有価証券報告書-第48期(2023/07/01-2024/06/30)

【提出】
2024/09/27 11:02
【資料】
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【項目】
155項目
(2)戦略
地球への環境負荷が増大する中、持続可能な社会が実現されなければ、企業活動を行っていくことはできないと考えております。特に、命に関わる医療機器にとって、地球災害の激甚化に伴うサプライチェーンの寸断や医療機器供給能力の低下は、事業リスクのみならず社会リスクになり得ると考えられます。
気温上昇に伴う将来の環境規制の厳格化及び自然災害リスクの増大によって、当社グループの事業活動においても影響が生じる可能性があります。このような環境認識に基づき、IEA(国際エネルギー機関)の示す1.5℃シナリオ(NZE2050)や2℃(及び2℃未満)シナリオ(SDS)、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の示す4℃シナリオ(RCP8.5)などに沿ってシナリオ分析を実施いたしました。
(気候変動に対する影響の分析)
1.5℃シナリオや2℃(及び2℃未満)シナリオでは省エネ規制の強化や炭素税及び排出枠取引の導入、主要原材料に対する環境規制や価格上昇などの移行リスクが想定されます。また、4℃シナリオでは、特に洪水や台風などの災害発生によるサプライチェーンの寸断や製造拠点の稼働停止などの物理的リスクが大きくなることが想定される一方で、平均気温の上昇に伴う血管相疾患の発症リスクの増大は、当社グループにとっては医療現場の効率性の向上に貢献できる製品の供給機会になる可能性があります。このような予測に基づき、取締役会において、各グループ会社が事業分野ごとにリスク・機会の分析を実施・共有しております。
リスク
/機会
重要リスク当社グループの
リスクと機会
影響(負の影響は△)
(顕在化する期間/影響額/重要度)
対応策
移行
リスク
脱炭素関連の政策・法規制の強化温室効果ガス排出規制の強化や、炭素税・排出枠取引の政策導入などにより負担コストが増加するリスク中期1.5℃シナリオ:
約△9億円(2030年)
2℃シナリオ:
約△9億円(2030年)
・CO2排出量削減の取り組み推進
・再生可能エネルギーの利用
温室効果ガス排出規制をはじめとした各種規制強化に伴い、インフラ関連費用が増大し負担コストが増加するリスク1.5℃シナリオ:
約△7億円(2030年)
プラスチック削減や環境負荷の低い素材への移行・素材価格の上昇主要原材料価格が上昇するリスク中期1.5℃シナリオ:
約+6億円(2030年)
2℃シナリオ:
約+1億円(2030年)
・低炭素の代替物への切り替え
・包装の軽量化
・薬事組織のグローバル化
・新素材研究の強化
新素材の探索、製品設計の変更、薬事対応などに伴い、研究開発費や販管費が増加するリスク-
物理
リスク
気象災害(大雨・洪水・台風)の発生頻度増、規模拡大サプライチェーン寸断により、サプライヤーからの原材料の調達や、製造子会社から販売先への供給に支障が生じるリスク長期4℃シナリオ:
約△2億円
・サプライヤーの気候変動リスク評価
・サプライヤーアンケートの実施
・代替の購入方法検討
・代替の生産/販売ルートの検討
製造拠点周辺の河川の氾濫により工場及び設備が浸水し、一時的に操業が困難となるリスク長期4℃シナリオ:
約△21億円
・生産拠点の気候変動リスク評価
・生産拠点の分散化
・大規模浸水が想定される拠点の対策検討
気温上昇に伴う海面上昇により、製造拠点が水没し操業不能になるリスク4℃シナリオ:
約△303億円
気温上昇平均気温の上昇により、生産施設の維持・管理コストが増加するリスク長期-・空調設備の入れ替えなど
機会血管内疾患の発症リスクの増大医療現場の効率性の向上に貢献できる製品の供給機会長期4℃シナリオ:
約+33億円(2050年)
・研究開発の強化
上記のインパクトは2023年6月期における算定値となります。インパクトの算定に当たっては算定時点で取得可能なIEAやIPCC、国土交通省などが開示している資料等を参照し合理的な方法を用いて算定しておりますが、それぞれのシナリオの情報源となる研究成果、情報、データなどは算定時点のものであり、これらのシナリオに基づいて分析・算出したインパクトの推定値は本質的に不確実性を伴っております。
なお、中期については10年程度、長期については30年程度以上を想定しております。また、重要度については当社グループへの影響額(絶対値)が5億円未満と推定されるものを小、5億円以上と推定されるものを中、10億円以上と想定されるものを大としております。