有価証券報告書-第21期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/24 12:53
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【項目】
150項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループでは、次の3つを経営の指針として事業活動を行っております。
① コアビジネスの強化とグループの連携
当社グループが有する複数の事業のシナジーを高める成長にフォーカスし、金融、システムのコアビジネスを強化し、その専門性を高めながら、各事業の特長・事業領域を融合させ、相乗効果を高める取組みを推進することで、他社には真似のできない総合カンパニー企業としての複合的な事業展開とブランディングを推し進めます。
② 新しいビジネスドメインの獲得による将来のさらなる発展に向けた種まき
当社グループは、アクセラレーターとしての機能を強化させ、次世代の成長が期待できる技術革新(イノベーション)企業の掘り起しとその成長を支援する活動を通し、大企業との連携(協業)の橋渡し役機能を拡充し、様々な業界において、ベンチャー企業や特殊技術を有する企業によるイノベーションを導くことで、業界内の地位を入れ替えるアロー効果をもたらす企業集団として、当社グループの認知度を向上させ、その地位を確立します。
また、当社グループにおいても、社会的要請(潜在ニーズ)の変遷と技術的な環境変化をいち早く見定め、次世代のデファクトスタンダード(基準)となる特色のある国内外の企業・団体等との協業事業化や戦略的提携、M&Aの実施等により、将来の成長期待分野へ積極的に参入し、その需要を取り込んだグループ事業活動を推進します。
③ 経営スタンスの再設定(社会的課題をビジネスに)
グループ経営や子会社による各事業の遂行及び個々の営業活動等において、これまで以上にCSR(企業の社会的責任)を意識した取組みを全社的に実践することとし、将来的に、当社がESG銘柄として高い評価を受けられる企業体になることを目指し、そうした取組み・諸施策を順次、企画・実施します。
また、メディアや国内外の投資家等への当社CSR経営に基づく各種活動の広報・PRの強化を図ります。
(2)経営戦略等
当社グループにおける各主要事業の戦略、並びに財務戦略及びブランド戦略は、以下のとおりであります。
① 金融商品取引事業
(コアビジネスの強化)
当社グループの中核子会社トレイダーズ証券が担う金融商品取引事業においては、2系統あったFX取引システムを2017年11月に統合しシステム関連費用の大幅な削減を達成したこと及びお客様からの預り資産を大きく増加させること等で、同事業の改善を図りました。引き続き主軸事業として、黒字体質の定着化に取り組んでまいります。
事業戦略としては、個人投資家の皆様のニーズに応え、訴求を強めていけるようマーケティング戦略を強化するとともに、ディーリングの収益性をさらに向上させる取組みによって、事業の採算性の改善を図ってまいります。併せて、BtoBビジネスにおいて、多様性に富んだサービスの提供、お客様のニーズに沿った提案を行っていくことで、大口顧客との取引量(比率)の増加を図り、FX業界のリーディングカンパニーとなることを目指してまいります。
(グループの連携)
国内外の外部企業・団体等による各種プロジェクト案件の資金調達ニーズに対して、金融グループとしての当社グループ事業やネットワークを活かし、当該プロジェクト案件のファンド化、スキーム組成・販売等を通して支援する取組みを強化します。
また、社会的な課題解決への取組みの一環として持続可能な社会に貢献しうる事業のファンド化については、企業や地方自治体(地域住民含む)等の外部者と協調・連携をとりながら、地域再生・地方復興支援の後押しを通して持続可能な開発、社会発展及び環境問題の解決に金融事業者としてアプローチする方針です。
② システム開発事業
(コアビジネスの強化)
当社グループのシステム戦略の中核を担うNextop.Asiaは、トレイダーズ証券におけるFX取引システムの開発(システム統合)を重点的に実施し、2017年11月にシステム統合作業を完遂させました。2019年3月期連結会計年度以降は、完成したシステムを金融取引プラットフォームとして、外部企業への販売やホワイトラベル形式でのシステム提供等を行うため営業活動を強化する事業戦略をとっており、次期以降においても、FX取引システムのみならず暗号資産(仮想通貨)取引システムの外部販売やシステム提供に向けた営業活動を加速させる方針です。同社は、従前、国内大手FX会社に取引プラットフォームを提供してきた実績があり、高機能版の金融取引プラットフォームを軸に、外販とその後の長期保守管理受注に向けたBtoBビジネスを強化します。
(グループの連携)
金融商品取引事業とシステム開発事業を一体化させた取組みを強化し、リクイディティマーケットにおけるシステム開発・導入や暗号資産(仮想通貨)事業者向けのバックエンドシステム・同取引システムの開発・販売・運用保守等によって、金融取引システム分野における事業領域の拡大を図ります。開発した金融取引システムの外販による直接的な収益化と外部提供するシステムを通じた取引(リクイディティ)をトレイダーズ証券に還流させることで、トレイダーズ証券におけるBtoBビジネスの拡充(取引量の増大化)をシステム面からサポートします。
③ 投資事業(投資戦略)
投資事業を営むトレイダーズインベストメントでは、アクセラレーターとしての活動を通して、大企業のベンチャー技術導入ニーズや新事業創出ニーズと、将来、成長が期待できる独自の技術を有する等の特色のあるベンチャー企業・経営者のビジネス加速化ニーズとをマッチングさせるベンチャーサポート機能を拡充させ、投資事業による出資者メリットの享受や当社グループ既存事業との連携(共同事業化)を模索することでグループ収益の増大を目指します。
④ 財務戦略(目標とする経営指標等)
当社グループは、2020年3月期連結会計年度までに、足下の各事業の取組みを確実に成就させていくことで、まずは安定した黒字化を確保・継続しうる事業基盤を構築し、着実に利益を積み増してグループとしての成長(EPS増加)と、グループ間内部の資金貸借取引関係の解消を図ることを目標としておりました。
今後も、特に、中核子会社であるトレイダーズ証券の自己資本規制比率を安定的な水準(300%超)に維持し、利益の上積みによって、当該比率を増加させるべく引き続き注力する予定です。
その後、ROEの向上を目指し、各事業の事業採算性の向上と資本効率化を推進し、リスク対応(投資と財務の健全性のバランス)を図りながらさらなる成長投資に結びつけてまいります。
また、株主還元については、安定的な利益体質の転換が確固としたものであると判断できた段階で、できるだけ早期に、株主還元としての配当の再開や機動的な自己株式取得・消却等ができるよう取組んでまいります。
⑤ ブランド戦略
当社グループは『イノベーションカンパニーとしてのDNA』を掲げ、ブランディング活動を強化します。当社グループが、かつて個人投資家向けへのインターネットによるFX取引や日経225のインデックス先物投資といった各種金融サービスの創出を図り提供してきたように、今後も、金融業界における新しい取組みに挑戦し、グループの飛躍を目指してまいります。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、株主資本の効率性を示す株主資本利益率(ROE)を重視しております。中長期的に株主資本利益率を高めることを実践し、株主の皆様に報いることができるよう努めてまいります。
(4)経営環境
当社グループを牽引してきたトレイダーズ証券が営むFX取引事業に関する市場環境の状況は、市場の成熟化とFX取引事業者による業界内競争の激化の結果、サービスや商品性を変更し、スプレッドの縮小やスワップポイント付与の優位性に依存して顧客預り資産の増加に注力してきたため、業界全体の収益性の観点からは収益率の伸び悩みや低迷がみられています。また、FX市場の相場変動の影響を受け、顧客の取引量が大きく増減する傾向にあります。トレイダーズ証券もまた、そうした市場・経営環境の中において、継続的に安定成長(収益の経常的な増加)が見通しにくい企業構造(収益構造)となっています。また、新型コロナウイルス感染症拡大による当社の業績への影響は現時点では軽微であると見込んでおりますが、今後、経済への影響や社会的活動の制約がさらに長期化・深刻化した場合には、FX取引事業においても、顧客投資資金の減少や投資意欲の減退等から預り資産が減少する可能性、FX取引市場におけるカントリーリスクの高まり及び海外金融機関との取引リスク(決済リスク・破綻リスク等)の高まりが想定され、当社の業績に影響を与える可能性があると考えております。リスクの詳細及び当社グループの対応に関しましては、「第2 事業の状況、2事業等のリスク、1顕在化する可能性を高く想定しているリスク、(1)外部環境によるリスク、④ 新型コロナウイルス感染症によるリスク」に記載のとおりです。
トレイダーズ証券における競合他社との競争優位性は、FX取引システムが、グループ内企業Nextop.Asiaの開発によってリプレースされた新FXシステムを導入したことであり、内製化による迅速なシステム開発力により、顧客の取引利便性を高める施策や主要サービスの機能強化・改良が効率的に推進できる強みにあると考えております。主要サービスである「みんなのFX」・「LIGHT FX」おいては商品性・付随するサービスの充実化とマーケティング強化による販路増加によって、個人投資家の認知度向上の取組みと他社との商品性の差別化を訴求した結果、口座数・顧客預り資産が前年比で増加しており、顧客基盤の拡充を達成できたと認識しております。
また、システム開発・システムコンサルティング事業を営むNextop.Asiaについて、同社の位置する市場環境は、国内において、FX取引システム等の金融デリバティブ商品に関する取引システムの開発・保守・運用を中心に事業展開を行うシステム開発会社数は限られており優位性があると認識しております。また、海外の取引システムに比べて、国内の法令諸規則に準じた管理系システムをフロントシステムと同時に事業者へ提供することが可能であり、そうした点が国内におけるFX取引取引システムの開発・販売において、強み(競争優位性)となっていると考えております。FX取引システム以外では主要商品の一つとして、暗号資産(仮想通貨)の取引システムプラットフォームを開発・販売しております。これまではグループ会社であるトレイダーズ証券にFX取引システムを納入し、外部販売による収益割合が少ない企業構造となっており、外部への販売網や顧客基盤はいまだ十分ではない状態にあることから、今後、営業力を強化して販売網の増加と顧客基盤の拡充に取り組むことを考えております。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループは、下記の課題について重点的に取組み、収益力の強化並びに経営体質の強化に努めるとともに、法令を遵守する内部管理体制を強化し、企業体質の健全性をより一層高めてまいります。
当社グループは、下記の諸課題について重点的かつ優先的に取組んでいくことを通じて、収益力の強化並びに経営体質の強化に努めるとともに、法令を遵守する内部管理体制を強化し、企業体質の健全性をより一層高めてまいります。
① 主力事業(金融商品取引事業)の競争力強化
当社グループ事業の強化によって企業価値向上を図る観点から、もっとも優先的に対処すべき事業上の課題としては、FX市場における厳しい経営環境の中、トレイダーズ証券が提供するFX証拠金取引『みんなのFX』及び『LIGHT FX』、FXオプション取引『みんなのオプション』、さらにシステム・トレード機能を搭載した『みんなのシストレ』について、継続的な機能強化と顧客利便性の向上に取組み、スプレッド競争だけではないサービス面での付加価値により他社との差別化を図っていくことを考えております。
また、FX取引のカバーディーリングの収益性を高めるためのディーリング手法の継続的な改善の実施や、集客力増強に向けたマーケティング施策の多様化を行うこと、さらに、個人投資家向けの商品ラインアップ拡充やBtoBビジネスの強化による取引量(比率)の増加を図ることで、収益力の向上に努め、安定的な事業利益を確保し続ける企業構造とすることで当社グループの安定化の基礎を築きたいと考えております。
② 社会的な課題解決に向けた取組みの強化
当社グループ事業の強化によって企業価値向上を図る観点から、次に優先的に取り組むべき事業上の課題としては、当社グループが、これまでのようにFX取引事業のみに依存した事業構造では、中長期的に成長拡大を続けていくことが益々難しくなると想定しております。今後も、グループの安定的な収益基盤を構築し、中長期的な企業価値向上に資する新たな成長の柱となる事業分野への取組みもまた必要不可欠であると判断しております。
そのためにNextop.Asiaが営む金融取引を中心としたシステム開発・コンサルティング事業をより一層強化し、金融商品取引事業との連携の強化ならびに外部販売の強化を行うことで、2つの事業の相乗効果が期待できる新規事業への展開を検討してまいります。
こうした事業展開に際して、当社グループは社会的な課題解決に取組むことによる事業機会を確保・成長させ、持続可能な社会に貢献しうる事業活動を推進していくことが、中長期的な企業価値向上に結び付くものと認識しており、収益機会の拡充に向けた取組みについて柔軟に検討しながら推進していく方針です。
③ 外部からの資金調達による財務基盤の安定化
当社グループが財務上、優先的に対処すべき課題としては、主軸事業のFX取引事業における財務基盤の安定化であると認識しております。FX取引事業は、収益が相場動向に強く影響を受け、日々変動するため、業績見通しの予測が難しいばかりでなく、資金繰りにおいては顧客の取引損益の増減により生じる日々のカバー先金融機関との決済、顧客区分管理信託の受払に関する必要額が予見しづらく、時として多額に上ることも想定されるため、手許の待機資金を十分厚く保持することが必要になります。また、財務基盤の強化として自己資本規制比率のより一段の増強、安定化を図ることは、金融商品取引事業者としての信用力・規制対応力の向上と、顧客や取引先からの信頼獲得を通じた営業力強化に不可欠のものと認識しております。
これらの状況を踏まえ、今後も、金融機関等からの借入金及びコミットメントラインの設定の交渉は行ってまいりますが、資金調達が必要と判断した場合には、第三者割当増資又は新株予約権等のエクイティ・ファイナンス及び社債等のデット・ファイナンス等、可能な限りの資金調達方法を検討し、財務基盤の安定化を図ってまいります。
④ コーポレート・ガバナンスの充実
当社が、中長期的に企業価値を向上させ、株主利益を最大化するとともに、ステークホルダーと良好な信頼関係を継続していく観点において優先的に対処すべき課題としては、コーポレート・ガバナンスの確立と充実が不可欠であると考えております。
当社では、当社グループのコーポレート・ガバナンスのあり方について、外部有識者を招き情報共有及び意見交換を行う場としてコーポレートガバナンス委員会を設置するとともに、独立役員3名(当社社外取締役1名及び社外監査役2名)を選任して客観的かつ中立的な視点からの経営監視をお願いすること等により、コーポレート・ガバナンスの充実を図っております。
また、証券取引所の上場規則に基づき2015年6月1日に適用が開始された「コーポレートガバナンス・コード」については、基本5原則を遵守するとともに、その趣旨・精神を踏まえて今後も引き続き、当社に相応しいコーポレート・ガバナンスのあり方を追求していくとともにさらなる強化を図ってまいります。
⑤ 内部管理体制の強化
当社グループは、コンプライアンスが企業価値を支える骨格であるとの強い確信のもと、コンプライアス体制の強化に取組み、企業活動の健全性を高め、あらゆるステークホルダーから、より一層信頼されるよう努めておりますが、上記コーポレート・ガバナンスの充実に関連して、特に主軸事業のトレイダーズ証券における課題としては、同社の法令等遵守に係る取締役会の諮問機関としてコンプライアンス委員会を設置するとともに、「コンプライアンスの基本方針」に基づき、「コンプライアンス・マニュアル」「倫理コード」を制定し、「コンプライアンス・プログラム」に従い、内部管理統括責任者の監督の下、金融商品取引法その他の法令を遵守することはもとより、高い倫理観をもって業務運営を行っております。
また、当社においても、会社法および会社法施行規則に基づき、取締役会において「内部統制に関する基本方針」を定め、コーポレート・ガバナンス、コンプライアンス、リスク管理等を経営の重要課題として位置付け、それらの課題に取り組んできております。当社は、グループが有する金融、システム等のコアビジネスの強化を進めるとともに、各事業の特長を活かした形で事業領域の融合を図り相乗効果を高めていくとの経営戦略のもと、経営企画部を中心として、各コアビジネスの展開に伴うリスクへの対応、事業特性に応じた各子会社における経営管理及び当社による子会社管理・プロジェクト管理の強化、財務情報を含む各種情報の伝達・コミュニケーションの円滑化を徹底してまいります。
さらに、財務諸表の適正性に対する信認の向上を図ることは、当社にとっての重要な責務であると認識しており、財務部門の充実を図るとともに、金融商品取引法の定めに従って当社の財務報告に係る内部統制の整備及び運用状況を検証し、有効性を確認する内部監査部門を充実させ、当社グループの各コアビジネスの展開に即した的確な評価を行うよう努めてまいります。
⑥ 低コスト体制の徹底
その他の重点的に取り組むべき対処すべき課題としては、トレイダーズ証券のFX取引事業では、『みんなのFX』等のシステム及び『みんなのシストレ』等のシステムを一つのプラットフォームに統合し、システム関連費用の低減、当社グループ内での資金還流を図ることができました。今後とも、当社グループは、利益率をより一層高めていくため、システム関連費用を含む販売費及び一般管理費の継続的なコスト削減を徹底して行うことが重要であると認識しており、さらなる損益構造の改善に取組んでまいります。
⑦ 人材の確保・育成
その他の重点的に取り組むべき対処すべき課題としては、当社グループが、業容の拡大及び経営体質の強化を実現していく上で、人材の確保・育成は不可欠であると認識しております。当社グループでは、新規プロジェクトへの登用、社員研修制度の充実、公正な人事制度の確立等に取組むことで、将来、当社の核となる優秀な人材の確保・育成を図ってまいります。