有価証券報告書-第76期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)
2.株式会社の支配に関する基本方針
基本方針
(1)当社は、当社の企業価値が、当社及びその子会社・関連会社が永年にわたり蓄積してきた営業・技術・生産のノウハウ及びブランドイメージ等を駆使した機動性のある企業活動に邁進し、国内外の社会の発展に貢献することにより、株主の皆さま共同の利益を向上させていくことにその淵源を有していると考えております。
そのため、当社は、特定の者またはグループによる当社の総議決権の20%以上に相当する議決権を有する株式の取得により、このような当社の企業価値または株主の皆さま共同の利益が毀損されるおそれが存する場合には、かかる特定の者またはグループは当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者として不適切であるとして、法令及び定款によって許容される限度において、当社の企業価値または株主の皆さま共同の利益の確保・向上のための相当な措置を講じることを、その基本方針としております。
(2)基本方針策定の背景
当社グループは、1948年の当社の創業以来、「信頼される経営を信条とする」という経営姿勢に基づいて、サスペンションを主体とする自動車部品メーカーとして日々研鑽を積み、「サスペンションのヨロズ」として自動車メーカー各社からの信頼を得てまいりました。
当社グループの主力事業であるサスペンションの製造は、定型的な製品を単に製造・販売するというものではなく、自動車メーカーのニーズに合致するように、その要請を十分に把握しながら、自動車メーカーとともに開発していかなければならないという特徴があります。
したがって、自動車メーカーのニーズに応え、クルマの重要保安部品であるサスペンションを作るためには、最先端かつ高度な技術力が不可欠であることに加え、自動車メーカーの業務プロセスを的確に理解し、その中にまで入り込んで、製品開発に取り組むことが極めて重要となります。
当社グループにおいては、自らが有する開発力・技術力を生かし、サスペンションの製造を開発から生産まで一貫して行うことで、徹底して効率を追求し、コスト削減、納期短縮はもちろん、ダントツの品質を維持してまいりました。
当社グループは、当社の企業価値および株主の皆様共同の利益の継続的な維持向上のため、客先拡大・収益増加を目的とした海外進出や設備投資も積極的に行っております。
以上に述べたような取組みやそれに基づく成果に裏付けられた当社グループの企業価値の向上の源泉となっておりますのは、株主の皆様の中長期的な視野に立ったご理解とご支援、当社グループが属します自動車部品業界や事業内容、自動車メーカー各社との信頼関係を重視した中長期的視野に基づいた経営の取組み、健全な財務体質に基づいた積極的な設備投資の実施、市場特性に関する豊富な知識と経験を有した経営陣と社業に誠実である従業員が個々の役割を認識しながら堅実に経営基盤を強化していこうとする意欲、高度な技術力の維持およびその更なる向上、そしてそれらを支える全社員の高いモチベーションの維持と、これらによって築かれたステークホルダーとの永年の信頼関係への深い理解であると考えております。
当社グループは、世界規模で技術革新が進展する中、急激に変化する国内外市場の需要動向を的確に把握し、これらの経営資源を有効かつ最大限活用するとともに、地球環境の保全に配慮した企業活動や法令遵守を心掛 けた経営を継続し、企業の社会的責任を果たすと同時に、企業価値の向上に全力で取り組んでまいります。
他方で、昨今、新しい法制度の整備や経済構造・企業文化の変化等を背景として、対象となる会社の経営陣の賛同を得ることなく、一方的に大量の株式の買付けを強行するといった動きが散見されるようになり、場合によっては上記の経営資源に基づく当社グループの持続的な企業価値の向上が妨げられるような事態が発生する可能性も否定できない状況となっております。
当社といたしましては、このような状況に鑑み、支配株式の取得を目指す者およびそのグループ(以下「買収者等」といいます)が現われることを想定しておく必要があるものと考えております。
もとより、当社といたしましては、あらゆる支配株式の取得行為に対して否定的な見解を有するものではありません。
しかしながら、近時の支配株式の取得行為の中には、①買収者等による支配株式の取得行為の目的等からみて、買収者等が真摯に合理的な経営を目指すものではないことが明白であるもの、②一般株主に不利益な条件での株式の売却を事実上強要するおそれがあるもの、③支配株式の取得行為に応じることの是非を一般株主が適切に判断するために必要な情報や相当な考慮期間が提供・確保されていないもの、④支配株式の取得行為に対する賛否の意見または買収者等が提示する買収提案や事業計画等に代替する事業計画等を会社の取締役会が株主に対して提示するために必要な情報、買収者等との交渉機会および相当な考慮期間等を会社の取締役会に対して与えないもの等、会社の企業価値または株主の皆様共同の利益に対して回復困難な損害を与える可能性のあるものも少なくありません。
当社といたしましては、このように当社の企業価値または株主の皆様共同の利益の確保・向上に資さない態様で支配株式の取得行為を行う者は、当社の財務および事業の方針の決定を支配する者として不適切であり、かかる買収者等に対しては、会社として、このような事態が生ずることのないよう、何らかの措置を講じる必要があるものと考えております。
3.基本方針の実現に資する特別な取組みについて
当社は、多数の投資家の皆様に中長期的に継続して当社に投資していただくため、当社の企業価値または株主の皆様共同の利益を確保・向上させるための取組みとして、下記(1)の企業理念と経営の基本姿勢のもと、下記(2)の企業価値の向上に向けた取組み、下記(3)のコーポレートガバナンスの強化に向けた取組み、下記(4)の持続的な株主還元および下記(5)の当社の考える企業の社会的責任に向けた取組みを、それぞれ実施しております。これらの取組みの実施を通じて、当社の企業価値または株主の皆様共同の利益を向上させ、それを当社の株式の価値に適正に反映させていくことにより、上記のような当社の経営資源に基づく当社の持続的な企業価値の向上が妨げられるような事態を防ぐことができると考えられますので、これらの取組みは、上記1の基本方針の実現に資するものであると考えております。
(1)企業理念と経営の基本姿勢
当社はこれまで、常に「社会貢献を第一義とし、たゆまぬ努力で技術を進化させ、人びとに有用な製品を創造する」という企業理念を通じて、前述した企業価値の源泉の理解のもと、長期的観点に立って、当社の企業価値と株主の皆様共同の利益の持続的な向上に努めてまいりました。
(2)企業価値の向上に向けた取組み。
当社は、さらなる企業価値向上のため、2018年度から2020年度にかけての中期経営計画「Yorozu Spiral-up
Plan 2020」(以下「中期経営計画」といいます)を公表いたしました。
当社は中期経営計画に基づき、企業価値の向上を意識した重点取組みとして、以下の事項を実施してまいりました。
① 収益力の強化
② 製品力・開発力の向上
③ 企業力の充実
中期経営計画において掲げた2020年度の業績目標については、全世界的な新型コロナウイルス感染症による経済活動の悪化の影響や得意先の稼働停止、生産縮小の影響を受け、収益が悪化したため、達成することはできませんでしたが、生産体制の見直しや2019年度下期から実施している緊急収益改善活動により、今後収益を上げるための強固な企業体制への礎を築き、企業力の向上に努めました。
当社は、上記の中期経営計画の取組みの結果を踏まえ、2021年5月には、2021年度から2023年度にかけての新中期経営計画「Yorozu Sustainability Plan 2023」(以下「新中期経営計画」といいます)を策定いたしました。今後は、新たな企業ビジョンである「サスペンションでOnly1の技術力によりお客様のニーズに応え、永続的に発展を続ける100年企業を目指す」という新たな企業ビジョンのもと、変化に強い健全経営を目指し、以下の三つの柱を掲げ、さらなる企業価値の拡大を図ってまいります。1つ目は、人・社会・地球と一緒に歩むべく「ESG」を意識した経営、2つ目は、生産台数に左右されにくい企業体質への変革による「安定した収益」、最後にサスペンション部品の競争力向上を図るための「新技術・工法」の確立に取り組んでまいります。当社は、中長期的な観点に基づいた戦略により持続的な成長とさらなる企業価値の向上を図るため、新中期経営計画を着実に実行してまいります。
(3)コーポレートガバナンスの強化に向けた取組み
当社は、「高い倫理観と遵法精神により、公正で透明な企業活動を推進すること」を経営の基本としております。取締役会は経営の基本方針、法令で定められた事項やその他経営に関する重要な決定を行うと共に、取締役および執行役員の業務執行状況を監督する機関として位置付けておりますが、株主の皆様に対する経営陣の責任をより一層明確にするため、2001年6月27日開催の第56回定時株主総会において、取締役の任期を2年から1年に短縮しております。
さらに、当社は、コーポレートガバナンスの一層の強化の観点から、2015年6月10日開催の第70回定時株主総会において、過半数を社外取締役で構成する監査等委員会を置く「監査等委員会設置会社」に移行し、監査・監督機能の強化を図りました。また、これに伴い、それまでに選任していた社外監査役2名に替え、新たに、東京証券取引所が定める独立社外取締役の要件を満たす法律・会計分野に造詣の深い女性2名を、監査等委員である取締役に選任いたしました。その後、2017年6月16日開催の第72回定時株主総会において選任された後任の監査等委員である取締役も、同様に独立社外取締役の要件を満たす法律・会計分野に造詣の深い女性2名であり、取締役会は多様性を考慮した構成となっております。
また、監査等委員ではない取締役に関しても、社外取締役を、2018年6月18日開催の第73回定時株主総会で1名、2020年6月26日開催の第75回定時株主総会でさらに1名、合計2名増員いたしました。この結果、監査等委員である取締役を含め、当社の取締役9名の内4名が東京証券取引所の定める独立社外取締役となり、取締役会の3分の1以上が独立社外取締役で構成されております。加えて、2018年12月には、取締役等の選任や報酬の決定における意思決定に関わるプロセスの透明化および客観性を高めるために過半数を独立社外取締役で構成される「指名委員会」および「報酬委員会」を設置いたしました。
なお、当社は、当社が持続的に成長し中長期的に企業価値の向上を実現するため、「コーポレートガバナンス・ガイドライン」(http://www.yorozu-corp.co.jp/csr/governance/)を制定し、コーポレートガバナンスに関する基本的な考え方および運営方針を明らかにしております。
当社は、このような取組みによりコーポレートガバナンスを強化し、企業としての持続的な成長を図り、すべてのステークホルダーにとっての企業価値向上に引き続き努めてまいります。
(4) 持続的な株主還元
当社は、中期経営計画において、財務戦略の基本方針を、これまでの財務安全性重視に加え、株主還元の充実に注力することといたしました。これに伴い、配当方針についても、これまでの「安定配当」から「目標配当性向の設定」へと変更し2015年度から連結配当性向35%を目標といたしました。
この基本方針および配当方針に従い、当社は、2015年度から2020年度において、連結配当性向35%を実現するとともに、2016年9月には、発行済株式総数の4.0%の自己株式の取得を取締役会にて決議し、取得いたしました。
この基本方針は、新中期経営計画においても継続しており、配当性向については、新中期経営計画においても、連結配当性向35%を目標といたします。当社は、今後も持続的な株主還元の実施に努めてまいります。
(5) 当社の考える企業の社会的責任に向けた取組み
当社は、創立以来、「高い倫理観と遵法精神により、公正で透明な企業活動を推進すること」を経営姿勢とし、関連法令の遵守はもちろんのこと、良き企業市民として社会的責任を果たすことが必要と認識し、事業活動を行ってまいりました。今後とも、お客様の満足と技術革新、法令等の遵守、環境問題への取組み、グローバル企業としての発展、企業情報の開示、人権の尊重、公正な取引、経営幹部の責任の明確化を図ることによって、企業の社会的責任を遂行してまいります。
4.基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組みについて
当社が導入した買収防衛策(以下、「本プラン」といいます。)は、当社が発行者である株券等について、特定の株主、その特別関係者及び実質的に支配する者もしくは共同ないし協調して行動する者の株券等保有割合が20%以上となる買付を行うこと等を希望する買付者が出現した場合に、当該買付者に対し、事前に当該買付等に関する必要かつ十分な情報の提出を求めます。
その後、買付者等から提供された情報が、当社社外取締役を含む当社の業務執行を行う経営陣から独立した者のみから構成される独立諮問委員会に提供され、その検討・評価を経るものとします。
独立諮問委員会は、当該買付者が本プランに定める手続を遵守しなかった場合、その他買付者の買付等の内容の検討の結果、当該買付者による買付等が当社の企業価値ひいては株主共同の利益に著しく反する重大なおそれをもたらす場合で、かつ、対抗措置を発動することが相当と認められる場合は、当社取締役会に対し、対抗措置の発動を勧告します。
また、独立諮問委員会は、当社取締役会に対して、株主総会において大規模買付行為に対する対抗措置発動の要否や内容について賛否を求める形式により、株主の皆さまの意思を確認することを勧告できます。
当社取締役会は、独立諮問委員会の上記勧告を最大限尊重した上で、対抗措置の発動、不発動または中止の決議を行います。
なお、当社は、対抗措置の発動要件をいわゆる高裁四類型(注1)及び強圧的二段階買付け(注2)のみに限定しております。
具体的な対抗措置として新株予約権の無償割当てを行う場合には、対抗措置としての効果を勘案した行使期間、行使条件及び取得条項を定めることがあります。
本プランの有効期間は、2024年開催予定の第79回定時株主総会の終結の時までとします。
5.本プランの合理性について
本プランは、経済産業省及び法務省が2005年5月27日に公表した「企業価値・株主共同の利益の確保又は向上のための買収防衛策に関する指針」の定める三原則(①企業価値・株主共同の利益の確保・向上の原則、②事前開示・株主意思の原則、③必要性・相当性確保の原則)を以下のとおり充足しており、また、経済産業省に設置された企業価値研究会が2008年6月30日に公表した「近時の諸環境の変化を踏まえた買収防衛策の在り方」及び東京証券取引所が2015年6月1日に公表した「コーポレートガバナンス・コード~会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために~」の「原則1-5.いわゆる買収防衛策」その他の買収防衛策に関する実務・議論を踏まえた内容となっており、高度な合理性を有するものです。
① 企業価値または株主共同の利益の確保・向上
本プランは、大規模買付者に対して事前に大規模買付行為に関する必要な情報の提供及び考慮・交渉のための期間の確保を求めることによって、当該大規模買付行為に応じるべきか否かを株主の皆さまが適切に判断されること、当社取締役会が当該大規模買付行為に対する賛否の意見または代替案を株主の皆さまに対して提示すること、あるいは、株主の皆さまのために大規模買付者と交渉を行うこと等を可能とし、もって当社の企業価値または株主の皆さま共同の利益の確保・向上を目的としております。
② 事前の開示
当社は、株主及び投資家の皆さま及び大規模買付者の予見可能性を高め、株主の皆さまに適正な選択の機会を確保するために、本プランを予め開示するものです。また、当社は今後も、適用ある法令等及び金融商品取引所規則に従って必要に応じて適時適切な開示を行います。
③ 株主意思の重視
当社は、2021年6月29日開催の第76回定時株主総会において本プランによる買収防衛策の継続を承認いただいております。また、当社株主総会において当社提案に基づき本プランを廃止する旨の議案が承認された場合には本プランはその時点で廃止されるものとしており、その存続が株主の皆様の意思に係らしめられています。
④ 外部専門家の意見の取得
当社取締役会は、大規模買付行為に関する評価、検討、意見形成、代替案立案及び大規模買付者との交渉を行うにあたり、必要に応じて、当社取締役会から独立した第三者的立場にある専門家(フィナンシャル・アドバイザー、弁護士、公認会計士、税理士等)の助言を得たうえで検討を行います。これにより当社取締役会の判断の客観性及び合理性が担保されることになります。
⑤ 独立諮問委員会への諮問
当社は、本プランの必要性及び相当性を確保し、経営者の保身のために本プランが濫用されることを防止するために、独立諮問委員会を活用するものとし、当社取締役会が対抗措置を発動する場合には、その判断の公正を担保し、かつ、当社取締役会の恣意的な判断を排除するために、独立諮問委員会の勧告を最大限尊重するものとしております。
⑥ デッドハンド型買収防衛策またはスローハンド型買収防衛策ではないこと
本プランは、当社の株主総会または株主総会において選任された取締役により構成される取締役会によっていつでも廃止することができるため、いわゆるデッドハンド型買収防衛策(取締役会の構成員の過半数を交替させてもなお、発動を阻止できない買収防衛策)またはスローハンド型買収防衛策(取締役会の構成員の交替を一度に行うことができないため、発動を阻止するのに時間を要する買収防衛策)ではありません。
以上から、当社役員の地位の維持を目的とするものでないことは明らかであると考えております。
(注1)下記に掲げる行為により、当社の企業価値ひいては株主共同の利益が著しく損なわれることが明らかである大規模買付行為である場合
① 真に会社経営に参加する意思がないにもかかわらず、ただ株価をつり上げて高値で株式を会社関係者に引き取らせる目的で当社株券等を取得する行為(いわゆるグリーンメイラー)
② 当社の会社経営を一時的に支配して、当社の事業経営上必要な知的財産権、ノウハウ、企業秘密情報、主要取引先や顧客等を当該大規模買付者またはそのグループ会社等に移譲させるなど、いわゆる焦土経営を行う目的で、当社株券等を取得する行為
③ 当社の会社経営を支配した後に、当社の資産を当該大規模買付者またはそのグループ会社等の債務の担保や弁済原資として流用する予定で、当社株券等を取得する行為
④ 当社の会社経営を一時的に支配して、当社の事業に当面関係していない不動産、有価証券等の高額資産等を売却等処分させ、その処分利益をもって一時的な高配当をさせるか、あるいは一時的高配当による株価の急上昇の機会を狙って株式の高値売り抜けをする目的で、当社株券等を取得する行為
(注2)強圧的二段階買付け(第一段階の買付けで当社株券等の全てを買付けられない場合の、二段階目の買付けの条件を不利に設定し、明確にせず、または上場廃止等による将来の当社株券等の流通性に関する懸念を惹起せしめるような形で株券等の買付けを行い、株主の皆さまに対して買付けに応じることを事実上強要するもの)に代表される、構造上株主の皆さまの判断の機会または自由を制約し、事実上、株主の皆さまに当社株券等の売却を強要するおそれがある場合
基本方針
(1)当社は、当社の企業価値が、当社及びその子会社・関連会社が永年にわたり蓄積してきた営業・技術・生産のノウハウ及びブランドイメージ等を駆使した機動性のある企業活動に邁進し、国内外の社会の発展に貢献することにより、株主の皆さま共同の利益を向上させていくことにその淵源を有していると考えております。
そのため、当社は、特定の者またはグループによる当社の総議決権の20%以上に相当する議決権を有する株式の取得により、このような当社の企業価値または株主の皆さま共同の利益が毀損されるおそれが存する場合には、かかる特定の者またはグループは当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者として不適切であるとして、法令及び定款によって許容される限度において、当社の企業価値または株主の皆さま共同の利益の確保・向上のための相当な措置を講じることを、その基本方針としております。
(2)基本方針策定の背景
当社グループは、1948年の当社の創業以来、「信頼される経営を信条とする」という経営姿勢に基づいて、サスペンションを主体とする自動車部品メーカーとして日々研鑽を積み、「サスペンションのヨロズ」として自動車メーカー各社からの信頼を得てまいりました。
当社グループの主力事業であるサスペンションの製造は、定型的な製品を単に製造・販売するというものではなく、自動車メーカーのニーズに合致するように、その要請を十分に把握しながら、自動車メーカーとともに開発していかなければならないという特徴があります。
したがって、自動車メーカーのニーズに応え、クルマの重要保安部品であるサスペンションを作るためには、最先端かつ高度な技術力が不可欠であることに加え、自動車メーカーの業務プロセスを的確に理解し、その中にまで入り込んで、製品開発に取り組むことが極めて重要となります。
当社グループにおいては、自らが有する開発力・技術力を生かし、サスペンションの製造を開発から生産まで一貫して行うことで、徹底して効率を追求し、コスト削減、納期短縮はもちろん、ダントツの品質を維持してまいりました。
当社グループは、当社の企業価値および株主の皆様共同の利益の継続的な維持向上のため、客先拡大・収益増加を目的とした海外進出や設備投資も積極的に行っております。
以上に述べたような取組みやそれに基づく成果に裏付けられた当社グループの企業価値の向上の源泉となっておりますのは、株主の皆様の中長期的な視野に立ったご理解とご支援、当社グループが属します自動車部品業界や事業内容、自動車メーカー各社との信頼関係を重視した中長期的視野に基づいた経営の取組み、健全な財務体質に基づいた積極的な設備投資の実施、市場特性に関する豊富な知識と経験を有した経営陣と社業に誠実である従業員が個々の役割を認識しながら堅実に経営基盤を強化していこうとする意欲、高度な技術力の維持およびその更なる向上、そしてそれらを支える全社員の高いモチベーションの維持と、これらによって築かれたステークホルダーとの永年の信頼関係への深い理解であると考えております。
当社グループは、世界規模で技術革新が進展する中、急激に変化する国内外市場の需要動向を的確に把握し、これらの経営資源を有効かつ最大限活用するとともに、地球環境の保全に配慮した企業活動や法令遵守を心掛 けた経営を継続し、企業の社会的責任を果たすと同時に、企業価値の向上に全力で取り組んでまいります。
他方で、昨今、新しい法制度の整備や経済構造・企業文化の変化等を背景として、対象となる会社の経営陣の賛同を得ることなく、一方的に大量の株式の買付けを強行するといった動きが散見されるようになり、場合によっては上記の経営資源に基づく当社グループの持続的な企業価値の向上が妨げられるような事態が発生する可能性も否定できない状況となっております。
当社といたしましては、このような状況に鑑み、支配株式の取得を目指す者およびそのグループ(以下「買収者等」といいます)が現われることを想定しておく必要があるものと考えております。
もとより、当社といたしましては、あらゆる支配株式の取得行為に対して否定的な見解を有するものではありません。
しかしながら、近時の支配株式の取得行為の中には、①買収者等による支配株式の取得行為の目的等からみて、買収者等が真摯に合理的な経営を目指すものではないことが明白であるもの、②一般株主に不利益な条件での株式の売却を事実上強要するおそれがあるもの、③支配株式の取得行為に応じることの是非を一般株主が適切に判断するために必要な情報や相当な考慮期間が提供・確保されていないもの、④支配株式の取得行為に対する賛否の意見または買収者等が提示する買収提案や事業計画等に代替する事業計画等を会社の取締役会が株主に対して提示するために必要な情報、買収者等との交渉機会および相当な考慮期間等を会社の取締役会に対して与えないもの等、会社の企業価値または株主の皆様共同の利益に対して回復困難な損害を与える可能性のあるものも少なくありません。
当社といたしましては、このように当社の企業価値または株主の皆様共同の利益の確保・向上に資さない態様で支配株式の取得行為を行う者は、当社の財務および事業の方針の決定を支配する者として不適切であり、かかる買収者等に対しては、会社として、このような事態が生ずることのないよう、何らかの措置を講じる必要があるものと考えております。
3.基本方針の実現に資する特別な取組みについて
当社は、多数の投資家の皆様に中長期的に継続して当社に投資していただくため、当社の企業価値または株主の皆様共同の利益を確保・向上させるための取組みとして、下記(1)の企業理念と経営の基本姿勢のもと、下記(2)の企業価値の向上に向けた取組み、下記(3)のコーポレートガバナンスの強化に向けた取組み、下記(4)の持続的な株主還元および下記(5)の当社の考える企業の社会的責任に向けた取組みを、それぞれ実施しております。これらの取組みの実施を通じて、当社の企業価値または株主の皆様共同の利益を向上させ、それを当社の株式の価値に適正に反映させていくことにより、上記のような当社の経営資源に基づく当社の持続的な企業価値の向上が妨げられるような事態を防ぐことができると考えられますので、これらの取組みは、上記1の基本方針の実現に資するものであると考えております。
(1)企業理念と経営の基本姿勢
当社はこれまで、常に「社会貢献を第一義とし、たゆまぬ努力で技術を進化させ、人びとに有用な製品を創造する」という企業理念を通じて、前述した企業価値の源泉の理解のもと、長期的観点に立って、当社の企業価値と株主の皆様共同の利益の持続的な向上に努めてまいりました。
(2)企業価値の向上に向けた取組み。
当社は、さらなる企業価値向上のため、2018年度から2020年度にかけての中期経営計画「Yorozu Spiral-up
Plan 2020」(以下「中期経営計画」といいます)を公表いたしました。
当社は中期経営計画に基づき、企業価値の向上を意識した重点取組みとして、以下の事項を実施してまいりました。
① 収益力の強化
② 製品力・開発力の向上
③ 企業力の充実
中期経営計画において掲げた2020年度の業績目標については、全世界的な新型コロナウイルス感染症による経済活動の悪化の影響や得意先の稼働停止、生産縮小の影響を受け、収益が悪化したため、達成することはできませんでしたが、生産体制の見直しや2019年度下期から実施している緊急収益改善活動により、今後収益を上げるための強固な企業体制への礎を築き、企業力の向上に努めました。
当社は、上記の中期経営計画の取組みの結果を踏まえ、2021年5月には、2021年度から2023年度にかけての新中期経営計画「Yorozu Sustainability Plan 2023」(以下「新中期経営計画」といいます)を策定いたしました。今後は、新たな企業ビジョンである「サスペンションでOnly1の技術力によりお客様のニーズに応え、永続的に発展を続ける100年企業を目指す」という新たな企業ビジョンのもと、変化に強い健全経営を目指し、以下の三つの柱を掲げ、さらなる企業価値の拡大を図ってまいります。1つ目は、人・社会・地球と一緒に歩むべく「ESG」を意識した経営、2つ目は、生産台数に左右されにくい企業体質への変革による「安定した収益」、最後にサスペンション部品の競争力向上を図るための「新技術・工法」の確立に取り組んでまいります。当社は、中長期的な観点に基づいた戦略により持続的な成長とさらなる企業価値の向上を図るため、新中期経営計画を着実に実行してまいります。
(3)コーポレートガバナンスの強化に向けた取組み
当社は、「高い倫理観と遵法精神により、公正で透明な企業活動を推進すること」を経営の基本としております。取締役会は経営の基本方針、法令で定められた事項やその他経営に関する重要な決定を行うと共に、取締役および執行役員の業務執行状況を監督する機関として位置付けておりますが、株主の皆様に対する経営陣の責任をより一層明確にするため、2001年6月27日開催の第56回定時株主総会において、取締役の任期を2年から1年に短縮しております。
さらに、当社は、コーポレートガバナンスの一層の強化の観点から、2015年6月10日開催の第70回定時株主総会において、過半数を社外取締役で構成する監査等委員会を置く「監査等委員会設置会社」に移行し、監査・監督機能の強化を図りました。また、これに伴い、それまでに選任していた社外監査役2名に替え、新たに、東京証券取引所が定める独立社外取締役の要件を満たす法律・会計分野に造詣の深い女性2名を、監査等委員である取締役に選任いたしました。その後、2017年6月16日開催の第72回定時株主総会において選任された後任の監査等委員である取締役も、同様に独立社外取締役の要件を満たす法律・会計分野に造詣の深い女性2名であり、取締役会は多様性を考慮した構成となっております。
また、監査等委員ではない取締役に関しても、社外取締役を、2018年6月18日開催の第73回定時株主総会で1名、2020年6月26日開催の第75回定時株主総会でさらに1名、合計2名増員いたしました。この結果、監査等委員である取締役を含め、当社の取締役9名の内4名が東京証券取引所の定める独立社外取締役となり、取締役会の3分の1以上が独立社外取締役で構成されております。加えて、2018年12月には、取締役等の選任や報酬の決定における意思決定に関わるプロセスの透明化および客観性を高めるために過半数を独立社外取締役で構成される「指名委員会」および「報酬委員会」を設置いたしました。
なお、当社は、当社が持続的に成長し中長期的に企業価値の向上を実現するため、「コーポレートガバナンス・ガイドライン」(http://www.yorozu-corp.co.jp/csr/governance/)を制定し、コーポレートガバナンスに関する基本的な考え方および運営方針を明らかにしております。
当社は、このような取組みによりコーポレートガバナンスを強化し、企業としての持続的な成長を図り、すべてのステークホルダーにとっての企業価値向上に引き続き努めてまいります。
(4) 持続的な株主還元
当社は、中期経営計画において、財務戦略の基本方針を、これまでの財務安全性重視に加え、株主還元の充実に注力することといたしました。これに伴い、配当方針についても、これまでの「安定配当」から「目標配当性向の設定」へと変更し2015年度から連結配当性向35%を目標といたしました。
この基本方針および配当方針に従い、当社は、2015年度から2020年度において、連結配当性向35%を実現するとともに、2016年9月には、発行済株式総数の4.0%の自己株式の取得を取締役会にて決議し、取得いたしました。
この基本方針は、新中期経営計画においても継続しており、配当性向については、新中期経営計画においても、連結配当性向35%を目標といたします。当社は、今後も持続的な株主還元の実施に努めてまいります。
(5) 当社の考える企業の社会的責任に向けた取組み
当社は、創立以来、「高い倫理観と遵法精神により、公正で透明な企業活動を推進すること」を経営姿勢とし、関連法令の遵守はもちろんのこと、良き企業市民として社会的責任を果たすことが必要と認識し、事業活動を行ってまいりました。今後とも、お客様の満足と技術革新、法令等の遵守、環境問題への取組み、グローバル企業としての発展、企業情報の開示、人権の尊重、公正な取引、経営幹部の責任の明確化を図ることによって、企業の社会的責任を遂行してまいります。
4.基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組みについて
当社が導入した買収防衛策(以下、「本プラン」といいます。)は、当社が発行者である株券等について、特定の株主、その特別関係者及び実質的に支配する者もしくは共同ないし協調して行動する者の株券等保有割合が20%以上となる買付を行うこと等を希望する買付者が出現した場合に、当該買付者に対し、事前に当該買付等に関する必要かつ十分な情報の提出を求めます。
その後、買付者等から提供された情報が、当社社外取締役を含む当社の業務執行を行う経営陣から独立した者のみから構成される独立諮問委員会に提供され、その検討・評価を経るものとします。
独立諮問委員会は、当該買付者が本プランに定める手続を遵守しなかった場合、その他買付者の買付等の内容の検討の結果、当該買付者による買付等が当社の企業価値ひいては株主共同の利益に著しく反する重大なおそれをもたらす場合で、かつ、対抗措置を発動することが相当と認められる場合は、当社取締役会に対し、対抗措置の発動を勧告します。
また、独立諮問委員会は、当社取締役会に対して、株主総会において大規模買付行為に対する対抗措置発動の要否や内容について賛否を求める形式により、株主の皆さまの意思を確認することを勧告できます。
当社取締役会は、独立諮問委員会の上記勧告を最大限尊重した上で、対抗措置の発動、不発動または中止の決議を行います。
なお、当社は、対抗措置の発動要件をいわゆる高裁四類型(注1)及び強圧的二段階買付け(注2)のみに限定しております。
具体的な対抗措置として新株予約権の無償割当てを行う場合には、対抗措置としての効果を勘案した行使期間、行使条件及び取得条項を定めることがあります。
本プランの有効期間は、2024年開催予定の第79回定時株主総会の終結の時までとします。
5.本プランの合理性について
本プランは、経済産業省及び法務省が2005年5月27日に公表した「企業価値・株主共同の利益の確保又は向上のための買収防衛策に関する指針」の定める三原則(①企業価値・株主共同の利益の確保・向上の原則、②事前開示・株主意思の原則、③必要性・相当性確保の原則)を以下のとおり充足しており、また、経済産業省に設置された企業価値研究会が2008年6月30日に公表した「近時の諸環境の変化を踏まえた買収防衛策の在り方」及び東京証券取引所が2015年6月1日に公表した「コーポレートガバナンス・コード~会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために~」の「原則1-5.いわゆる買収防衛策」その他の買収防衛策に関する実務・議論を踏まえた内容となっており、高度な合理性を有するものです。
① 企業価値または株主共同の利益の確保・向上
本プランは、大規模買付者に対して事前に大規模買付行為に関する必要な情報の提供及び考慮・交渉のための期間の確保を求めることによって、当該大規模買付行為に応じるべきか否かを株主の皆さまが適切に判断されること、当社取締役会が当該大規模買付行為に対する賛否の意見または代替案を株主の皆さまに対して提示すること、あるいは、株主の皆さまのために大規模買付者と交渉を行うこと等を可能とし、もって当社の企業価値または株主の皆さま共同の利益の確保・向上を目的としております。
② 事前の開示
当社は、株主及び投資家の皆さま及び大規模買付者の予見可能性を高め、株主の皆さまに適正な選択の機会を確保するために、本プランを予め開示するものです。また、当社は今後も、適用ある法令等及び金融商品取引所規則に従って必要に応じて適時適切な開示を行います。
③ 株主意思の重視
当社は、2021年6月29日開催の第76回定時株主総会において本プランによる買収防衛策の継続を承認いただいております。また、当社株主総会において当社提案に基づき本プランを廃止する旨の議案が承認された場合には本プランはその時点で廃止されるものとしており、その存続が株主の皆様の意思に係らしめられています。
④ 外部専門家の意見の取得
当社取締役会は、大規模買付行為に関する評価、検討、意見形成、代替案立案及び大規模買付者との交渉を行うにあたり、必要に応じて、当社取締役会から独立した第三者的立場にある専門家(フィナンシャル・アドバイザー、弁護士、公認会計士、税理士等)の助言を得たうえで検討を行います。これにより当社取締役会の判断の客観性及び合理性が担保されることになります。
⑤ 独立諮問委員会への諮問
当社は、本プランの必要性及び相当性を確保し、経営者の保身のために本プランが濫用されることを防止するために、独立諮問委員会を活用するものとし、当社取締役会が対抗措置を発動する場合には、その判断の公正を担保し、かつ、当社取締役会の恣意的な判断を排除するために、独立諮問委員会の勧告を最大限尊重するものとしております。
⑥ デッドハンド型買収防衛策またはスローハンド型買収防衛策ではないこと
本プランは、当社の株主総会または株主総会において選任された取締役により構成される取締役会によっていつでも廃止することができるため、いわゆるデッドハンド型買収防衛策(取締役会の構成員の過半数を交替させてもなお、発動を阻止できない買収防衛策)またはスローハンド型買収防衛策(取締役会の構成員の交替を一度に行うことができないため、発動を阻止するのに時間を要する買収防衛策)ではありません。
以上から、当社役員の地位の維持を目的とするものでないことは明らかであると考えております。
(注1)下記に掲げる行為により、当社の企業価値ひいては株主共同の利益が著しく損なわれることが明らかである大規模買付行為である場合
① 真に会社経営に参加する意思がないにもかかわらず、ただ株価をつり上げて高値で株式を会社関係者に引き取らせる目的で当社株券等を取得する行為(いわゆるグリーンメイラー)
② 当社の会社経営を一時的に支配して、当社の事業経営上必要な知的財産権、ノウハウ、企業秘密情報、主要取引先や顧客等を当該大規模買付者またはそのグループ会社等に移譲させるなど、いわゆる焦土経営を行う目的で、当社株券等を取得する行為
③ 当社の会社経営を支配した後に、当社の資産を当該大規模買付者またはそのグループ会社等の債務の担保や弁済原資として流用する予定で、当社株券等を取得する行為
④ 当社の会社経営を一時的に支配して、当社の事業に当面関係していない不動産、有価証券等の高額資産等を売却等処分させ、その処分利益をもって一時的な高配当をさせるか、あるいは一時的高配当による株価の急上昇の機会を狙って株式の高値売り抜けをする目的で、当社株券等を取得する行為
(注2)強圧的二段階買付け(第一段階の買付けで当社株券等の全てを買付けられない場合の、二段階目の買付けの条件を不利に設定し、明確にせず、または上場廃止等による将来の当社株券等の流通性に関する懸念を惹起せしめるような形で株券等の買付けを行い、株主の皆さまに対して買付けに応じることを事実上強要するもの)に代表される、構造上株主の皆さまの判断の機会または自由を制約し、事実上、株主の皆さまに当社株券等の売却を強要するおそれがある場合