有価証券報告書-第78期(2025/04/01-2026/03/31)

【提出】
2026/06/24 9:55
【資料】
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【項目】
170項目
(3) 戦略
①気候変動に対する取組
気候変動問題等の地球環境問題は、世界規模でサステナビリティに関する重要課題として認識されており、脱炭素社会へ向けた取組等が進められております。当社グループにおきましても、このような経営環境下であることを踏まえ、気候変動に起因する社会・環境問題は喫緊の課題として捉え、気候変動関連リスク及び機会が当社グループの事業活動や収益等に与える影響を分析し、対応を検討しました。

<シナリオ分析の前提条件>・実施対象範囲:グループ売上高の9割以上を占める運送事業、貸切事業及び流通加工事業を対象
0102010_002.png
・参照した気候関連シナリオ
最悪の状況を想定し、それに備えることが重要であると考え、影響が最大になる「1.5℃」と「4℃」のシナリオを採用
0102010_003.pngIEA(International Energy Agency):国際エネルギー機関
IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change):国連:気候変動に関する政府間パネル
・時間軸
グループ中期経営計画実行年度及び日本の温室効果ガス排出削減目標の時間軸に合わせ、中期2030年、長期2050年に設定
・影響度
リスクアセスメント基準を基に、影響度「小」「中」「大」の3つに分類。
その他、事業インパクトの定量評価に参照したデータ及びパラメータは以下の通りです。
参照データ参照パラメータ
IEA WEO2024炭素税(炭素価格)
IEA Global EV Outlook2024EV/FCEVトラックの販売率
Climate Impact Explorer日本における熱ストレスによる労働生産性の変化

WEO(World Energy Outlook ):世界エネルギー見通し
<リスクと機会の特定及び事業インパクトの定性評価>当社グループは、気候変動が事業環境に与える影響を重大なものと認識し、シナリオ分析に基づいて、気候変動に起因する重要なリスクおよび機会の特定と、それに伴う事業インパクトの評価を実施しました。
1.5℃シナリオにおいては、脱炭素社会の実現に向けて再生可能エネルギーの普及が進み、炭素税の導入や車両の脱炭素化が加速すると予想されます。これらの変化に対応するため、当社グループでは、行動計画に基づき環境対応車両の導入や太陽光発電の活用を進め、脱炭素社会への適応を図ってまいります。
4℃シナリオでは、異常気象の頻発による物理的リスクに加え、平均気温の上昇に伴う労働生産性の低下や人材確保の困難化といったリスクが懸念されます。これに対しては、職場環境の整備による人材確保や、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進による業務効率化を進めてまいります。
また、「2024年問題」に端を発する深刻な輸送力不足や環境問題への対応など、物流業界を取り巻く事業環境の変化については、いずれのシナリオにおいても重要な課題であると認識しております。当社グループでは、ダブル連結トラックの導入やモーダルシフトの推進に加え、他社との共同配送などの協業を通じて、輸送効率の向上を図るとともに、持続可能な社会の発展に貢献してまいります。
0102010_004.png※時間軸は、グループ中期経営計画実行年度および日本の温室効果ガス排出削減目標の時間軸にあわせ、中期2030年、長期2050年に設
定しました。影響度は、リスク管理委員会のリスクアセスメント基準を基に、影響度「小」「中」「大」の3つに分類しています。
※事業インパクトは、リスク管理委員会のリスクアセスメント基準を基に、事業影響度と発生可能性を考慮し、区分しております。影
響度は財務、安全、規制、環境影響、評判等の観点から1~5にレベル分け、発生可能性はごくまれに発生~日常的に発生まで1~5に
レベル分けし、影響度と発生可能性を掛け合わせたものをリスクの大きさとしております。
<事業インパクトの定量評価>特定したリスクのうち、事業インパクトが大きいと判断した3項目については、インパクトの定量的な評価を実施しました。今後につきましても、事業インパクトの定量的評価の実施範囲を広め、対応策の検討を深めてまいります。なお、今回の評価は、気候関連シナリオにおける各種データやパラメータに基づく試算であり、市況等の外部環境変化により変動する可能性があります。
・炭素税導入による影響予測について
「炭素税」とは、CO2排出量を抑えることを目的した政策手段であり、企業などが燃料や電気を使用して排出したCO2の量に応じて課せられる税金です。現在、EU諸国等の先進国を中心に炭素税を導入する動きが広がっており、将来的には我が国においても導入される可能性があると考えております。
国際エネルギー機関(IEA WEO2024)は、2030年時点での先進国におけるCO2排出量1tあたりの炭素税額について、1.5℃シナリオ(NZE)の場合は140ドルと予測しています。また、4.0℃シナリオ(STEPS)の場合は39ドル*1と予測しています。2030年に我が国に炭素税制度が導入されると仮定し、当社が2030年度の目標達成に向けてCO2排出量を2013年度比35%削減した場合と2025年度から削減しなかった場合の炭素税額を試算し比較すると、1.5℃シナリオでは、約24.9億円(≒約80.2億円*1 -約55.3億円*2)のコスト増が想定されます。なお、CO2排出量の削減政策が比較的進まないと仮定した4℃シナリオであっても、削減した場合と削減しなかった場合の炭素税額を試算し比較すると、約6.9億円(≒約22.3億円*3-約15.4億円*4)のコスト増が想定されます。
運送事業を中心として活動する当社グループでは、運送に伴う車両燃料によるCO2排出量削減に向け、専用ブロックトレイン等へのモーダルシフト、水素燃料電池トラックや電気小型トラックなど環境対応車両の導入、1人のドライバーで大型トラック2台分の荷物を輸送できるダブル連結トラックの導入拡大等に取り組んでおります。今後におきましても、CO2排出量のモニタリングを続けるとともに、さらなる排出量削減に向けた取り組みを加速してまいります。
2030年予想CO2の排出量を
2013年度比35%削減した場合
CO2の排出量を
2022年度から削減しなかった場合
1.5℃シナリオ4℃シナリオ1.5℃シナリオ4℃シナリオ
炭素税額
(IEA WEO2024参照)
140ドル39ドル140ドル39ドル
当社グループにおける
コスト増
(Scope1+Scope2
為替160円/USDで換算)
約55.3億円*2約15.4億円*4約80.2億円*1約22.3億円*3

・EV/FCEV車両の導入による影響予測について
当社グループは、従来のディーゼル車等の一般車両と比べて、CO2や大気汚染物質等の排出量が少なく、環境への負荷が小さい環境対応車両の導入を進めております。
国際エネルギー機関(IEA Global EV outlook2024)は、トラック販売台数におけるEV/FCEV車両の割合について、2030年時点のEV/FCEV車両の販売割合は、1.5℃シナリオの場合は30%、4℃シナリオの場合は10%と予測しております。また、将来的にEV/FCEV車両の価格は、既存車両と比較して2倍になると予測しています。これらを踏まえて、当社は、所有するトラックが代替時期を迎えた際に、市場での販売状況に合わせてEV/FCEV車両に代替すると仮定し、EV/FCEV車両の導入に伴う財務影響額を試算しました。
当社グループにおける2030年のEV/FCEV車両の導入に関する財務影響については、1.5℃シナリオの場合は、2025年度において所有する小型トラックの30%をEV/FCEV車両に代替すると仮定し試算すると、約86.4億円*1の導入コスト増となり、4℃シナリオの場合は、10%をEV/FCEV車両に代替すると仮定し試算すると、約28.8億円*2の導入コスト増となります。
なお財務影響額は、 EV/FCEV車両とエンジン車両との車体取得価格の差額で算出しており、また、現時点で中型・大型トラックのEVなどの技術の確立はされておらず、取得可能な車両は存在していないため、小型トラックのみをEV化して導入することを前提想定としております。
今後、EV/FCEV車両については、関連情報(価格、性能、補助金など)を収集し、社会情勢や販売市場の変動に伴う購入の容易さ、財務上の影響を考慮しながら、計画的に導入していく予定です。
2030年予想1.5℃シナリオ4℃シナリオ
EV/FCEVトラック販売率
(IEA Global EV outlook 2024参照)
30%10%
当社グループにおけるコスト増約86.4億円*1約28.8億円*2

・熱ストレスによる労働生産性の変化予測について
当社グループは、屋外での作業や移動、快適な温度及び湿度環境が確保しづらい施設内での作業を行うドライバーにおいて、平均気温上昇は、熱ストレスの増加を招き、労働生産性の低下につながると考えております。熱ストレスとは、身体が生理的な障害なしに耐え得る限度を上回る暑熱を指し、熱ストレスの増加は、熱中症等による人間の身体機能や身体能力の低下に伴う労働生産性の低下を意味しております。
Climate Analyticsが提供するClimate impact explorerでは、2030年時点で日本における熱ストレスに伴う労働生産性は、1.5℃シナリオの場合は▲0.1%、4℃シナリオの場合は▲0.2%と予測されています。これを踏まえて、当社における財務的影響を試算すると、2022年度の売上高を基準にした場合、1.5℃シナリオでは生産性が0.1%減少することで約2.7億円*1の売上高の減少、4℃シナリオでは生産性が0.2%減少することで約5.5億円*2の売上高の減少が予想されます。
当社グループでは、熱ストレスの増加に備え、ドライバーの安全と健康の確保に取り組むとともに、暑熱対策に関する職場環境改善に努めてまいります。
2030年予想1.5℃シナリオ4℃シナリオ
日本おける熱ストレスに伴う労働生産性
(Climate impact explorer参照)
▲0.1%▲0.2%
当社グループにおける売上高への影響
(2025年度売上高基準)
▲約2.7億円*1▲約5.5億円*2

②人的資本・多様性に対する取組
当社グループは、「すべての多様な人々と協働し、安全・安心な物流サービスを通じて、心豊かで活力ある社会を実現する」ことを経営理念としています。持続的な成長と企業価値向上のためには、多様な視点や価値観を尊重し、さまざまなバックグラウンドを持つ人材が活躍できる環境づくりが不可欠と考えています。そのため、性別、経験、技能、キャリアの異なる人材を積極的に採用し、多様な人材が能力を発揮できる労働環境の整備を進めています。
<人材育成方針>当社グループは持続的な企業価値向上のために、人材の確保と育成が重要であると考えております。人材採用については、主力事業の運転者の確保に向けて、従来から行っているリファラル採用に加え、アルムナイ採用を導入・推進しています。さらに、車両整備士や運転者の人手不足に対応するため、外国人技能実習生や特定技能人材の採用も積極的に進めており、多様な人材が戦力として活躍できる環境づくりに取り組んでいます。また、多様な人材の活用および適正な配置に努めるとともに、各事業の強化に向けたキャリア人材の採用・育成にも注力しています。管理者や事務職の能力開発と成長を支援するため、eラーニングシステムを導入し、継続的な学習機会や明確なキャリアパスも提供しています。
具体的な施策:
・リファラル採用・アルムナイ採用の推進
・次世代幹部・管理職育成 eラーニングプログラムの実施
・新任管理職(店長)向け研修の実施
・専門キャリア人材の採用強化
・外国人技能実習生及び特定技能人材の計画的受け入れと支援体制の整備
<社内環境整備方針>従業員の満足度を高めるために、当社は仕事と私生活の両立を支援する柔軟な労働環境の整備に取り組んでいます。柔軟な労働時間制度やワークライフバランス支援制度の導入により、従業員の健康と幸福を重視した職場づくりを進めています。また、労働環境改善の一環として、定期的に従業員エンゲージメントサーベイを実施することで職場の課題を「見える化」し、その結果をもとに制度・業務改革を行い、帰属意識と生産性の向上を目指しています。
具体的な施策:
・休日の確保、有給休暇取得の促進
・時間外労働の削減
・両立支援制度の拡充
・従業員エンゲージメントサーベイの導入による職場環境の可視化
・人事・給与制度改革、業務プロセスの改善による生産性向上
<多様性への取組>当社はダイバーシティ(多様性)&インクルージョン(受容性)を推進するため、すべての従業員がその能力を最大限に発揮できる職場環境づくりに取り組んでいます。性別や年齢、国籍、入社時期などに関係なく、平等な機会と公正な評価を提供し、多様な人材の活躍を支援しています。特に、女性やシニア人材の活躍推進を重視し、管理職への登用を積極的に進めています。また、車両整備士および運転者の人手不足に対応するため、外国人技能実習制度および特定技能制度を活用し、海外人材の受け入れを積極的に進めています。日本語教育や生活支援、業務研修体制を整えることで、外国人材が長期的に安心して働ける環境の構築に努めています。今後も整備・輸送の中核人材として、技能実習・特定技能の外国人材を計画的に受け入れ、多様な人材による安定的な事業運営体制の強化を図ってまいります。
具体的な施策:
・女性社員の管理者への登用
・シニア人材が活躍できる場の提供
・D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)体制の構築

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