有価証券報告書-第132期(平成28年4月1日-平成29年3月31日)

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2017/06/29 9:22
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業績等の概要

(1)業績
当期における国内経済は、足元の市況は緩やかな回復基調にあるものの、上期の急速な円高や株安に加え、インバウンド需要の低迷の影響を受け、消費は伸び悩みました。海外においては、米国経済は、大統領選挙期間中の市況低迷に加え新政権発足後も政策の不確実性が増した一方で、雇用・所得環境の改善による景気回復期待が高まりました。欧州経済は、英国のEU離脱問題による混乱が限定的であったこともあり、総じて経済状況は安定して推移しました。アジア経済は、全般的に厳しい経済環境が続いているものの、中国を中心に回復の兆しも見えてまいりました。
このような情勢のもと、当社グループは、平成25年2月に中期経営計画「シチズングローバルプラン2018」を策定し、製造革新を進め収益力強化を図るとともに、真のグローバル企業となるべく、時計事業を中心に新たな成長戦略を推進してまいりましたが、円高や世界的な市況低迷の影響を受け、厳しい結果となりました。
当期の連結業績は、売上高は3,125億円(前期比10.3%減)、営業利益は215億円(前期比29.4%減)となり、円高の影響に加え、時計市場全体の落ち込みの影響を受け、減収減益となりました。また、営業利益が減益となったことにより、経常利益は219億円(前期比28.2%減)となったものの、資産の効率化を進めた結果、固定資産売却益及び投資有価証券売却益を計上したことで、繰延税金資産に対する評価性引当金額の戻し入れが発生し、税負担率が前期を下回り、親会社株主に帰属する当期純利益は165億円(前期比25.5%増)となりました。
セグメントの業績は、次のとおりであります。
① 時計事業
ウオッチ販売のうち、“CITIZEN”ブランドの国内市場は、フラッグシップモデル「エコ・ドライブ ワン」やスマートフォンとリンクする「エコ・ドライブ Bluetooth」等の新商品が好調であったほか、男性向けブランドの「ATTESA」等で展開しているGPS衛星電波時計の市場シェアが拡大しました。また、女性向けブランドの「xC」は、当社独自の表面硬化技術による新色のサクラピンクモデルが好調な売れ行きとなり、国産女性ブランドNo.1の地位を確固たるものとしました。しかしながら、減少傾向が続くインバウンド需要の影響等により、国内時計市場が低迷する中、国内市場全体では減収となりました。
海外市場は、経済状況の緩やかな改善が見られた一部地域を除き、全体的に販売が伸び悩んだことに加え、年度中盤にかけての円高の影響を解消するには至らず、減収となりました。北米市場は、米国大統領選挙後に景気回復への期待が高まっているものの、時計市場への波及効果は限定的で、年末商戦では期待通りの結果を得られず、売上は伸び悩みました。欧州市場は、堅実な経済成長を続けるドイツや、EU離脱決定後の通貨安を背景にインバウンド需要が底堅く推移した英国を中心に年末商戦は全体的に好調な販売となりました。アジア市場は、年度終盤にかけて販売は安定感を取り戻したものの、年度前半の個人消費の落ち込み等による販売低迷を挽回するには至りませんでした。一方、経済が緩やかな回復基調にある中国ではオンライン流通を中心に販売を伸ばしました。
“BULOVA”ブランドは、世界初のカーブクロノムーブメントを搭載した新製品「CURV」が好調であったことや、新規流通を開拓したことにより販売を伸ばしたものの、円高の影響を受けて減収となりました。
“Q&Q”ブランドは、国内市場では新規顧客の開拓等により順調に販売を伸ばしたものの、海外市場において、円高の影響に加え、アジア新興国を中心に販売が低迷したことにより、全体では減収となりました。
“FREDERIQUE CONSTANT”ブランドは、平成28年7月に買収が完了し、当社グループに加わりました。世界的な需要の落ち込みの影響を受け、スイスの高級時計ブランドの多くが販売を大きく落とす中、欧州を中心に安定した販売で推移しました。
ムーブメント販売は、時計市場の縮小や円高の影響に加え、消費者のデザイン嗜好の変化や低単価商品の需要拡大により高付加価値商品の販売が減少した影響もあり、減収となりました。
なお、腕時計の生産規模は、前連結会計年度比10.7%減少し、約1,560億円(販売価格ベース)でありました。
営業利益においては、売上の減少と円高の影響により、大幅な減益となりました。
以上の結果、時計事業全体では、売上高は1,636億円(前期比9.7%減)、営業利益は144億円(前期比29.6%減)と、減収減益となりました。
② 工作機械事業
国内市場は、自動車関連及び半導体製造装置関連を中心に堅調に推移したものの、一部の顧客に設備投資を控える動きがあり、減収となりました。
米州市場は、政策動向に対する様子見から設備投資に慎重な姿勢が継続し、減収となりました。
欧州市場は、円高の影響があったものの、主要な市場であるドイツやイタリアでの販売が堅調に推移したことにより、売上は前年並みを維持しました。
アジア市場は、東アジア向けの大口受注の出荷が販売に大きく寄与したことに加え、中国の自動車関連を中心に足元の受注は底打ち感が見られ、増収となりました。
なお、工作機械の生産規模は、前連結会計年度比3.8%減少し、約494億円(販売価格ベース)でありました。
営業利益においては、全体では設備投資需要が減少し、売上が前年を下回った結果、減益となりました。
以上の結果、工作機械事業全体では、売上高は496億円(前期比3.5%減)、営業利益は64億円(前期比10.4%減)と、減収減益となりました。
③ デバイス事業
精密加工部品のうち、自動車部品は、各地域における新車販売が堅調に推移する中、既存顧客からの安定した受注に加え、新規顧客の開拓により、増収となりました。スマートフォン向けスイッチは、中国顧客を中心に売上が拡大しました。一方、前期から販売を開始した応用製品は需要が一巡したことで売上を落としており、精密加工部品全体では減収となりました。
オプトデバイスのうち、チップLEDは、世界的な省エネ意識の高まりにより、照明用途の市場が拡大しているものの、競争の激化による価格下落や円高の影響により、北米及び欧州の売上が伸び悩みました。照明以外の用途においては、車載向け及びゲーム機器向けの売上が堅調に推移しました。また、ユニット品は、車載向けバックライトの売上が拡大した一方で、スマートフォン向け製品の販売が落ち込み、オプトデバイス全体では減収となりました。
なお、オプトデバイスの生産規模は、前連結会計年度比2.1%減少し、約295億円(販売価格ベース)でありました。
その他部品のうち、主要製品である水晶デバイス及び強誘電性液晶マイクロディスプレイは、ともに低調な販売状況が継続しておりますが、その他部品全体では増収となりました。
営業利益においては、主要製品の販売は堅調に推移しているものの、全体の売上の減少及び円高の影響により、大幅な減益となりました。
以上の結果、デバイス事業全体では、売上高は694億円(前期比13.9%減)、営業利益は39億円(前期比42.1%減)と、減収減益となりました。
④ 電子機器事業
情報機器は、中国の徴税システム変更に伴う需要増により大型プリンターの販売が大きく伸びたものの、POSプリンター及びラベルプリンターの欧米向け販売が伸び悩んだことに加え、フォトプリンターにおいても顧客の在庫調整があり、情報機器全体では減収となりました。
健康機器は、国内市場では血圧計及び体温計の販売が好調に推移したものの、アジア市場及び中東市場での販売低迷を受け、健康機器全体では減収となりました。
営業利益においては、売上は減少したものの費用削減による収益性の改善に努めた結果、増益となりました。
以上の結果、電子機器事業全体では、売上高は217億円(前期比6.8%減)、営業利益は5億円(前期比47.9%増)と、減収増益となりました。
⑤ その他の事業
主要事業である宝飾製品は、消費者の購買意欲に回復の兆しが見られず、販売は低迷しました。また、球機用機器事業の撤退により、その他の事業全体では減収となりました。
営業利益においては、不振が続いていた球機用機器事業からの撤退により、損益が改善しました。
以上の結果、その他の事業全体では、売上高は80億円(前期比30.4%減)、営業利益は3億円(前期は5億円の営業損失)と減収増益となりました。
(2)キャッシュ・フロー
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は前連結会計年度に比べ171億円減少し、当連結会計年度末には、778億円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、前連結会計年度と比べ28億円増加し、327億円となりました。これは主に法人税等の支払額41億円、仕入債務の減少額38億円等による減少要因がありました一方、税金等調整前当期純利益が224億円、減価償却費が125億円、たな卸資産の減少額が69億円となりましたこと等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、前連結会計年度と比べ32億円増加し、278億円の支出となりました。これは主に有形固定資産の売却による収入47億円、投資有価証券の売却による収入34億円等による増加要因がありました一方、有形固定資産の取得による支出が213億円、連結子会社株式の取得による支出が123億円となりましたこと等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、前連結会計年度と比べ84億円増加し、206億円の支出となりました。これは主に短期借入金の減少額が147億円、配当金の支払額が54億円となりましたこと等によるものであります。