有価証券報告書-第47期(平成25年4月1日-平成26年3月31日)

【提出】
2014/06/26 9:17
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【項目】
123項目

研究開発活動

当社グループは、産業界の高度化するニーズに広く対応できるよう積極的な研究開発活動を展開しております。その分野は分析機器事業、半導体事業、自動認識事業といずれも最先端の技術が求められる3つの事業のセグメントに分かれ、それぞれの分野ごとに独自性のある技術力を高めながら新製品の開発に努めております。
また、製品に対するニーズを様々な角度から収集し、そのデータをもとに、より充足度の高い製品を目指すべく開発・改良に努めております。
なお、当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費の総額は、905百万円であります。
セグメントごとの研究開発活動は次のとおりであります。
(分析機器事業)
(1) 概要
当事業の開発活動は、分離分析法の一つであるクロマトグラフ技術を中心として進めております。
分離分析の主体となる分離カラムを始めとする消耗品(ソフト)はもちろんのこと、それらのパフォーマンスを十分発揮させることのできる分析機器(ハード)を合わせて開発しております。また、長年にわたり培ってまいりましたクロマトグラフ基盤技術をベースに、分析機器と連動させる前処理装置の自動化技術や、ライフサイエンステクノロジーなどの先端技術を融合させた新製品の開発に邁進しております。さらに合わせて各種の法規制に対応した製品への展開を進めております。
また、分離技術だけではなく、お客様のベネフィットとなる分析試料のクリーンアップ・捕集・濃縮から分析までの「トータルソリューション提供」を目指し、そのトータルソリューションの一画を担えるような製品の開発を進めております。
なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は、706百万円であります。
(2) 主な研究開発活動
当事業の主力消耗品製品群を統一ブランド「イナートファミリー」と名付け、固相抽出、液体クロマトグラフ、ガスクロマトグラフをその三本柱としております。
固相抽出用カートリッジは「InertSep」シリーズ、液体クロマトグラフ用カラムは「Inertsil」シリーズと、さらに高不活性を追求した「InertSustain」シリーズ、ガスクロマトグラフ用キャピラリーカラムは「InertCap」シリーズで構成され、各々の販売戦略に沿った開発を展開し、ラインアップの拡充に注力してまいりました。
主な研究開発成果は次のとおりです。
(消耗品関連)
①「Inertsil」シリーズ、「InertSustain」シリーズ (液体クロマトグラフ用カラム)
1)「Inertsil C30 S-Select」
長鎖のトリアコンチル基を高密度に結合しているためC30の独自の作用が得られ、構造異性体や立体異性体における分子形状の違いを認識し、ジアステレオマーや幾何異性体などの分離に効果を発揮します。
2)「InertSustain C8」、「InertSustain Phenyl」に2μmのラインアップを追加
高不活性型カラムとして好評を得ているInertSustain C8、InertSustain Phenylに、新たに粒子径2μmのカラムを追加し、高速分析にも対応可能としました。
②「InertSep」シリーズ (固相抽出用カートリッジ)
1)「InertSep ME-2」
メタクリレートポリマーをベースにイミノ二酢酸型弱陽イオン交換基とアルキル鎖型陰イオン交換基を導入した固相抽出カートリッジです。海水試料、食品試料など、塩濃度が高い試料中の重金属類で、1族、2族の陽イオンを、超純水で簡単に洗浄除去しながら濃縮する事が可能になります。
2)「InertSep C18/DRY」
上層にC18、下層に無水硫酸ナトリウムを充填した二層タイプの固相抽出カートリッジです。穀類・糖類における農産物の残留農薬一斉試験法において、本製品を用いる事で、脱脂・脱水・ろ過の手間を大きく削減する事ができます。
3)「InertSep SAX-2」、「InertSep SCX-2」のラインアップ
食品、環境、生体などにおけるイオン性成分の前処理に適している2種の前処理用カートリッジを追加発売しました。同時に原価低減も行ったことにより海外販売の増加が見込めます。
4)「InertSep mini AERO DNPH-LG」
アルデヒド捕集用として好評のInertSep mini AERO DNPHシリーズに、新たに高捕集量タイプを追加しました。既存のInertSep mini AERO DNPH、及びDNPH-HRと合わせて拡販が期待できます。
③「モノリス」シリーズ (モノリス多孔体技術を利用した製品)
新しい柱として、ケイ酸エチルから合成された均一なスルーポアをもつ一体型のシリカゲルであるモノリスシリーズの開発にも注力しています。従来の粒子とは異なりディスク状(板状)に成型されており、通液空間が狭くとも表面積を保てるため低圧で高理論段数が得られることから、次世代の分離媒体として注目されています。DNA精製に用いる“MonoFasシリーズ”、固相抽出に用いる“MonoSpinシリーズ”、匂い成分などの捕集に用いる“MonoTrapシリーズ”などが製品としてラインアップされています。
1)「MonoFas 糞便DNA抽出キットⅩ」
糞便中に含まれるバクテリア(グラム陽性菌、グラム陰性菌)、上皮細胞、寄生虫などの遺伝子(DNA)を、固相抽出の原理で抽出・精製するキット「MonoFas®糞便DNA抽出キットⅩ」を発売いたしました。
(装置関連)
① ガスクロマトグラフ「GC4000Plus」
弊社の主力装置であるガスクロマトグラフ「GC4000」に新たな機能を追加し9年ぶりに「GC4000Plus」として発売しました。
新機能としてはカラム流量やFID検出器の各ガスの流量制御を自動電子制御化したことにより、再現性の向上と立ち上げ時や分析終了時の自動化を実現しました。また、必要のないときにガス流量を絞る『ガスセーブモード』を搭載し、環境にも配慮した製品となっています。
さらに、ガスクロマトグラフに搭載するオートサンプラー「ASI-240」を一新し、「ASI-241」として合わせて発売しました。
② パージアンドトラップ濃縮導入装置用試料自動希釈ユニット「AD6300」
前期発売したパージアンドトラップ濃縮導入装置「PT6000」に対し、一部のお客様から「濃度の濃い試料を精製水で希釈したい」という要望が寄せられていました。
そのためこの試料自動希釈ユニット「AD6300」は本体の「PT6000」と連動して自動で試料水を精製水で任意の割合(最大200倍)で希釈して「PT6000」に送液するものです。
③ 分取用低圧グラジエントポンプ「PU714M」
従来の分取LCシステムに採用されていたグラジエントポンプは高圧タイプのもので、混合する溶媒の数だけポンプが必要でした。
今回開発しました分取用低圧グラジエントポンプ「PU714M」は溶媒がポンプに入る前に電磁弁制御により溶媒の割合を決定するもので、ポンプ1台で最大4液の溶媒をコントロールすることができます。
高圧タイプでは溶媒の数だけポンプが必要でしたので、お客様にとっては大幅なコストカットが実現できる製品になっています。
(半導体事業)
(1) 概要
当事業の研究開発は、「製品開発部」及び「生産技術部」が担当しており、当連結会計年度に支出した研究開発費の総額は、103百万円であります。
(2) 主な研究開発活動
① 低反射製品の開発
FPDなどの透明基板を用いたデバイス製造において使用される基板保持ステージには、高性能化及び低コスト化を目的として低反射率化が望まれています。素材技術、表面処理技術及び精密加工技術を複合した独自のコンセプトで低反射ステージの開発を進めております。一部のユーザ向けに製品を出荷しており、開発技術の高度化と製品種の拡大を目指しています。
② 多孔質構造体の用途及び製品開発
セラミックス等の脆性材料で各種形状の多孔質構造体を1mm以下の肉厚で製造する技術を開発しました。従来の機械加工では加工コストの増大及び加工時の破損が問題となっていました。基礎特性の評価・分析及び用途開発を進めております。
③ 石英直接接合技術の高度化
当事業の付加価値技術の一つに、接着剤を使用せずに石英を直接接合する技術が挙げられます。これまでに、内部に流路形成した部品及び異種材料を封入した部品等を製品化しております。高度化するマーケット要求に応えるため、品質及び機能向上を目指して、継続した技術開発を推進しています。
④ 表面処理による高機能化製品の開発
石英等の構造材表面に特殊な処理を施すことにより、従来にはなかった高機能化の発現が期待されます。特にユーザニーズの高い3R技術をはじめ、幅広い業種の市場調査及び表面処理技術調査を行いながら、基礎開発とサンプル製作を進めております。当事業の主市場である半導体関連分野だけでなく、様々な用途への展開を狙っています。
⑤ 微細加工技術の開発
MEMS製造技術を用いることで機械加工では到達できない微細な加工が可能となります。微細加工技術の応用開発により、新たな付加価値製品の創出を進めています。
(自動認識事業)
(1) 概要
当事業はRFIDに特化した製品開発を行っております。顧客ニーズにあわせた柔軟かつ応用性の高い製品・システムの提供を目指し、高性能と高品質を追求した製品造りを展開し、あわせて生産性向上にも日々取り組んでいます。
なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は、94百万円であります。
(2) 主な研究開発活動
① USB I/F関連の整備
自動認識事業を担当するジーエルソリューションズ株式会社の分社独立にあわせ、新たなベンダIDを取得しました。今後USB I/FのRFID機器は本IDにて管理されることになります。また、WindowsでのUSB機器用のドライバの発行元の署名管理が厳格化されたことに併せ、自己署名作業を実施し、最新のWindows 8.1にも利用できるようにしました。
② 新規格のカードへの対応
当連結会計年度より進めておりましたAES暗号処理技術を応用し、mifare PLUS(マイフェアプラス)対応製品をリリースするとともに、従来製品にも実装を行いました。AESは従来使われてきたDESよりも強固な暗号方式であり、将来に渡って高いセキュリティを確保できるといわれており、今後AES関連製品の需要は高まるものと考えています。
また、ソニー株式会社がリリースしたFeliCa Lite-S(フェリカライトエス)の相互認証機能対応製品をリリースするとともに、従来製品への実装も行っています。
さらに、ソニー株式会社とFeliCa AES(フェリカエーイーエス)に関する対象技術の提供を受ける契約を締結しました。本契約によりFeliCa AESへの技術対応を進め、次事業会計年度に対応製品をリリースする準備に入っています。
③ 製品開発
1) NM28シリーズ NXP製NFCチップPN533+16ビットCPU搭載
リーダライタ・アンテナ部の2枚基板で従来製品を置き換える新型機種として準備しました。
2) TM09シリーズ テキサスインスツルメンツ製RFIDチップTRF7960A+16ビットCPU搭載2) TM09シリーズ
リーダライタ部アンテナ部一体型基板です。
3) NM29-U NXP製NFCチップPN533のUSB I/Fに直結し、CPUを搭載しない超小型基板です。
4) NM30シリーズ NXP製NFCチップPN533直結のCPUを搭載しない一体型基板です。
NM29Uをベースとし、アンテナサイズの拡大及び補助部品実装を可能にしたモデルです。実装部品によりバリエーションがあります。
5) その他特定顧客向け製品開発・製造の実施
複数の特定顧客向け機器の開発受託をいたしました。