四半期報告書-第25期第1四半期(2023/01/01-2023/03/31)

【提出】
2023/05/12 9:08
【資料】
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【項目】
34項目
(2)継続企業の前提に関する重要事象等
医薬品事業は、製品化までに多額の資金と長い時間を要する等の特性があり、創薬ベンチャーである当社グループにおいては、継続的に営業損失及び営業キャッシュ・フローのマイナスを計上している状況にあります。
現在、HGF遺伝子治療用製品「コラテジェン®」(以下「コラテジェン」といいます。)の販売を行い、またアンジェスクリニカルリサーチラボラトリー(以下「ACRL」といいます。)にて希少遺伝性疾患のオプショナルスクリーニング検査を実施しておりますが、すべての開発投資を補うに足る収益は生じておりません。当社グループは、当第1四半期連結累計期間末において現金及び預金94億94百万円を有しているものの、すべてのプロジェクトを継続的に進めるための十分な資金が不足していることから、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在しております。
このような環境のもと、当社グループは、当該状況の解消と継続的な発展を目指し、下記を重要な課題として取組んでおります。
①自社既存プロジェクトの推進
当社グループは、現在開発している医薬品等のプロジェクトを確実に進捗させることが当社グループの重要な課題と認識しております。
当社グループでは、2019年3月に国内初の遺伝子治療用製品コラテジェンの条件及び期限付承認を厚生労働省から取得し、同年9月から販売を開始いたしました。製造販売後承認条件評価のための目標症例数の患者登録が完了し本承認に向けた申請の準備を進めております。また、米国での閉塞性動脈硬化症を対象とした後期第Ⅱ相臨床試験は2022年度末までに当初目標症例の投与を完了し、2023年第1四半期連結累計期間において脱落例対応も完了し、投与後の経過観察を実施しております。
米国において後期第Ⅰ相臨床試験を実施した椎間板性腰痛症向けの核酸医薬NF-κBデコイオリゴDNAは、日本国内における第Ⅱ相臨床試験の準備を進めております。
Vasomune Therapeutics Inc.(以下、「Vasomune社」といいます。)と共同開発しているTie2受容体アゴニストはこれまで重度の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による肺炎を対象としておりましたが、重症化リスクが低いオミクロン株への置き換わりが進み、対象疾患をインフルエンザ等のウイルス性及び細菌性肺炎を含む急性呼吸切迫症候群(ARDS)に広げて米国FDAに申請し承認を受け前期第Ⅱ臨床試験を進めております。
これら開発中の医薬品について、今後も優先順位を意識しながら開発を進めてまいります。
②開発パイプラインの拡充と事業基盤の拡大
当社グループの主力事業である医薬品開発では、開発品の製品化は非常に難易度が高いため、常に開発パイプラインを充実させることが重要な課題と認識しております。
当社グループはゲノム編集における先進技術を持つ子会社のEmendoBio Inc.(以下「Emendo社」といいます)において、究極の遺伝子治療ともいわれるゲノム編集で具体的なプロジェクト化に向けて準備を進めています。同社は、ゲノム編集の安全な医療応用を目指し、新規CRISPRヌクレアーゼを探索・最適化するプラットフォーム技術(OMNI Platform)を確立しており、血液、眼科、肝代謝などの疾患領域についてパイプラインを構築しており、最も進んだELANE関連重症先天性好中球減少症を対象としたプロジェクトは米国での臨床試験実施に向けFDAと協議を開始し、2023年度中の米国での臨床試験開始に向けた準備を進めております。同社はゲノム編集技術の開発をとおして、遺伝性希少疾患に加え様々な疾患へのゲノム編集技術による治療を検討しております。
当社グループは、大変希少な致死性の遺伝的早老症であるハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群及びプロジェロイド・ラミノパチーの治療薬Zokinvyの日本での独占販売契約を2022年5月に米国のバイオ医薬品企業Eiger BioPharmaceuticals Inc.(以下「Eiger社」といいます)と締結し、現在承認申請に向けた準備を進めております。
2020年3月より開発を進めていた新型コロナウイルス感染症の武漢型予防DNAワクチンの開発は中止に至りましたが、広範な免疫応答を刺激し、ウイルスの増殖防止、拡散の阻止が期待される改良型DNAワクチンの経鼻投与製剤に関する共同研究をスタンフォード大学と開始し、早期に臨床開発に移行し開発パイプライン拡大に繋げられるように取組んでまいります。
ACRLの「希少遺伝性疾患のオプショナルスクリーニング検査」は首都圏を対象として受託をしておりますが、今後は各自治体や民間の検査センター等との連携により追加スクリーニング検査の受託拡大活動を進めてまいります。さらに、これまでのスクリーニング検査に加え、希少遺伝性疾患の確定検査や治療の効果をモニタリングするバイオマーカーの検査など、希少遺伝性疾患の診断から治療に至るまでの包括的な検査を実施できる体制の構築を進めてまいります。
これらの開発パイプラインの拡充や事業基盤の拡大により、当社グループは遺伝子治療の世界でグローバルリーダーを目指します。
今後も、ライセンス導入や共同開発、創薬プラットフォーム技術の獲得を目指した事業提携に加え、他社に対する資本参加や他社の買収等により開発品パイプラインの拡充による事業基盤の拡大を図り、将来の成長を実現してまいります。
③開発プロジェクトにおける提携先の確保
当社グループでは、製薬会社との提携により、開発リスクを低減するとともに、契約一時金・マイルストーンや開発協力金を受け取ることにより財務リスクを低減しながら開発を進め、上市後にロイヤリティを受領するという提携モデルを基本方針としております。
コラテジェンに関しましては、日本と米国を対象とした独占的販売契約を田辺三菱製薬株式会社(以下「田辺三菱製薬」といいます。)と締結しており、マイルストーン収入やロイヤリティ収入が見込めます。また、イスラエルにおきましては、独占的販売権の許諾について2019年に基本合意書を締結したKamada社が、2022年にイスラエル保健省に承認申請を行い受理されました。さらにトルコにおいては、2020年にスペシャルティ薬(特定疾患専門薬)を扱うEr-Kim社と独占的販売権許諾に関する基本合意書を締結しました。
今後も、更なる製薬会社等との提携を検討するとともに、開発プロジェクトに協力いただける企業を開拓し、事業基盤の強化に努めてまいります。
④資金調達の実施
当社グループにとって、研究開発活動及び事業基盤の拡大を推進することは継続的な発展のために重要であり、そのためには状況に応じ機動的に資金調達を行うことが必要となります。2022年10月12日に発行したCantor Fitzgerald & Co.を割当先とする第42回新株予約権(第三者割当て)について2023年3月末日までにその一部が行使され、調達開始から46億55百万円(新株予約権発行による入金を含む)を調達いたしました。今後も、研究開発活動推進及び企業活動維持のために必要となる資金調達の可能性を適宜検討してまいります。
しかしながら、現時点において上記に記載したプロジェクトを継続的に進めるための資金調達の方法、調達金額、調達時期については確定しておらず、継続企業の前提に関する重要な不確実性が存在していると判断しております。
なお、連結財務諸表は継続企業を前提としており、上記のような継続企業の前提に関する重要な不確実性の影響を連結財務諸表には反映しておりません。