有価証券報告書-第19期(2025/03/01-2026/02/28)

【提出】
2026/05/26 15:30
【資料】
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【項目】
206項目
③戦略
(a)自然への依存と影響
当社グループの事業は、農産物、畜産物、水産物、木材や水などの資源に加え、土壌や森林、四季のある気候等、多くの自然の恵み(生態系サービス)を享受することで成り立っています。その一方で、私たちの事業活動は、温室効果ガスの排出や、廃棄物・排水の発生など、自然環境に様々な影響を与えています。当社は、自社の事業活動と自然環境との関係を、下図のように「依存」と「影響」の双方向で把握・評価し、特定された重要な課題については迅速に対応することが不可欠であると認識しています。
<事業活動と生態系サービスとの関わり>0102010_011.png
(b)LEAP※1アプローチを考慮した自然関連課題等の評価
LEAPアプローチとは、TNFDが推奨する、自然との接点、自然への依存・影響、自然関連リスク・機会等、自然関連課題を特定・評価するための統合的なプロセスです。
当社は、2023年度に主要事業会社である大丸松坂屋百貨店が全国各地に有する百貨店15店舗を対象として、LEAPアプローチに沿った自然関連課題等(依存・影響、リスク・機会)の特定・評価を実施しました。
※1 LEAP : Locate(発見)、Evaluate(診断)、Assess(評価)、Prepare(準備)の4つのフェーズ
(c)依存と影響の外観(Locate)
TNFDが推奨する「ENCORE」(自然への依存・影響を特定するツール)をベースに、百貨店事業におけるバリューチェーン全体の依存・影響及びその程度を把握するため、ヒートマップを作成し、直接操業(店舗運営や店舗開発)及びバリューチェーン上流(調達)における自然への依存・影響の度合いを確認しました。
0102010_012.pngヒートマップを作成した結果、依存度が高いのは、アパレルや農畜水産物のバリューチェーン上流における水資源(供給サービス)に加え、洪水抑制や地形安定化等(調整サービス)であることがわかりました。また、影響度が高いのは、水資源の利用及び陸域・淡水生態系の利用であることが明らかになりました。
※特定した地域に関する詳細は以下をご参照ください
https://www.j-front-retailing.com/ir/library/pdf/sustainability/2025/J_FRONT_2025_J.pdf
(d)短期・中期・長期のリスク・機会の詳細
当社は、環境関連リスク・機会は、長期間にわたり自社の事業活動に影響を与える可能性があるため、適切なマイルストーンにおいて検討することが重要であると考えています。それを踏まえ、中期経営計画の実行期間である2026年度までを短期、「気候変動に関する主要な目標であるSBT」における短期目標年度である2030年度までを中期、SBTネットゼロ目標年度である2050年度までを長期と位置づけました。
当社グループは、環境関連リスク・機会に対し、ネットゼロを実現する2050年までを見据えたバックキャスティングにより、戦略を策定し、対応しています。
気候関連リスク・機会の検討期間JFRグループの定義
短期2026年度まで中期経営計画の実行期間
中期2030年度までSBTにおける短期目標年度までの期間
長期2050年度までSBTネットゼロ目標年度までの期間

(e)リスク・機会が事業・戦略・財務計画に及ぼす影響の内容・程度
当社は、主軸であるリテール事業やデベロッパー事業における商品・原材料の調達や品質、店舗運営、また事業を行う上で欠かせないエネルギーの調達コスト等において、特に生態系の劣化や気候変動による影響を受けると捉えています。そのため、生態系の劣化や気候変動が当社グループに与えるリスク・機会とそのインパクトの把握、及び2030年度時点の世界を想定した当社グループの戦略のレジリエンスの検証・向上、そしてさらなる施策の必要性の検討を目的に、シナリオ分析を毎年実施しています。
シナリオ分析では、国際エネルギー機関(IEA)や、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が公表する複数の既存シナリオを参照し、気候変動及び生物多様性に関して、下表の通り2つの世界を想定しています。それぞれの世界において、当社事業におけるリスクや機会を検討しています。
気温上昇推定値シナリオ(想定される世界)
1.5℃/2℃未満※1●世界の平均気温上昇を産業革命前と比較して1.5℃未満に抑えることを目指す最も意欲的な世界
⇒気候/自然関連の政策や規制が強化され、かつ市場もそれに整合し、気候変動や生態系の劣化のスピードが抑制された世界
●カーボンプライシングの導入
●再エネの普及・拡大
●環境配慮型商品への関心の高まり
●環境価値の高い店舗・街づくり
4℃※2●経済成長を優先し、現行政策のまま成り行きの世界
⇒新たな気候/自然関連政策・規制は導入されず、市場も整合せず、気候変動や生態系の劣化が進行することを想定した世界
●自然災害の激甚化(来店者激減、営業停止)
●季節の二季化(旬の消滅、伝統文化の喪失)
●産地の消滅
●調達・物流ルートの断絶

(参照した既存シナリオ)
※1 移行:「Net Zero Emissions by 2050 Scenario(NZE)」(IEA、2025年)
物理:「Representative Concentration Pathways (RCP2.6)」(IPCC、2014年)
※2 移行:「Stated Policy Scenario(STEPS)」(IEA、2025年)
物理:「Representative Concentration Pathways (RCP8.5)」(IPCC、2014年)
これらのシナリオを踏まえ、百貨店やショッピングセンターなどのリテール事業を主軸とする当社グループは、バリューチェーン・プロセスの活動項目ごとに、TCFD/TNFD提言に沿って、気候/自然関連リスク・機会を抽出しました。その上で、気候変動や生態系の劣化がもたらす移行リスク(政策規制、技術、市場、評判)や物理リスク(急性、慢性)、また、気候変動や自然関連課題への適切な対応による機会(資源効率、エネルギー源、製品及びサービス、市場、レジリエンス)を特定しました。
(f)関連するシナリオに基づくリスク・機会及び財務影響とそれに対する戦略・レジリエンス
当社は、特定した気候/自然関連リスク・機会の中から、「自社にとっての重要性(影響度×緊急度)」と、「ステークホルダーにとっての重要性」の2つの基準に基づき、その重要性を評価しました。特に重要性が高いと評価した項目について、2030年度を想定した1.5℃/2℃未満シナリオ、及び4℃シナリオの2つのシナリオにおける財務影響を定量、定性の両側面から評価し、それぞれの対応策を策定しました。
なお、財務影響を定量的に評価するための情報が入手困難なリスク・機会については、定性的に評価し、その結果を矢印の傾きによって3段階で表示しています。
0102010_013.png
0102010_014.png<2030年における財務に対するインパクト試算結果>
リスクタイプテーマ内容1.5℃シナリオ4℃シナリオ
移行リスクカーボン
プライシング
炭素税や排出量取引制度導入等に伴うコストの増加※112億円
(2050年 : 0円)
7億円
(2050年 : 0円)
移行リスク再エネ再エネ由来電力需要増による調達コストの増加※28億円4億円
物理リスク自然災害異常気象、自然災害の激甚化による店舗休業に伴う収益の減少※352億円103億円
事業機会省エネ高効率機器への切り替えによるエネルギー調達コストの削減※44億円4億円
事業機会環境価値の高い店舗・街づくり環境価値の高い店舗への転換による新たなテナントの獲得に伴う収益の拡大※511億円-

(定量的財務影響の算出根拠)
※1 2030年度時点のJFRグループScope1・2排出量に1t-CO₂あたりの炭素価格を乗じて試算
※2 2030年度時点のJFRグループ電気使用量に通常の電気料金と比較した1kWhあたりの再エネ由来電気料金価格高を乗じて試算
※3 過去の自然災害による店舗休業に伴う売上損失額に将来の洪水発生頻度を乗じて試算
※4 2030年度時点のJFRグループ省エネルギー量にエネルギー調達コストを乗じて試算
※5 2030年度時点のJFRグループ不動産収益に環境認証取得ビルの新規成約賃料への影響度合いを乗じて試算
<主なパラメータ>
パラメータ出典
炭素税価格
2030年(1.5℃:157$/t-CO2※ 、4℃:87$/t-CO2)
2050年(1.5℃:250$/t-CO2 、4℃:87$/t-CO2)
「Net Zero Emissions by 2050 Scenario(NZE)」
(IEA、2025年)
「Stated Policy Scenario(STEPS)」
(IEA、2025年)
再エネ由来電気料金価格高「日本のエネルギー2020」
(経済産業省、資源エネルギー庁、2021年)
将来の洪水発生頻度「Representative Concentration Pathways(RCP8.5)」
(IPCC、2014年)

※2030年の数値は、IEAのWEO2025から試算
レジリエンスに対する総括
想定したシナリオを前提に気候変動や生態系の劣化がもたらす影響を分析し、その対応策を検討した結果、いずれのシナリオ下においても、当社グループが既に実施している施策、計画している施策が、リスクを低減し、機会の実現に貢献できる実効性、柔軟性を有していることを確認しました。
炭素税等導入によるコスト増や自然災害に伴う収益への影響については、サステナビリティボンド等を活用した再エネ導入の拡大、財務影響リスクを低減する対策を計画的かつ着実に実行していきます。また、シェアリング・アップサイクルやリユース事業等当社の特性をいかしたサーキュラー・エコノミーに資する事業を当社グループの成長につなげ、脱炭素社会の実現にも貢献していきます。
当社は、気候/自然関連課題のリスクと機会の両面を捉えた取り組みを推進することで、経営のレジリエンスを高めていきます。
JFRグループ 2050年ネットゼロ・ネイチャーポジティブ移行計画
当社は、2050年ネットゼロ・ネイチャーポジティブの実現に向け、中長期視点で取り組む必要があるとの認識に基づき、2050年までの移行計画を策定しています。気候/自然関連リスク・機会の分析結果、及びそれらによる財務影響を踏まえ、リスクに対しては適切な対応策を講じ、また機会に対しては、顧客ニーズの変化に積極的に対応することで新たな成長機会の獲得を目指す等、短期・中期・長期視点で、具体的な取り組みを推進していきます。本移行計画に、投資や資金計画、また当年度の取り組み実績・財務影響を合わせて明示することで、それぞれの関係性を明確にし、本計画の実効性をより高めていきます。なお、2025年度の環境投資については、計画どおり実施しました。
0102010_015.png※移行計画については、有価証券報告書提出日現在(2026年5月26日)であり、今後の事業戦略に応じて修正する可能性があります。

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