有価証券報告書-第32期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)
当連結会計年度における当社企業グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 経営成績
当社企業グループは、事業機会を着実に取り込み、持続的な成長と企業価値の向上を果たすため、2016年4月「デジタル変革をリードする」ことを標榜した5ヶ年のビジョン「CRESCO Ambition 2020」を掲げ、当連結会計年度は、4年目に当たります。
2019年度の経営方針
・「CRESCO Ambition 2020」に沿った経営
・サービス品質の強化による質的成長
・リソース及び技術戦略の強化による量的成長
・M&Aによる成長スピードの加速
当連結会計年度(2019年4月1日~2020年3月31日)の経営環境は、「デジタル変革」が下支えとなり、創業以来培ってきた3つのコア技術(アプリケーション開発技術、ITインフラ構築技術、組込み技術)に先端技術(AI、クラウド等)を加えた幅広い事業領域を有する当社企業グループにとって、優位性を発揮できる機会となっており、通期の売上高及び営業利益は堅調に推移いたしました。
しかしながら、第4四半期に入り、新型コロナウイルス禍の影響から先行き不透明感が色濃い状況となり、世界的な感染者数の増加は、2020年開催予定の東京オリンピックの延期や旅行・外出の自粛といった事態をもたらしました。東京オリンピックに関連するインフラ整備やインバウンド需要の拡大は、IT投資を後押ししていた一面もあり、当社企業グループの受注にも、一部影響が出ております。併せて、新型コロナウイルス禍に起因する世界同時株安は、当社企業グループの資金運用にも影響を及ぼし、経常利益及び当期純利益の低下をもたらしました。
当連結会計年度の主な取り組みとして、経営方針に則り、品質管理体制及びプロジェクト監査の強化をはじめ、市場の変化に即した顧客ポートフォリオ及び事業体制の見直しを図るとともに、新規顧客の開拓、先端技術(AI・クラウド等)を取り込んだ新規事業・サービスの開発に注力いたしました。また、開発体制の拡充(ニアショア、オフショア)や選別受注、営業方針の見直し等を通じて、リソースに応じた適正な受注量の確保と顧客満足度の更なる向上に努めてまいりました。その他、エバンジェリスト活動の一環として、技術研究の成果発表や社外向けセミナーなどを通じて、各種サービス・ソリューションのプロモーション活動を推進いたしました。一方、需給環境に関わらず、「デジタル変革」の進展に伴う人材の不足感は否めず、採用活動(新卒・経験者)や生産性改善活動(自社向けのイノベーション活動)にも注力いたしました。
資本政策関係では、M&Aや資本・業務提携など、積極的な事業投資を使途とする資金の調達を目的とした「自己株式を活用した第三者割当による第7回新株予約権の発行」、投資家層の拡大と市場流動性の向上を目的とした「1:2の株式分割(効力発生日:2020年2月1日)」を実施いたしました。
なお、当連結会計年度の主なトピックスは、以下のとおりです。
2019年4月:
・「働き方改革」への取組みを発表
・当社による連結子会社であるクレスコ九州㈱の吸収合併を完了
・㈱ニデックが、当社の医療画像解析に関する研究・開発の成果を同社の「画像ファイリングソフトウェア NAVIS(R)-EX」に採用
・学術雑誌「Journal of Ophthalmology(Hindawi)」が、当社社員による「OCTと機械学習を活用した網脈絡膜疾患の自動分類」の研究論文を掲載
・株主総会の議決権行使の電子化及び「機関投資家向け議決権電子化プラットフォーム」への参加を発表
2019年5月:
・クレスコ北陸㈱が、一般社団法人石川県情報システム工業会主催の「e-messe kanazawa 2019」に出展
・譲渡制限付株式報酬制度の導入を発表
・配当方針の変更を発表
・ソフトバンク㈱が運営する「AIエコシステムプログラム」で「パートナー・オブ・ザ・イヤー」を受賞
2019年6月:
・自己株式の取得及び自己株式の公開買付けを発表
2019年7月:
・㈱アイオスによる同社子会社イーテクノ㈱の統合を発表
・米国における「機械学習を利用した疾患分類の精度を向上させる手法」に関する特許を取得
・自己株式の公開買付けによる取得を終了
2019年8月:
・クレスコ北陸㈱が、一般社団法人大日本水産会主催の「第21回ジャパン・インターナショナル・シーフードショー」に出展
・ベトナムにおける現地法人(海外子会社クレスコベトナム)の設立を発表
2019年9月:
・電子情報通信学会「コンピュータビジョンとイメージメディア研究会」で、当社社員が講演
・子育てサポート企業として「くるみん」(4期連続)及び「プラチナくるみん」に認定
・「健康経営への取り組み」を発表
2019年10月:
・クレスコベトナムが営業を開始
・「セキュリティ脆弱性診断サービス」の提供を開始
・学術誌「BMJ Open (BMJ)」が、北里大学、宮田眼科病院とクレスコ技術研究所による「角膜形状解析画像の機械学習を用いた分類」に関する研究論文を掲載
・「Creage アカウントプラス」の提供を開始
2019年11月:
・「AWS Well-Architectedパートナープログラム認定」を取得
・中間配当の決定及び年間・期末配当予想の修正を発表
・㈱東芝と東芝デジタルソリューションズ㈱を中心メンバーとする、ユーザーファーストのIoTサービスのオープンな共創を目指す「ifLink オープンコミュニティ」への賛同を表明
・プロジェクトマネジメント学会「ET & IoT Technology 2019」で当社社員が講演
2019年12月:
・当社IRサイトが大和IR「2019年インターネットIR表彰」で「優良賞」を受賞
・当社IRサイトがモーニングスター「Gomez IRサイト総合ランキング 2019」で「IRサイト優秀企業:金賞」を受賞
・当社IRサイトが日興アイ・アール「2019年度 全上場企業ホームページ充実度ランキング調査」の総合ランキングで「最優秀サイト」を受賞
2020年1月:
・自己株式を活用した第三者割当による第7回新株予約権(行使価額修正条項及び行使許可条項付)を発行
・株式分割及び株式分割に伴う定款の一部変更並びに配当予想の修正を発表
2020年2月:
・当社が㈱ザイマックス及び㈱からくさホテルズの「部屋割りの自動化システム」共同開発を発表
・当社と㈱調和技研の資本業務提携を発表
・㈱エニシアスの株式取得による子会社化(2020年4月1日付)を発表
・新型コロナウイルスに関する当社の対応を発表
2020年3月:
・健康経営優良法人認定制度に基づく「健康経営優良法人2020」に認定
・プロジェクトマネジメント学会から「PM実施賞奨励賞」を受賞
・当社と㈱ザイマックスによる㈱ジザイめっけの合弁会社化(2020年4月1日付)を発表
・2020年6月付の代表取締役の異動及び役員人事を発表
以上の結果、当連結会計年度の業績は、売上高393億37百万円(前年同期売上高352億30百万円、11.7%増)、営業利益35億56百万円(前年同期営業利益32億7百万円、10.9%増)、経常利益37億12百万円(前年同期経常利益36億58百万円、1.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益24億21百万円(前年同期親会社株主に帰属する当期純利益22億85百万円、5.9%増)と増収増益となりました。
セグメント別の状況は、以下のとおりであります。
①ソフトウェア開発事業
ソフトウェア開発事業の売上高は、321億58百万円(前年同期比11.3%増)となり、セグメント利益(営業利益)は、35億2百万円(前年同期比7.6%増)となりました。業種別の売上高を比較しますと、金融分野においては、前年同期を1億40百万円上回りました。公共サービス分野につきましては、当社の既存大口顧客のIT投資拡大を受けて前年同期を11億34百万円上回りました。流通・その他の分野は、主として、連結子会社における受注の増加により前年同期を19億86百万円上回りました。
②組込型ソフトウェア開発事業
組込型ソフトウェア開発事業の売上高は、71億32百万円(前年同期比13.5%増)となり、セグメント利益(営業利益)は、13億39百万円(前年同期比16.9%増)となりました。製品別の売上高を比較しますと、通信システム分野においては、前年同期を31百万円上回りました。カーエレクトロニクス分野では、前年同期を5億87百万円上回りました。情報家電等、その他組込型分野につきましては、前年同期を2億28百万円上回りました。
③その他
商品・製品販売事業等その他の売上高は、46百万円(前年同期比0.6%減)となり、セグメント利益(営業利益)は、5百万円(前年同期比13.1%増)となりました。
(2) 生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
| セグメントの名称 | 生産高(千円) | 前年同期比(%) |
| ソフトウェア開発事業 | 26,525,173 | 112.2 |
| 組込型ソフトウェア開発事業 | 5,537,143 | 113.3 |
| 合計 | 32,062,317 | 112.4 |
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 金額は、製造原価によっております。
3 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
b. 受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
| セグメントの名称 | 受注高(千円) | 前年同期比(%) | 受注残高(千円) | 前年同期比(%) |
| ソフトウェア開発事業 | 31,501,746 | 103.6 | 5,276,461 | 88.9 |
| 組込型ソフトウェア開発事業 | 7,951,215 | 124.6 | 2,000,061 | 169.3 |
| 合計 | 39,452,961 | 107.2 | 7,276,523 | 102.3 |
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
c. 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
| セグメントの名称 | 販売高(千円) | 前年同期比(%) |
| ソフトウェア開発事業 | 32,158,461 | 111.3 |
| 組込型ソフトウェア開発事業 | 7,132,652 | 113.5 |
| 小計 | 39,291,114 | 111.7 |
| その他 | 46,486 | 99.4 |
| 合計 | 39,337,600 | 111.7 |
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
| 相手先 | 前連結会計年度 | 当連結会計年度 | ||
| 販売高(千円) | 割合(%) | 販売高(千円) | 割合(%) | |
| 日本アイ・ビー・エム㈱ | 4,714,620 | 13.4 | 5,168,020 | 13.1 |
3 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(3) 財政状態
当連結会計年度末における資産総額は前連結会計年度末に比べ13億97百万円増加し、267億70百万円となりました。
流動資産は前連結会計年度末に比べ18億63百万円増加し、181億44百万円となりました。これは主に、有価証券が6億29百万円、「その他」に含まれる未収入金が4億10百万円、受取手形及び売掛金が3億48百万円それぞれ減少したものの、現金及び預金が31億84百万円、仕掛品が49百万円それぞれ増加したことによるものです。
固定資産は前連結会計年度末に比べ4億65百万円減少し、86億26百万円となりました。これは主に、繰延税金資産が1億64百万円増加したものの、投資有価証券が4億41百万円、のれんが1億20百万円、保険積立金が41百万円それぞれ減少したことによるものです。
当連結会計年度末における負債合計は前連結会計年度末に比べ13億49百万円増加し、105億84百万円となりました。
流動負債は前連結会計年度末に比べ2億11百万円増加し、60億70百万円となりました。これは主に、未払法人税等が3億67百万円、「その他」に含まれる無形固定資産未払金が2億36百万円、未払金が2億10百万円それぞれ減少したものの、1年内返済予定の長期借入金が3億73百万円、未払消費税等が2億92百万円、買掛金が2億75百万円、短期借入金が60百万円それぞれ増加したことによるものです。
固定負債は前連結会計年度末に比べ11億38百万円増加し、45億14百万円となりました。これは主に、長期借入金が11億36百万円増加したことによるものです。
当連結会計年度末における純資産合計は前連結会計年度末に比べ48百万円増加し、161億85百万円となりました。これは主に、自己株式が14億85百万円増加し、その他有価証券評価差額金が3億66百万円減少したものの、利益剰余金が16億76百万円、資本剰余金が1億81百万円、退職給付に係る調整累計額が33百万円増加したことによるものです。
(4) キャッシュ・フロー
当連結会計年度末の現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末に比べ31億83百万円増加し、93億84百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは36億93百万円の収入(前年度18億24百万円の収入)となりました。
これは主に、法人税等の支払額が13億73百万円、未払金の減少額が2億10百万円あったものの、税金等調整前当期純利益が34億13百万円、利息及び配当金の受取額が4億78百万円、売上債権の減少額が3億31百万円、デリバティブ評価損が3億6百万円、仕入債務の増加額が2億75百万円、未払消費税等の増加額が2億73百万円あったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは2百万円の収入(前年度12億38百万円の支出)となりました。
これは主に、投資有価証券の取得による支出が37億14百万円、無形固定資産の取得による支出が3億43百万円、有価証券の取得による支出が2億23百万円あったものの、投資有価証券の償還による収入が23億89百万円、投資有価証券の売却による収入が12億95百万円、有価証券の売却による収入が6億25百万円あったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは5億11百万円の支出(前年度12億78百万円の支出)となりました。
これは主に、長期借入れによる収入が20億円、新株予約権の行使による自己株式の処分による収入が5億14百万円、短期借入金の純増額が60百万円あったものの、自己株式の取得による支出が18億54百万円、配当金の支払額が7億43百万円、長期借入金の返済による支出が4億89百万円あったことによるものです。
(5) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社企業グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
なお、新型コロナウイルス禍による当社企業グループへの影響及び事業計画の前提となる仮定につきましては、「(9)経営者の問題意識と今後の方針について ①経営者の問題意識 a.事業環境と経済見通し」をご参照ください。
(a) 繰延税金資産の回収可能性
繰延税金資産の回収可能性は、将来の税金負担額を軽減する効果を有するかどうかで判断しております。当該判断は、収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得の十分性、タックス・プランニングに基づく一時差異等加減算前課税所得の十分性及び将来加算一時差異の十分性のいずれかを満たしているかどうかにより判断しております。
収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得の十分性を判断するにあたっては、一時差異等の解消見込年度及び繰戻・繰越期間における課税所得を見積っております。課税所得は、翌連結会計年度の事業計画の前提となった数値に基づき、経営環境等の外部要因に関する情報や当社企業グループが用いている内部の情報と整合するように調整し見積っております。翌期を超える期間の各連結会計年度の課税所得については、それまでの計画に基づく趨勢を踏まえた一定又は逓減する成長率の仮定をおいて見積っております。
当該見積り及び当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において認識する繰延税金資産及び法人税等調整額の金額に重要な影響を与える可能性があります。
(b) 退職給付債務の算定
当社企業グループのうち、一部の会社は非積立型の確定給付制度を導入し、かつ退職給付債務の算定にあたって原則法を採用しております。原則法による退職給付債務及び関連する勤務費用は、数理計算上の仮定を用いて退職給付見込額を見積り、割り引くことにより算定しております。数理計算上の仮定には、割引率のほか、退職率、予想昇給率、死亡率等の様々な計算基礎があります。
当該見積り及び当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において認識する退職給付に係る負債及び退職給付費用の金額に重要な影響を与える可能性があります。
なお、当連結会計年度末の退職給付債務の算定に用いた主要な数理計算上の仮定は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (退職給付関係)」に記載のとおりであります。
(c) 減損会計における将来キャッシュ・フロー
減損損失を認識するかどうかの判定及び使用価値の算定において用いられる将来キャッシュ・フローは、翌連結会計年度の事業計画の前提となった数値に基づき、経営環境等の外部要因に関する情報や当社企業グループが用いている内部の情報と整合するように調整し、資産グループの現在の使用状況や合理的な使用計画等を考慮して見積っております。翌期を超える期間の各連結会計年度の将来キャッシュ・フローは、それまでの計画に基づく趨勢を踏まえた一定又は逓減する成長率の仮定をおいて見積っております。
当連結会計年度において減損損失は計上しておりませんが、当該見積り及び当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において減損損失(特別損失)が発生する可能性があります。
(d) ソフトウェアの請負契約におけるプロジェクト原価
当社企業グループは、ソフトウェアの請負契約のうち一定のものに対して原価比例法による工事進行基準を適用しており、また、損失が見込まれる請負契約について受注損失引当金を計上しております。これらの会計処理にあたっては、当該請負契約に係る原価(プロジェクト原価)を見積ることが必要不可欠であります。
プロジェクト原価は、通常、請負契約ごとの特性(顧客やエンドユーザーの属する業種、要件、開発期間、必要となる技術や要員・工数等)に関する仮定に基づく見積りを行いますが、特に工事進行基準又は受注損失引当金の対象となるプロジェクト原価については、事業部門・品質管理部門だけでなく経理部門も参画してレビューを実施することにより、工事進行基準による売上高や受注損失引当金の過少計上・過大計上が生じないようにするための予防的措置をとっております。
当該見積り及び当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において、工事進行基準による売上高や受注損失引当金繰入額の金額に重要な影響を与える可能性があります。
(6) 当連結会計年度の経営成績の分析
当社企業グループの当連結会計年度の経営成績について、売上高は前年同期に比べて11.7%増の393億37百万円となりました。経常利益は前年同期に比べて1.5%増の37億12百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前年同期に比べて5.9%増の24億21百万円となりました。
①売上高
ソフトウェア開発事業の売上高は、前連結会計年度に比べて11.3%増の321億58百万円となり、組込型ソフトウェア開発事業の売上高は、前連結会計年度に比べて13.5%増の71億32百万円となりました。
②売上原価、販売費及び一般管理費
売上原価は、前連結会計年度より35億34百万円増加し、320億90百万円となりました。これは主に、売上案件の増加を受けて、外注費が19億38百万円、労務費が6億92百万円、製造経費が4億90百万円、材料費が3億61百万円それぞれ増加したことによるものであります。
これにより、売上総利益率は、前連結会計年度の18.9%より0.5%低下し18.4%となりました。
販売費及び一般管理費につきましては、前連結会計年度から2億23百万円増加し、36億90百万円となりました。これは主に役員報酬及び給料手当が82百万円、賞与が42百万円、「その他」に含まれる支払報酬及び支払手数料が42百万円、のれん償却費が17百万円、消耗品費が16百万円それぞれ増加したことによるものであります。
以上の結果、売上高営業利益率は、前連結会計年度の9.1%から0.1%低下し9.0%となりました。
③営業外収益、営業外費用
営業外収益は、前連結会計年度より1億円増加し、6億25百万円となりました。これは主に有価証券売却益が24百万円、受取配当金が8百万円それぞれ減少したものの、受取利息が1億42百万円増加したことによるものであります。
営業外費用は、前連結会計年度から3億95百万円増加し、4億69百万円となりました。これは主に、新型コロナウイルス禍による全世界的な株安を受けてデリバティブ評価損が3億6百万円、有価証券評価損が24百万円増加したこと及び自己株式取得費用を23百万円、新株予約権発行費8百万円を計上したことによるものであります。
以上の結果、当社のKPIである売上高経常利益率は、前連結会計年度の10.4%から1.0%低下し9.4%となり、目標値10%を下回りました。
④特別利益、特別損失
特別利益は、前連結会計年度から70百万円増加し、1億56百万円となりました。これは主に投資有価証券売却益が98百万円増加したことによるものです。
特別損失は、前連結会計年度から97百万円増加し、4億55百万円となりました。これは主に投資有価証券評価損が1億19百万円増加したことによるものです。
⑤親会社株主に帰属する当期純利益
以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度より1億35百万円増加し、24億21百万円となりました。
当連結会計年度において自己株式の公開買付けを実施した効果もあり、当社のKPIである自己資本利益率(ROE)については、前連結会計年度の14.6%から0.4%上昇し15.0%となり、目標である10%を引き続き上回りました。同様に、1株当たり当期純利益についても、前連結会計年度の104.46円に対して当連結会計年度は114.30円となり、目標値100円を引き続き上回っております。
(7) 経営成績に重要な影響を与える要因について
(市況の動向)
当社企業グループは、お客様のご要望に基づき、システムや製品の設計、開発、保守・運用サービス等を行うシステムインテグレーション、受託ソフトウェア開発を主軸とし、事業を展開しております。日本情報システム・ユーザー協会が毎年実施しております「企業IT動向調査2020」(2019年9月~10月の調査)によれば、「デジタル変革」の潮流が後押しとなり、40.7%(前回は47.6%)の企業が、2020年度の予算を昨年度に引き続き、「増やす」と回答しております。ところが、2020年度は、IT投資の意欲に水を差す形で、全世界を巻き込んだ新型コロナウイルス禍でのスタートとなりました。
景況感が一変し、潜在的なIT投資の意欲は高いものの、少なくとも2020年度上半期における内外経済の下振れは、確実と思われます。また、グローバル経済やサプライチェーンの滞り、消費低迷、雇用問題など、懸念は尽きず、先が見えない状況です。新型コロナウイルス禍の影響により、短期視点では、お客様のIT投資計画の見直し・変更による受注減少やプロジェクトの中止・中断・延期、商談機会の遅れなどが発生し、経営成績に重要な影響を与える要因となっております。
当社企業グループのソフトウェア開発事業における金融分野では、株価の暴落や為替相場の大幅な変動に伴う世界規模の金融不安が、IT投資に影響を与える見通しです。また、公共サービス分野、流通・その他分野では、足元の業績の急激な悪化や先行きの不透明感がIT投資に影響を与える見通しです。
当社企業グループの組込型ソフトウェア開発事業につきましても、製品分野(通信システム分野、カーエレクトロニクス分野、情報家電その他)によって影響の大きさは異なるものの、急激な需要減少や製品開発サイクルの見直し、為替相場の大幅な変動などが、IT投資に影響を与える見通しです。
しかしながら、価値創造を目的とする「デジタル変革」の潮流自体は、構造的には大きく変化しておらず、中長期視点では、拡大基調が継続するものと考えております。また、新型コロナウイルス禍を機に、BCP対策を含め、改めて見直されるクラウド環境の整備やテレワーク・在宅勤務制度の導入、AIやRPAを活用した省人化・自動化対応等、お客様のご要望は増加傾向にあり、先端技術(AI・クラウド等)を含む幅広い事業領域を有する当社企業グループにとって、新たな事業機会となるもの、と考えております。
(プロジェクトマネジメント)
受託ソフトウェア開発に関しましては、標準化されたメソッドに基づいたプロジェクトマネジメントを実践し、引き合い、見積り(受注単価、納期、品質等)、受注段階からプロジェクトの立ち上げ・計画段階、開発、納品の各段階において、レビュー及び品質管理を徹底しております。また、プロジェクトマネジメント協会(PMI)が実施及び認定しております国際資格「PMP®:プロジェクトマネジメント・プロフェッショナル(Project Management Professional®)」の取得義務や教育研修に努め、プロジェクト収益の確保、不採算案件発生の未然防止を図っております。しかしながら、持続的な成長と企業価値の向上を見据えた未開拓分野あるいは経験の浅い分野の案件の受注といった内的要因によるリスクや進捗中のプロジェクトにおける基本計画や体制の見直し、要求事項・仕様の変更など、外的要因によるリスクは増大する傾向にあり、トラブルが全く発生しない、という保証は難しく、万が一、トラブルが発生した場合、追加コストの発生や検収の遅延、損害賠償等により、損失が発生し、経営成績に重要な影響を与える要因となります。
(資金運用及び事業投資)
当社企業グループの資金運用におきましては、各種金融商品の特性や経済動向、景気の先行き等を勘案し、歴史的な低金利の時代にあっても高収益を獲得できるよう投資ポートフォリオを構築するとともにリスク管理を徹底しておりますが、内外の経済情勢や金融市場の動向に依存し、影響を受けるため、評価損や売却損が発生した場合に経営成績に重要な影響を与える要因となります。この度の新型コロナウイルス禍を起因とする金融市場の急激な悪化につきましては、これを機に投資ポートフォリオの慎重な見直しが必要であると考えております。
また、当社企業グループは、成長戦略の一環として、M&Aやアライアンス、新技術の研究・開発等の事業投資を積極的に実施しておりますが、内外の経済情勢や技術革新の動向に依存し、影響を受けるため、機会損失が発生し、経営成績に重要な影響を与える要因となります。
(8) 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
(キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容)
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況の分析・検討内容につきましては、「(4) キャッシュ・フロー」に記載しております。
(資金需要)
当社企業グループが持続的に成長し企業価値を向上させるためには、事業活動や余剰資金の運用を源泉とした自己資金を十分に確保することは当然として、ソフトウェア開発体制を拡充するための設備投資資金、将来の事業拡大に向けたM&A・アライアンスのための投資資金及び新規技術の獲得に向けた研究開発資金を適時適切に調達することが必要不可欠であると認識しております。
(資金調達方法)
当社企業グループでは、原則として、これらの資金を自己資金で賄うこととしております。ただし、経営環境や業界動向、経済・金融情勢等を勘案して、多額の資金が必要となった場合には、財務健全性に配慮しつつ、証券市場からの資金調達や金融機関からの借入れを実行することも視野に入れております。
当連結会計年度においては、2020年1月に①M&A及び資本・業務提携、②人材の獲得及び事業体制の強化、③研究開発への投資資金とすべく、自己株式を活用した第7回新株予約権を発行いたしました。また、主に通常の運転資金を確保することを目的として、当社において金融機関より総額20億円の長期借入れを実行いたしました。
(株主還元)
当社企業グループでは、株主の皆様に対する利益還元を経営上の重要課題と位置付けており、株主資本の充実と長期的な安定収益力を維持するとともに、業績に裏付けられた適正な利益配分を維持することを基本方針としております。また、株価動向や経営に与える影響を考慮しつつ自己株式の取得を実行することも重要な株主還元政策の選択肢の一つであると考えております。
当連結会計年度における配当の実施状況につきましては、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」に記載しております。また、2019年6月には、資本効率の向上を目的として自己株式の公開買付けを決定し、同年7月に取得が完了しております。
(9) 経営者の問題認識と今後の方針について
①経営者の問題意識
a. 事業環境と経済の見通し
2020年度の経済見通しは、2020年3月の日銀短観における業況判断指数(DI)が、新型コロナウイルス禍の影響を受け、大企業製造業、非製造業ともに悪化するなど、先行き不透明感が一段と増しております。欧米や国内での感染拡大が日々深刻化する状況や各産業における経済活動の滞り、金融市場の混乱などを鑑みると、当面の経済見通しは、更に厳しいものになる可能性が高くなっております。
事業環境の急激な悪化により、短期的には、IT投資の意欲に減速感が発生することは避けられない状況ですが、企業の競争力と成長力を強化するための「第4次産業革命(AIやIoTを用いることで起こる製造業の更なる自動化)」や「働き方改革(業務効率化、テレワーク導入など)」「省人化、自動化による労働力不足への対応」といった「デジタル変革」への取り組みは、構造的には変化せず、中長期的には、IT投資は引き続き拡大する、と考えております。
なお、新型コロナウイルス禍に起因するIT投資の抑制(受注減少、プロジェクトの中止、中断、延期等)や労働環境の変化(テレワークへの移行、時差通勤等)、関係者の罹患対応などによる、当社企業グループへの影響につきましては、精緻に把握することが困難であるため、現時点で入手可能かつ合理的な情報による判断及び以下の仮定に基づき、翌連結会計年度の業績予想(事業計画)に織り込んでおります。
・新型コロナウイルス禍は、第2四半期から収束に向かい、下期に向けて受注も徐々に好転する。
・上期は、主要顧客への著しい悪影響が生じ、計画見直しによる受注減が発生する。
・2020年4月1日付で㈱エニシアスを連結子会社としており、業績の底上げを期待。
・下期の回復基調も、上期の落ち込みをカバーするまでには至らず、通期業績予想は当連結会計年度並みに着地。
今後、これらの仮定の誤りにより開示すべき事象が発生した場合には、速やかにお知らせいたします。
b. 不採算案件の未然防止及び早期の収束
開発プロジェクトにおける不確実性は避けて通れない問題であります。規模の大きい不採算プロジェクトが発生した場合、当該プロジェクトの収益性悪化はもとより、他のプロジェクト活動や受注活動全体に対するしわ寄せも大きくなります。不採算プロジェクトの未然防止はもとより、不採算発生時の徹底的な原因分析と再発防止策の策定といった不採算プロジェクトの極小化に向けた取り組みは、継続すべきテーマと認識しております。受注時及び着手後の早期の段階では、見通しどおりの収益が確保できるか、お客様の要望や技術的難易度などの諸条件について、多段階のレビューやリスク分析などを含め、精査を行っております。また、プロジェクト遂行中は、「プロセスの見える化」を通じて、組織的な支援と監査を実施しております。不採算プロジェクトの発生時は、早期収束を図るため、重点プロジェクトとして、当該プロジェクトに対するモニタリングと情報のエスカレーションを徹底し、収益の確保とお客様の信用・信頼の獲得に努めております。
c. 技術力と品質の向上
洗練された技術力と確かな品質は、お客様満足度の向上はもとより、当社企業グループの持続的な成長と企業価値の向上にとって、正に生命線であります。サービスコンピテンシー統括本部や品質管理本部による組織横断的な活動の他、お客様や社会のニーズを見据えた人材開発体制や多種多様なスペシャリストの育成等を軸に、グループ各社と連携し、技術力とサービス品質の向上に取組んでおります。また、ソフトウェア開発のマネジメントサイクル(要件定義、設計、製造、テスト等、各局面の一連の流れ)においては、独自に定めた「品質保証プロセス体系」(※)をプロジェクト推進の基本とし、多段階レビューやトレーニングを通して、納品物の品質の向上に努めております。その他、技術研究所が主催する先端技術(AI・クラウド等)をベースとした次世代人材育成プログラムによる高度専門技術者の育成やプロジェクトマネジメント協会(PMI)が実施及び認定しております国際資格「PMP®:プロジェクトマネジメント・プロフェッショナル(Project Management Professional®)」の取得プログラムを実施し、マネジメント品質の向上も図っております。
※品質保証プロセス体系とは、品質管理を効果的に実施するために独自に構築した体系であり、提案からプロジェクトの実施、納品に至るまでの全てをカバーする「開発標準体系」をベースに、各局面を確実に実施していくことを目指したものです。
d. 知的財産の活用
当社企業グループは、「モノ作り」が基本であり、様々なプロジェクト実績を通じて、多くのアイデアやノウハウ、特許等のナレッジを有しており、このナレッジを「知的財産」として、共有・活用し、事業の競争優位性の確保や生産性向上に結びつけることが重要と考えております。
部門横断型のエキスパート制度の導入や知的財産(知識・知見・経験)の社内公開、特許化といった諸施策を通じて、「人と知的財産」という経営資源の質的向上を図り、品質管理、新規ビジネス(サービス・製品)の組成、戦略立案等、あらゆるビジネスシーンで英知を結集して、持続的な成長と企業価値の向上を目指してまいります。
e. 収益性の向上
需給状況に応じた適正な価格設定や選別受注は、従来から実施しておりますが、受注案件の収益性の向上は継続的なテーマであります。業務量の確保という観点に偏らぬよう見積り内容、受注条件等に関する多段階のレビューにより収益性の評価を十分に行うとともに、従来のサービス・製品とは一線を画した新規ビジネスの組成を推進し、収益性の向上を目指してまいります。また、開発及び構築業務において、生産性向上ツールの開発やソフトウェアの知的財産化、パッケージソフト等の既製品の利用、設計手法や業務ノウハウといったナレッジの共有化などを推進し、収益性を確保してまいります。
f. 事業ポートフォリオの見直しと高収益事業の拡充
IT産業に対するお客様や社会のニーズは、技術革新の進展と内外の経済動向により、常に変化しております。また、IT投資は時代の趨勢により、その内容や規模は変動するものの、決して枯渇するものではありません。当社企業グループは、厳しさを増す経営環境に的確に順応するため、従来型の受託開発事業における技術革新や組織体制の再構築に加え、新たな事業領域となる市場(技術や顧客)を積極的に開拓し、事業ポートフォリオの最適化を図ってまいります。併せて、当社企業グループの豊富な経験と技術力を結集し、高付加価値なサービス・製品を提供する事業も拡充してまいります。
g. セキュリティ意識の向上
情報セキュリティ事故が発生した場合、業務に大きな支障が出るだけでなく、間接的被害も膨らみ、企業の存亡に関わる被害になるおそれもあります。このような影響を鑑み、当社企業グループは、セキュリティポリシーを定め、専門部署による情報管理体制のIT化や情報セキュリティに関わる体制の整備など、管理を強化しております。また、事業環境の変化や事業を取り巻くリスクに応じて、物理的対策、技術的対策、運用管理面の対策を適宜変更し、対応しておりますが、最大の脅威は「人間」つまりヒューマンエラーと認識しております。不正行為、誤操作等は、個人の意識に起因する面が多く、管理が難しい側面がございますが、コンプライアンスに関する定期的な教育研修や自己点検(コンプライアンスチェック)の実施などを通じて、セキュリティ意識の向上を徹底し、情報資産の安全対策に努めてまいります。
②今後の方針について
当社企業グループが提供する多彩なサービス・製品やソリューションは、「デジタル変革」の潮流を概ね取り込めるポジションにあり、お客様から「ITパートナー」として期待されております。
2020年度は、大変厳しい経営環境ではありますが、新型コロナウイルス禍は一過性であり、中長期視点では、「デジタル変革」は、着実に拡大すると予測しております。「ピンチのときこそ、チャンスは到来する」と前向きに捉え、多様化、複雑化するニーズをしっかりと取り込み、そして、自らも競争優位性を確保するイノベーションを実現し、社会の発展に貢献する所存です。また、長年培ってきた技術力と経験を活かし、当社企業グループ間の協業や他社とのアライアンスを積極的に展開し、お客様の「デジタル変革」をリードする新規性と利便性を備えたサービス・製品を提供してまいります。
併せて、経年の教訓を活かし、改めて品質管理の強化と生産性の向上を軸に足固めをしつつ、当社企業グループ全体の事業ポートフォリオの最適化と環境変化に応じた柔軟な組織経営に努め、持続的な成長と企業価値の向上を目指します。