有価証券報告書-第75期(2024/03/01-2025/02/28)
② 戦略
気候変動によって原材料価格の高騰やサプライチェーンの分断、消費者の購買活動の変化などさまざまな影響を受けることから、当社グループは気候変動を重要な経営リスクの一つに位置づけています。当社グループは、気候変動による事業へのリスクを予防・軽減し、適切に管理・対応することで、将来に渡るビジネスへの財務影響を最小限にすることを目的に中長期的な戦略を策定することが、事業の持続的な成長に不可欠だと考えています。このため、売上の約90%を占める主力事業のアパレル・雑貨関連事業に関して、2050年までを対象にしたリスクと機会を、2℃シナリオと4℃シナリオに別けて分析しています。特に重要性が高いと評価したリスクと機会については、気候変動による事業及び財務への影響を定量的に試算しています。2023年度以降は、対象とする事業や領域を広げ、リスク・機会の分析の高度化を進めていく考えです。
2℃シナリオ
4℃シナリオ
気候変動に関するリスク・機会への対応戦略
当社はアパレル小売をメインビジネスとしており、商品の原材料は綿、羊毛、木など自然資本に依存するものが多く、気候変動が当社サプライチェーンに及ぼす影響とその適応策について、2℃シナリオ、4℃シナリオのそれぞれで明らかにしています。
・2℃シナリオ:21世紀末の世界平均気温が産業革命以前と比べて1.6~1.9℃上昇する世界であり、脱炭素経済活動が活発化し、規律型社会への移行が進みます。各国政府の炭素排出規制が強化されることで、当社の温室効果ガスに関連する排出責任と環境対策がバリューチェーン全体に拡大し、コストの上昇が予想されます。環境意識の高まりが消費者の行動変容につながり、売上にも影響を及ぼすと想定されます。当社は素材開発、生産地域の分散化、省エネ・節水など環境に配慮された生産体系を構築するとともに、ポートフォリオの多様化で持続可能な事業成長を図ります。
・4℃シナリオ:21世紀末の世界平均気温が産業革命以前と比べて3.5~3.9℃上昇する世界であり、地球温暖化が著しく進行します。自然災害の発生頻度の増加とその被害が深刻化し、衣料品や食料の入手が不安定になる可能性が高まります。このような状況の中で、当社安定した事業を継続運用するため、中国やASEAN諸国を中心とした原材料調達、生産背景、ロジスティクスの分散・多角化を図ることで、強靭なサプライチェーンを構築し事業運営におけるリスクを軽減します。
これら分析結果を受け、2℃と4℃、どちらのシナリオが現実化した場合においても、事業レジリエンスを保ちながら、持続可能な成長が可能と考えています。
財務インパクト評価
[移行リスク]
※算出前提:120米ドル/t-CO2(IEA「World Energy Outlook2021」より試算)、2030年時点
[物理的リスク]
※算出前提:2021年度の浸水店舗の実績を用いてハザードマップ及び国土交通省「治水経済調査マニュアル」より試算
気候変動によって原材料価格の高騰やサプライチェーンの分断、消費者の購買活動の変化などさまざまな影響を受けることから、当社グループは気候変動を重要な経営リスクの一つに位置づけています。当社グループは、気候変動による事業へのリスクを予防・軽減し、適切に管理・対応することで、将来に渡るビジネスへの財務影響を最小限にすることを目的に中長期的な戦略を策定することが、事業の持続的な成長に不可欠だと考えています。このため、売上の約90%を占める主力事業のアパレル・雑貨関連事業に関して、2050年までを対象にしたリスクと機会を、2℃シナリオと4℃シナリオに別けて分析しています。特に重要性が高いと評価したリスクと機会については、気候変動による事業及び財務への影響を定量的に試算しています。2023年度以降は、対象とする事業や領域を広げ、リスク・機会の分析の高度化を進めていく考えです。
2℃シナリオ
分類 | 要因 | 事業へのインパクト | ||
リ ス ク | 移 行 | 政 策 ・ 規 制 等 | カーボンプライシングの導入 | 炭素税等の導入によって化石燃料の調達コストが増加し、生産・物流・店舗営業等のコストが増加するリスク |
再生可能エネルギーの調達競争の激化 | 再生可能エネルギーの調達競争に優位に立てなかった場合、価格合理性の低い再生可能エネルギーを調達することによってコストが増加、又は再生可能エネルギーの確保ができなくなるリスク | |||
環境指標における情報開示の厳格化 | 情報開示に対応できずESG評価が下がる、又は対応コストが増加するリスク | |||
商品の環境負荷値をLCA(ライフサイクルアセスメント)で評価されることが義務化された場合、トレーサビリティの確保が困難、又は確保に時間とコストがかかるリスク | ||||
環境負荷の高い素材に対する使用規制 | 商品の原料、付属品、包装資材等の見直しにより環境配慮型素材を使用することで調達コストが増加するリスク | |||
拡大生産者責任の高まりによる、販売数量に応じた衣料品回収の義務化 | 衣料品回収活動の回収量が増えることに伴い、資源再生コストが増加するリスク | |||
市 場 | お客様による環境志向の高まり(環境負荷の少ない商品を好まれるようになる) | ニーズに対応できない場合、売上が低下するリスク | ||
お客様の購買行動の変化(新しく衣服を購入することが少なくなる) | 小売以外のサービス・事業が拡大しない場合、売上が低下するリスク | |||
評 判 | ESG投資の拡大 | 取り組みが不十分だった場合、ESG評価によりレーティングが低下し、資本調達コストが増加するリスク | ||
学生など将来世代の価値観の変化(サステナビリティに注力する企業を就職先として選択する) | 当社の取り組みが不十分だった場合、採用が困難となり採用のためのコストが増える、又は人員不足により事業自体が継続できなくなるリスク | |||
機 会 | 資 源 効 率 | EC購買率の拡大 | スタッフボードの活用やインスタグラムのライブ配信など、当社スタッフのオンライン接客のノウハウを活用することによってECの売上が拡大 | |
店舗内装投資や保証金、敷金など、資産の保有を抑えてアセットライトな経営へとシフト | ||||
学生など将来世代の価値観の変化(サステナビリティに注力する企業を選択する) | 当社のサステナビリティへの取り組みが評価され、優秀な人材を獲得しやすくなる | |||
拡大生産者責任の高まりによる、販売数量に応じた衣料品回収の義務化 | 衣料品回収活動「Play Cycle!」によって衣料品を回収する仕組みをすでに構築しており、対応のための追加コストが僅少、また効率の良い衣料品回収が可能 | |||
機 会 | 製 品 ・ サ ー ビ ス | お客様による環境志向の高まり(環境負荷の少ない商品を好まれるようになる) | 環境に配慮した商品やサービスが支持され、売上が拡大 | |
環境配慮型素材へのニーズの高まりと素材開発部による独自素材の開発 | 環境配慮型素材の需要が高まり、素材開発部によるBtoB事業の売上が拡大 | |||
環境負荷低減を目的とした3DCG等の新技術の活用 | 商品の企画効率が上がり、トレンド性ある商品をスピーディーに生産できるため、売上が拡大 | |||
市 場 | サーキュラーエコノミー市場の拡大 | 既存のオフプライス事業及びアップサイクル事業等、サーキュラーエコノミー型ビジネスの拡大による事業機会の獲得 | ||
レ ジ リ エ ン ス | 再生可能エネルギープログラムへの参加及び省エネ対策の採用 | 安価で質の高い再生可能エネルギー・水素の調達により、エネルギーコストの削減、企業イメージの向上 |
4℃シナリオ
分類 | 要因 | 事業へのインパクト | ||
リ ス ク | 物 理 的 | 急 性 的 | 大規模な自然災害による店舗の休業 | 店舗が営業できないことによって売上が低下するリスク |
大規模な自然災害によるサプライチェーンの断絶 | 納品遅れ、商品破損等により在庫が不足し売上が低下するリスク | |||
慢 性 的 | 気候パターンの変化 | 気候の変化から商品企画やお客様のニーズを予測することが困難となり、当社がニーズに対応できない場合、売上が低下するリスク | ||
機 会 | 製 品 ・ サ ー ビ ス | 気候パターンの変化 | マルチカテゴリー戦略により気温の上昇に対応した素材開発、商品企画ができた場合、当社シェア率の拡大 |
気候変動に関するリスク・機会への対応戦略
当社はアパレル小売をメインビジネスとしており、商品の原材料は綿、羊毛、木など自然資本に依存するものが多く、気候変動が当社サプライチェーンに及ぼす影響とその適応策について、2℃シナリオ、4℃シナリオのそれぞれで明らかにしています。
・2℃シナリオ:21世紀末の世界平均気温が産業革命以前と比べて1.6~1.9℃上昇する世界であり、脱炭素経済活動が活発化し、規律型社会への移行が進みます。各国政府の炭素排出規制が強化されることで、当社の温室効果ガスに関連する排出責任と環境対策がバリューチェーン全体に拡大し、コストの上昇が予想されます。環境意識の高まりが消費者の行動変容につながり、売上にも影響を及ぼすと想定されます。当社は素材開発、生産地域の分散化、省エネ・節水など環境に配慮された生産体系を構築するとともに、ポートフォリオの多様化で持続可能な事業成長を図ります。
・4℃シナリオ:21世紀末の世界平均気温が産業革命以前と比べて3.5~3.9℃上昇する世界であり、地球温暖化が著しく進行します。自然災害の発生頻度の増加とその被害が深刻化し、衣料品や食料の入手が不安定になる可能性が高まります。このような状況の中で、当社安定した事業を継続運用するため、中国やASEAN諸国を中心とした原材料調達、生産背景、ロジスティクスの分散・多角化を図ることで、強靭なサプライチェーンを構築し事業運営におけるリスクを軽減します。
これら分析結果を受け、2℃と4℃、どちらのシナリオが現実化した場合においても、事業レジリエンスを保ちながら、持続可能な成長が可能と考えています。
財務インパクト評価
[移行リスク]
項目 | 財務 インパクト | 時間軸 | 可能性 | 事業へのインパクト | 2℃ | 4℃ |
カーボン プライシング制度 | 間接費 の増加 | 中期 | 高い | 化石燃料の調達コストが増加し、生産・物流・店舗営業等の経費が増加する可能性があります。 現在の当社の店舗営業に関わるScope1・2排出量に対して炭素税が課されたと仮定すると、財務影響額は全店舗排出量:27,192t-CO2×120米ドル/t=3,263,040米ドル、日本円で約300~400百万円のコスト増の影響が出る可能性があります。 | 約300~400百万円 (年間) | 炭素税は 導入されないと想定 |
※算出前提:120米ドル/t-CO2(IEA「World Energy Outlook2021」より試算)、2030年時点
[物理的リスク]
項目 | 財務 インパクト | 時間軸 | 可能性 | 事業へのインパクト | 2℃ | 4℃ |
洪水 | 店舗休業に 伴う 売上減少 | 短期 | 高い | 気候変動に起因する洪水等の浸水リスクにより店舗休業を余儀なくされ、売上が減少する可能性があります。2021年度においては大雨の影響により、福山、鳥取、平塚にある3店舗の営業時間短縮の影響が発生しました。 同地域の洪水ハザードマップによると、0.5m~3m未満の浸水予想となっており、実際浸水した場合には3店舗合計で最大67.6日間の休業を余儀なくされ、売上に対して27百万円の影響が出る可能性があります。気候変動が進行した場合、日本においては洪水発生頻度が4倍に至ると想定されており、108百万円の影響がでる可能性があります。 | 59百万円 | 108百万円 |
※算出前提:2021年度の浸水店舗の実績を用いてハザードマップ及び国土交通省「治水経済調査マニュアル」より試算