有価証券報告書-第69期(2024/10/01-2025/09/30)
対処すべき課題
本項における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
(1)経営方針
当社グループの経営方針は、以下の方針に基づいております。
1)健全な財務体質により、事業継続を長期にコミットします。
長期的視野での経営を可能にするためには財務的な独立が不可欠です。当社は企業収益及びステークホルダーへの利益還元を重視するのと同様に、高い自己資本比率の維持を目指します。
公的援助や他人資本を当てにした経営では事業を長期にコミットすることは不可能です。
これはリーマン級経済危機、伝染病流行、大規模自然災害等に備えるという点においても例外ではありません。予期せぬ事情で市場規模が急に冷え込んだ場合、生産能力が落ち込んだ場合でも、ブランドを棄損することなく終息まで耐え抜くだけの体力を備えておくことが重要です。また、M&Aや新事業への展開においても、好機に迅速な決定、対応が可能となるよう、ある程度潤沢な現預金を常時持ち合わせておく必要があります。
健全な財務体質はESG(環境・地域社会・企業統治)経営を持続的に継続する意味でも重要です。ESGを疎かにしてはいずれそのツケを払う時が来ます。環境対応については、形だけ整えてお茶を濁したり、いたずらに調査や議論を重ねるのではなく、当社の身の丈に合った範囲でスピード感をもって実現して参ります。
当社は30年先、50年先も現在同様自主独立を貫く健全な企業であり続けたいと思います。
2)Made in Japanで勝負します。
当社の最大の資産は過去60年間で築き上げたブランドです。
そのブランドは「かっこいい」「安全」「機能的」「かぶり心地がいい」というお客様の声によって支えられております。当社のヘルメットは「造形(デザイン)・製品開発」「品質保証」「生産」という相互にトレードオフするミッションを全うして初めて市場に送り出されますが、これらをバランスよくかつスピーディーに成立させることが当社の競争力の源泉であり、いずれのミッションが海外に移転しても現在のブランドを維持できないと考えています。他社ではコストダウンを目的として生産部門を海外に移転するケースが散見されますが、当社は海外移転によるメリットよりデメリットの方が圧倒的に大きいと判断致します。Made in Japanで勝負し続けることこそが、ブランド力を高く維持し、競争力を保ち続ける為に当社が取るべき唯一の選択肢であると確信しております。
3)お客様の声に耳を傾けます。
2025年9月期において、当社が製造した二輪用ヘルメットのうち、サンバイザー付かつインターコム対応モデルは販売個数において全体の約41%となりました。これらの機能はいずれもかつては存在していなかった機能ですが、今では「SHOEIといえばこれ」というくらい当社にとってなくてはならない商品となっています。これはほんの一例ですが、お客様がご希望される製品を、安全基準を満足させながら、機動的に供給することが、企業としての使命であり、存在意義であると確信致します。
現在はヘルメットとエレクトロニクスの融合、レトロブームへの対応、新素材の採用といった市場ニーズに対応すべく、業界を率先して新しいチャレンジを続けており、着実に成功を収めております。2025年10月には、かかるチャレンジの一環としてカーボン製ヘルメットを日本市場から上市致しました。そして2026年9月期には乗車用ヘルメット以外では初の試みとしてキャリーケース事業をスタートさせます。本事業についても、「さすがSHOEI」と称賛される高付加価値商品を上市することにより、ヘルメット同様、Made in Japanで勝負します。
当社は2020年3月の東京を皮切りに、大阪、横浜、京都、福岡、札幌にショールームをオープンしました。また、2023年6月には海外では初のパリにSHOEI Gallery Parisを、2025年4月にはバルセロナにSHOEI Gallery Barcelonaをオープンしております。かかるショールームもお客様のニーズを直接確認する重要な拠点になると確信しています。是非お立ち寄り下さい。
(2)経営環境
当連結会計年度における世界経済は、当初は、新型コロナ禍の終息に伴う混乱やインフレが一段落し、経済はある程度の先行き希望が見えつつある状況でしたが、諸物価は高止まりし、先行き不透明な中で景気は期待通りに浮揚しませんでした。中国における不動産バブル崩壊に端を発した景気低迷が継続したこと、米国における大規模な関税引き上げがあったこと、その結果として欧州から米国への輸出産業が混乱したことに加え、諸物価の高止まりの継続、政治の混乱や、地政学上の緊張が勃発もしくは継続したことが、消費ムード低迷が継続した理由と思われます。
高級二輪乗車用ヘルメット市場は、上記の経済状況にほぼ沿った形となりました。昨年同期ではコロナ禍で高まった二輪乗用車ブームの減速及び流通段階での在庫調整が基調としては継続しておりましたが、ある程度の流通過剰在庫は減少したものの、予想を上回る消費ムードの失速、更に当社においては、前期のような主力モデルのモデルチェンジが無く、マイナーモデルのモデルチェンジにとどまっていることから、連結販売数量、生産数量共に昨年度比減少となりました。
(3)経営戦略および優先的に対処すべき課題
当社グループの経営戦略は、上記方針を踏まえ、生産戦略、商品戦略、ブランド戦略、市場戦略、ESG経営を5つの戦略としており、それぞれの戦略について重要課題として取り組むとともに、コーポレートガバナンスの強化を実行してまいります。また、長期的に企業価値向上に資する様な新事業への進出を検討します。
1)生産戦略
国内2工場での自社一貫生産体制を充実します。モデル毎にメイン工場は決めるものの、常時どちらの工場でも生産可能な体制とするとともに、現地現物の精神に則り、需要に合わせてフレキシブルに生産量を変更可能な生産体制を構築します。また、ジャストインタイムによる改善活動等を通じて、常に生産コストの削減を追求します。又、高度な技術やノウハウを高めることにより、それら知的財産をブラックボックス化する情報管理を強化し、当社の優位性を盤石なものにします。
①実需に即した生産体制
当連結会計年度の生産数量は、欧州における前期に発売した主力モデルの反動減且つ需要減退、及び、日本における流通在庫調整及び需要減退の結果、前連結会計年度に比べて減少しました。足下では、欧州における主力モデルの反動減は一巡し、日本における流通在庫調整も一旦目処がつきましたが、世界のマクロ環境が引き続き不透明ななか、米国による大規模な関税引き上げもあることから、当社は需要動向を注視しております。他方、二輪乗用車ブームが一段落したとは言え、当社のメイン市場である欧米日ではまだまだ二輪に根強い人気がある上、ライダーの高齢化に伴う価格吸収力もあって、翌連結会計年度以降、新モデルを上市しつつ、新グラフィックアイテムの増加等で市場を確保できるため、今後、需要が決定的に減退するとは考えておりません。
いずれにせよ、当社は現地現物の精神に則り、市場が消化できる量の販売に合わせて生産体制をフレキシブルに変更して参ります。新型コロナ禍の需要増に応じる形で採用した従業員は、生産減となった結果、一時余剰感がありましたが、その後の生産増や自然減を経て、その余剰感は現在ほぼ解消しております。
②中期的生産体制
足下は需要減退に伴い調整局面となっておりますが、中長期的な二輪乗車用高級ヘルメットの市場は、先進国においては爆発的な販売数量の伸びは期待できないものの、高付加価値化による単価アップが期待できること、又、中国及びASEANをはじめとする新興国ではまだ伸びしろがあると考えられるため、当社はブランド力と商品競争力を武器に、いずれ生産増強が必要になると見込んでおります。その一環として、以下の対策を進めて参ります。
・茨城工場に隣接する江戸崎工業団地内の一区画を2024年に取得し、まずは、2025年1月に新しい倉庫を建設、賃借契約していた倉庫や既存倉庫からの製品・仕掛品等の集約を行いました。
・新しい土地の本格的な使用内容については、今後の受注状況や築60年近くになる既存茨城工場の老朽化、つぎはぎで生産能力増強してきたことによる生産の非効率等あらゆる状況を慎重に見極めながら、適切なタイミングで判断して参ります。
③改善活動等を通じた製造現場の競争力強化
当社は、Made in Japanを生産戦略として経営方針の根幹に掲げております。長年ジャストインタイムによる改善活動等を通じ、国内両工場の競争力を持続的に強化しております。Made in Japanを維持するためには従業員1人1人の精鋭化が必要であり、これらをさらに強化すべく、従業員に対する生産性向上に関する啓蒙、教育や多能工化の更なる拡充を実行して参ります。
2)商品戦略
高品質・高付加価値商品の研究開発も推進し、集中的に経営資源を投下しています。多様化するライダーの嗜好に対応し、「お客様のニーズに沿った付加価値機能」を備えた、クラシックモデルや利便性の高いモデルを展開します。また、研究開発体制を拡充し、エレクトロニクスとの融合、新素材の採用等を積極的に促進、時代の最先端を走り、他社の追随を許さない製品開発体制を構築します。さらには、キャリーケース事業に代表されるような、バイク用高級ヘルメット以外の高品質・高付加価値商品の開発も推進し、事業の多角化を、スピード感をもって進めて参ります(後述する「5)新規事業の検討」ご参照)。
①新分野への展開
当社は一部の官需製品を除き、二輪乗車用ヘルメットに特化して参りました。引き続き日々刻々変化するお客様のニーズ(機能、デザイン、被り心地等)を重視した製品の設計・開発に注力致し、主力モデルのモデルチェンジや新モデルの開発を進めて参ります。一例として、2025年9月には、当社の歴史と伝統を継承しつつ、最新技術を反映させる「SHOEI NEO CLASSIC LINE」の新モデルとして、WYVERNシリーズの「WYVERN ∅(ワイバーン ゼロ)」を新たにラインナップしました。
②商品の高付加価値化、多種多様化するニーズの取り組み
商品の高付加価値化にも積極的に取り組んでいます。2025年10月には、空力性能のみならず、あらゆる面で優れた性能を発揮するX-Fifteenに、カーボンシェルを採用した「X-Fifteen Carbon」を上市しました。また、多種多様化するニーズへの取り組みも積極的に進めています。又、ヘルメットのスマート化需要が急速に拡大するとの認識の下、ライダー頭部に最も近い存在であるヘルメットメーカーとして、通信、音響、映像機能付きヘルメットの開発に力を入れて参ります。
③販売体制の多様化
当社はSHOEIと価値を分かち合える代理店様、販売店様との協業で質の高い製品販売を進めて参ります。一方で、自社EC(ネット通販サイト)を通じお近くに販売店がないお客様のフォロー体制を整え、ショールーム(現在、日本に6か所、欧州に2か所)での販売を通じ、お客様から頂戴した生のご意見を既存製品の改良、次期モデルの開発に活用していきます。
3)ブランド戦略
既成概念にこだわらず、常に新しい切り口の広告宣伝を模索しつつ、鋭意スピーディーに実行して参ります。
①PFSサービスの普及
パーソナル・フィッティング・システム(PFS)サービス(個別フィッティング調整)の普及に引き続き努めて参ります。先行する日本市場では、ヘルメット販売数量の約49%がPFSを施して販売されており、世界に一つのマイヘルメットとしてお客様の好評を得ております。PFSを通じた顧客満足度の向上は言うまでもなく、販売店とお客様の関係を一層強化することにより、安全・安心につながるヘルメット販売方法に誘導し、ブランド力を高めます。今後は欧米市場、アジア市場へ普及に努め、いつの日か、ヘルメットは自分の頭の形状に合ったフィッティングをして購入するのが当たり前という時代が来るものと確信しております。
②広告宣伝
引き続きMoto GPの代表選手であるマルク・マルケス、アレックス・マルケス兄弟とのレーサー契約を中心に、限られた経営資源を効率的に投資する一方で、SHOEI Helmet ParkをSHOEIブランドの聖地と位置づけ、お越し頂けるお客様に対し、様々な情報発信、サービス提供することにより、「推し活」して頂けるブランドになるよう努力致します。いずれにせよ、今までにない新しい切り口の広告宣伝(SNSやインフルエンサーの活用等)も進めて参ります。
4)市場戦略
欧米日市場の深掘りと顧客密着の販売体制を構築し、市場が成熟しつつある先進国でのトップシェアを維持します。また、過去10年で一気に欧米並みの市場に育った中国におけるトップシェアを盤石なものとすると共に、今後の市場の伸びが期待できる東南アジア等での拡販を強化します。
〈重点新興国での販売強化〉
中国をはじめとするアジア市場は成長が見込まれ、新型コロナ終息後の停滞、混乱から再拡張の動きが出ています。当社はこの需要をしっかりと取り込む為、これらの国での市場調査、マーケティングを強化して参ります。特に中国市場は、既に日米市場と同等レベルになっておりますが、ライダーの安全安心に国境はないとの信念の下、更に強固な販売体制の確立を通じて販売量を拡大して参ります。具体的には、中国現地法人に邦人を駐在させ、2023年頃より情報収集と代理店の監督・指導を鋭意進めた結果、市場実態の解明が進み、市場規模をほぼ把握することができました。加えて、ブランド価値を重視した販売方法や、店頭でのPFSを積極的に導入頂ける販売店との協業を深めた結果、まだまだ不透明な中国経済下においても販売が拡大しつつあります。他のアジア諸国においても、店頭重視やPFS導入による丁寧な販売方法を強化しており、徐々にではありますが、成果が出始めております。
5)新事業の検討
当社は今日まで二輪乗車用ヘルメット専業メーカーとして業容を拡大して参りました。今後ともこの祖業を強化していく方針に変更はありません。一方、世界中でライダーの高齢化や若者の趣味の多様化が進んでいることも歴然とした事実であり、長期的な更なる利益増や事業リスク分散の観点から、当社の間尺にあった、当社らしい新事業があるのかについて議論を深めており、その第一弾として2024年9月にBMX(自転車モトクロス)競技用ヘルメットを上市しました。
2025年11月には、第二弾且つ本格的な新規事業として、キャリーケース事業への進出を発表致しました。キャリーケースは性別年齢に関係なく幅広く使用される上、世界的に旅行需要は拡大していくと見込まれます。また、その利便性からショルダーバッグやボストンバッグからの移行が進んでいると言われています。このため、グローバルでみたキャリーケース市場は、長期的に成長が見込まれています。こうしたなか、キャリーケースは、ヘルメットと商品コンセプト(安全、機能的、かっこよさの追求)や生産方法(成型や組立等)が類似しており、B2Cの商品を扱ってきた当社のブランド価値向上などの手法が応用できると考えており、当社が得意とするMade in Japanによる高付加価値化路線に見合った製品であると考えています。
今後も長期的に企業価値向上に資する様な新規事業・多角化については、前向きに検討して参ります。
6)ESG経営
ESG(環境・地域社会・企業統治)、サステナビリティを意識した経営を行います。特に、環境への取り組みが企業に求められた重要な社会的責務のひとつであると認識し、気候変動の緩和・適応など環境問題に配慮して行動することについて可能な範囲で積極的に対応し、持続可能な循環型経済社会の実現に貢献致します。
〈環境問題への取り組み〉
ここ数年で、従業員向け電気自動車用充電設備の設置等を実行し、自家消費型太陽光発電設備(PPA)を導入しました。また、工場における日々のカイゼン活動においても、効率化とともに環境問題への取り組みに繋がる活動も出てきています。直近では、使用塗料削減(CO2排出量削減)に繋がる塗装方法も実践しつつあり、今後も出来るところから順次対応して参ります。
(1)経営方針
当社グループの経営方針は、以下の方針に基づいております。
1)健全な財務体質により、事業継続を長期にコミットします。
長期的視野での経営を可能にするためには財務的な独立が不可欠です。当社は企業収益及びステークホルダーへの利益還元を重視するのと同様に、高い自己資本比率の維持を目指します。
公的援助や他人資本を当てにした経営では事業を長期にコミットすることは不可能です。
これはリーマン級経済危機、伝染病流行、大規模自然災害等に備えるという点においても例外ではありません。予期せぬ事情で市場規模が急に冷え込んだ場合、生産能力が落ち込んだ場合でも、ブランドを棄損することなく終息まで耐え抜くだけの体力を備えておくことが重要です。また、M&Aや新事業への展開においても、好機に迅速な決定、対応が可能となるよう、ある程度潤沢な現預金を常時持ち合わせておく必要があります。
健全な財務体質はESG(環境・地域社会・企業統治)経営を持続的に継続する意味でも重要です。ESGを疎かにしてはいずれそのツケを払う時が来ます。環境対応については、形だけ整えてお茶を濁したり、いたずらに調査や議論を重ねるのではなく、当社の身の丈に合った範囲でスピード感をもって実現して参ります。
当社は30年先、50年先も現在同様自主独立を貫く健全な企業であり続けたいと思います。
2)Made in Japanで勝負します。
当社の最大の資産は過去60年間で築き上げたブランドです。
そのブランドは「かっこいい」「安全」「機能的」「かぶり心地がいい」というお客様の声によって支えられております。当社のヘルメットは「造形(デザイン)・製品開発」「品質保証」「生産」という相互にトレードオフするミッションを全うして初めて市場に送り出されますが、これらをバランスよくかつスピーディーに成立させることが当社の競争力の源泉であり、いずれのミッションが海外に移転しても現在のブランドを維持できないと考えています。他社ではコストダウンを目的として生産部門を海外に移転するケースが散見されますが、当社は海外移転によるメリットよりデメリットの方が圧倒的に大きいと判断致します。Made in Japanで勝負し続けることこそが、ブランド力を高く維持し、競争力を保ち続ける為に当社が取るべき唯一の選択肢であると確信しております。
3)お客様の声に耳を傾けます。
2025年9月期において、当社が製造した二輪用ヘルメットのうち、サンバイザー付かつインターコム対応モデルは販売個数において全体の約41%となりました。これらの機能はいずれもかつては存在していなかった機能ですが、今では「SHOEIといえばこれ」というくらい当社にとってなくてはならない商品となっています。これはほんの一例ですが、お客様がご希望される製品を、安全基準を満足させながら、機動的に供給することが、企業としての使命であり、存在意義であると確信致します。
現在はヘルメットとエレクトロニクスの融合、レトロブームへの対応、新素材の採用といった市場ニーズに対応すべく、業界を率先して新しいチャレンジを続けており、着実に成功を収めております。2025年10月には、かかるチャレンジの一環としてカーボン製ヘルメットを日本市場から上市致しました。そして2026年9月期には乗車用ヘルメット以外では初の試みとしてキャリーケース事業をスタートさせます。本事業についても、「さすがSHOEI」と称賛される高付加価値商品を上市することにより、ヘルメット同様、Made in Japanで勝負します。
当社は2020年3月の東京を皮切りに、大阪、横浜、京都、福岡、札幌にショールームをオープンしました。また、2023年6月には海外では初のパリにSHOEI Gallery Parisを、2025年4月にはバルセロナにSHOEI Gallery Barcelonaをオープンしております。かかるショールームもお客様のニーズを直接確認する重要な拠点になると確信しています。是非お立ち寄り下さい。
(2)経営環境
当連結会計年度における世界経済は、当初は、新型コロナ禍の終息に伴う混乱やインフレが一段落し、経済はある程度の先行き希望が見えつつある状況でしたが、諸物価は高止まりし、先行き不透明な中で景気は期待通りに浮揚しませんでした。中国における不動産バブル崩壊に端を発した景気低迷が継続したこと、米国における大規模な関税引き上げがあったこと、その結果として欧州から米国への輸出産業が混乱したことに加え、諸物価の高止まりの継続、政治の混乱や、地政学上の緊張が勃発もしくは継続したことが、消費ムード低迷が継続した理由と思われます。
高級二輪乗車用ヘルメット市場は、上記の経済状況にほぼ沿った形となりました。昨年同期ではコロナ禍で高まった二輪乗用車ブームの減速及び流通段階での在庫調整が基調としては継続しておりましたが、ある程度の流通過剰在庫は減少したものの、予想を上回る消費ムードの失速、更に当社においては、前期のような主力モデルのモデルチェンジが無く、マイナーモデルのモデルチェンジにとどまっていることから、連結販売数量、生産数量共に昨年度比減少となりました。
(3)経営戦略および優先的に対処すべき課題
当社グループの経営戦略は、上記方針を踏まえ、生産戦略、商品戦略、ブランド戦略、市場戦略、ESG経営を5つの戦略としており、それぞれの戦略について重要課題として取り組むとともに、コーポレートガバナンスの強化を実行してまいります。また、長期的に企業価値向上に資する様な新事業への進出を検討します。
1)生産戦略
国内2工場での自社一貫生産体制を充実します。モデル毎にメイン工場は決めるものの、常時どちらの工場でも生産可能な体制とするとともに、現地現物の精神に則り、需要に合わせてフレキシブルに生産量を変更可能な生産体制を構築します。また、ジャストインタイムによる改善活動等を通じて、常に生産コストの削減を追求します。又、高度な技術やノウハウを高めることにより、それら知的財産をブラックボックス化する情報管理を強化し、当社の優位性を盤石なものにします。
①実需に即した生産体制
当連結会計年度の生産数量は、欧州における前期に発売した主力モデルの反動減且つ需要減退、及び、日本における流通在庫調整及び需要減退の結果、前連結会計年度に比べて減少しました。足下では、欧州における主力モデルの反動減は一巡し、日本における流通在庫調整も一旦目処がつきましたが、世界のマクロ環境が引き続き不透明ななか、米国による大規模な関税引き上げもあることから、当社は需要動向を注視しております。他方、二輪乗用車ブームが一段落したとは言え、当社のメイン市場である欧米日ではまだまだ二輪に根強い人気がある上、ライダーの高齢化に伴う価格吸収力もあって、翌連結会計年度以降、新モデルを上市しつつ、新グラフィックアイテムの増加等で市場を確保できるため、今後、需要が決定的に減退するとは考えておりません。
いずれにせよ、当社は現地現物の精神に則り、市場が消化できる量の販売に合わせて生産体制をフレキシブルに変更して参ります。新型コロナ禍の需要増に応じる形で採用した従業員は、生産減となった結果、一時余剰感がありましたが、その後の生産増や自然減を経て、その余剰感は現在ほぼ解消しております。
②中期的生産体制
足下は需要減退に伴い調整局面となっておりますが、中長期的な二輪乗車用高級ヘルメットの市場は、先進国においては爆発的な販売数量の伸びは期待できないものの、高付加価値化による単価アップが期待できること、又、中国及びASEANをはじめとする新興国ではまだ伸びしろがあると考えられるため、当社はブランド力と商品競争力を武器に、いずれ生産増強が必要になると見込んでおります。その一環として、以下の対策を進めて参ります。
・茨城工場に隣接する江戸崎工業団地内の一区画を2024年に取得し、まずは、2025年1月に新しい倉庫を建設、賃借契約していた倉庫や既存倉庫からの製品・仕掛品等の集約を行いました。
・新しい土地の本格的な使用内容については、今後の受注状況や築60年近くになる既存茨城工場の老朽化、つぎはぎで生産能力増強してきたことによる生産の非効率等あらゆる状況を慎重に見極めながら、適切なタイミングで判断して参ります。
③改善活動等を通じた製造現場の競争力強化
当社は、Made in Japanを生産戦略として経営方針の根幹に掲げております。長年ジャストインタイムによる改善活動等を通じ、国内両工場の競争力を持続的に強化しております。Made in Japanを維持するためには従業員1人1人の精鋭化が必要であり、これらをさらに強化すべく、従業員に対する生産性向上に関する啓蒙、教育や多能工化の更なる拡充を実行して参ります。
2)商品戦略
高品質・高付加価値商品の研究開発も推進し、集中的に経営資源を投下しています。多様化するライダーの嗜好に対応し、「お客様のニーズに沿った付加価値機能」を備えた、クラシックモデルや利便性の高いモデルを展開します。また、研究開発体制を拡充し、エレクトロニクスとの融合、新素材の採用等を積極的に促進、時代の最先端を走り、他社の追随を許さない製品開発体制を構築します。さらには、キャリーケース事業に代表されるような、バイク用高級ヘルメット以外の高品質・高付加価値商品の開発も推進し、事業の多角化を、スピード感をもって進めて参ります(後述する「5)新規事業の検討」ご参照)。
①新分野への展開
当社は一部の官需製品を除き、二輪乗車用ヘルメットに特化して参りました。引き続き日々刻々変化するお客様のニーズ(機能、デザイン、被り心地等)を重視した製品の設計・開発に注力致し、主力モデルのモデルチェンジや新モデルの開発を進めて参ります。一例として、2025年9月には、当社の歴史と伝統を継承しつつ、最新技術を反映させる「SHOEI NEO CLASSIC LINE」の新モデルとして、WYVERNシリーズの「WYVERN ∅(ワイバーン ゼロ)」を新たにラインナップしました。
②商品の高付加価値化、多種多様化するニーズの取り組み
商品の高付加価値化にも積極的に取り組んでいます。2025年10月には、空力性能のみならず、あらゆる面で優れた性能を発揮するX-Fifteenに、カーボンシェルを採用した「X-Fifteen Carbon」を上市しました。また、多種多様化するニーズへの取り組みも積極的に進めています。又、ヘルメットのスマート化需要が急速に拡大するとの認識の下、ライダー頭部に最も近い存在であるヘルメットメーカーとして、通信、音響、映像機能付きヘルメットの開発に力を入れて参ります。
③販売体制の多様化
当社はSHOEIと価値を分かち合える代理店様、販売店様との協業で質の高い製品販売を進めて参ります。一方で、自社EC(ネット通販サイト)を通じお近くに販売店がないお客様のフォロー体制を整え、ショールーム(現在、日本に6か所、欧州に2か所)での販売を通じ、お客様から頂戴した生のご意見を既存製品の改良、次期モデルの開発に活用していきます。
3)ブランド戦略
既成概念にこだわらず、常に新しい切り口の広告宣伝を模索しつつ、鋭意スピーディーに実行して参ります。
①PFSサービスの普及
パーソナル・フィッティング・システム(PFS)サービス(個別フィッティング調整)の普及に引き続き努めて参ります。先行する日本市場では、ヘルメット販売数量の約49%がPFSを施して販売されており、世界に一つのマイヘルメットとしてお客様の好評を得ております。PFSを通じた顧客満足度の向上は言うまでもなく、販売店とお客様の関係を一層強化することにより、安全・安心につながるヘルメット販売方法に誘導し、ブランド力を高めます。今後は欧米市場、アジア市場へ普及に努め、いつの日か、ヘルメットは自分の頭の形状に合ったフィッティングをして購入するのが当たり前という時代が来るものと確信しております。
②広告宣伝
引き続きMoto GPの代表選手であるマルク・マルケス、アレックス・マルケス兄弟とのレーサー契約を中心に、限られた経営資源を効率的に投資する一方で、SHOEI Helmet ParkをSHOEIブランドの聖地と位置づけ、お越し頂けるお客様に対し、様々な情報発信、サービス提供することにより、「推し活」して頂けるブランドになるよう努力致します。いずれにせよ、今までにない新しい切り口の広告宣伝(SNSやインフルエンサーの活用等)も進めて参ります。
4)市場戦略
欧米日市場の深掘りと顧客密着の販売体制を構築し、市場が成熟しつつある先進国でのトップシェアを維持します。また、過去10年で一気に欧米並みの市場に育った中国におけるトップシェアを盤石なものとすると共に、今後の市場の伸びが期待できる東南アジア等での拡販を強化します。
〈重点新興国での販売強化〉
中国をはじめとするアジア市場は成長が見込まれ、新型コロナ終息後の停滞、混乱から再拡張の動きが出ています。当社はこの需要をしっかりと取り込む為、これらの国での市場調査、マーケティングを強化して参ります。特に中国市場は、既に日米市場と同等レベルになっておりますが、ライダーの安全安心に国境はないとの信念の下、更に強固な販売体制の確立を通じて販売量を拡大して参ります。具体的には、中国現地法人に邦人を駐在させ、2023年頃より情報収集と代理店の監督・指導を鋭意進めた結果、市場実態の解明が進み、市場規模をほぼ把握することができました。加えて、ブランド価値を重視した販売方法や、店頭でのPFSを積極的に導入頂ける販売店との協業を深めた結果、まだまだ不透明な中国経済下においても販売が拡大しつつあります。他のアジア諸国においても、店頭重視やPFS導入による丁寧な販売方法を強化しており、徐々にではありますが、成果が出始めております。
5)新事業の検討
当社は今日まで二輪乗車用ヘルメット専業メーカーとして業容を拡大して参りました。今後ともこの祖業を強化していく方針に変更はありません。一方、世界中でライダーの高齢化や若者の趣味の多様化が進んでいることも歴然とした事実であり、長期的な更なる利益増や事業リスク分散の観点から、当社の間尺にあった、当社らしい新事業があるのかについて議論を深めており、その第一弾として2024年9月にBMX(自転車モトクロス)競技用ヘルメットを上市しました。
2025年11月には、第二弾且つ本格的な新規事業として、キャリーケース事業への進出を発表致しました。キャリーケースは性別年齢に関係なく幅広く使用される上、世界的に旅行需要は拡大していくと見込まれます。また、その利便性からショルダーバッグやボストンバッグからの移行が進んでいると言われています。このため、グローバルでみたキャリーケース市場は、長期的に成長が見込まれています。こうしたなか、キャリーケースは、ヘルメットと商品コンセプト(安全、機能的、かっこよさの追求)や生産方法(成型や組立等)が類似しており、B2Cの商品を扱ってきた当社のブランド価値向上などの手法が応用できると考えており、当社が得意とするMade in Japanによる高付加価値化路線に見合った製品であると考えています。
今後も長期的に企業価値向上に資する様な新規事業・多角化については、前向きに検討して参ります。
6)ESG経営
ESG(環境・地域社会・企業統治)、サステナビリティを意識した経営を行います。特に、環境への取り組みが企業に求められた重要な社会的責務のひとつであると認識し、気候変動の緩和・適応など環境問題に配慮して行動することについて可能な範囲で積極的に対応し、持続可能な循環型経済社会の実現に貢献致します。
〈環境問題への取り組み〉
ここ数年で、従業員向け電気自動車用充電設備の設置等を実行し、自家消費型太陽光発電設備(PPA)を導入しました。また、工場における日々のカイゼン活動においても、効率化とともに環境問題への取り組みに繋がる活動も出てきています。直近では、使用塗料削減(CO2排出量削減)に繋がる塗装方法も実践しつつあり、今後も出来るところから順次対応して参ります。