有価証券報告書-第79期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)
文中の将来に関する事項については、当連結会計年度末現在における予想や一定の前提に基づくものであり、これらの記載は実際の結果と異なる可能性があるとともに、その達成を保証するものではありません。
(1)経営の基本方針
エプソンは、創業当時からの独自の強みである「省・小・精の技術」を基盤として、自らの常識やビジョンを超えて果敢に挑戦しイノベーションを生むことにより、画期的なお客様価値を継続的に創造し、より良い社会の実現に「なくてはならない会社」として中心的な役割を果たすことを目指しています。
そして、以下の経営理念およびグローバルタグラインのもと、お客様の期待を超える価値の創出に向けて、全社員が価値観を共有のうえ総合力を発揮し自律的に行動することにより、目指す姿の実現に努めてまいります。
経営理念
お客様を大切に、地球を友に、個性を尊重し、総合力を発揮して
世界の人々に信頼され、社会とともに発展する
開かれた、なくてはならない会社でありたい。
そして社員が自信を持ち、常に創造し挑戦していることを誇りとしたい。
EXCEED YOUR VISION
私たちエプソン社員は、常に自らの常識やビジョンを超えて挑戦し、お客様に驚きや感動をもたらす
成果を生み出します。
(2)優先的に対処すべき事業上および財務上の課題
エプソンは、将来にわたって追求する「ありたい姿」として設定した「持続可能でこころ豊かな社会の実現」に向け、2021年3月に長期ビジョンを見直し、「Epson 25 Renewed」を策定しました。また、エプソンとして重視している環境問題への対応では、「環境ビジョン2050」を改定し、2050年に「カーボンマイナス」と「地下資源(※1)消費ゼロ」の達成を目指すこととしました。
※1 原油、金属などの枯渇性資源
①エプソンが将来にわたって追求する「ありたい姿」
現在、気候変動や新型コロナウイルスをはじめ、人類はさまざまな社会課題に直面しています。また、物質的、経済的な豊かさだけでなく、もっと精神的な豊かさ、文化的な豊かさ、そういったさまざまな豊かさを含めた「こころの豊かさ」こそが望まれる時代となったと考えています。そのためには、持続可能な社会であることが大前提になります。このような背景のもと、エプソンは、常に社会課題を起点として、その解決に向けて私たちに何ができるか、私たちの技術を使ってどう課題解決し、社会に貢献できるか、という発想でビジネスを展開していきます。これにより、今後、上述のエプソンが将来にわたって追求する「ありたい姿」の実現に取り組んでまいります。
②「Epson 25 Renewed」
a.「Epson 25」振り返り
従来の長期ビジョン「Epson 25」の策定後、上述のように社会環境は大きく変化してきています。加えて、製品・サービスの拡充や基盤強化の取り組みを進めてまいりましたが、十分な成果には結びついておらず、以下に掲げるいくつかの問題点と要因があったと認識しています。
これらの振り返りを踏まえた対応として、事業領域の目指す姿を再定義し、戦略を進化させると同時に、今後、事業領域を跨いだ「環境」「DX」「共創」の取り組みを強化していきます。また、事業ポートフォリオを明確化し、適切な経営資源配分を行うとともに、戦略実行を支える経営基盤の一層の強化にも取り組みます。
b.外部環境認識
「Epson 25 Renewed」を実現するにあたり、エプソンを取り巻く外部環境として、以下の点を認識しています。
●デジタル化、AIなどの進化により、消費や生活様式が多様化するというメガトレンドが加速し、前倒しで進んでいる
●環境問題をはじめとした社会課題解決に対する要求が高まっている
●遠隔地での業務、非接触での交流など、新たな生活様式が求められる中で、分散化が加速している
●分散化による、コミュニケーションの阻害や分断などの課題に対し、「つながる」こと、「情報」の重要性がさらに高まっている
c.ビジョンステートメント
今回、「Epson 25 Renewed」のビジョンステートメントとして、『「省・小・精の技術」とデジタル技術で人・モノ・情報がつながる、持続可能でこころ豊かな社会を共創する』と定めました。
前述した外部環境認識を踏まえ、人・モノ・情報をスマートにつなげるソリューションを、個人の生活や、産業や製造の現場にまで広く社会へ提供し、ありたい姿の実現のために取り組みます。そこで重要となるのは、「環境」「DX」「共創」の3つの取り組みです。
(環境への取り組み)
●「脱炭素」と「資源循環」に取り組むとともに、環境負荷低減を実現する商品・サービスの提供、環境技術の開発を推進する
(DXへの取り組み)
●強固なデジタルプラットフォームを構築し、人・モノ・情報をつなげ、お客様のニーズに寄り添い続けるソリューションを共創し、カスタマーサクセスに貢献する
(共創への取り組み)
●技術、製品群をベースとし、共創の場・人材交流、コアデバイスの提供、協業・出資を通して、さまざまなパートナーと社会課題の解決につなげる
d.「Epson 25 Renewed」方針
不透明な社会環境の継続が予想されるなか、取り組みにメリハリをつけることにより、収益性を確保しながら将来成長を目指します。そして、全ての領域に必要な環境、DX、共創への取り組みも継続的に強化していきます。
e.イノベーション戦略
今回、目指す姿の実現に向けた戦略を実行するために、以下のとおりイノベーション領域を5領域に再編しました。加えて、従来は、テクノロジーを軸にイノベーションの実現を目指していましたが、お客様価値や社会課題の軸でイノベーション領域を設定しています。
また、これら5つのイノベーションを支えるマイクロデバイス事業においては、「省・小・精の技術」を極めた水晶・半導体ソリューションにより、スマート化する社会の実現に貢献していきます。
そして、持続可能な社会実現に向けて、環境への貢献を重要課題に据え、材料技術の融合により、環境ソリューションビジネスを創出し、脱炭素と資源循環に貢献します。
f.経営基盤強化の取り組み
エプソンは、今後、上述の各イノベーションの実現に向けて、以下のとおり経営基盤強化に取り組んでまいります。
g.財務目標
上述の「Epson 25 Renewed」の実現に向けて、収益性重視の経営へとシフトし、過度な売上成長を追わず、取り組みにメリハリをつけ、収益性の確保と将来成長を目指します。この方針に則り、ROIC、ROEおよびROSを財務目標として設定しました。
※2 ROIC=税引後事業利益/(親会社の所有者に帰属する持分+有利子負債)
新たにROICを財務目標の一つとして設定したことで、より資本効率の高い経営が求められます。そのためエプソンは収益性と自社成長性の位置づけを明確にした事業ポートフォリオ管理を導入し、効率的な資本循環を実現し、経営効率性を上げていきます。エプソンのビジネス領域を上述のとおり「成長領域」「成熟領域」「新領域」に大別し、位置づけに合わせた資本配分および目標設定を行い、それらを定期的に見直すというサイクルを回す中で、事業の方向性も判断していきます。
h.キャッシュ・アロケーション
創出したキャッシュは、成長・新領域や環境関連を中心とした投資へ重点配分しつつ、継続的・安定的に株主還元を実施し、資金需要などを総合的に勘案しながら有利子負債の返済などの財務体質強化を実現します。

i.ガバナンス強化への取り組み
「Epson 25 Renewed」の実現に向けて、引き続き経営意思決定の透明性確保および迅速化を図ります。そのために、取締役会の実効性向上や投資家などとの継続的なエンゲージメントに取り組むとともに、経営判断の迅速化を目的として、グローバル統合IT基盤の整備による情報の一元管理を進めてまいります。
③「環境ビジョン2050」
エプソンは、今回、以下のとおり持続可能な社会の前提である環境への取り組みに関するビジョン「環境ビジョン2050」を改定し、2050年に達成する目標と、その実現に向けた取り組みを定めました。
※3 SBTイニシアチブ(Science Based Targets initiative)のクライテリアに基づく科学的な知見と整合した温室
効果ガスの削減目標
④気候変動への取り組みとTCFD
気候変動が社会に与える影響は大きく、エプソンとしても取り組むべき重要な社会課題だと捉えています。パリ協定の目指す脱炭素社会(世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする)の実現に向け、エプソンは2030年に「1.5℃シナリオに沿った総排出量削減」に取り組んでいます。また、「Epson 25 Renewed」の公表に合わせ「環境ビジョン2050」を改定し、その目標として掲げる2050年の「カーボンマイナス」「地下資源消費ゼロ」に向け、脱炭素と資源循環に取り組むとともに、環境負荷低減を実現する商品・サービスの提供、環境技術の開発を推進しています。
エプソンは2019年10月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を表明して以降、株主・投資家をはじめとする幅広いステークホルダーとの良好なコミュニケーションがとれるように、TCFDのフレームワークに基づき、情報開示(ガバナンス・戦略・リスク管理・指標と目標)を進めています。2021年には財務影響度をエプソンとして初めて定量的に開示することにしました。
a.ガバナンス
気候変動に係る重要事項は、社長の諮問機関としてグループ全体のサステナビリティ活動の中長期戦略を策定・実践状況のレビューを行う「サステナビリティ戦略会議」で議論の上、定期的に(年に1回以上)取締役会に報告することで、取締役会の監督が適切に図られる体制をとっています。
また、気候関連問題に対する最高責任と権限を有する代表取締役社長は、サステナビリティ推進室長(取締役常務執行役員)を気候関連問題の責任者に任命し、サステナビリティ推進室長は、TCFDを含む気候変動に関する取り組みを管理・推進しています。
■ 推進体制

b.戦略
エプソンは、価値創造ストーリーの中で、「循環型経済の牽引」「産業構造の革新」をマテリアリティとして設定しています。これを達成するために、エプソンの技術の源泉である「省・小・精の技術」を基盤に、イノベーションを起こし、さらなる温室効果ガス(GHG)排出量削減に取り組んでいきます。
エプソンは、気候関連のリスク・機会の重要性評価に向け、「移行リスク」「物理リスク」「機会」の区分でシナリオ特定と評価を実施し、6つの評価項目を選定しました。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)と国際エネルギー機関(IEA)が提示する気温上昇1.5℃に相当するシナリオと社内外の情報に基づき、事業インパクトと財務影響度を評価しました。
シナリオ分析に基づいた気候関連リスク・機会の評価結果は以下の通りです。
■ 1.5℃シナリオにおける気候関連リスク・機会

c.リスク管理
企業を取り巻く環境が複雑かつ不確実性を増す中、企業活動に重大な影響を及ぼすリスクに的確に対処することが、経営戦略や事業目的を遂行していく上では不可欠です。
エプソンは、気候関連問題を経営上の重大な影響を及ぼすリスクとして位置付け、適切に管理しています。
■ 気候関連リスクの識別・評価・管理プロセス
d.指標と目標
エプソンは、国際的な共同団体である「SBTイニシアチブ」から承認された中長期的な温室効果ガス(GHG)の排出削減目標の達成に向けて、「環境ビジョン2050」の下、エプソンの技術の源泉である「省・小・精の技術」を基盤に、商品の環境性能向上や再生可能エネルギーの活用、事業活動などバリューチェーンを通じた環境負荷低減に積極的に取り組んでいます。
「SBTイニシアチブ」から承認された現在の目標は2℃目標に対応したものになります。2021年度に、「環境ビジョン2050」の目標である、1.5℃目標に対応した削減目標への更新を予定しています。
■ GHG削減目標(「SBT1.5シナリオ」に沿った削減目標)
※4 スコープ1:燃料などの使用による直接排出
スコープ2:購入電力などのエネルギー起源の間接排出
スコープ3:自社バリューチェーン全体からの間接的な排出
(1)経営の基本方針
エプソンは、創業当時からの独自の強みである「省・小・精の技術」を基盤として、自らの常識やビジョンを超えて果敢に挑戦しイノベーションを生むことにより、画期的なお客様価値を継続的に創造し、より良い社会の実現に「なくてはならない会社」として中心的な役割を果たすことを目指しています。
そして、以下の経営理念およびグローバルタグラインのもと、お客様の期待を超える価値の創出に向けて、全社員が価値観を共有のうえ総合力を発揮し自律的に行動することにより、目指す姿の実現に努めてまいります。
経営理念
お客様を大切に、地球を友に、個性を尊重し、総合力を発揮して
世界の人々に信頼され、社会とともに発展する
開かれた、なくてはならない会社でありたい。
そして社員が自信を持ち、常に創造し挑戦していることを誇りとしたい。
EXCEED YOUR VISION
私たちエプソン社員は、常に自らの常識やビジョンを超えて挑戦し、お客様に驚きや感動をもたらす
成果を生み出します。
(2)優先的に対処すべき事業上および財務上の課題
エプソンは、将来にわたって追求する「ありたい姿」として設定した「持続可能でこころ豊かな社会の実現」に向け、2021年3月に長期ビジョンを見直し、「Epson 25 Renewed」を策定しました。また、エプソンとして重視している環境問題への対応では、「環境ビジョン2050」を改定し、2050年に「カーボンマイナス」と「地下資源(※1)消費ゼロ」の達成を目指すこととしました。
※1 原油、金属などの枯渇性資源
①エプソンが将来にわたって追求する「ありたい姿」
現在、気候変動や新型コロナウイルスをはじめ、人類はさまざまな社会課題に直面しています。また、物質的、経済的な豊かさだけでなく、もっと精神的な豊かさ、文化的な豊かさ、そういったさまざまな豊かさを含めた「こころの豊かさ」こそが望まれる時代となったと考えています。そのためには、持続可能な社会であることが大前提になります。このような背景のもと、エプソンは、常に社会課題を起点として、その解決に向けて私たちに何ができるか、私たちの技術を使ってどう課題解決し、社会に貢献できるか、という発想でビジネスを展開していきます。これにより、今後、上述のエプソンが将来にわたって追求する「ありたい姿」の実現に取り組んでまいります。
②「Epson 25 Renewed」
a.「Epson 25」振り返り
従来の長期ビジョン「Epson 25」の策定後、上述のように社会環境は大きく変化してきています。加えて、製品・サービスの拡充や基盤強化の取り組みを進めてまいりましたが、十分な成果には結びついておらず、以下に掲げるいくつかの問題点と要因があったと認識しています。
これらの振り返りを踏まえた対応として、事業領域の目指す姿を再定義し、戦略を進化させると同時に、今後、事業領域を跨いだ「環境」「DX」「共創」の取り組みを強化していきます。また、事業ポートフォリオを明確化し、適切な経営資源配分を行うとともに、戦略実行を支える経営基盤の一層の強化にも取り組みます。
| 問題点 | 要因 | 対応 |
| ●過度な売上成長を前提とした計画 ●戦略実行スピードの不足 ●環境変化への対応遅れ | ●顧客理解・競合視点が不足し、性能の良いモノを作れば売れるというマインド ●社会要請変化への感度の不足と、全社戦略への落とし込みの弱さ ●戦略実行のための能力不足と自前主義への偏重 | ●事業領域の目指す姿の再定義と戦略進化 ●事業領域を跨いだ全社戦略の強化 ●事業ポートフォリオ明確化による成長・新規領域への経営資源配分 ●戦略を実行するための経営基盤強化 |
b.外部環境認識
「Epson 25 Renewed」を実現するにあたり、エプソンを取り巻く外部環境として、以下の点を認識しています。
●デジタル化、AIなどの進化により、消費や生活様式が多様化するというメガトレンドが加速し、前倒しで進んでいる
●環境問題をはじめとした社会課題解決に対する要求が高まっている
●遠隔地での業務、非接触での交流など、新たな生活様式が求められる中で、分散化が加速している
●分散化による、コミュニケーションの阻害や分断などの課題に対し、「つながる」こと、「情報」の重要性がさらに高まっている
c.ビジョンステートメント
今回、「Epson 25 Renewed」のビジョンステートメントとして、『「省・小・精の技術」とデジタル技術で人・モノ・情報がつながる、持続可能でこころ豊かな社会を共創する』と定めました。
前述した外部環境認識を踏まえ、人・モノ・情報をスマートにつなげるソリューションを、個人の生活や、産業や製造の現場にまで広く社会へ提供し、ありたい姿の実現のために取り組みます。そこで重要となるのは、「環境」「DX」「共創」の3つの取り組みです。
(環境への取り組み)
●「脱炭素」と「資源循環」に取り組むとともに、環境負荷低減を実現する商品・サービスの提供、環境技術の開発を推進する
(DXへの取り組み)
●強固なデジタルプラットフォームを構築し、人・モノ・情報をつなげ、お客様のニーズに寄り添い続けるソリューションを共創し、カスタマーサクセスに貢献する
(共創への取り組み)
●技術、製品群をベースとし、共創の場・人材交流、コアデバイスの提供、協業・出資を通して、さまざまなパートナーと社会課題の解決につなげる
d.「Epson 25 Renewed」方針
不透明な社会環境の継続が予想されるなか、取り組みにメリハリをつけることにより、収益性を確保しながら将来成長を目指します。そして、全ての領域に必要な環境、DX、共創への取り組みも継続的に強化していきます。
| 領域区分 | 対象事業 | 方針 |
| 成長領域 | オフィスプリンティング、商業・産業プリンティング、プリントヘッド外販、生産システム | 環境変化を機会と捉えて経営資源投下 |
| 成熟領域 | ホームプリンティング、プロジェクション、ウオッチ、マイクロデバイス | 構造改革や効率化などにより、収益性重視 |
| 新領域 | センシング、環境ビジネス | 新たな技術・ビジネス開発に取り組む |
e.イノベーション戦略
今回、目指す姿の実現に向けた戦略を実行するために、以下のとおりイノベーション領域を5領域に再編しました。加えて、従来は、テクノロジーを軸にイノベーションの実現を目指していましたが、お客様価値や社会課題の軸でイノベーション領域を設定しています。
また、これら5つのイノベーションを支えるマイクロデバイス事業においては、「省・小・精の技術」を極めた水晶・半導体ソリューションにより、スマート化する社会の実現に貢献していきます。
そして、持続可能な社会実現に向けて、環境への貢献を重要課題に据え、材料技術の融合により、環境ソリューションビジネスを創出し、脱炭素と資源循環に貢献します。
| イノベーション領域 | 目指す姿 | お客様への提供価値 |
| オフィス・ホーム プリンティングイノベーション | インクジェット技術・紙再生技術とオープンなソリューションにより、環境負荷低減・生産性向上を実現し、分散化に対応した印刷の進化を主導する | 生産性向上、環境負荷低減、印刷の分散化、在宅学習の支援、印刷コストの低減、高画質印刷 |
| 商業・産業 プリンティングイノベーション | インクジェット技術と多様なソリューションにより、印刷のデジタル化を主導し、環境負荷低減・生産性向上を実現する | デジタルならではの表現力、小ロット・短納期生産、分散生産・近消費地生産、廃棄物削減、職場環境の改善、流通の変化への対応 |
| マニュファクチャリングイノベーション | 環境負荷に配慮した「生産性・柔軟性が高い生産システム」を共創し、ものづくりを革新する | 小ロット多品種対応、労働力不足解消、分散生産・近消費地生産、環境負荷低減・資源循環、省スペース、システム構築の負荷低減 |
| ビジュアルイノベーション | 感動の映像体験と快適なビジュアルコミュニケーションで人・モノ・情報・サービスをつなぎ、「学び・働き・暮らし」を支援する | 公平で質の高い教育環境、生産性と創造性の向上、多様な働き方・ライフスタイル支援、生活に彩りを提供 |
| ライフスタイルイノベーション | 匠の技能、センシング技術を活用したソリューションを共創し、お客様の多様なライフスタイルを彩る | お客様個々の感性に訴える、自己発電機能による徹底した環境性能向上、パーソナライズされた情報、ライフスタイルに合わせた支援、働き方改革 |
f.経営基盤強化の取り組み
エプソンは、今後、上述の各イノベーションの実現に向けて、以下のとおり経営基盤強化に取り組んでまいります。
| 施策 | 取り組み |
| 営業戦略 | ●デジタルを活用した顧客支援型営業 - ソリューション提案型営業の深化 - デジタル活用による時間と場所の制約を受けない顧客接点の創出・拡大 ●地域別、領域別の重点的な組織強化 |
| 生産戦略 | ●COVID-19拡大を契機に従来戦略を加速 - 自動化・デジタル化により2025年度に生産性2倍 - 分散生産、近消費地生産の強化 - 投資総額 約400億円(5年間) |
| 技術開発戦略 | ●イノベーションを支える基盤技術、コア技術、製品技術を進化 - 特に材料・AI・デジタル技術を強化 |
| 人材戦略 | ●強化領域への人材重点配置 - スペシャリストの獲得 - 成長領域への重点配置 ●人材育成強化 - 専門教育の充実 - 知識・経験の幅を広げるローテーションの加速 ●組織活性化 - ダイバーシティを尊重し、チーム力を最大限に発揮 - 自由闊達で風通しの良い組織風土作り - 働き方の多様化に対応 |
g.財務目標
上述の「Epson 25 Renewed」の実現に向けて、収益性重視の経営へとシフトし、過度な売上成長を追わず、取り組みにメリハリをつけ、収益性の確保と将来成長を目指します。この方針に則り、ROIC、ROEおよびROSを財務目標として設定しました。
| 全社業績目標 | 2020年度(実績) | 2023年度(目標) | 2025年度(目標) |
| ROIC(※2) | 5.6% | 8%以上 | 11%以上 |
| ROE | 5.9% | 10%以上 | 13%以上 |
| ROS | 6.2% | 8%以上 | 10%以上 |
※2 ROIC=税引後事業利益/(親会社の所有者に帰属する持分+有利子負債)
新たにROICを財務目標の一つとして設定したことで、より資本効率の高い経営が求められます。そのためエプソンは収益性と自社成長性の位置づけを明確にした事業ポートフォリオ管理を導入し、効率的な資本循環を実現し、経営効率性を上げていきます。エプソンのビジネス領域を上述のとおり「成長領域」「成熟領域」「新領域」に大別し、位置づけに合わせた資本配分および目標設定を行い、それらを定期的に見直すというサイクルを回す中で、事業の方向性も判断していきます。
h.キャッシュ・アロケーション
創出したキャッシュは、成長・新領域や環境関連を中心とした投資へ重点配分しつつ、継続的・安定的に株主還元を実施し、資金需要などを総合的に勘案しながら有利子負債の返済などの財務体質強化を実現します。

i.ガバナンス強化への取り組み
「Epson 25 Renewed」の実現に向けて、引き続き経営意思決定の透明性確保および迅速化を図ります。そのために、取締役会の実効性向上や投資家などとの継続的なエンゲージメントに取り組むとともに、経営判断の迅速化を目的として、グローバル統合IT基盤の整備による情報の一元管理を進めてまいります。
③「環境ビジョン2050」
エプソンは、今回、以下のとおり持続可能な社会の前提である環境への取り組みに関するビジョン「環境ビジョン2050」を改定し、2050年に達成する目標と、その実現に向けた取り組みを定めました。
| 項目 | 内容 |
| ビジョン ステートメント | 2050年に「カーボンマイナス」と「地下資源消費ゼロ」を達成し、持続可能でこころ豊かな社会を実現する |
| 達成目標 | 2030年:1.5℃シナリオ(※3)に沿った総排出量削減 2050年:「カーボンマイナス」、「地下資源消費ゼロ」 |
| アクション | ●商品・サービスやサプライチェーンにおける環境負荷の低減 ●オープンで独創的なイノベーションによる循環型経済の牽引と産業構造の革新 ●国際的な環境保全活動への貢献 |
※3 SBTイニシアチブ(Science Based Targets initiative)のクライテリアに基づく科学的な知見と整合した温室
効果ガスの削減目標
④気候変動への取り組みとTCFD
気候変動が社会に与える影響は大きく、エプソンとしても取り組むべき重要な社会課題だと捉えています。パリ協定の目指す脱炭素社会(世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする)の実現に向け、エプソンは2030年に「1.5℃シナリオに沿った総排出量削減」に取り組んでいます。また、「Epson 25 Renewed」の公表に合わせ「環境ビジョン2050」を改定し、その目標として掲げる2050年の「カーボンマイナス」「地下資源消費ゼロ」に向け、脱炭素と資源循環に取り組むとともに、環境負荷低減を実現する商品・サービスの提供、環境技術の開発を推進しています。
エプソンは2019年10月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を表明して以降、株主・投資家をはじめとする幅広いステークホルダーとの良好なコミュニケーションがとれるように、TCFDのフレームワークに基づき、情報開示(ガバナンス・戦略・リスク管理・指標と目標)を進めています。2021年には財務影響度をエプソンとして初めて定量的に開示することにしました。
a.ガバナンス
気候変動に係る重要事項は、社長の諮問機関としてグループ全体のサステナビリティ活動の中長期戦略を策定・実践状況のレビューを行う「サステナビリティ戦略会議」で議論の上、定期的に(年に1回以上)取締役会に報告することで、取締役会の監督が適切に図られる体制をとっています。
また、気候関連問題に対する最高責任と権限を有する代表取締役社長は、サステナビリティ推進室長(取締役常務執行役員)を気候関連問題の責任者に任命し、サステナビリティ推進室長は、TCFDを含む気候変動に関する取り組みを管理・推進しています。
■ 推進体制

b.戦略
エプソンは、価値創造ストーリーの中で、「循環型経済の牽引」「産業構造の革新」をマテリアリティとして設定しています。これを達成するために、エプソンの技術の源泉である「省・小・精の技術」を基盤に、イノベーションを起こし、さらなる温室効果ガス(GHG)排出量削減に取り組んでいきます。
エプソンは、気候関連のリスク・機会の重要性評価に向け、「移行リスク」「物理リスク」「機会」の区分でシナリオ特定と評価を実施し、6つの評価項目を選定しました。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)と国際エネルギー機関(IEA)が提示する気温上昇1.5℃に相当するシナリオと社内外の情報に基づき、事業インパクトと財務影響度を評価しました。
シナリオ分析に基づいた気候関連リスク・機会の評価結果は以下の通りです。
■ 1.5℃シナリオにおける気候関連リスク・機会

c.リスク管理
企業を取り巻く環境が複雑かつ不確実性を増す中、企業活動に重大な影響を及ぼすリスクに的確に対処することが、経営戦略や事業目的を遂行していく上では不可欠です。
エプソンは、気候関連問題を経営上の重大な影響を及ぼすリスクとして位置付け、適切に管理しています。
■ 気候関連リスクの識別・評価・管理プロセス
| 1 調査 | 2 識別・評価 | 3 管理 |
| ・国内外の主要拠点を対象に、気候変動に起因した自然災害リスクに関する調査を実施 ・社会動向を調査 | ・「Epson 25 Renewed」「環境ビジョン2050」の方針や施策からリスク・機会を洗い出し ・サステナビリティ戦略会議と取締役会を通じて、シナリオ分析を評価 | ・サステナビリティ戦略会議と取締役会を通じて、適切に管理 |
d.指標と目標
エプソンは、国際的な共同団体である「SBTイニシアチブ」から承認された中長期的な温室効果ガス(GHG)の排出削減目標の達成に向けて、「環境ビジョン2050」の下、エプソンの技術の源泉である「省・小・精の技術」を基盤に、商品の環境性能向上や再生可能エネルギーの活用、事業活動などバリューチェーンを通じた環境負荷低減に積極的に取り組んでいます。
「SBTイニシアチブ」から承認された現在の目標は2℃目標に対応したものになります。2021年度に、「環境ビジョン2050」の目標である、1.5℃目標に対応した削減目標への更新を予定しています。
■ GHG削減目標(「SBT1.5シナリオ」に沿った削減目標)
| スコープ1、2、3(※4) | 2030年度までに2017年度比でGHG排出量を55%削減 |
※4 スコープ1:燃料などの使用による直接排出
スコープ2:購入電力などのエネルギー起源の間接排出
スコープ3:自社バリューチェーン全体からの間接的な排出