有価証券報告書-第19期(2023/04/01-2024/03/31)

【提出】
2024/06/27 10:05
【資料】
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【項目】
135項目

対処すべき課題

本項の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
当社グループは、「高速道路の効果を最大限発揮させることにより、地域社会の発展と暮らしの向上を支え、日本経済全体の活性化に貢献」することをグループ経営理念とし、「つなぐ」価値を創造し、あらゆるステークホルダーに貢献する企業として成長するというグループ経営ビジョンの実現を目指しています。
当社は、グループ一体経営を推進しつつ、経営方針である「お客さま第一」、「公正で透明な企業活動」、「終わりなき効率化の追求」、「チャレンジ精神の重視」及び「CSR経営の推進」を常に念頭に置き、お客さまに安全・安心・快適・便利な高速道路空間を提供することを使命としております。令和3年度に策定した「NEXCO東日本グループ中期経営計画(令和3年度~令和7年度)」(以下「中期経営計画」といいます。)において、令和7年度までの5年間を『SDGsの達成に貢献し、新たな未来社会に向けて変革していく期間』と位置付けました。その上で、6つの基本方針(「安全・安心で自動運転等のイノベーションにも対応した快適な高速道路の実現」、「老朽化や災害に対する高速道路インフラの信頼性の飛躍的向上」、「高速道路の整備・強化と4車線化の推進によるネットワーク機能の充実」、「多様なお客さまのニーズを踏まえた使いやすさの追求」、「ポストコロナ時代におけるグループ全体の経営力の強化」、「新たな日常に対応した誰もが生き生きと働けるワークスタイルの実現」)の下、着実に事業を実施してまいりました。中期経営計画の中間年度にあたる当連結会計年度では、道路整備特別措置法及び独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構法の一部を改正する法律(令和5年法律第43号)(以下「道路整備特別措置法等改正法」といいます。)の成立による償還期間及び料金徴収期間の延長や、サステナビリティに対する社会的要請の高まり等の事業環境の変化を踏まえ、同計画の見直しを行いました。
令和6年度における日本経済は、サービス消費やインバウンド需要の回復がコロナ禍から一巡しつつある中、企業収益が賃金や設備投資に回ることで回復基調が続くことが期待されます。一方で、個人消費の抑制に結び付くような過度な物価高、特に補助金、円安や原油価格高騰の影響を受けている国内ガソリン価格については、その動向を引き続き注視していく必要があります。そのような経済環境の下で、当社事業に関しても高速道路事業においては交通量及び料金収入が、道路休憩所事業においてはSA・PAの売上高が前年度並みで推移することが見込まれます。
当社が事業を実施するに当たっては、安全・安心・快適・便利な高速道路サービスを提供しつつ、機構に対して協定に基づく道路資産賃借料を着実に支払うとともに、高速道路ネットワークの形成を進めていく必要があります。特に、高速道路の管理のための投資については、景気の動向等が交通動向や料金収入に与える影響も注視しつつ、お客さまを第一に考え、適切な運用を図っていかなくてはなりません。
これに加え、大雨や集中降雪等、気候変動に伴う広域的で同時多発的な異常気象への対応、高速道路の更新事業の推進、東京外かく環状道路(関越~東名)における地表面陥没・空洞事故に対する丁寧な対応が求められております。
これらの課題に対し、当社グループは、中期経営計画及び道路整備特別措置法等改正法の成立を受けて新たに策定した「高速道路の更新計画」に基づき、災害時における地域や関係機関との危機管理体制の再整理や広報・情報提供オペレーションの確立等の対応力・情報力の強化、ミッシングリンク解消に向けた首都圏環状道路等の安全で確実な整備、高速道路リニューアルプロジェクトの推進、4車線化の推進、休憩施設のリニューアル等に取り組んでまいります。
物流の2024年問題に対しては、「高速道路SA・PAにおける利便性向上に関する検討会」での議論を踏まえ、令和5年12月26日に公表した「整備方針」に基づき、駐車マスの拡充や予約駐車マスの整備等、SA・PAにおけるトラックドライバーの確実な休憩・休息機会の確保に向けた対策を着実に進めてまいります。また、割引適用待ち車両の滞留等が課題となっている深夜割引を、走行分に応じた形にするとともに、割引が適用される時間帯を拡大するなど、令和6年度中を目処に見直します。
建設業においても時間外労働規制が令和6年4月に始まります。発注者として、建設業における働き方改革の実現と、高速道路における工事現場の労働環境改善を促進してまいります。建設業界団体との意見交換や建設現場の要望を踏まえ、遠隔立会の導入や、週休2日を踏まえた適正な工期の設定等を内容とする、業務効率化・簡素化のルール「工事円滑化ガイドライン」を作成しました。引き続き意見交換や建設現場のニーズ等を確認しながら、関係業界全体で、働き方改革や人材確保等に努めてまいります。
ICT、AI、ロボティクス、センサー、デジタル通信(5G・6G)、ビッグデータ活用等の技術革新が急速に進展するとともに、自動運転車両やコネクテッドカーの普及が現実のものとなりつつあります。当社は、高度なモビリティサービスを掲げた「自動運転社会の実現を加速させる次世代高速道路の目指す姿(構想)」の実現に向け、各重点プロジェクトを推進してまいります。
自動運転社会の実現過程では、自動運転車両と非自動運転車両が混在することが想定されます。そうした状況において、安全で円滑な交通を支援する情報の収集・提供を行うための実証実験を計画しています。実験の開始に向け、可視光・遠赤外線カメラにより高速道路上の事故や落下物等の道路情報をリアルタイムに収集する「多機能ポール」を整備するとともに、収集した情報をアプリで提供する次世代ハイウェイラジオアプリ「E-ハイラジ」の提供範囲の拡充を進めてまいります。
これらの事業環境の変化に対する取組みをより着実なものとするため、当社は、経営理念・ビジョンを共有するグループ会社との一体経営を一層推進し、グループ全体の効率性・生産性の更なる向上に努めてまいります。高速道路をこれまで以上に有効に活用し、その効果を最大限発揮させることで、地域社会の発展と暮らしの向上、更には広く日本経済全体の活性化に貢献してまいります。