有価証券報告書-第121期(2023/04/01-2024/03/31)

【提出】
2024/06/25 15:21
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【項目】
171項目
当行は長きにわたって「人財」を重要な経営資本と考え、「人づくり」を第一とする企業文化を強みとしてきました。その人材育成の根幹は常に変わらず、地域やお客さまから信頼され、それに応えられる職員を組織一体で育てていくことであります。
外部環境が急激に変化するなか、地域やお客さまの課題も多様、かつ、高度なものへと変化しております。当行では、その課題解決に貢献し続けていくために、職員の高度なスキルや専門性の習得を後押しするとともに、多様な職員がそれぞれの力を最大限発揮し、成長・活躍し続けるフィールドづくりに取り組むことで、お客さまへの価値提供と価値提供を通じた職員のエンゲージメント向上に取り組んでおります。
現行の中期経営計画(2022-2024年度)においては、重要課題(マテリアリティ)とする①地域課題の解決、②環境課題への対応を具体的に進めていくための経営戦略として、「基盤強化戦略」と「地域価値共創戦略」を掲げており、これらの戦略を支える推進力として、「組織・人財戦略」を位置づけて対応しております。「組織・人財戦略」では、「職員一人ひとりが能力を高め、成長・活躍し続けられる組織」を目指して、経営戦略の実現に向けた高度、かつ、専門性の高い人材育成に取り組む「人財づくり」と、職員がいきいきと活躍できる職場づくりやワークライフバランス推進に取り組む「組織づくり(DE&I)」に取り組むことで、経営戦略の実現と企業価値の向上に取り組んでおります。
<中期経営計画(2022年度~2024年度)における人的資本に係る戦略>0102010_012.png
a 人材育成方針(人財づくり)
(a)基盤強化戦略(高度・専門性の高い人材の育成)
基盤強化戦略では、お客さまの経営課題の解決や豊かな生活の実現に向けた提案など、お客さまに価値のある営業活動の拡大をはかり、将来にわたって伴走していく「ビジネスパートナー」と「ライフパートナー」を目指しております。この計画の実現にはお客さまの多様なニーズに応えるための高度で、専門性の高いスキルが不可欠であり、この個の力(スキル)を引き上げるために、自律的な学習や計画的な人材育成サイクルを実現するツールとして「スキルマップ」を導入しております。スキルマップでは、経営戦略に紐づく目指すべきスキルと現状のスキルとのギャップやお客さまの期待に応えるために習得すべきスキルなどを可視化しております。これにより、経営戦略の実現に必要な人員数と現状のギャップを定量的に把握するとともに、研修や臨店指導、OJTによる計画的な人材育成を実現しております。
具体的には、経営戦略の実現に資する業務スキルとして「ライフパートナースキル」、「ビジネスパートナースキル」、「融資スキル」の3つのカテゴリーに分類して職員のスキルレベルを把握し、自律的に知を獲得するための学びの場として、eラーニングや通信講座など基礎学習の機会を提供するとともに、各スキルレベル向上に資する研修の充実化をはかっております。また、より高度で専門性の高い人材を育成するため、専門資格者の養成講座を複数開講しているほか、研修受講料の一部補助、資格取得報奨金の支給などにより、意欲ある職員の専門資格の取得を奨励しております。
<資格保有者数>
項 目2021年度2022年度2023年度2024年度目標
事業承継・M&A関連402人401人394人400人
FP1級技能士58人66人67人100人
企業経営アドバイザー-27人36人100人
ITパスポート--219人300人
サステナビリティ・オフィサー--79人200人

(b)地域価値共創戦略
〇企業内大学「あきぎん如学カレッジ」
地域の持続的な発展のためには、人口減少や少子高齢化等の進展にともなう産業・就労構造の変化やその変化から生じるさまざまな課題を解決していく必要があります。当行では、地域課題を起点に地域を成長させていく分野に経営資源を投入し、地域の経済的価値と社会的価値を創造することで当行の企業価値を向上させることを目指し、地域価値共創戦略に取り組んでおります。
この非金融分野における価値の創出には、地域課題の解決や新規事業の開拓・拡大に資する知識やスキルの獲得が必要であり、さまざまな学びに対して意欲ある職員を後押しし、多様な考え方を持つ人材を育成するため、2021年4月に企業内大学「あきぎん如学カレッジ」を開学しております。「あきぎん如学カレッジ」では、既存の業務研修とは異なる「知的財産」や「DX支援」に関する知識などさまざまなカリキュラムを用意し、地域価値共創戦略の実現に必要なスキルを高める機会をつくっております。
<あきぎん如学カレッジの実施状況>
コース名講義内容2022年度2023年度
コンサルティングコースクリティカルシンキング、コミュニケーションなど23人23人
知的財産経営コース知的財産、ブランディングなど20人7人
FP実践コースライフプラン、資産形成など17人17人
DX支援基礎コース基本知識、ビジネス環境の変化など-20人

〇専門人材の採用
人口減少・高齢化社会の進展にともなう人材不足や業務効率化への対応が重要度を増すなか、デジタル化は企業競争力の重要な要素となっております。このような環境変化のなか、当行では一層の業務効率化ならびにデジタル技術を活用した新たな価値創出をはかるべく、2024年3月にDX戦略を策定のうえ、「社内変革(社内の業務効率と従業員意識が変わる)」、「ビジネス変革(お客さまをデジタルでつなぐ)」、「地域の活性化(地域のお客さまが求める情報を提供し、地域の経済循環を拡大)」の3つのフェーズに分けて段階的に取り組んでいくこととしております。DX戦略の推進には、推進基盤となるDX人材の採用・育成が不可欠となりますが、2027年度までに本部でDXを推進する専門人材10名、お客さまに価値を届けるコア人材(コンサル人材)50名の確保をKPIに掲げており、2024年度の新卒採用より「DX/IT人材コース」を新設し、DX人材の採用を行っております。同コースでは、入行時からDX戦略関連部署でキャリアをスタートすることとしており、2024年度は3名の専門人材を採用しております。
また、県内外の民間企業や行政で活躍された人材をアドバイザーとして採用しており、食料品加工・販売、電子・デバイス、アグリビジネス、再生可能エネルギー、企業誘致など前職で培った専門的なスキルや知見、豊富な経験を活用して、専門性の高いコンサルティングを行っております。
[2024年度目標]
年間の人材育成投資額(研修、自己啓発、設備など):120百万円

b 社内環境整備方針(組織づくり)
(a)DE&Iの推進
当行では、公平な活躍の機会のもと、職員一人ひとりが自分らしい働き方やキャリアを実現し、多様な人材が「働きがい」と「働きやすさ」の備わった職場環境において能力やスキルを最大限発揮することで、お客さまへより質の高いサービスを提供し、エンゲージメントの高まりや生産性向上を実現できる組織づくりを目的としてDE&Iに取り組んでおります。2023年度には、当行が取り組むべきDE&Iの基本的な考え方を以下のとおり定め、これまで個別に推進してきた「女性活躍推進」、「ワークライフバランスの推進」、「健康経営」などの施策のほか、「コミュニケーション」、「シニア活躍」、「障がいのある方の活躍」を推進項目として追加し、DE&Iの取組みのさらなる充実をはかっております。
ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの基本的な考え方と目指す姿
1 基本的な考え方
(1)職員がいきいきと活躍できる職場づくり
一人ひとりが誇りや働きがいを持ちながら、互いを認め、成長し合い、公平な機会のもと、いきいきと活躍できる職場環境をつくることにより、組織の活性化をはかります。
(2)ワークライフバランスの推進
仕事とプライベート双方の充実や地域の活動等を大切にし、心身ともに健康な生活を送ることができる職場環境を整え、職員のエンゲージメントを高めます。
(3)企業価値の向上
職員の様々な視点、知識、価値観を受け入れ、新たな価値や発想を創造し、多様化するお客さまのニーズを的確に捉えてお応えすることにより、企業価値を向上させて地域社会の発展に貢献します。
2 目指す姿
(1)DE&Iの重要性やアンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み)を理解し、職員一人ひとりが強みや能力を発揮している。
(2)心理的安全性が確保され、闊達なコミュニケーションにより、チームへの貢献・感謝の意識が醸成されている。
(3)様々な視点・考え方による意見が汲み上げられることで新たな気づきや発想が生まれ、多様化するお客さまのニーズに応えることにより収益が向上し、職員一人ひとりのエンゲージメントが向上している。

ア 主な施策
〇女性活躍推進
女性職員一人ひとりが能力をより一層発揮できるよう、仕事と子育てを両立できる体制の整備や休暇制度の充実などを段階的に進めているほか、キャリア形成を目指す職員同士がつながりを持つことができる機会を拡充しております。2023年度からは、自店以外の職員との意見交換やコミュニケーション機会を提供するワークショップ「Chatomo(チャットモ)」を定期的に開催しており、同じ立場や業務を担う女性職員同士の横のつながり、情報や悩みの共有などにより、各自のモチベーションやパフォーマンス向上をはかっております。
〇ワークライフバランスの実現
職員がキャリアを継続しながらそれぞれのライフイベントに対応できる柔軟な働き方を支援するため、休暇休職制度の充実に努めております。2022年10月からは、育児休業からの早期復職を希望する職員が、自身の体調管理や子の養育に十分な時間を確保しながら働くことができるよう、短時間勤務および週休3日制を柱とする「育児休業早期復職支援制度」を新設したほか、男性職員の柔軟な育児休業の取得をサポートするため「産後パパ育休」制度(全期間有給)の導入も行っております。
〇1on1ミーティング
職員一人ひとりの自律的成長の支援および働きがい・エンゲージメントの向上を目的として、上司と部下による1on1ミーティングを全行員を対象に毎月実施しており、キャリアビジョンの共有による成長支援や信頼関係構築による心理的安全性の確保につなげております。
イ 指標と目標
主な施策項 目2022年度2023年度2024年度目標
女性活躍推進女性管理職層比率5.3%7.7%10.0%以上
女性監督職層比率28.0%30.6%30.0%以上
障がいのある方の雇用推進障がいのある方の雇用率2.45%2.49%2.50%以上
ワークライフバランス男性行員の育児休業取得率118.2%92.3%100.0%
女性行員の育児休業取得率82.8%138.9%100.0%
月間平均時間外労働時間6.8時間7.5時間6.7時間
年間有給休暇取得率52.4%55.9%60.0%以上

(注)1.当行グループにおいて「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(2015年法律第64号)及び「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(1991年法律第76号)の規定による公表をしている連結子会社はなく、また、取り組む施策や連結子会社の当行グループ全体に占める従業員割合(4.53%)も考慮して、当行単体のみを算定の対象としております。
2.育児休業取得率は、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(1991年法律第76号)に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(1991年労働省令第25号)第71条の4第1号における育児休業等の取得割合を算出しております。
なお、過年度に出産した従業員または配偶者が出産した従業員が、当事業年度に育児休業を取得することがあるため、取得率が100%を超えることがあります。
(b)健康経営の取組み
当行の持続的な成長を支える最も重要な経営資本は「人材」であり、従業員一人ひとりが心身ともに健康で、やりがいや成長を感じながら挑戦し続ける環境づくりを重要な経営課題の一つに位置付けております。従業員およびその家族が心身ともに健康であることは、働きがいやエンゲージメントの向上につながり、ひいては当行および地域社会の持続的な発展にもつがっていくものと考えます。
当行では、2017年10月に健康経営推進の基本方針として「あきぎん“長活き”健康宣言」を制定しており、役職員の健康意識の醸成を促進し、各種健診の継続実施や食生活の改善、運動習慣の定着などへの取組みのほか、社会全体で健康長寿を実現する取組みとして健康経営に取り組む地域企業や従業員の方への優遇商品の提供など地域の健康推進に資する活動を進めています。
<あきぎん“長活き”健康宣言>秋田銀行は、役職員の健康を重要な経営資源としてとらえ、組織活力および生産性向上に向けて、役職員および家族の健康増進と活き活きとした働きやすい職場づくりへの取組みを一層推進していきます。
また、秋田県における、健康長寿社会の実現に向けた取組みを社会全体で支援する環境整備に貢献いたします。

ア 主な取組み
〇 からだ
・定期健診、二次検査、特定保健指導の完全実施
・聖霊女子短期大学との連携協定(栄養学の研究成果を活用した健康サポートメニューを社員食堂で提供)
・ウォーキングコンテストの実施
・歯科検診、インフルエンザ予防接種費用の補助
〇 こころ
・ストレスチェックの継続実施によるメンタル不調の予防
・メンタルヘルスセミナーの継続開催
・人事部臨店面談の実施
・メンタル不調者の職場復帰支援(メンタルヘルス相談室)
イ 指標と目標
項 目2022年度2023年度2024年度目標
高ストレス者割合10.2%9.3%9.5%以下
特定検診受診率93.1%93.3%-
特定保健指導実施率49.5%74.3%-

(c)働き方改革(休暇・休職制度など)への取組み
導入・新設時期内 容備 考
2020年9月スキルアップ休職制度の新設職務遂行、組織力向上に資する資格の取得を目的とした休職制度
2021年10月ライフサポート休職制度の新設不妊治療や親族の看護、介護のために利用できる最大1年間の無給休職制度
2022年10月育児休業早期復職支援制度の新設育児休業からの早期復職を希望する職員に対する「実働4時間を限度とする短時間勤務」および「週休3日制」を選択できる制度
2022年10月産後パパ育休制度の新設子の出生後8週間以内に最大4週間(28日)育休を取得可能な制度
2023年4月時間単位の普通休暇職員の柔軟な働き方、休暇取得促進等を目的とした時間単位の普通休暇制度

〇ファイナンシャル・ウェルネス
従業員が心身ともに健康な生活を送ることができる職場環境を整備するためには、健康増進に加えて経済的な安定を支援する「ファイナンシャル・ウェルネス」も重要であると考えております。当行では、2022年度に持株会の活性化による従業員の安定的な財産形成を促進することを目的として「従業員持株会信託型ESOP」を導入したほか、持株会の奨励金支給額および支給上限口数の引き上げも実施しております。また、確定拠出年金については、全員加入型の選択制確定拠出年金を活用し、個人の選択による掛金の拡大を可能とするなど、従業員の資産形成を支援し、従業員の経済的な不安を取り除き、安心して業務に取り組むことができる環境整備を進めております。
  • 有価証券報告書-第121期(2023/04/01-2024/03/31)