有価証券報告書-第14期(平成28年4月1日-平成29年3月31日)

【提出】
2017/06/29 16:57
【資料】
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【項目】
158項目
(1) 経営方針、経営戦略等
① 経営方針
当行をはじめ、三井住友フィナンシャルグループは、以下の経営理念のもと、「最高の信頼を通じて、日本・アジアをリードし、お客さまと共に成長するグローバル金融グループ」を目指してまいります。
○お客さまに、より一層価値あるサービスを提供し、お客さまと共に発展する。
○事業の発展を通じて、株主価値の永続的な増大を図る。
○勤勉で意欲的な社員が、思う存分にその能力を発揮できる職場を作る。
② 経営環境
当年度を顧みますと、海外では、新興国において、資源価格の底入れや景気刺激策の効果等から、年度後半にかけて経済の持直しの動きが見られたほか、先進国でも、米国経済や欧州経済が堅調な消費に支えられ回復を続けるなど、緩やかな景気回復が続きました。わが国の経済も、企業収益が概ね高水準で推移する中、雇用・所得環境の改善を通じて個人消費に持直しの動きが見られたこと等から、緩やかな回復基調が続きました。
わが国の金融資本市場におきましては、期初から長短金利ともにマイナス圏で推移しましたが、昨年9月に日本銀行が「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を導入したことを受け、当年度末にかけて短期金利はマイナス0.04%前後、長期金利は0.07%前後となりました。円相場は、世界経済の先行き不透明感の高まりからリスク回避姿勢が強まったこと等を受けて、昨年秋頃まで円高基調で推移しましたが、11月の米国大統領選挙を機に円安に転じ、12月には一時1ドル118円台となりました。その後、米国トランプ政権の経済政策運営や、欧州の政治情勢を巡る先行き不透明感の高まり等から、当年度末にかけて1ドル111円台前半まで円高が進みました。日経平均株価は、昨年6月に行われた英国の国民投票でEU離脱派が勝利したこと等を背景に、一時1万4千円台まで下落しましたが、米国トランプ政権の経済政策に対する期待感等から、本年3月には一時1万9千円台後半まで回復し、当年度末には1万8千円台後半となりました。
規制面では、本年1月に、バーゼル銀行監督委員会が、銀行の自己資本比率と流動性比率等に関する国際的な規制の枠組み(いわゆる「バーゼルⅢ」)の見直しに関する最終合意を延期することを公表しました。国内では、昨年5月に、金融グループの経営管理機能の充実や、金融グループ内の共通・重複業務の集約、金融関連IT企業(いわゆる「フィンテック企業」)等への出資を容易にすること等を盛り込んだ「情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律」が成立しました。加えて、本年3月には、金融機関とフィンテック企業が連携・協働して技術革新を進めていくための法制度の整備等を目的とした「銀行法等の一部を改正する法律案」が国会に提出されました。また、金融庁より、金融機関等が自ら主体的に創意工夫し、顧客本位の良質な金融商品・サービスを提供するうえで有用と考えられる原則として、「顧客本位の業務運営に関する原則」が公表されました。
こうした中、金融機関を取り巻く環境は、国内におけるマイナス金利、国際的な金融規制の強化等、厳しい状況が継続する見通しです。政治・社会面においても、保護主義の台頭や地政学リスクの高まり等もあり、不透明・不確実な環境が続くと見込まれます。一方で、国内においては、個人のお客さまの「貯蓄から資産形成へ」の流れや、取引のデジタル化・キャッシュレス化の進展、法人のお客さまにおける業界再編・海外展開の加速、低金利下での運用ニーズの拡大等が期待されます。また、海外においては、米国経済の安定的な成長や、グローバルな企業再編ニーズの高まり、中長期的なアジアの発展やインフラ投資の増加等が予想されます。
③ 経営戦略
当行をはじめ、三井住友フィナンシャルグループは、平成29年度からの3年間を計画期間とする中期経営計画「SMFG Next Stage」を策定いたしました。前述の環境認識を踏まえ、本中期経営計画では、新たなグループ経営体制のもと、グループ総合力の結集と構造改革の推進により、お客さまに価値ある商品・サービスを適時に提供し、お客さまに選ばれる金融グループとして、持続的成長と企業価値の更なる向上を目指してまいります。
そのための施策として、本中期経営計画では、以下の3つの基本方針を定め、「最高の信頼を通じて、日本・アジアをリードし、お客さまと共に成長するグローバル金融グループ」というビジョンの実現に向けて、次のステージに進んでまいります。
○「規律」を重視した事業展開
○強みに重点を置いた成長戦略の推進
○持続的成長を支えるグループ・グローバルベースの運営高度化
④ 経営指標
本中期経営計画では、前述の環境認識を踏まえ、資本効率・資産効率・経費効率の改善に取り組み、下表の3項目を最終年度の平成31年度の財務目標として掲げております。
なお、経費率については、目先は過年度の投資に係る経費増加影響がありますが、経費コントロールの徹底により、低下トレンドを定着させ、平成32年度以降、早期に60%程度への改善を目指してまいります。また、国際的な金融規制の強化を踏まえ、資本基盤を強化し、健全性を確保してまいります。
資本効率ROE7~8%程度資本蓄積を進める中で
少なくとも7%を確保
経費効率経費率平成28年度比△1%程度低下早期に60%程度へ
(平成28年度62.1%)
健全性普通株式等Tier1比率※1,210%程度規制強化※1に対応した
資本水準を早期に確保
(平成28年度8.3%)

※1 国際金融規制強化の最終的な影響として、平成32年度にリスクアセットが現状比+25%程度増加する前提で、最終化時ベースの目標を設定。
※2 普通株式等Tier1から「その他有価証券評価差額金」、リスクアセットから株式評価益見合い分を控除。
(2) 対処すべき課題
当行をはじめ、三井住友フィナンシャルグループは、中期経営計画で掲げた3つの基本方針のもと、次の取組みを進めてまいります。
① 「規律」を重視した事業展開
今後も、金融機関を取り巻く環境は厳しいと見込まれますが、こうした環境下においてもボトムライン収益の持続的成長を実現するため、従来以上に資本効率、資産効率、経費効率にこだわった運営、すなわち、「規律」を重視した収益性の高い金融機関を目指してまいります。
まず、国内の安定的な収益基盤における競争優位性を維持しつつ、優先的に資源投入するビジネスを選別することで、資本効率の良い収益構造へ転換してまいります。また、国際的な金融規制の強化を見据え、資産のコントロールを一段と強化いたします。具体的には、適切なリスクテイクを行い、高採算で資産効率の良好なビジネスへ資産を投入する一方、低採算の資産を削減し、資産の入替えを進めてまいります。
更に、情報通信技術を活用した業務の効率化や、グループ内での業務基盤の共有化を進めてまいります。具体的には、個人のお客さま向けの店舗の改革や、証券子会社等の事業再編を行い、グループ全体の生産性の向上と効率化を推進してまいります。
② 強みに重点を置いた成長戦略の推進
三井住友フィナンシャルグループの競争優位性と事業の成長性をもとに、次の「7つの戦略事業領域」を定めました。
安定的な収益基盤である国内事業の一層の強化、海外事業における成長戦略の推進及び将来の成長に向けた新たな強みづくりに取り組んでまいります。
<7つの戦略事業領域>・本邦ナンバーワンの個人向け金融ビジネスの実現
・本邦中堅企業向けビジネスにおける優位性の拡大
・国内外の大企業向けビジネスにおける存在感の拡大
・高採算かつグローバルに強みがある金融商品の提供におけるトップクラスの地位の確立
・「アジア・セントリック」の進化
・市場関連業務の収益力強化
・グループ独自の付加価値の高い信託・資産運用ビジネスの構築
③ 持続的成長を支えるグループ・グローバルベースの運営高度化
イ.ビジネスにおける可能性を最大化する経営体制
三井住友フィナンシャルグループは、国際的に広く認知されたコーポレートガバナンス体制を構築し、業務執行に対する取締役会の監督機能の強化及び業務執行の迅速化を図るため、指名委員会等設置会社へ移行いたしました。
また、事業部門制、CxO(注)制を導入し、グループ・グローバルベースで、ビジネスにおける可能性を最大化してまいります。具体的には、グループ各社が、統一された経営戦略のもとで、商品提供力・サービスを強化することによって、幅広いお客さまの多様なニーズに的確にお応えしてまいります。加えて、グループ各社間で人材交流を活発化するなど経営資源を共有化し、全体最適の観点から資源投入を行ってまいります。更に、企画・管理機能を高度化し、人員・システム投資額等をグループベースでコントロールいたします。これらを支える経営管理体制として、事業部門別の経営指標の導入や経営情報システムの高度化を進めてまいります。
(注) CxO
CFO(Chief Financial Officer)、CRO(Chief Risk Officer)等の総称。
ロ.デジタル化の推進
社会のデジタル化が急速に進展する中、当行をはじめ、三井住友フィナンシャルグループは、様々な新しい技術を積極的に取り入れ、お客さまの利便性向上や新規ビジネスの創造、グループの生産性向上・業務効率化や経営基盤の高度化等、あらゆる分野でデジタル化を推進いたします。
当行をはじめ、三井住友フィナンシャルグループは、これらの取組みにおいて着実な成果をお示しすることにより、お客さま、株主・市場、社会からのご評価を更に高めてまいりたいと考えております。