有価証券報告書-第81期(2022/04/01-2023/03/31)

【提出】
2023/06/28 9:05
【資料】
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【項目】
150項目
②戦略
■ 求める人材像
経営戦略の実現・事業遂行のため、エプソンは、パーパス、エプソンウェイの浸透と、長期ビジョンに定めた事業の方向性の共有をベースとしながら、広い視野と高い専門性を持って変化に素早く対応し、お客様の立場に立って自立的・自律的にお客様価値を作り上げることのできる人材を必要としています。
今後さらに国内での少子高齢化や労働人口減少が進むことも見据え、経営戦略の策定・遂行および新たなビジネスモデルの確立に必要となる人材要件を定義して、現状とのギャップを明らかにするため、グローバルベースでの人材ポートフォリオ策定に着手しています。これを起点として、中長期戦略実現のための人事課題を明らかにし、適切な施策により全社最適人員構造を実現していきます。
■ 人材戦略と機会、リスク
エプソンは、求める人材像で描く人づくりと、人材が存分に活躍できる組織風土づくりを中心に据えた人材戦略を掲げています。リスク・機会を下記のとおり評価したうえで、「強化領域への人材重点配置」「人材育成強化」「組織活性化」の3つの人材戦略に取り組んでいます。
人材戦略機会(〇)リスク(●)
強化領域への
人材の重点配置
〇強化領域(成長領域や新領域等)への人材の重点投入、最適配置による事業成長、加速
〇意欲に応え、やりがいや成長機会を提供することによる社員のモチベーション、エンゲージメントの向上、生産性向上
●必要な人員の質・量を確保できないことによる、事業遂行上の障害の発生
●その結果として、成長機会の逸失と財務的損失
人材育成強化〇やりがいや成長機会の提供に対し、社員が成長を実感することによるモチベーション、エンゲージメントの向上、生産性向上●必要な人員の質・量を確保できないことによる、事業遂行上の障害の発生
●その結果として、成長機会の逸失と財務的損失
●学びの意欲や成長への期待に応えられないことによる社員のモチベーションの低下、離職の増加
●必要な能力・スキルを獲得し、変化に対応できる人材を育成できないことによる事業遂行への障害、財務的損失
組織活性化〇多様な人材の多様な発想・創造力によるイノベーションが起きやすい環境の醸成
〇優秀な人材の確保、定着化による採用コストの削減、競争力の向上
〇多様な人材が働きやすい環境を整備することによるモチベーション、エンゲージメントの向上、生産性向上
●社員のモラルやモチベーションの低下による業務効率の悪化、コンプライアンス違反の発生、倫理観の欠如等による信頼の失墜
●ハラスメントの発生、心身の健康への悪影響等によるモチベーションやチームで働く力の低下、その他働く場におけるさまざまな人権侵害のリスク
●事故発生等による追加コスト

■ 人材育成方針
人材戦略① 強化領域への重点配置
エプソンでは、事業運営の基盤として、将来の要員構造の推移の予測と、事業戦略を実現するための要員ニーズに基づいて要員計画を策定しています。2020年度、2021年度はCOVID-19の流行により一定の抑制を行いましたが、今後、中期的には、新卒・中途を合わせて、毎年350人以上の採用を計画的・安定的に行う方針です。
成長領域であるプリンティング(オフィス、商業・産業)や生産システム(ロボット)、新領域である環境ビジネス・環境技術、センシング分野へは、採用した人員の重点配置に加え、内部人材へ専門教育・転換教育等を行って強化領域に投入するとともに、人材要件を明確にしたうえで外部からマネジメント人材やスペシャリストを獲得し、強化領域へ配置しています。
人材戦略② 人材育成強化
<人材育成>エプソンでは年1回、各組織において要員状況を俯瞰し、また管理職等の重要ポジションの役割や要件を定義し、それに基づき後継計画を策定しています。また将来の経営層・管理職層、グローバル人材の候補者をリストアップし、育成計画を策定しています。
人材育成は、業務を通じた育成(OJT)を基礎に、教育体系を整備して階層別の教育や各種の専門教育をOFF-JTとして行っているほか、個々の変化対応力を強化し、またバリューチェーンの効果的・効率的な運営に資するため、本人の能力や経験・知識の幅を広げるローテーションに積極的に取り組んでいます。
リーダー人材の育成には、選抜型の階層別教育プログラムを整備しています。
<グローバル人材の育成>お客様に価値ある製品をお届けするためには、グローバルに展開しているバリューチェーン全体が効果的・効率的に運営されることが必要であり、各機能について幅広い知識と経験を持ち、相互に「すり合わせ」ができるグローバル人材が必要です。世界各地で、共通の価値観を持ち、現場で的確・迅速な意思決定ができるリーダー人材を育成するため、海外現地法人の経営リーダー層の養成を目的としたセミナーを毎年開催しているほか、地域を超えた人材交流を進めています。また、海外人材についても国内と同様に、現地のトップマネジメント・人事部門と連携して役割や要件定義を行い、重要ポジション・重要人材についての後継計画・育成計画を策定しています。このような活動を基盤として、最適機能配置に関する社内議論を継続して行い、グローバル視点での最適なフォーメーションの構築に取り組んでいます。
■ 社内環境整備方針
人材戦略③ 組織活性化
変化の激しい時代のなかで、多様なお客様を理解し、その人々に驚きや感動を与える新たな価値を創出するため、多様な人材が世界中のエプソンに集まり、公平な環境で、一切の偏見なく、すべての社員が互いの個性を当たり前に尊重し合い、全社員が楽しく働きながら、社会の一員として責任を持ち、会社とともに成長そして挑戦することによって、イノベーションを起こし続ける環境を目指しています。エプソンは、そのなかでも特に日本国内におけるジェンダー平等を最大の課題と認識し、管理職層や経営層の女性比率が全社員の女性比率と同じになる状態をできるだけ早期に実現するための取り組みを進めています。また、社員の意識変革を促すため、経営トップからのメッセージ発信や、各種研修を行っているほか、女性の働きやすい職場づくり、相談窓口等によるサポート、男性の育休取得推進等にも取り組んでいます。
さらに、多様な人材それぞれのキャリア形成をサポートし、活躍を促進するため、各種キャリア支援プログラムや、自発的な学びなおしの機会を提供する教育体系の整備を進めています。
<従業員エンゲージメント>エプソンは、「自由闊達で風通しの良いコミュニケーション環境」により、「関係の質」を向上させ、社員と会社がともに成長し続ける組織風土を目指しています。
エプソンでは、組織風土の現状を把握するため、2005年より組織風土に関する調査を毎年行っています。2020年度からは、特に「関係の質」向上のための重要な要素でありながら、全体的にスコアの低かった「チームで働く力」の向上について会社全体で取り組みを行ってきました。
2022年度は、「関係の質」向上に加えて、従業員一人ひとりが従来以上にやりがいと自発性を持ち、また多様な人材が自律的にいきいきと働ける環境を目指し、外部との比較も可能な「エンゲージメントサーベイ」を導入して、組織風土改革と、それを通じた生産性向上への取り組みを継続していきます。
<働きやすい環境づくり>エプソンでは、社員がやりがいを持ち、さまざまな環境変化に適応しながら、いきいきと、心身ともに健康で安全に働ける環境を目指しています。特にCOVID-19への対応を契機として進んだ在宅勤務を中心に、労働時間と勤務場所の柔軟化や、育児・療養・介護・不妊治療等における仕事と生活の両立ができる環境づくり、また職場におけるハラスメント防止等の施策を推進しています。
特に信州に主要な拠点が集中するエプソンにおいては、働く時間や場所を選ばない柔軟な働きかた、また、多様性を持った社員がそれぞれのキャリア形成を実現できる働き方の整備は、今後マネジメント人材やスペシャリストの獲得、ダイバーシティ推進の観点からもさらに重要であると考えています。
<健康経営>会社にとって社員の健康が最重要と考え、経営理念、エプソングループ労働安全衛生基本方針およびエプソングループ健康経営宣言に基づき、社員の健康状態の向上とともに、仕事にやりがいを感じ、いきいきと働いている状態の実現を目指しています。2022年4月には、中期健康管理計画「健康Action 2025」を制定し、自律性の醸成・働くことと健康の調和を目指す「こころとからだの健康」と、安全配慮の徹底とチームでいきいきと働く組織風土の醸成を目指す「職場の健康」の2つを重点分野として取り組んでいます。
これまでの活動が評価され、2023年3月に「健康経営銘柄」に2年連続で選定されています。
<労働安全衛生>エプソンは、2000年度に、国際労働機関(ILO)の指針に準拠した労働安全衛生マネジメントシステム(OSHMS)をベースとした方針・プログラムを策定し、「安全」「健康」「防火・防災」「施設」を4本柱とした取り組みを行ってきています。これをさらに国際規格であるISO45001に基づく活動に進化させ、グループすべての働く人が安心して活き活きと働けるよう、職場の安全衛生環境のさらなる向上を目指した取り組みを行っています。