化、事業拠点の断熱性能向上により、空調費用を削減 | |||||||
| リスク/機会 | 顕在化時期 | 発生可能性 | 影 響 度 | 対応戦略 | ||||
| 区 | 分 | 要因 | 事業への影響 (財務・非財務) | 時間軸 | 主な施策 | |||
| 機会 | レジリエンス | 製造拠点の分散 | 製造拠点の分散等により、自然災害にレジリエントな物流を可能にすることで、お客様からの信頼性が高まる。 | 短期 | 低 | 大 | 短期 | ・グループ全拠点の被災リスク評価を実施 ・観測史上最大レベルの自然災害を想定し、事業拠点およびグループ全体のBCPを見直し、強化 |
| 中長期 | ・製造拠点被災時の代替生産計画を策定 ・浸水防止設備の設置 ・被災リスクや影響が大きい事業拠点の移転 | |||||||
| 調達先の分散 | 調達先の分散等により自然災害にレジリエントな物流を可能にすることでお客様からの信頼性が高まる。 | 短期 | 低 | 大 | 短期 | ・調達先/原材料のリスク評価を実施し、被災時の代替策を検討 | ||
| 中長期 | ・調達先多様化によるリスク分散 ・リスク分散の観点から調達先の多様化を推進 | |||||||
⦅気候及び水関連リスクの財務影響評価⦆
シナリオ分析で識別した気候及び水関連リスクのうち以下2つのリスクについて、当社グループへの財務影響額を試算した結果は以下の通りです。
| リスクの概要 | 財務影響額(試算) | 財務影響額試算の前提 |
| 1.5℃シナリオにおける移行リスク 「2030年 炭素税によるコスト増大」 | コスト増加 約2.5億円 | 前提① 2030年の炭素税価格を16,800円に設定 IEA NZEシナリオで示されている2030年の炭素価格(先進国※)などの将来予測を参照し、当社独自で設定した。 ※IEA NZEシナリオの先進国における炭素税参照の理由は、当社 グループのGHG排出量の99%以上が先進国(日本・ドイツ・米 国・韓国)の製造工場から排出されているため 前提② 2030年にかけて平均気温の上昇が継続 IPCC第6次評価報告書で示されたGHG排出が非常に少ないSSP1-1.9シナリオ下においても、2030年にかけて平均気温は上昇すると予測されている。 財務影響額試算では、気温上昇による冷却エネルギー(炭素税)の増大を考慮した。 前提③ 2030年にかけて事業成長により生産量が増加 2030年にかけて当社グループの事業成長による生産量増加に伴い、エネルギー消費量も増加 財務影響額試算では、生産量増加により、2030年にかけて毎年一定の割合で消費エネルギー(炭素税)が増加することを想定 |
| 4.0℃シナリオにおける物理リスク 「自然災害激甚化による浸水被害」 | 売上高減少 約0.8億円~1.6億円 | 前提① 浸水被害の影響が大きいと特定した1事業拠点が評価対象 WRI(World Resources Institute:世界資源研究所)が提供する水リスク評価ツール「Aqueduct」と国土交通省の「浸水ナビ」を使用し、連結グループ全拠点の水リスクを評価した。浸水した場合に、当社グループ事業への影響が大きいと思われる拠点を財務影響額試算の対象としていた。 前提② 国土交通省「浸水ナビ」の最大浸水深(48cm)を想定 豪雨・洪水の激甚化による当該拠点における被害規模として、国土交通省「浸水ナビ」で示された最大浸水深(48cm)の浸水を設定 前提③ 浸水による生産停止期間を2週間~4週間に設定 浸水により生産設備が損害を受け、2週間から4週間に渡り生産が停止することを想定 |