有価証券報告書-第17期(2023/03/01-2024/02/29)
③戦略
(a)短期・中期・長期のリスク・機会の詳細
当社グループは、気候関連リスク・機会は、長期間にわたり自社の事業活動に影響を与える可能性があるため、適切なマイルストーンにおいて検討することが重要であると考えています。それを踏まえ、当社グループは、中期経営計画の実行期間である2026年度までを短期、SBT(Science Based Targets)※における短期目標年度である2030年度までを中期、SBTネットゼロ目標年度である2050年度までを長期と位置づけました。
※企業が最新の気候科学に沿った野心的な排出削減目標の設定を可能にすることを目的として、2014年、CDP、国連グローバル・コンパクト、WRI(世界資源研究所)、WWF(世界自然保護基金)の4団体が共同で設立
(b)リスク・機会が事業・戦略・財務計画に及ぼす影響の内容・程度
当社グループは、気候変動が当社グループに与えるリスク・機会とそのインパクトの把握、及び2030年度時点の世界を想定した当社グループの戦略のレジリエンス、そしてさらなる施策の必要性の検討を目的に、シナリオ分析を実施しています。
シナリオ分析では、国際エネルギー機関(IEA)や、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が公表する複数の既存シナリオを参照の上、パリ協定の目標である「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をすること」を想定した1.5℃/2℃未満シナリオ、及び新たな気候関連政策・規制は導入されない世界を想定した4℃シナリオの2つの世界を想定しています。
この2つのシナリオを踏まえ、百貨店やショッピングセンターなどリテール事業を主軸とする当社グループは、バリューチェーンプロセスの活動項目ごとに、TCFD提言に沿って、気候関連リスク・機会を抽出しました。その上で、気候変動がもたらす移行リスク(政策規制、技術、市場、評判)や物理リスク(急性、慢性)、また、気候変動への適切な対応による機会(資源効率、エネルギー源、製品及びサービス、市場、レジリエンス)を特定しました。
<参照した既存シナリオ>
(c)関連するシナリオに基づくリスク・機会及び財務影響とそれに対する戦略・レジリエンス
当社グループは、特定した気候関連リスク・機会の中から、「自社にとっての重要性(影響度×緊急度)」と、「ステークホルダーにとっての重要性」の2つの基準に基づき、その重要性を評価しました。特に重要性が高いと評価した項目について、2030年度を想定した1.5℃/2℃未満シナリオ、及び4℃シナリオの2つのシナリオにおける財務影響を定量、定性の両側面から評価し、それぞれの対応策を策定しました。
なお、財務影響を定量的に評価するための情報が入手困難なリスク・機会については、定性的に評価し、その結果を矢印の傾きによって3段階で表示しています。
※CVC(Corporate Venture Capital): 将来性のあるスタートアップ企業への投資を通じて、事業共創を効率的・効果的に推進する仕組み。当社は、2022年度、「JFR MIRAI CREATORS Fund」を設立し、オープンイノベーションを推進。
(2030年度時点を想定した定量的財務影響の算出根拠)
※1 2030年度時点のJFRグループScope1・2温室効果ガス排出量に1t-CO2あたりの炭素価格を乗じて試算
(パラメータ:1.5℃シナリオ 140$/t-CO2、4℃シナリオ 120$/t-CO2)
※2 2030年度時点のJFRグループ電気使用量に通常の電気料金と比較した1kWhあたりの再エネ由来電気料金価格高を乗じて試算
※3 過去の自然災害による店舗休業に伴う売上損失額に将来の洪水発生頻度を乗じて試算
(出典:「Representative Concentration Pathways (RCP2.6)(RCP8.5)」(IPCC、2014年))
※4 2030年度時点のJFRグループ省エネルギー量にエネルギー調達コストを乗じて試算
※5 2030年度時点のJFRグループ不動産収益に環境認証取得ビルの新規成約賃料への影響度合いを乗じて試算
上記シナリオを前提に気候変動がもたらす影響を分析し、その対応策を検討した結果、いずれのシナリオ下においても、当社グループが既に実施している施策及び計画している施策が、リスクを低減し、機会の実現に貢献できる実効性、柔軟性を有していることを確認しました。今後も経営のレジリエンスを高めることにつなげていきます。
・JFRグループ 2050年ネットゼロ移行計画
当社グループは、2050年ネットゼロの実現に向け、中長期視点から戦略を強化していく必要があると考えています。そのため、当社グループは、2050年ネットゼロ実現に向けた移行計画を策定しました。同計画では、事業戦略において、マイナスのリスクに対しては適切な回避策を策定する一方、プラスの機会に対しては、マーケット変化へ積極的に対応する等、新たな成長機会の獲得を目指すため、短期・中期・長期的視点から、具体的取り組みを明確化しています。
2024年2月には、インターナルカーボンプライシング(ICP)を設定しました。社内におけるCO2排出量を金額換算することにより、CO2に対する削減効果と削減コストを可視化し、脱炭素への意識醸成や脱炭素投資と連動した意思決定の促進を目的としています。将来の炭素税等の発生コストを見通して先手で対策を講じて取り組むことは、長期視点ではコスト減、また事業創出の機会にもつながると考えています。
また、当社のScope3温室効果ガス排出量は、その90%以上をカテゴリ1(調達した製品・サービス)が占めているため、自社コントロール及び自社努力による削減が極めて難しく、バリューチェーン全体で協働して削減に取り組むことが必要です。このため、当社は、お取引先様に温室効果ガス排出量の算定を働きかけるとともに、既に算定済のお取引先様とは削減目標の設定を依頼するなど、対話を通じて段階的に取り組みを進めていきます。
<2050年ネットゼロ移行計画※>
(a)短期・中期・長期のリスク・機会の詳細
当社グループは、気候関連リスク・機会は、長期間にわたり自社の事業活動に影響を与える可能性があるため、適切なマイルストーンにおいて検討することが重要であると考えています。それを踏まえ、当社グループは、中期経営計画の実行期間である2026年度までを短期、SBT(Science Based Targets)※における短期目標年度である2030年度までを中期、SBTネットゼロ目標年度である2050年度までを長期と位置づけました。
※企業が最新の気候科学に沿った野心的な排出削減目標の設定を可能にすることを目的として、2014年、CDP、国連グローバル・コンパクト、WRI(世界資源研究所)、WWF(世界自然保護基金)の4団体が共同で設立
気候関連リスク・機会の検討期間 | JFRグループの定義 | |
短期 | 2026年度まで | 中期経営計画の実行期間 |
中期 | 2030年度まで | SBTにおける短期目標年度までの期間 |
長期 | 2050年度まで | SBTネットゼロ目標年度までの期間 |
(b)リスク・機会が事業・戦略・財務計画に及ぼす影響の内容・程度
当社グループは、気候変動が当社グループに与えるリスク・機会とそのインパクトの把握、及び2030年度時点の世界を想定した当社グループの戦略のレジリエンス、そしてさらなる施策の必要性の検討を目的に、シナリオ分析を実施しています。
シナリオ分析では、国際エネルギー機関(IEA)や、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が公表する複数の既存シナリオを参照の上、パリ協定の目標である「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をすること」を想定した1.5℃/2℃未満シナリオ、及び新たな気候関連政策・規制は導入されない世界を想定した4℃シナリオの2つの世界を想定しています。
この2つのシナリオを踏まえ、百貨店やショッピングセンターなどリテール事業を主軸とする当社グループは、バリューチェーンプロセスの活動項目ごとに、TCFD提言に沿って、気候関連リスク・機会を抽出しました。その上で、気候変動がもたらす移行リスク(政策規制、技術、市場、評判)や物理リスク(急性、慢性)、また、気候変動への適切な対応による機会(資源効率、エネルギー源、製品及びサービス、市場、レジリエンス)を特定しました。
<参照した既存シナリオ>
想定される世界 | 既存シナリオ |
1.5℃/2℃未満シナリオ | 「Net‐Zero Emissions by 2050 Scenario(NZE)」(IEA、2023年) |
「Representative Concentration Pathways (RCP2.6)」(IPCC、2014年) | |
4℃シナリオ | 「Stated Policy Scenario(STEPS)」(IEA、2023年) |
「Representative Concentration Pathways (RCP8.5)」(IPCC、2014年) |
(c)関連するシナリオに基づくリスク・機会及び財務影響とそれに対する戦略・レジリエンス
当社グループは、特定した気候関連リスク・機会の中から、「自社にとっての重要性(影響度×緊急度)」と、「ステークホルダーにとっての重要性」の2つの基準に基づき、その重要性を評価しました。特に重要性が高いと評価した項目について、2030年度を想定した1.5℃/2℃未満シナリオ、及び4℃シナリオの2つのシナリオにおける財務影響を定量、定性の両側面から評価し、それぞれの対応策を策定しました。
なお、財務影響を定量的に評価するための情報が入手困難なリスク・機会については、定性的に評価し、その結果を矢印の傾きによって3段階で表示しています。
![]() | JFRグループの事業及び財務への影響が非常に大きくなることが想定される |
![]() | JFRグループの事業及び財務への影響が大きくなることが想定される |
![]() | JFRグループの事業及び財務への影響が軽微であることが想定される |
気候関連 リスク・機会の種類 | 発現時期 | JFRグループにとって 特に重要な 気候関連リスク・機会 | 財務影響 | 対応策 | ||||
短期 | 中期 | 長期 | 1.5℃/2℃ 未満 シナリオ | 4℃ シナリオ | ||||
リスク | 移行 リスク | ● | ● | ・炭素税等の導入に伴うコストの増加 | 約15億円※1 | 約13億円※1 | ・2050年ネットゼロ目標達成に向けた店舗における積極的な省エネ施策や再エネ切り替え拡大による温室効果ガス排出量削減 | |
● | ● | ● | ・環境性能の高い物件の開発と設備導入に係るコストの増加 | ![]() | ![]() | ・グリーンボンド等を活用した資金調達 ・コスト効率的な設備導入 | ||
● | ● | ● | ・高効率省エネルギー機器導入に係る投資の増加 | ![]() | ![]() | ・インターナルカーボンプライシングの導入 ・コスト効率的かつ計画的な投資の検討 | ||
● | ● | ・再エネ由来電力需要増による再エネ調達コストの増加 | 約7億円※2 | 約3億円※2 | ・インターナルカーボンプライシングの導入 ・再エネ調達手法の分散化による再エネ調達リスクの低減と中長期的なコストの低減 ・自社施設への再エネ設備導入等、再エネ自給率の向上 | |||
物理 リスク | ● | ● | ・自然災害による店舗休業に伴う収益の減少 | 約52億円※3 | 約103億円※3 | ・BCP整備による店舗・事業所のレジリエンス強化 ・店舗の防災性能の向上 | ||
機会 | エネルギー源 | ● | ● | ● | ・高効率省エネルギー機器導入によるエネルギー調達コストの減少 | 約4億円※4 | ・エネルギー高効率機器への適切なタイミングでの更新 | |
製品 及び サービス | ● | ● | ・環境配慮型商品・サービスの需要増への対応によるバリューチェーン全体の脱炭素化及び収益の拡大 | ![]() | ![]() | ・環境配慮型商品・サービスの取扱い拡大 ・廃食油を国産SAFとして再資源化 ・AI需要予測システムの活用による食品廃棄物削減等、お取引先様との協働による取り組み ・お取引先様への温室効果ガス排出量算定に関する働きかけ、Scope3排出量データの連携を目的とした説明会の実施等、脱炭素化に向けたお取引先様との対話 | ||
市場 | ● | ● | ● | ・サーキュラー型ビジネスへの新規参入による新たな成長機会の拡大 ・サステナブルなライフスタイルを提案することによる新規顧客の獲得に伴う収益の拡大 | ![]() | ![]() | ・ファッションサブスクリプション事業「アナザーアドレス」をはじめとしたシェアリング・アップサイクル等サーキュラー型ビジネスの拡大 ・M&AやCVC※投資を有効活用したサーキュラー型ビジネスの立ち上げ | |
● | ● | ● | ・環境価値の高い店舗への転換による新たなテナントの獲得機会増に伴う収益の拡大 | 約25億円※5 | ― | ・新規開発物件の環境認証の取得(ZEB、CASBEE等) ・RE100実現に向けた店舗の再エネ化の促進 |
※CVC(Corporate Venture Capital): 将来性のあるスタートアップ企業への投資を通じて、事業共創を効率的・効果的に推進する仕組み。当社は、2022年度、「JFR MIRAI CREATORS Fund」を設立し、オープンイノベーションを推進。
(2030年度時点を想定した定量的財務影響の算出根拠)
※1 2030年度時点のJFRグループScope1・2温室効果ガス排出量に1t-CO2あたりの炭素価格を乗じて試算
(パラメータ:1.5℃シナリオ 140$/t-CO2、4℃シナリオ 120$/t-CO2)
※2 2030年度時点のJFRグループ電気使用量に通常の電気料金と比較した1kWhあたりの再エネ由来電気料金価格高を乗じて試算
※3 過去の自然災害による店舗休業に伴う売上損失額に将来の洪水発生頻度を乗じて試算
(出典:「Representative Concentration Pathways (RCP2.6)(RCP8.5)」(IPCC、2014年))
※4 2030年度時点のJFRグループ省エネルギー量にエネルギー調達コストを乗じて試算
※5 2030年度時点のJFRグループ不動産収益に環境認証取得ビルの新規成約賃料への影響度合いを乗じて試算
上記シナリオを前提に気候変動がもたらす影響を分析し、その対応策を検討した結果、いずれのシナリオ下においても、当社グループが既に実施している施策及び計画している施策が、リスクを低減し、機会の実現に貢献できる実効性、柔軟性を有していることを確認しました。今後も経営のレジリエンスを高めることにつなげていきます。
・JFRグループ 2050年ネットゼロ移行計画
当社グループは、2050年ネットゼロの実現に向け、中長期視点から戦略を強化していく必要があると考えています。そのため、当社グループは、2050年ネットゼロ実現に向けた移行計画を策定しました。同計画では、事業戦略において、マイナスのリスクに対しては適切な回避策を策定する一方、プラスの機会に対しては、マーケット変化へ積極的に対応する等、新たな成長機会の獲得を目指すため、短期・中期・長期的視点から、具体的取り組みを明確化しています。
2024年2月には、インターナルカーボンプライシング(ICP)を設定しました。社内におけるCO2排出量を金額換算することにより、CO2に対する削減効果と削減コストを可視化し、脱炭素への意識醸成や脱炭素投資と連動した意思決定の促進を目的としています。将来の炭素税等の発生コストを見通して先手で対策を講じて取り組むことは、長期視点ではコスト減、また事業創出の機会にもつながると考えています。
また、当社のScope3温室効果ガス排出量は、その90%以上をカテゴリ1(調達した製品・サービス)が占めているため、自社コントロール及び自社努力による削減が極めて難しく、バリューチェーン全体で協働して削減に取り組むことが必要です。このため、当社は、お取引先様に温室効果ガス排出量の算定を働きかけるとともに、既に算定済のお取引先様とは削減目標の設定を依頼するなど、対話を通じて段階的に取り組みを進めていきます。
<2050年ネットゼロ移行計画※>
