有価証券報告書-第86期(2023/01/01-2023/12/31)

【提出】
2024/03/29 11:59
【資料】
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【項目】
142項目
(3)リスク管理
特に重要性が高いと評価した気候関連リスク・機会は、IPCCの温暖化により、今後発生する影響を示す4つのシナリオ(RCP8.5、RCP6.0、RCP4.5、RCP2.6)のうち、物理シナリオはRCP4.5シナリオ。また、移行シナリオとしては、IEA ASPシナリオおよびNEZシナリオとし、以下のような事業環境を想定しています。4℃シナリオ(RCP4.5シナリオ)は、現在の各国政府の対応が継続する前提あり、移行リスクが即時に顕在化する可能性は低いものの、中長期的には温暖化の進行により、物理的リスクが高まると予測されます。一方で、2℃シナリオ(RCP2.6シナリオ)は急速に低炭素社会に移行するため、移行リスクとしては短期的に低炭素化への対応コストが膨らむ一方、将来的な物理的リスクを低下すると予測されます。また、4℃シナリオより影響は少ないものの、都市部での豪雨により内水氾濫によって保有資産が被災する可能性がありますが、営業が出来ない深刻な状況までには至らないと考えます。
1)宿泊事業
当社の主力事業である宿泊事業はホテル不動産により収益が成り立つことから、不動産に対する影響が大きいと考えております。
・4℃シナリオの概況
・各国政府目標に向けて進むが低炭素化に向けた動きは一部に限定、GHG排出削減へのインセンティブは少ない
・省エネ技術の進展は一部にとどまる
・大型台風や内水氾濫による被災例が増加するにつれ、ホテルの災害対応が必要
・平均気温の上昇や降水量増加により資産の劣化が早まり、ビルのエネルギー効率も悪化。水害のリスクが高いホテルへの投資は避け、水害のリスクの高いホテルを売却し、資産の入れ替えが進む。古い不動産より、新しい不動産へ、積極的にポートフォリオを入れ替える検討も必要
・宿泊運営会社への影響
・現状の炭素税額が維持されるが、光熱費単価は下がる要因が無い場合は、高止まり
・入居物件に対する環境性能の関心は低く、エコな宿泊を嗜好するホテル利用者は増加しない
・平均気温が上昇し、猛暑日が増え、冷房運転の強化や設備増強により電力使用量が増える
・水害の被災による営業日数の減少、利用者の減少
・不動産のオーナー(信託受益権含む)/金融機関への影響
・低炭素化は投資判断に大きくは影響しない
・水害の被災リスクの高い物件に対する運営費用がかさむ
・2℃シナリオの概況
・高額な炭素税が設定され、所有施設で使用するエネルギー費用が上昇する
・自社のGHG排出削減コストの低下の観点から、グリーンビルディングを指向する
・再生エネルギーの価格も上がる一方で、排出権取引が増える
・4℃シナリオより影響は少ないものの、都市部の豪雨により被災をする可能性がある
・ZEB/ZEHの拡大と所有物件の省エネ改修に関連する助成金が拡大する
・宿泊運営会社への影響
・高額な炭素税が設定され燃料費が上昇する。再生エネルギー需要も増え、エネルギー価格も高止まり
・一方で、ビルの省エネ化対応が進み、エネルギー効率が向上する
・エコ志向のお客様が増え1泊あたりのCO2の排出量により宿泊先が選別され、ゼロCO2旅行の需要が増える
・不動産のオーナー(信託受益権含む)/金融機関への影響
・物件の環境性能(認証ラベルの有無)が投資判断項目としての重要度を増す
・GHG排出量削減等のトラックレコードが投資判断項目として重要度を増す
・古い不動産の省エネ改修に対する費用、投資が増える。投資の回収見込みが立たない古い不動産を売却する
物理シナリオ(RCP4.5シナリオ)では1.1~2.6℃世界の平均気温が上昇するとされ、また、世界の平均海面+0.32~0.63m、日本の降水量は+8.0~16.0%と海面上昇と降水量が増加することにより外水氾濫のリスクが高まる。GHG増加による「地球温暖化」が進み、直接的な平均気温上昇による海面上昇や台風の大型化などによる洪水、高潮などの大型自然災害だけでなく、都心部のヒートアイラインド化やエルニーニョ/ラニーニャ現象の大気・海洋変動の活発化等により、ゲリラ豪雨、線状降水帯による豪雨の増加による自然災害の激甚化や発生頻度の上昇に伴い、当社の事業を運営する施設が被災することにより、営業休止や、事業資産の被災など財務的影響を受ける可能性があります。特に、内水氾濫による浸水リスクは、シナリオの選択を問わず、日本の都心部や地域にてすでに発生しているものであり、その予測は困難です。そのような状況の中、運営受託による運営ホテルを含む自社グループは、施設のある場所には、どのような災害の影響があるかハザードマップ上で想定される浸水深さの再評価を行っております。また、気候変動に限らず、一部ホテルにおいては、自治体との間で災害時の協力協定を締結するなど、自然災害とその対策について協力・協議をしております。
次に、移行リスクについては、平均気温が1年を通じて全体的に暖かくなり、夏場の猛暑日が増えることが予測され、三菱総研株式会社が2012年に丸善プラネットから発刊した「気候変動リスクに備える」によれば、2011年に東京電力が公表した資料を基に、夏場の平均気温が1度上昇することにより0.75%の電量消費量が増える予測もあります。エネルギー効率の良い機器や、AI等を使ったエネルギー効率向上のインフラ設備も開発され、一概にその予測値通りの電力消費表が増加するとは必ずしも言えないものの、全体的にエネルギー使用量の増加が見込まれます。また、政府により炭素税(地球温暖化対策のための税)の設定、本格的なカーボンプライシングの導入も検討されており、原発の再稼働も見通せないことから、特に2度シナリオにおいて、エネルギー費用は徐々に増加方向にあると考えております。そして、気候変動に伴い、デング熱、マラリアの感染リスクが高まるほか、新たに二類感染症が蔓延するリスクがあります。そのようなケースは、外国からの訪日外国時旅行者も途絶え、新型コロナウイルスと同様に、最低限の国内移動者のホテル利用となれば、売上高が大きく減少し、激甚な財務損失を招く可能性もあります。
事業インパクトが自社のP/LやB/Sに与える項目の整理と試算式
・売上高への影響(4℃シナリオ/2℃シナリオ)
・異常気象の激甚化による収入減
過年度の災害による収入減(円/年)×過年度の災害営業制限継続日を基準とした変化率(%)
・豪雨等の頻度の変化による避難需要の収入増
避難需要頻度×稼働率×部屋数×平均客単価(ADR)×避難需要時の単価上昇率
・二類感染症の増加により収入減
過年度のコロナ収入減(円/年)×過年度の行動制限継続日を基準とした行動制限日の変化率(%)
・費用への影響(4℃シナリオ/2℃シナリオ)
・炭素税の増減による費用増減
炭素価格(円/tCo2)×Scope1,2排出量
・エネルギー価格の増減による費用増減
平均気温の変化量×燃料使用量(L/年)×燃料価格変化率(%)
燃料使用量(L/年)×燃料価格変化率(%)
一次エネルギー消費基準に準じる
・純利益への影響(4℃シナリオ/2℃シナリオ)
・洪水被害
想定浸水深×直接・間接洪水被害
過年度の洪水被害額(円/年)×洪水に頻度増加による被害額の増加率(%)
異常気象の激甚化被害増
今後、各リスクの事業インパクトが自社のP/LやB/Sに与える項目の整理と試算式に関し、網羅的な分析・検討を行いその解決策および行動計画を策定してまいります。
2)霊園事業
・4度シナリオ
霊園事業
・マレーシアでの平均気温の上昇により都市部の温暖化が進み、死亡率が増加する
・墓地需要が高まり大規模な区画の墓地よりも、納骨堂など小規模の需要が高まる
・2度シナリオ
霊園事業
・CO2の排出観点から、現地政府からの火葬が制限される
・大規模な森林開発に制限が掛けられる
・CO2の排出権と墓地を組み合わせたゼロCO2墓地の商品が増える
・炭素税が増加する
マレーシアにおける当社グループの霊園事業は、マレーシアの首都クアラルンプールの中心部から北西に約23km離れたセランゴール州ラワン地区にあります。同州は実体経済に支えられた中間層が多く、経済活動が活発な地域です。この霊園事業は、首都近郊の森林地帯において約250エーカーの開発許可を得て行われており、その約30%が開発されています。また、この開発は、森林再生によって周囲の自然の景観美を保つように管理されており、水源の確保、開発区域内の河川の整備など、周辺の美しい自然を保全する形で開発が進められてきました。
近年は伝統的な土葬だけでなく、価格的にも手頃な納骨堂やニッチ(特別に設けられた恒久的な窪み)に遺骨を安置する方式も選ばれています。火葬されたご遺骨は、一定の区画の土地上により多く安置されます。これは、従来の地域の宗教観に基づく土葬ではなく、火葬が選ばれるようになってきたことを示しており、このことにより土葬用区画向けに森林地帯を大規模に造成するだけではなく、納骨堂やニッチを建設することで土地の効率的な利用につながり、開発区画をより適切な管理をもって森林開発を進めることとなり、GHG排出量を削減する環境にも優しい開発も可能になっていく可能性があると考えております。また、現地とのコミュニケーションを密にすることで、開発上や運営上にて想定されるリスクをコントロールし業績向上およびCO2削減への貢献に努めてまいります。
・事業インパクトが自社のP/LやB/Sに与える項目の整理と試算式
売上高への影響(4℃シナリオ/2℃シナリオ)
・都市部の温暖化の進行により霊園需要の増加
温暖化の温暖上昇率×死亡増加率×競合他社とのシェア×基準年利用者数×平均単価
・費用への影響(4℃シナリオ/2℃シナリオ)
・炭素税の増減による費用増減
炭素価格(円/tco2)×Scope1,2排出量
・エネルギー価格の増減による費用増減
平均気温の変化量×燃料使用量(L/年)×燃料価格変化率(%)
燃料使用量(L/年)×燃料価格変化率(%)
一次エネルギー消費基準に準じる
・純利益への影響(4℃シナリオ/2℃シナリオ)
・洪水被害
想定浸水深*直接・間接洪水被害
過年度の洪水被害額(円/年)×洪水に頻度増加による被害額の増加率(%)
異常気象の激甚化被害増
今後、各リスクの事業インパクトが自社のP/LやB/Sに与える項目の整理と試算式に関し、網羅的な分析・検討を行いその解決策および行動計画を策定してまいります。
3) 当社事業におけるリスクと機会
リスク項目当社事業評価リスク機会
移行リスク法規制炭素税の増額
東京都ゼロエミ目標
宿泊
その他投資
炭素税の増加によりコスト増加不動産の省エネ化助成金を受給
技術再生エネルギーを購入しない・ZEB化、技術進歩に遅れる宿泊
その他投資
エネルギーコスト増加不動産の省エネ化助成金を受給
市場原油価格の変動宿泊
その他投資
エネルギーコスト増加エネルギーコスト減少
市場感染症の増加
死亡者数の増加
宿泊
その他投資
特定感染症が増えると移動・宿泊制限霊園需要が高まる
評判環境配慮商品を求める嗜好が強まる宿泊
その他投資
当社の環境配慮商品が見劣り競合負環境配慮商品がヒット
物理リスク急性高潮、台風の大型化、外水氾濫宿泊
その他投資
地下・地上階に浸水宿泊施設への避難所需要増加
慣性内水氾濫
都市部の熱帯化
死亡者数の増加
宿泊
その他投資
エネルギーコスト増加、旅行先の変更熱帯化、特定感染症の増加による霊園需要増加

4)当社事業における選択シナリオと指標
20302050出所/シナリオ
2℃4℃2℃4℃
移行リスク法規制炭素税の増額
東京都ゼロエミ目標
炭素価格:135USD/tCO2,
東京都
エネルギー消費量を35%削減(2000年度比)
炭素価格:90USD/tCO2(EU)炭素価格:200USD/tCO2,
東京都
エネルギー消費量を35%減少(2002~2007年対比)
炭素価格:113USD/tCO2(EU)RCP2.6
IEA WEO ASP(2℃)
RCP 4.5
IEA WEO STEPS(4℃)
東京都
技術再生エネルギーを購入しない・ZEB化、技術進歩に遅れる--2050年に住宅・建築物のストック平均でZEH4・ZEB5基準の水準の省エネルギー性能が確保されていることを目指す。-経済産業省 資源エネルギー庁第6次エネルギー基本計画
市場原油価格の変動64USD/Barrel82USD/Barrel60USD/Barrel95USD/BarrelRCP2.6
IEA WEO ASP(2℃)
RCP 4.5
IEA WEO STEPS(4℃)
市場平均気温の上昇
感染症の増加
死亡者数の増加
日本 平均気温:0.76℃日本 平均気温:1.04℃日本 平均気温:1.08℃
地球が産業革命前から2度上昇した場合、高温による年間死者数が2050年までに370%増加
日本 平均気温:2.13℃環境省 地球温暖化と感染症-いま、何がわかっているのか?
世界銀行“Climate Change Knowledge Portal”日本-平均予測の専門家|気候変動ナレッジポータ(worldbank.org) 2023年2月更新
評判環境配慮商品を求める嗜好が強まる炭素価格:135USD/tCO2,炭素価格:90USD/tCO2(EU)炭素価格:200USD/tCO2,炭素価格:113USD/tCO2(EU)RCP2.6
IEA WEO ASP(2℃)
RCP 4.5
IEA WEO STEPS(4℃)
物理リスク急性高潮、台風の大型化、外水氾濫洪水発生確率約2倍
降雨量
約1.1倍
流量
約1.2倍
洪水発生確率約4倍
降雨量
約1.3倍
流量
約1.4倍
洪水発生確率約2倍
降雨量
1.1倍
流量
約1.2倍
洪水発生確率約4倍
降雨量
約1.3倍
流量
約1.4倍
国交省 気候変動を踏まえた治水計画に係る技術検討会「気候変動を踏また治水契約の在り方 提言」令和3年4月改定
環境省「気候変動閉胸評価報告書」
慣性内水氾濫
都市部の熱帯化
死亡者数の増加
日本 平均気温:0.76℃
平均気温1度上昇につき、年間消費電力料0.75%増加
日本 平均気温:1.04℃
平均気温1度上昇につき、年間消費電力料0.75%増加
日本 平均気温:1.08℃
日本 平均気温1度上昇につき、年間消費電力料0.75%増加
地球が産業革命前から2度上昇した場合、高温による年間死者数が2050年までに370%増加
日本 平均気温:2.13℃
平均気温1度上昇につき、年間消費電力料0.75%増加
世界銀行“Climate Change Knowledge Portal”日本-平均予測の専門家|気候変動ナレッジポータ(worldbank.org) 2023年2月更新
Phronesis08 2-044:エネルギー気候変動リスクにそなえる 三菱総合研究所編著 丸善プラネット2012
The 2023 report of the Lancet Countdown on health and climate change: the imperative for a health-centered response in a world facing irreversible harms’November 14, 2023、The Lancet

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