有価証券報告書-第31期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)
有報資料
文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において、当社が判断したものであります。
(1)経営方針
当社の経営の基本方針は、社会基盤として重要な役割を担う先進的で高品質なインターネット接続サービスを適切な価格で安定的に提供することにあります。「接続料金」、「回線の安定性」、「回線の速度」、「サポート」といった基本的な価値の向上を図ることが重要であると考えております。また当社は教育支援サービス「manaba」を自社開発し大学などの教育機関へ提供しております。IT技術の活用によって教育の質を高めるインフラとしての価値の向上に努めてまいります。
(2)経営戦略等
インターネット接続サービスは生活インフラ及び事業インフラとしての役割が益々増大しております。当社は、顧客が求める通信品質を維持しながらオペレーションの更なる向上により顧客の利便性を高めていくことが重要課題であると考えております。また、Wi-Fi、VPN、監視カメラソリューション、教育支援サービスなど、インターネット接続の周辺領域の事業も進めております。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
先進的で高品質なインターネット接続サービスを適切な価格で継続的に提供していくためには、健全な財務基盤の維持が重要であると考えており、ROE及び1株当たり純利益を収益性の指標としております。当社が運営するISP「ASAHIネット」につきましては、会員制ビジネスであることから、インターネット接続契約数の増加を図ることが将来の収益源を確保することにつながっております。こうした観点から「ASAHIネット」のインターネット接続契約数、平均退会率、第三者による顧客満足度調査などを重要な指標としております。他電気通信事業者へIPv6接続サービスをローミング提供する「v6 コネクト」につきましては、提携する電気通信事業者数を重要な指標としております。教育支援サービス「manaba」につきましては、契約ID数に応じた課金体系となっていることから、契約ID数と全学導入校数を重要な指標としております。
(4)経営環境
① 業界動向
通信業界においては、インターネットの果たす役割が日常生活や企業活動において重要な位置づけになっていると考えております。新型コロナウイルス感染症に伴う行動の変化により、通信を伴う非接触機会の拡大や、在宅勤務等のテレワークへの動きなどインターネットを軸とした変化が起きております。従来から増加しているインターネット上で視聴される動画配信サービスやオンラインゲームに加え、オンラインライブやオンラインイベント開催などインターネット上での活動は今後も増加すると考えております。加えて企業活動におけるクラウド化の動きも活発化することにより我が国のブロードバンド契約者の1契約あたりのダウンロードトラフィックは前年同期末比160.2kbps増(51.8%増)の469.4kbps、1ヵ月当たり154.3GBとなり引き続き増加傾向にあります。デジタル庁の設立趣旨にあるよう今後は行政のデジタル化、教育のデジタル化などポストコロナの新しい社会が推進される中で、今後もISP業界が重要な役割を担っていくものと想定しております。
② ISP業界
ISP(インターネット・サービス・プロバイダ)業界においては、FTTH接続サービスの利用者数は引き続き増加を見込みます。世帯数の伸びは緩やかになることが見込まれますが、法人によるオフィス需要やテレワークの拡大等により全体としては増加傾向が続くと考えております。トラフィックも増加を見込みます。総務省の統計調査によると2020年は1契約当たりのダウンロードトラフィックは前年同期末比で年51.8%増加の伸びを示しており、同様の伸びが今後も続くと考えております。動画配信サービスやオンラインゲームに加え、オンラインライブやオンラインイベント開催などインターネット上での活動は今後も増加すると考えております。MVNO業界においてはIoT/M2Mの利用者が増加することに加え、通信規格5Gによる新たな市場拡大が期待されています。このような市場背景を踏まえ、モノやコトにインターネットが深く関与する市場の流れはより拡大傾向にあると想定しております。
当社ISP事業の事業構造は事業系統図に記載のとおり、売上は会員に対するインターネット接続機能を月額課金で計上するのに対し、売上原価は通信費仕入と通信を処理する通信機器等の設備投資が主たる原価であります。ISP業界の共通課題は、ここ数年間増加し続けるインターネット動画などの通信量に比例して売上原価が増加し、結果として営業利益を押し下げる傾向となっておりました。当社はこの原価構造の課題を解決するため、NTT東西のフレッツ網(NGN)と直接接続し、シンプルにインターネット接続が出来るネイティブ方式でのIPv6接続サービスを提供することで通信トラフィックが増加する中でも高い品質と収益性の確保に努めております。IPv6接続サービスを提供する電気通信事業者は、2021年5月末時点で当社を含め9社となりました。NTT東西の仕様により最大16社に制限されております。従来から利用されているトンネル方式でのIPv4接続サービスを提供する電気通信事業者は国内で百社を超える企業が提供している状況であり、当社はIPv6接続サービスを用いた「接続料金」、「通信の安定性」、「通信の速度」を他社との差別化要因とし事業の拡大に取り組んでまいります。
ISP事業における会員獲得の方針としては、当社はB2B2Xとなる法人顧客を主たるターゲットとして事業活動を行っております。背景として、当社が販売するNTT東西の光コラボレーションモデルについては、NTTドコモやソフトバンク等の携帯キャリアが移動通信と固定通信をセット販売することに注力している状況が続いており、個人向け会員獲得については獲得効率が悪化する傾向にあると考えております。そこで、当社は法人顧客向けに「接続料金」、「通信の安定性」、「通信の速度」に加え、固定IPアドレス等の付加価値サービスや業務オペレーションの効率化を提供する事で会員が得られる価値を高める戦略に取り組んでおります。また、当社は経営規模が比較的小さな事業者様との契約数を積み上げることを意識しており、競合他社とのサービス比較や料金比較などの競争を避けながら高い利益率を確保することを目指しております。
③ 教育業界
教育業界においては、文部科学省が推し進める教育のICT化や教育の質保証への取り組みが重要視されております。当社教育支援サービス「manaba」を利活用する大学の声を丁寧に拾い上げ、教育業界を支える社会的インフラとしてサービス品質の維持をしてまいります。
文部科学省が実施した令和2年度学校基本調査の結果によると、日本の大学数795大学、学生・大学院生数は約292万人に対して2021年3月末時点での「manaba」を利用する全学導入校数は98校、契約ID数は793千IDという状況にあります。大学が「manaba」を始めとするICTサービスや業務システム等の検討を行う機会は約7年単位と言われており、当社は各大学の検討時期に照準をあてた提案活動を継続して実施しております。
大学をはじめとする教育機関では、2022年3月期は昨年に引き続き、インターネットを利用した授業支援への対応が急務となっております。従来から行われている教室での対面授業に加えてオンライン会議サービスを利用してリアルタイムで学習するライブ授業や、事前に録画した動画や教材を用いて学習するオンデマンド型授業などインターネットを利用した学びの多様化が進行しております。このような状況においてシステム上に蓄積された学生の学修履歴や教員の指導履歴を使うことで、学びをより可視化したいと考える教育機関が増加しております。「manaba」では授業支援システム(ラーニング・マネジメント・システム)とポートフォリオシステムを使うことで、文部科学省が進める「教育の質保証」や「大学IR」の営みを支えるために必要な学修行動ログを集約ならびに分析するためのサービス開発を行っております。「manaba」に蓄積されている70万人を超える学生の学修行動ログの利活用を進めることにより、大学教育への貢献につなげていきたいと考えております。
④ 業績の見通し
2022年3月期の方針は、「ISP・VNE・manaba それぞれの事業で収益増加の道筋を確立する」としました。
売上高については、FTTH接続サービスや高速モバイル接続サービスによる「ASAHIネット」会員数の増加と、「v6 コネクト」における提携事業者増加、「manaba」の導入校増加により増収を見込み、引き続き過去最高売上の更新を目指します。設備投資については、2021年3月期に引き続き収益とサービス品質のバランスを見極めながら計画しております。費用については、サービス品質を維持するための売上原価や設備投資に伴う減価償却費、会員獲得に伴う販売費及び一般管理費の増加を予定しております。当社が対処すべき課題への取り組みを進めるとともに、営業利益は過去最高の水準への回復を目指してまいります。
以上により、売上11,400百万円、営業利益1,790百万円、経常利益1,790百万円、当期純利益1,370百万円を予想しております。
収益認識に関する会計基準を2022年3月期の期首から適用します。この適用により、当社の現状における取引実態を収益認識基準に照らし合わせた結果、当社が通信事業者から仕入れる一部の回線仕入を売上原価として計上しておりましたが、今後は売上高から減額する方式に変更することにしました。この結果、2022年3月期の売上高は780百万円、売上原価は780百万円がそれぞれ減少します。
業績予想に対する新型コロナウイルス感染症の影響は軽微であると認識しており、その理由は下記のとおりです。
当社ISP事業は、月額課金で会員に対しインターネット接続環境を提供する構造となっております。新型コロナウイルス感染症に伴い影響を受ける主な範囲は新規に入会いただく会員数と考えておりますが、当社会員数に対する新規会員数の割合は毎月1%未満であるため売上高への影響は軽微であると見ております。また、教育事業においても顧客である教育機関と年間契約を締結していることから当期への影響は軽微であると考えております。
新型コロナウイルス感染症による直接的な売上高の影響につきましては、昨年に引き続き新しい生活様式に連動したインターネット接続サービスの需要増加を見込みます。一方、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置等による営業機会の損失及び経済活動の停滞による退会が増加する可能性があります。この二つの側面を鑑みた結果、売上高につきましては業績予想への影響は軽微だと考えております。
新型コロナウイルス感染症による直接的な費用の影響につきましては、トラフィックの増加に伴う通信仕入の増加を見込みます。通信仕入はピーク時間帯におけるトラフィックに影響を受ける契約です。NTT東日本及びNTT西日本が開示している資料によるとトラフィックは2021年4月以降は横ばいで推移しておりますが、万が一トラフィックが過度に増加した場合は通信仕入が増加する可能性があります。一方、更なる感染症拡大による外出自粛等が引き起こす営業機会の損失並びに新規会員獲得に連動する販売促進費及び支払手数料が減少する可能性があります。この二つの側面を鑑みた結果、費用についても売上高同様に業績予想への影響は軽微であると考えております。
なお、上記の業績予想は、本資料の発表日現在において入手可能な情報に基づき作成したものであり、実際の業績は今後の様々な要因によって予想値と異なる可能性があります。
(5)事業上及び財務上の対処すべき課題
① 新型コロナウイルス感染症拡大の抑止に向けた当社の対策と事業継続への取り組み
当社は従業員の安全を確保するため、出勤時の混雑を避けるための時差出勤や政府や経済界からの要請に応じて出勤率を30%に抑制する取り組みを進めております。
当社は通信事業者として、社会インフラとして欠かせないインターネット通信サービスを安定して提供し続けることが社会的な責務だと考えております。通信ネットワークの保守やコールセンター機能など重点業務を選定し、チーム交代制など感染抑止の対策と事業継続を両立するための体制を構築しております。
教育機関においては、昨年に引き続き感染症抑止の観点から対面授業の代替として遠隔授業を活用する大学が増加しております。そのため「manaba」の同時利用者の増加に備えた対策を行っております。
新型コロナウイルスにおける事態は刻一刻と変化し、依然として予断を許さない状況ですが、当社従業員の安全の確保を始めとした感染拡大抑止の対策を最大限実行しつつ、当社の社会的責務としてインターネット通信サービスを安定して提供し続ける役目をしっかりと果たしてまいります。
② お客様に満足いただける品質のサービス維持と通信コストの抑制
総務省が公開した2020年11月の集計結果によると契約者あたりのダウンロードトラフィックは前年同期比160.2kbps増(51.8%増)の469.4kbps、1ヵ月当たり154.3GBとなり増加し続けている状況です。
当社はNTT東西のフレッツ網(NGN)と直接接続し、シンプルにインターネット接続が出来るネイティブ方式でのIPv6接続サービスを「ASAHIネット」会員向けに提供することにより、通信トラフィックが増加する中でも高い品質を維持し続けております。第三者機関による顧客満足度評価においては7年連続第1位の評価をいただいております。
売上に対する通信原価についても当初の計画通り売上原価率の上昇を抑えることができております。今後もお客様に対して満足いただけるサービスの提供と利益の増大を図ってまいります。
③ ISP「ASAHIネット」会員の獲得
当社の収益構造は会員からのインターネット接続料収入を基礎としているため会員獲得の増加が収益基盤の向上につながります。
「ASAHIネット」会員数を増加させるためには、当社を利用する新規会員の増加を図る事が課題であります。
FTTH接続サービスにおいては、新規回線敷設または他ISPから当社への乗換を希望する会員に対して効率的な販促施策を行なってまいります。引き続き当社への入会チャネルの強化や法人向け施策など顧客満足度の高い「ASAHIネット」の認知度を向上させることで会員数増加を目指します。特に、NTT東西の光コラボレーションモデルを活用したサービスとしてアクセス回線とISPサービスをセットにした「AsahiNet光」や「ASAHIネットドコモ光」、NTT東西と協力して提供している「ASAHIネット マンション全戸加入プラン」においては、より一層の品質向上が実現できるサービスとして注力をして施策を行います。
モバイル接続サービスにおいては、コンピュータなどの情報・通信機器だけではなく、世の中に存在する様々なモノに通信機能をもたせるIoTやM2Mの市場規模が引き続き増加しており、当社ではこれらの需要に対して先進的なサービスを提供し、お客様の利便性をさらに高めていくことが重要だと考えております。また、在宅勤務等のテレワーク拡大など今後も需要が継続すると考えております。
④ 「v6 コネクト」の拡販
当社はNTT東西のフレッツ網(NGN)と直接接続し、シンプルにインターネット接続が出来るネイティブ方式でのIPv6接続サービスを「v6 コネクト」として他電気通信事業者へローミング提供をしております。
2021年3月末の累計提携事業者数は11社、売上高は842百万円となりました。「v6 コネクト」を利用する顧客は集合住宅向け事業者やISP事業者など電気通信事業者を想定しており、今後は新たな事業領域を開拓する取り組みを進めております。通信トラフィックが継続的に増加する状況下において、電気通信事業者は自社事業を継続するためのサービス品質維持と必要な費用の均衡を保ちたいという需要や、IPv6接続サービスを活用して自社サービスや顧客サポートを作り上げることでビジネス領域や規模の拡大を目指したいという需要に対して「v6 コネクト」の付加価値を高めたサービス開発を行なってまいります。
「v6 コネクト」の売上高は主として基本料金及び従量料金をそれぞれ算定してサービス利用料を定めております。このうち従量料金は利用帯域において「95%タイル値」(※)として測定された最大通信量と基準通信量とを比較衡量して算定されます。最大通信量の測定及び最大通信量に基づいた従量料金の算定には複雑性が伴うため、「v6 コネクト」のサービス利用料が正しく行われず請求機会の逸失や遅れが発生する場合があります。
(※)「95%タイル値」とは、月初から月末までの通信量を当社が定めた一定時間間隔で分割して測定し、分割した各通信量を昇順で並べ替え上位から95%に位置する一意の値を算定します。
⑤ 教育支援サービス「manaba」の拡販
大学などの教育機関でご利用いただいている「manaba」につきましては、今後も教育現場のニーズを取り込み、教育の質を高めるイノベーションに貢献するためのサービス開発を進めてまいります。昨年は遠隔授業を実施するために「manaba」を活用する大学が増加したことにより「manaba」への同時利用数の増加など新しい需要に応えられるようサービスの拡充とサーバ等の設備増強などの対策を検討してまいりました。2021年3月期は文部科学省が進める教育の質保証の営みを支えるために必要な学修行動ログを集約・分析するためのサービス開発や、教育のICT化による大学IRに関連したサービス開発を進めます。このような需要に応えることで「manaba」の付加価値を更に高めていきます。
⑥ ブランドの構築と顧客満足度の維持、向上
2021年度3月期のISP「ASAHIネット」の平均退会率は0.79%と前年比0.05%増加となりましたが、退会率は同業他社と比較し低い水準を維持しております。
今後も退会を抑止し、更に競合各社からの乗り換えを促進していくことが重要であると認識しております。そのためには質の高い会員サービスと安定した接続環境を提供していくことによって、信頼できるブランドを構築し、顧客満足度の維持・向上に努めることを重要な課題としております。
⑦ 情報セキュリティへの取り組み
当社は、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の国際規格であるISO/IEC27000:2013を取得しております。ISMS関連規則等を遵守し、当社が保有する個人情報及び情報資産を適切に管理・運用すると共に、社内での継続的な取り組みを推進してまいります。
また一般社団法人日本情報経済社会推進協会より、個人情報の適切な取り扱いを行う事業者に付与されるプライバシーマークを取得しているほか、インターネット接続サービス安全・安心マーク推進協議会が発行する「安全・安心マーク」使用許諾を得ております。今後も継続的に情報セキュリティや個人情報保護の認識を徹底させる教育を行い、適切な情報管理を行う管理体制を維持・強化していきます。
(1)経営方針
当社の経営の基本方針は、社会基盤として重要な役割を担う先進的で高品質なインターネット接続サービスを適切な価格で安定的に提供することにあります。「接続料金」、「回線の安定性」、「回線の速度」、「サポート」といった基本的な価値の向上を図ることが重要であると考えております。また当社は教育支援サービス「manaba」を自社開発し大学などの教育機関へ提供しております。IT技術の活用によって教育の質を高めるインフラとしての価値の向上に努めてまいります。
(2)経営戦略等
インターネット接続サービスは生活インフラ及び事業インフラとしての役割が益々増大しております。当社は、顧客が求める通信品質を維持しながらオペレーションの更なる向上により顧客の利便性を高めていくことが重要課題であると考えております。また、Wi-Fi、VPN、監視カメラソリューション、教育支援サービスなど、インターネット接続の周辺領域の事業も進めております。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
先進的で高品質なインターネット接続サービスを適切な価格で継続的に提供していくためには、健全な財務基盤の維持が重要であると考えており、ROE及び1株当たり純利益を収益性の指標としております。当社が運営するISP「ASAHIネット」につきましては、会員制ビジネスであることから、インターネット接続契約数の増加を図ることが将来の収益源を確保することにつながっております。こうした観点から「ASAHIネット」のインターネット接続契約数、平均退会率、第三者による顧客満足度調査などを重要な指標としております。他電気通信事業者へIPv6接続サービスをローミング提供する「v6 コネクト」につきましては、提携する電気通信事業者数を重要な指標としております。教育支援サービス「manaba」につきましては、契約ID数に応じた課金体系となっていることから、契約ID数と全学導入校数を重要な指標としております。
(4)経営環境
① 業界動向
通信業界においては、インターネットの果たす役割が日常生活や企業活動において重要な位置づけになっていると考えております。新型コロナウイルス感染症に伴う行動の変化により、通信を伴う非接触機会の拡大や、在宅勤務等のテレワークへの動きなどインターネットを軸とした変化が起きております。従来から増加しているインターネット上で視聴される動画配信サービスやオンラインゲームに加え、オンラインライブやオンラインイベント開催などインターネット上での活動は今後も増加すると考えております。加えて企業活動におけるクラウド化の動きも活発化することにより我が国のブロードバンド契約者の1契約あたりのダウンロードトラフィックは前年同期末比160.2kbps増(51.8%増)の469.4kbps、1ヵ月当たり154.3GBとなり引き続き増加傾向にあります。デジタル庁の設立趣旨にあるよう今後は行政のデジタル化、教育のデジタル化などポストコロナの新しい社会が推進される中で、今後もISP業界が重要な役割を担っていくものと想定しております。
② ISP業界
ISP(インターネット・サービス・プロバイダ)業界においては、FTTH接続サービスの利用者数は引き続き増加を見込みます。世帯数の伸びは緩やかになることが見込まれますが、法人によるオフィス需要やテレワークの拡大等により全体としては増加傾向が続くと考えております。トラフィックも増加を見込みます。総務省の統計調査によると2020年は1契約当たりのダウンロードトラフィックは前年同期末比で年51.8%増加の伸びを示しており、同様の伸びが今後も続くと考えております。動画配信サービスやオンラインゲームに加え、オンラインライブやオンラインイベント開催などインターネット上での活動は今後も増加すると考えております。MVNO業界においてはIoT/M2Mの利用者が増加することに加え、通信規格5Gによる新たな市場拡大が期待されています。このような市場背景を踏まえ、モノやコトにインターネットが深く関与する市場の流れはより拡大傾向にあると想定しております。
当社ISP事業の事業構造は事業系統図に記載のとおり、売上は会員に対するインターネット接続機能を月額課金で計上するのに対し、売上原価は通信費仕入と通信を処理する通信機器等の設備投資が主たる原価であります。ISP業界の共通課題は、ここ数年間増加し続けるインターネット動画などの通信量に比例して売上原価が増加し、結果として営業利益を押し下げる傾向となっておりました。当社はこの原価構造の課題を解決するため、NTT東西のフレッツ網(NGN)と直接接続し、シンプルにインターネット接続が出来るネイティブ方式でのIPv6接続サービスを提供することで通信トラフィックが増加する中でも高い品質と収益性の確保に努めております。IPv6接続サービスを提供する電気通信事業者は、2021年5月末時点で当社を含め9社となりました。NTT東西の仕様により最大16社に制限されております。従来から利用されているトンネル方式でのIPv4接続サービスを提供する電気通信事業者は国内で百社を超える企業が提供している状況であり、当社はIPv6接続サービスを用いた「接続料金」、「通信の安定性」、「通信の速度」を他社との差別化要因とし事業の拡大に取り組んでまいります。
ISP事業における会員獲得の方針としては、当社はB2B2Xとなる法人顧客を主たるターゲットとして事業活動を行っております。背景として、当社が販売するNTT東西の光コラボレーションモデルについては、NTTドコモやソフトバンク等の携帯キャリアが移動通信と固定通信をセット販売することに注力している状況が続いており、個人向け会員獲得については獲得効率が悪化する傾向にあると考えております。そこで、当社は法人顧客向けに「接続料金」、「通信の安定性」、「通信の速度」に加え、固定IPアドレス等の付加価値サービスや業務オペレーションの効率化を提供する事で会員が得られる価値を高める戦略に取り組んでおります。また、当社は経営規模が比較的小さな事業者様との契約数を積み上げることを意識しており、競合他社とのサービス比較や料金比較などの競争を避けながら高い利益率を確保することを目指しております。
③ 教育業界
教育業界においては、文部科学省が推し進める教育のICT化や教育の質保証への取り組みが重要視されております。当社教育支援サービス「manaba」を利活用する大学の声を丁寧に拾い上げ、教育業界を支える社会的インフラとしてサービス品質の維持をしてまいります。
文部科学省が実施した令和2年度学校基本調査の結果によると、日本の大学数795大学、学生・大学院生数は約292万人に対して2021年3月末時点での「manaba」を利用する全学導入校数は98校、契約ID数は793千IDという状況にあります。大学が「manaba」を始めとするICTサービスや業務システム等の検討を行う機会は約7年単位と言われており、当社は各大学の検討時期に照準をあてた提案活動を継続して実施しております。
大学をはじめとする教育機関では、2022年3月期は昨年に引き続き、インターネットを利用した授業支援への対応が急務となっております。従来から行われている教室での対面授業に加えてオンライン会議サービスを利用してリアルタイムで学習するライブ授業や、事前に録画した動画や教材を用いて学習するオンデマンド型授業などインターネットを利用した学びの多様化が進行しております。このような状況においてシステム上に蓄積された学生の学修履歴や教員の指導履歴を使うことで、学びをより可視化したいと考える教育機関が増加しております。「manaba」では授業支援システム(ラーニング・マネジメント・システム)とポートフォリオシステムを使うことで、文部科学省が進める「教育の質保証」や「大学IR」の営みを支えるために必要な学修行動ログを集約ならびに分析するためのサービス開発を行っております。「manaba」に蓄積されている70万人を超える学生の学修行動ログの利活用を進めることにより、大学教育への貢献につなげていきたいと考えております。
④ 業績の見通し
2022年3月期の方針は、「ISP・VNE・manaba それぞれの事業で収益増加の道筋を確立する」としました。
売上高については、FTTH接続サービスや高速モバイル接続サービスによる「ASAHIネット」会員数の増加と、「v6 コネクト」における提携事業者増加、「manaba」の導入校増加により増収を見込み、引き続き過去最高売上の更新を目指します。設備投資については、2021年3月期に引き続き収益とサービス品質のバランスを見極めながら計画しております。費用については、サービス品質を維持するための売上原価や設備投資に伴う減価償却費、会員獲得に伴う販売費及び一般管理費の増加を予定しております。当社が対処すべき課題への取り組みを進めるとともに、営業利益は過去最高の水準への回復を目指してまいります。
以上により、売上11,400百万円、営業利益1,790百万円、経常利益1,790百万円、当期純利益1,370百万円を予想しております。
収益認識に関する会計基準を2022年3月期の期首から適用します。この適用により、当社の現状における取引実態を収益認識基準に照らし合わせた結果、当社が通信事業者から仕入れる一部の回線仕入を売上原価として計上しておりましたが、今後は売上高から減額する方式に変更することにしました。この結果、2022年3月期の売上高は780百万円、売上原価は780百万円がそれぞれ減少します。
業績予想に対する新型コロナウイルス感染症の影響は軽微であると認識しており、その理由は下記のとおりです。
当社ISP事業は、月額課金で会員に対しインターネット接続環境を提供する構造となっております。新型コロナウイルス感染症に伴い影響を受ける主な範囲は新規に入会いただく会員数と考えておりますが、当社会員数に対する新規会員数の割合は毎月1%未満であるため売上高への影響は軽微であると見ております。また、教育事業においても顧客である教育機関と年間契約を締結していることから当期への影響は軽微であると考えております。
新型コロナウイルス感染症による直接的な売上高の影響につきましては、昨年に引き続き新しい生活様式に連動したインターネット接続サービスの需要増加を見込みます。一方、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置等による営業機会の損失及び経済活動の停滞による退会が増加する可能性があります。この二つの側面を鑑みた結果、売上高につきましては業績予想への影響は軽微だと考えております。
新型コロナウイルス感染症による直接的な費用の影響につきましては、トラフィックの増加に伴う通信仕入の増加を見込みます。通信仕入はピーク時間帯におけるトラフィックに影響を受ける契約です。NTT東日本及びNTT西日本が開示している資料によるとトラフィックは2021年4月以降は横ばいで推移しておりますが、万が一トラフィックが過度に増加した場合は通信仕入が増加する可能性があります。一方、更なる感染症拡大による外出自粛等が引き起こす営業機会の損失並びに新規会員獲得に連動する販売促進費及び支払手数料が減少する可能性があります。この二つの側面を鑑みた結果、費用についても売上高同様に業績予想への影響は軽微であると考えております。
なお、上記の業績予想は、本資料の発表日現在において入手可能な情報に基づき作成したものであり、実際の業績は今後の様々な要因によって予想値と異なる可能性があります。
(5)事業上及び財務上の対処すべき課題
① 新型コロナウイルス感染症拡大の抑止に向けた当社の対策と事業継続への取り組み
当社は従業員の安全を確保するため、出勤時の混雑を避けるための時差出勤や政府や経済界からの要請に応じて出勤率を30%に抑制する取り組みを進めております。
当社は通信事業者として、社会インフラとして欠かせないインターネット通信サービスを安定して提供し続けることが社会的な責務だと考えております。通信ネットワークの保守やコールセンター機能など重点業務を選定し、チーム交代制など感染抑止の対策と事業継続を両立するための体制を構築しております。
教育機関においては、昨年に引き続き感染症抑止の観点から対面授業の代替として遠隔授業を活用する大学が増加しております。そのため「manaba」の同時利用者の増加に備えた対策を行っております。
新型コロナウイルスにおける事態は刻一刻と変化し、依然として予断を許さない状況ですが、当社従業員の安全の確保を始めとした感染拡大抑止の対策を最大限実行しつつ、当社の社会的責務としてインターネット通信サービスを安定して提供し続ける役目をしっかりと果たしてまいります。
② お客様に満足いただける品質のサービス維持と通信コストの抑制
総務省が公開した2020年11月の集計結果によると契約者あたりのダウンロードトラフィックは前年同期比160.2kbps増(51.8%増)の469.4kbps、1ヵ月当たり154.3GBとなり増加し続けている状況です。
当社はNTT東西のフレッツ網(NGN)と直接接続し、シンプルにインターネット接続が出来るネイティブ方式でのIPv6接続サービスを「ASAHIネット」会員向けに提供することにより、通信トラフィックが増加する中でも高い品質を維持し続けております。第三者機関による顧客満足度評価においては7年連続第1位の評価をいただいております。
売上に対する通信原価についても当初の計画通り売上原価率の上昇を抑えることができております。今後もお客様に対して満足いただけるサービスの提供と利益の増大を図ってまいります。
③ ISP「ASAHIネット」会員の獲得
当社の収益構造は会員からのインターネット接続料収入を基礎としているため会員獲得の増加が収益基盤の向上につながります。
「ASAHIネット」会員数を増加させるためには、当社を利用する新規会員の増加を図る事が課題であります。
FTTH接続サービスにおいては、新規回線敷設または他ISPから当社への乗換を希望する会員に対して効率的な販促施策を行なってまいります。引き続き当社への入会チャネルの強化や法人向け施策など顧客満足度の高い「ASAHIネット」の認知度を向上させることで会員数増加を目指します。特に、NTT東西の光コラボレーションモデルを活用したサービスとしてアクセス回線とISPサービスをセットにした「AsahiNet光」や「ASAHIネットドコモ光」、NTT東西と協力して提供している「ASAHIネット マンション全戸加入プラン」においては、より一層の品質向上が実現できるサービスとして注力をして施策を行います。
モバイル接続サービスにおいては、コンピュータなどの情報・通信機器だけではなく、世の中に存在する様々なモノに通信機能をもたせるIoTやM2Mの市場規模が引き続き増加しており、当社ではこれらの需要に対して先進的なサービスを提供し、お客様の利便性をさらに高めていくことが重要だと考えております。また、在宅勤務等のテレワーク拡大など今後も需要が継続すると考えております。
④ 「v6 コネクト」の拡販
当社はNTT東西のフレッツ網(NGN)と直接接続し、シンプルにインターネット接続が出来るネイティブ方式でのIPv6接続サービスを「v6 コネクト」として他電気通信事業者へローミング提供をしております。
2021年3月末の累計提携事業者数は11社、売上高は842百万円となりました。「v6 コネクト」を利用する顧客は集合住宅向け事業者やISP事業者など電気通信事業者を想定しており、今後は新たな事業領域を開拓する取り組みを進めております。通信トラフィックが継続的に増加する状況下において、電気通信事業者は自社事業を継続するためのサービス品質維持と必要な費用の均衡を保ちたいという需要や、IPv6接続サービスを活用して自社サービスや顧客サポートを作り上げることでビジネス領域や規模の拡大を目指したいという需要に対して「v6 コネクト」の付加価値を高めたサービス開発を行なってまいります。
「v6 コネクト」の売上高は主として基本料金及び従量料金をそれぞれ算定してサービス利用料を定めております。このうち従量料金は利用帯域において「95%タイル値」(※)として測定された最大通信量と基準通信量とを比較衡量して算定されます。最大通信量の測定及び最大通信量に基づいた従量料金の算定には複雑性が伴うため、「v6 コネクト」のサービス利用料が正しく行われず請求機会の逸失や遅れが発生する場合があります。
(※)「95%タイル値」とは、月初から月末までの通信量を当社が定めた一定時間間隔で分割して測定し、分割した各通信量を昇順で並べ替え上位から95%に位置する一意の値を算定します。
⑤ 教育支援サービス「manaba」の拡販
大学などの教育機関でご利用いただいている「manaba」につきましては、今後も教育現場のニーズを取り込み、教育の質を高めるイノベーションに貢献するためのサービス開発を進めてまいります。昨年は遠隔授業を実施するために「manaba」を活用する大学が増加したことにより「manaba」への同時利用数の増加など新しい需要に応えられるようサービスの拡充とサーバ等の設備増強などの対策を検討してまいりました。2021年3月期は文部科学省が進める教育の質保証の営みを支えるために必要な学修行動ログを集約・分析するためのサービス開発や、教育のICT化による大学IRに関連したサービス開発を進めます。このような需要に応えることで「manaba」の付加価値を更に高めていきます。
⑥ ブランドの構築と顧客満足度の維持、向上
2021年度3月期のISP「ASAHIネット」の平均退会率は0.79%と前年比0.05%増加となりましたが、退会率は同業他社と比較し低い水準を維持しております。
今後も退会を抑止し、更に競合各社からの乗り換えを促進していくことが重要であると認識しております。そのためには質の高い会員サービスと安定した接続環境を提供していくことによって、信頼できるブランドを構築し、顧客満足度の維持・向上に努めることを重要な課題としております。
⑦ 情報セキュリティへの取り組み
当社は、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の国際規格であるISO/IEC27000:2013を取得しております。ISMS関連規則等を遵守し、当社が保有する個人情報及び情報資産を適切に管理・運用すると共に、社内での継続的な取り組みを推進してまいります。
また一般社団法人日本情報経済社会推進協会より、個人情報の適切な取り扱いを行う事業者に付与されるプライバシーマークを取得しているほか、インターネット接続サービス安全・安心マーク推進協議会が発行する「安全・安心マーク」使用許諾を得ております。今後も継続的に情報セキュリティや個人情報保護の認識を徹底させる教育を行い、適切な情報管理を行う管理体制を維持・強化していきます。