有価証券報告書-第25期(令和3年4月1日-令和4年3月31日)

【提出】
2022/06/24 12:50
【資料】
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【項目】
125項目

対処すべき課題


文中の課題認識及び将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社は、インターネットを利用した動画や音声の配信を一般的なメディアとして普及させることを目的に1997年5月に設立されました。この目的達成のため、事業開始から今日に至るまで、安定した配信・受信環境を提供するためのネットワークの構築を進めるとともに、コンテンツホルダーである当社顧客の様々な要望に応えながら多様な形式による配信サービスの拡充を図ってまいりました。インターネット環境が拡大し、回線の高速化やデバイスの多様化が進んだことから、インターネット動画は個人のエンターテインメント利用を中心にコモディティ化しました。これに伴い、動画のビジネス利用も拡大、用途が多様化していく中、この市場における当社の役割はこれまで以上に重要になってくると認識しております。こうした変化を先んじて捉え、事業の拡大を図っていくことが当社の経営の基本方針であります。
当社では、『もっと素敵な伝え方を。』をコーポレートメッセージとし、これを実現するための考え方と行動からなる『JストリームWAY』を社員の活動の指針として事業を推進しております。自社で構築した安定したネットワークを背景に、あらゆる形式の動画、音声(音楽)、画像コンテンツをあらゆる方法であらゆる端末へ配信できるストリーミング、ダウンロードサービス提供能力や、動画の企画から制作・配信・分析までをサポートできるサービスの多様性と、豊富な経験による専門性を有しております。当社は今後も予想される通信インフラの発展、ソフトウェアの技術革新などに対応しながら、最先端の動画ソリューション提供会社であり続けるよう努めてまいります。
顧客の成果に最大限コミットできるよう、自社サービスだけではなく、顧客の求めるソリューションを持つパートナーとの連携も推進し、あらゆる動画ニーズに応えられるエコシステムを創造して事業基盤の拡大に邁進いたします。
(2)経営戦略
経営戦略として、以下の点に注力してまいります。
PCに加え、スマートフォンやタブレット等の端末を日常的に利用する人の増加、5G等高速回線の普及と共に、これらを利用した企業内での情報共有・コミュニケーションにおける動画の利用や、コンテンツ配信ビジネスは拡大していくトレンドにありました。2020年初頭から流行している新型コロナウイルス感染症への対応のため、人と人との直接の接触を控えることが求められた結果、特にビジネス用途においてこの傾向はさらに強まることとなりました。当社グループにおきましては、企業にとって必須である販売促進活動や、社内コミュニケーション、社内教育等を効率的に実施できる動画の活用に関する社会的要請に応え、動画ソリューションの開発・提供を続けるとともに、成功事例の紹介など啓蒙的施策を通じ、潜在需要の開拓も行って業容の拡大に努めてまいります。同時に、将来的な拡大が見込まれるメディア系の利用、特に放送同時配信関連市場への対応体制も充実させてまいります。
当社グループにおきましては、
・医薬企業の医師向けマーケティング活動を中心とした動画コミュニケーション(EVC:Enterprise Video Communication)に関連するライブ配信サービス、コンテンツ制作サービス等の提供
・金融その他の業種全般における動画コミュニケーション(EVC)に向けた動画ソリューションの開発・提供
・今後拡大が見込まれる放送同時配信関連市場や各種のコンテンツを配信する放送局・メディア企業(OTT:Over-the-Top領域)に向けた配信基盤やソリューションの提供
の3つを軸として、業容の拡大に努めてまいります。
医薬企業関連の市場においては、従来から製薬メーカーによる医師に対するマーケティング活動のDX化の流れが進んでおりましたが、新型コロナウイルス感染症対応の観点から、2020年初頭以降この流れが急加速いたしました。当社として実績のあるWeb講演会(医薬情報提供の講演会のライブ配信)需要が急拡大し、関連する売上が大幅に増加する結果となりました。当社は既に多数の大手企業とビジネス展開を行っておりますが、製薬メーカーのDX推進の動きは継続しており、この領域は依然成長が期待できる領域と認識しております。
自社人員の最適な配分や、開拓した外注先企業との協力を進め、現場対応のノウハウを更に蓄積し、ミスのないサービス提供を行い顧客の信頼に応えることを通じて、業容の更なる拡大に取り組みます。また、親会社であるトランス・コスモス株式会社や連結子会社株式会社ビッグエムズワイ、クロスコ株式会社を含めた企業グループとしてサービス領域拡大を図ります。データ分析能力や集客サービス、コンテンツ制作体制を強化し、デジタルマーケティングを総合的に支援できる体制を整えて新たな需要の開拓を図ります。
その他の業種におけるビジネス全般での動画コミュニケーションについては、新型コロナウイルス感染症対応策を中心に、販売促進・情報共有などの様々な動画利用シーンにおいて成功体験を蓄積できた企業が多くみられる状況となりました。当社グループにおいては、企業のマーケティング、社内情報共有、社員教育等、様々な業務プロセス等すべてのシーンにおいてICT化が進行し、動画の利用される場面が拡大していくことに対応するソリューションを展開します。当社グループではこの領域の黎明期から様々な企業に提案、案件創出を行ってきた実績とノウハウを有しており、顧客の課題解決へ貢献し、業容の拡大に取り組みます。動画配信プラットフォームサービス「J-Stream Equipmedia」がこの領域に向けた主力サービスとなりますが、更に動画配信機能だけでは解決できない顧客課題に対応するために、需要規模の大きいソリューションについて自社開発を強化するとともに、有力なSaaS(Software as a Service)、各種サービスプラットフォームとの連携を進め、課題解決の実績を積み重ねると同時に販路の拡大を実現します。
放送局・メディア企業関連のOTT領域市場においては、当社は放送局によるコンテンツのインターネット配信が始まった当初から各局のコンテンツ配信に携わって来た実績と経験・ノウハウを有しております。インターネット番組編成配信を実現するために必要な機能をパッケージ化した「EQ Media Suite」等、放送同時配信をはじめとしたこの領域向けのサービスも既に展開しております。今後の配信量の増加や各種マネタイズ展開等において、放送業界が必要とするサービスに求められる、大規模配信やタイムラグのない超低遅延配信、広告配信、番組編成処理機能等、各種の機能要請に応えるサービス開発を更に進め、実績の積み重ねを通じ顧客との関係を強化し、拡大する市場におけるプレゼンスの向上を図ります。放送局以外のコンテンツ事業者に向けては、コンテンツ配信用のCMSや課金機能など、事業者の求めるマネタイズに必要とされる各種機能の提供を通じて市場開拓と顧客獲得を図ります。
経営管理面におきましては、企業の成長とあわせ、適切なコーポレート・ガバナンスの浸透を図りつつ、グループ経営の統制を強化し、効率化を図ります。テレワークについての適切な運用を推進し、一人一人の事情に合わせた時間や場所にとらわれない柔軟な働き方を実現すると同時に、社員の健康管理・人事労務管理、セキュリティ管理面の向上と業務効率化を進め、必要な業務に邁進できる、快適で働きやすい職場環境を実現します。優秀な人材を育成・獲得するために、評価制度や社内研修制度の充実を図り、社員の能力向上を支援すると同時に魅力ある就職先としての情報発信も継続してまいります。
(3)経営環境
インターネットを通じた各種コンテンツ配信の市場や動画を利用したマーケティング活動や情報発信、情報共有は成長基調にありますが、利用される領域が非常に広範であり、どの領域の活動においても、紙媒体や相対による手段から、ウェブ化、更に動画の利用が進むことが想定できる状況にあります。こうした市場環境下においては市場規模の拡大に合わせて各種の類似サービスが現れますが、当社グループとして健全な成長を遂げるためには、顧客の動画利用用途に適合し、顧客が意図する成果を挙げることに貢献できるソリューションを常に提供し、市場において確固たる地位を占め続けることが重要であると認識しております。
医薬企業関連の市場においては、コロナ環境下でデジタルシフトが急速に進行したマーケティングが、コロナ禍の沈静化動向を考慮しつつ今後の展開を検討する状況にあります。当社グループとしては、顧客の活動動向を注視しつつ、マーケティングのより上流プロセスに参加、提案を行い、変容の兆しを早期に捉える営業活動・情報収集を行います。
(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループにおいては、インターネットを通じた各種コンテンツ配信の市場や、動画を利用したマーケティング活動や情報発信、情報共有は成長基調にあると認識しております。こうした環境下においては、導入顧客の動画利用を促進する知識や情報を提供し、利用実績を積み重ねることで目的達成への効果を実感頂き、取引規模を順次拡大していくことが重要であると判断しております。この方針の達成状況を判断するために重視している指標は、特に継続的売上と利益が期待できる配信系のプラットフォーム売上高や取引先数(サービスによっては同一企業に複数アカウントを発行する場合もあるため、アカウント数)、既存取引先の維持率、また新規の取引先獲得数であります。また、構築した配信基盤を利用して、こうした顧客に適切なサービスを提供して利益をあげられているかの目安として、営業利益率を重要な指標としております。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社では、以下の点を重要な課題として掲げております。これらの重要課題への対応策を具体的な施策に反映させ、業容拡大や会社の健全な運営、社会貢献に努めてまいります。
<配信能力、サービス提供にかかる課題>・医薬企業関連のウェブ講演会データ分析等のデジタルマーケティング・プロモーション領域におけるサービスの確立
・ライブ案件数の増加や、株主総会に代表される開催時期の集中に対応するための、子会社を含む外部パートナーとの連携による能力増強やリモート体制の強化拡大することを通じた現場対応の効率化
・主力サービスJ-Stream Equipmedia の配信基本機能向上と、株主総会、販売促進セミナーなどに代表される顧客の動画利用用途夫々に特化した機能開発、有力SaaSとの連携による活用対象用途・販路の拡大
・企業自身による動画利用をサポートする内製支援型サービスの開発展開
・双方向配信、超低遅延配信等の新しいニーズに対する対応
・ネットワークキャパシティの増強とトラフィック原価削減、監視体制、耐障害性の充実
・5Gの普及による通信量の爆発的な増加へ対応するネットワーク制御技術開発
・映像制作表現やクオリティの向上、提案力の向上
<営業力強化のための課題>・一般企業の社内コミュニケーション活性化需要を取り込むためのSEによる営業サポート体制構築
・金融系をはじめとした一般企業向け市場における、代理店ほか各種ベンダー向けを含めた情報発信、共同提案体制の強化、導入支援等を通じた顧客開拓の強化
・個別営業担当者に依存しないインサイドセールスによる非対面型でのセールスや契約維持
・放送局を中心としたメディア事業者向け市場における放送同時配信需要や、個別のコンテンツプロバイダの事業展開を支援し収益機会とするための関係強化
<新しい事業領域開拓のための課題>・地方局のマネタイズを支援できるネット広告領域でのサービス展開
・M&Aを通じた新領域の開拓
<経営管理にかかる課題>・予算統制の向上
・グループ統制の更なる強化浸透
・開発・ネットワークエンジニアに加え、事業規模拡大に対応するための営業管理系を含めた採用育成体制の推進
・成果を維持しながら労働時間を短縮する手段、人材採用・維持するための多様な働き方、キャリアパスに即した研修等の能力開発等を補助するシステムの安定した運用
・テレワーク推進に伴う業務のシステム化
・適切な外注比率、外注費のコントロール