有価証券報告書-第21期(令和3年4月1日-令和4年3月31日)

【提出】
2022/06/21 13:00
【資料】
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【項目】
153項目

対処すべき課題


本項においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は、別段の記載がない限り、当連結会計年度末において判断したものであります。
(1)経営方針
○セブン銀行グループの存在意義(パーパス)
お客さまの「あったらいいな」を超えて、日常の未来を生みだし続ける。
○経営理念
1.お客さまのニーズに的確に応え、信頼される銀行を目指します。
2.社員一人一人が、技術革新の成果をスピーディーに取り入れ、自己変革に取り組んでいきます。
3.安全かつ効率的な決済インフラの提供を通じて、我が国の金融システムの安定と発展に貢献します。
○経営の基本方針
当社は、セブン‐イレブンをはじめとするグループの2万店以上の店舗インフラを活用し、原則24時間365日利用できるATMネットワークを構築することで、お客さまの暮らしに密着した「おサイフ」代わりの銀行サービスを「安全、確実、迅速」に提供することに努めます。
また、利便性の高い当社ATMネットワークを他の金融機関等に活用いただくことでお客さまサービスの向上や事業効率化に繋げていただく等、共存共栄の理念に基づいたサービスの実現を図ります。
さらに、グループのお客さまが求める金融に関するサービスを積極的に提供することにより、幅広いお客さまにより多くご来店いただくように努力するとともに、結果としてグループの収益力を向上させるという相乗効果を追求してまいります。
(2)目標とする経営指標
当社は、取巻く事業環境の大きな変化に対応し持続的に企業価値を向上させるため、収益構造に厚みを持たすべく事業の多角化を推進しております。当社グループの長期的な持続可能性・成長性を最大化すべく2021年5月に策定した中期経営計画では、連結経常収益拡大を最重視した施策を推進しております。なお、中期経営計画の実行度合いを評価する指標として、計画最終年度の連結KPIを以下のとおり設定いたしました。
2021年度実績2025年度目標
連結経常収益1,366億円1,700億円
連結経常利益282億円350億円
自己資本当期純利益率8.7%8.0%以上

(3)経営環境
当社グループを取巻く事業環境は新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を機にした生活様式の変化や環境・社会課題への意識の高まり、デジタル技術進展に伴う決済手段の多様化や異業種の金融事業への新規参入等、過去に例を見ない大きさで変化しており、その変化のスピードも加速してきております。これまで以上に社会構造の変化、お客さまのニーズの多様化を敏感に捉え、技術革新の成果をスピーディーに取り入れた柔軟な経営が求められています。
加えて格差拡大、気候変動等の社会課題が顕在化・深刻化しており、企業も社会を構成する一員として、その解決に対し、これまで以上に真摯に向き合う時代を迎えております。
(4)中長期的な経営戦略
当社グループは、〈お客さまの「あったらいいな」を超えて、日常の未来を生みだし続ける。〉ために存在する。この存在意義に基づきセブン銀行はお客さまの生活に寄り添い「近くて便利」、「信頼と安心」を実現するユニークな銀行として、持続的成長を目指してまいります。2025年までの5カ年を当社の持続可能性・成長性の向上を図り「第二の成長を具体化していく」期間と位置づけ中期経営計画(2021年度~2025年度)を策定しております。本中期経営計画では、以下の3つの基本施策を推進してまいります。
<基本施策>①基幹事業であるATMプラットフォーム事業の変革と積極的な投資を通じた戦略事業分野での事業多角化
②サステナビリティを長期的な経営戦略の根幹と位置づけ、深刻化・顕在化する社会課題に対し事業活動を通じて貢献し、社会・企業双方における新たな価値創造を持続的に推進
③持続的成長の原動力となる事業・運営の両面における企業変革(コーポレート・トランスフォーメーション)の推進
(5)対処すべき課題
当社グループは、以下の課題に対処することにより、持続的成長を実現し、お客さまや社会に必要とされる企業であり続けたいと考えております。
■国内事業セグメント
ATMプラットフォーム戦略
・これまで当社が中核事業としてきたATMの現金プラットフォーム事業は現在、大きな転換点を迎えております。キャッシュレス化の加速に伴い金融機関の現金入出金取引は減少傾向が続いておりますが、一方でQRコード決済等事業会社の現金チャージ取引等は大きく増加し、結果として当社のATM取引件数は新型コロナウイルス感染症が蔓延する以前(前々年)の平均利用件数を上回って推移しております。このような利用動向を分析すると、やはり日本では依然として根強い現金取引ニーズがあると考えられます。当社は決済環境の変化は新しいATMサービスが生まれるチャンスであるとの認識のもと、引続きお客さまに安心で便利なサービスを提供する取組みを続けてまいります。
・2019年9月に設置を開始し、入替を進めてきた第4世代ATMは全台数の4割に達しております。第4世代ATMの新たに実装した機能(本人認証機能、スキャニング機能等)を活用し、行政・医療・金融サービス等の分野において、現金取引に留まらない新しいATMサービスを本格的に展開してまいります。
リテール戦略
・金融リテール分野では従来の金融機関等に加え、Fintech企業等様々な企業がひしめき合い競争が激化しています。当社は、セブン&アイグループとの連携強化と流通グループ発祥の銀行ならではのユニークな金融商品を開発・提供する取組みを拡大してまいります。
法人戦略
・当社が創業来蓄積し、当社が強みとしている銀行品質の事務処理能力や安心・安全な資金管理・資金移動の仕組み、認証などのセキュリティの高いテクノロジーについて、金融機関や一般事業者に提供するサービスの拡大を図ってきました。昨今、進化するDXの技術をいち早く取り入れ、外部事業者とも協力しながら事業規模の拡大に努めてまいります。
■海外事業セグメント
海外戦略
・米国の当社連結子会社のFCTI, Inc.は、新型コロナウイルス感染症の影響の長期化から利用件数は未だ回復途上にありますが、低採算ATMの整理が進み、安定して利益を確保できる財務体質が実現できました。一方で、今後予想される米国金利の上昇により調達コスト増が懸念されますが、金融デリバティブを活用したコスト上昇への歯止め、ATM機内現金の圧縮対策などにより金利市場の影響を最小化する手段を講じてまいります。同時に約9,000台のATMネットワークを活用した新たな金融サービスを提供してまいります。
・アジアでは、インドネシア・フィリピンの2カ国でATMサービスを展開し、ATM設置台数拡大を加速しております。両国では、利用者にとって日常生活に必要なATMが十分に設置されていないため、引続き高い需要が見込まれます。両国におけるATMネットワーク網の整備を進め、その後、ATMを入り口とした多層的な金融サービスの実現に取組んでまいります。
<持続可能な社会の実現>・当社グループはサステナビリティを長期的な経営戦略の根幹と位置付け、2021年には「サステナビリティ推進基本方針」を制定するとともに「サステナビリティ委員会」を設置し、全社的な推進体制の見直しを図っております。2019年度に設定した「5つの重点課題」(注)では、事業活動を通じた環境・社会課題の解決と事業競争力強化の両立を目的とし、これまでの取組みを発展させてまいります。
(注)5つの重点課題
・安心・安全な決済インフラの提供
・新しい金融サービスを通じた生活創造
・誰もが活躍できる社会づくり
・環境負荷の軽減
・多文化共生の実現
当社グループを取り巻く環境は大きく変化しております。当社グループが創業から大事にしてきた常にお客さまの想いに寄り添い、お応えする姿勢はこれからも変わることはありません。
「近くて便利」・「信頼と安心」を実現するユニークな銀行グループとして、独創的で新しい価値を創造するため挑戦を続けてまいります。